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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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 ***


 街に点在する図書館。

 今年、高校に入学したものの友人の一人も出来ず、休みでも一緒に遊ぶ友人のいなかった彼女は、子供の頃から好きだった読書をして時間を潰すために定期的にその図書館へ来ていた。

 なにしろ、冷暖房完備。外に出るとコンビニもあり、建物内には飲食スペースも設けられているので、一日時間が潰せるのだ。


 春からずっと、この図書館の常連となっていた彼女は、ある日とある少年と出会った。

 彼女と同じ、でも学校が違う高校一年生。

 少年も時折この図書館を利用していて、お互い常連なのかな、と顔をなんとなく覚えていた。

 言葉を交わすきっかけは、なんて事ない、帰宅しようとした彼女が席に忘れた忘れ物を彼が気づいて届けてくれたのだ。

 それからは、不定期ではあったけれど、この図書館で顔を合わせる度に話すようになった。

 それだけと言ってしまえば、それだけの関係だ。


 「今日もいない、か」


 夏休みに入れば毎日、とは行かなくても夏休み前より顔を合わせる頻度は上がるんじゃないかと期待していたのだが、彼はちっとも現れなくなった。

 彼女、サクラは何処にでもいる容姿の女の子だ。

 肩まで伸びた茶髪は、綺麗に手入れされているし、細やかなオシャレとして最近はネイルに力を入れている。

 メイクは、紫外線対策程度にナチュラルである。

 片側の前髪を髪留めで止めているので、名前と同じ淡い桜色の瞳がよく見える。


 「テツ、忙しいのかなぁ」


 もう夏休みも後半戦である。

 新刊や新作の意見交換などを是非ともしたいのだが、中々にそれは叶わない。

 彼とは、とても話が合う。

 そこまで親しくはないが、それでも他愛のない話をして盛り上がるのはとても楽しい。

 彼となら、声出しが許可されている特撮の映画等にも誘いやすいと、本当に色々考えていたのだが。

 顔を合わせなければ意味が無い。

 彼女と話が合う同年代の者はなかなかいない。

 だからこそ、テツと自分の好きなジャンルが同じだとわかった時、テツにドン引きされるほどテンションが上がった。


 「まぁ、私もバイトあるから仕方ないけど」


 戦のための金を稼ぐために、夏休みの間だけの短期バイトを彼女も始めていた。

 ひょっとしたら、それで時間がずれているのかもしれない。

 

 「あ、新刊入ってる」


 大人達が払う税金によって運営されている図書館は、だれでもタダで本を借りられる。

 そして、時に寄付された、絶版となった本も読める。

 今はないライトノベルのレーベルもそろっていたりする。


 「あ、あ、これ、これこれこれ!!」


 新刊の横にある、ずっと探していたラノベを見つけて、サクラは手に取った。

 もう三十年以上前に完結した作品、その最終巻である。

 全十五巻の最終巻。

 という事は、一巻がすでにどこかにあるはずだ。


 最終巻を手に、検索機のところに行く。

 タイトルを打ち込んで、検索をかける。

 目的の場所が画面に出る。

 そこをプリントして、探しに行く。

 と、とある本棚の前で本を探している女の子が視界に入った。


 (うわ、可愛い。アイドル? うーん、モデルかな?)


 何を食べたらあんなに、可愛く、そしてほっそりとなるのだろう?

 羨ましい限りだ。

 雪のような真っ白い髪、瞳は自分と同じ桜色。

 どうして、目の色は同じなのにこうも素材の違いが出るのか。


 やっぱり唐揚げが原因だろうか?

 それともエビフライがいけないのか。


 自然と自分の脇腹に触れて、ぷにぷにする。


 「ふっ」


 自嘲してしまう。

 この弾力が憎らしい。

 と、その美少女に身内か知人か、黒いスーツの女性が近づき話しかけた。


 「おーーアストリアさん、本は見つかりましたか?」


 親戚のお姉さんとか、そんな関係だろうか?

 こういう人間観察を、サクラは好んでしていた。


 「あ、その、見つからなくて」


 よくよく見ると、アストリアと呼ばれた少女の手には携帯端末が握られている。

 検索機が埋まっていると、タイトルだけ携帯端末で検索して探すというのは、サクラもやったことがある。


 「もう一度、検索機の方に戻ってみましょう。そろそろ空いてると思うので」


 黒スーツの女性の言葉に、アストリアも頷く。

 と、二人がサクラの方を見た。

 アストリアの視線がサクラの持つ本に釘付けになる。


 「あ」


 「はい?」


 サクラもつい、アストリアの声に反応してそう漏らしてしまう。


 「あ、すみません。この本ってどこにありましたか?」


 アストリアが、なるべく小声で聞いてきた。

 まさか図書館で他人に話しかけられる等と思っていなかったので、サクラも戸惑う。


 「えと、あっちにあるみたいですよ?

 自分もこれから探しに行くんです」


 と、どぎまぎしながらサクラは答えた。

 天使か、天使は存在したのか!

 と、サクラはポーカーフェイスの下でパニックに陥ってしまった。

 それもそうだろう、顔面偏差値がチート級の同性に話しかけられるなんてそうそうない。


 「えと、こっちです」


 なにか言われる前に、サクラは案内役を買ってでる。

 こういう所が貧乏くじを引くんだよなぁ、と思いながら。

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