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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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 この人間の巣は、不思議だ。


 「ポーン、ゴンスケー、ドンベエ、ご飯だよー」


 よく分からないまま、連れてこられた人間の巣。

 ゴンスケお姉ちゃんとポン姐さん曰く、家、と言うらしい。

 この巣、家の中でも一番優しくて、でも怖いらしい人間、お母さんが僕達を呼んだ。

 

 僕達のご飯は、お母さんかおばあちゃんがよく用意してくれる。

 

 この家では、僕の名前はドンベエというらしい。


 カラカラという、乾いた音が響いて。

 丸まっていたポン姐さんが音のする方へトコトコと歩き出す。


 「ほら、ご飯だよ」


 不意に立ち止まって、ポン姐さんが僕に言ってくる。

 ゴンスケお姉ちゃんと違って、ポン姐さんは優しい。

 ゴンスケお姉ちゃんは、意地悪だ。


 「うん」


 人間が料理をしたり、食べたりする場所、部屋? の片隅に僕達がご飯を食べる場所がある。

 そこには、三つのお皿にそれぞれ山盛りになった、カリカリする美味しいご飯が山盛りになっていた。


 「もうここには慣れたかい?」


 ハグハグ、と夢中で食べていた僕にポン姐さんが聞いてきた。


 「うん! こことっても暖かいし、お母さんもおばあちゃんも、おじいちゃんも優しいし、お父さんはご飯くれるから大好き!!」


 「そうか、良かったよ。

 それなら、アンタの飼い主は?」


 「お兄ちゃんのこと?」


 「そう。アンタを拾ってきた男の子の人間」


 「お兄ちゃんのことも大好き!

 一番優しいし、撫でてくれると気持ちいいし。

 たくさんおしゃべりしてくれるし。

 僕、あんなふうに撫でられたことなくて驚いちゃった」


 僕は、元々いた場所だと嫌われていた。

 群れの仲間達も、お父さんもお母さんも、兄たちも、周囲にいる者達全てから嫌われていた。

 理由は、僕に牙がないからだった。

 意気地がない、弱虫、それは僕のいたドラゴンの群れの中では迫害の対象だった。

 そういえば、ここにきてからよく誉められるようになったと思う。

 主にポン姐さんに。

 むずかしい言葉をよく知ってるね~、から始まってことある事に誉めてもらえたのはとてもくすぐったくて、嬉しかった。

 初めてだったから。


 ズリ、ズリ、ズリ。


 僕がポン姐さんと話していると、そんな体を床に擦り付ける音がだんだん近づいてきた。

 ゴンスケお姉ちゃんだ。

 僕は怖くて、ポン姐さんの後ろに隠れる。

 ゴンスケお姉ちゃんは苦手だ。

 いつも僕に意地悪するし、お兄ちゃんを独り占めするし。

 それに、


 「あー!! それ僕のご飯!!!」


 僕のご飯まで食べてしまうから。


 「…………だって食べ終わってたから、要らないのかなって思って」


 真っ白な巨体からそんなことを言われてしまう。

 なんで、不貞腐れてるんだろう。

 嫌な想いをしてるの、僕なのに。


 「お姉ちゃんがとったーー!! 僕のご飯とったーー!!!」


 「あーあー、もう、それくらいで泣くんじゃないよ、教えただろ?

 こういう時はどうするんだっけ?」


 ポン姐さんに言われて、僕は空になったお皿を咥える。

 そして、咥えたままお母さんの足元まで行って、頭を擦り付けた。


 すると、トントン、となにかを切っていたお母さんが優しく笑って僕を見てくる。


 「あ、お代わり?

 って、ゴンスケ! またドンベエのご飯まで食べたね?!」


 ゴンスケお姉ちゃんは怒られるが、そそくさとどこかに行ってしまう。


 「まったく」


 お母さんになでなでされる。

 とても気持ちいい。


 「ほら、ドンベエ、お代わりだよ」


 カラカラカラカラ。

 僕のご飯が、また用意された。


 「お母さん、ありがとう」


 僕の言葉に、お母さんがにっこり笑って返す。


 「そう、美味しいの」


 僕の言葉はお母さんにも、お兄ちゃんにもちゃんと伝わっていない。

 でも、皆優しくて、ゴンスケお姉ちゃんは意地悪だけど、でも兄たちみたいに打ったり、崖から落としたりしないから、やっぱり優しくて。

 ここに連れてきてくれたお兄ちゃんのことも大好きだ。


 「母さん、おはよう」


 お仕事に行くために、お兄ちゃんが起きてきた。

 お父さんは夜のうちに、お仕事に行ってしまった。

 お兄ちゃんが僕を見る。


 「あ、ドンベエいた。忘れてた、今のうちにつけておこう」


 そう呟くと、お兄ちゃんは自分の部屋に戻る。

 そして、戻ってくるとその手には新しい首輪があった。


 「ドンベエ、ちょっとごめんよ」


 ご飯を食べていた僕を抱き上げて、お兄ちゃんは椅子に座る。

 そして、今まで付けていた首輪が取り外され、新しい、お兄ちゃんが持ってきたものを付けられる。


 「うん、カッコイイカッコイイ」


 また撫でられた。


 あれ?

 ザワザワが消えた?

 お兄ちゃんみたいに静かになった。

 お母さんも、ポン姐さんも、お兄ちゃんみたいに静かだ。


 グゥルルル。


 僕が驚いていると、そんなお姉ちゃんの唸り声が聞こえてきた。

 声のした方を見ると、さっきより、少し小さくなって姿を変えたお姉ちゃんが、尻尾をベシベシしながら僕を睨みつけていた。


 そんなお姉ちゃんに、ポン姐さんが歩み寄り、言った。


 「アンタ、下が出来たんだからもう少し大人になったらどうなんだい?」


 「だって、だって! ドンベエが来てからテツ、アタシのこと構わなくなったんだもん!!」


 「だって、じゃない。仲良くしな」


 ゴンスケお姉ちゃんがむくれてしまう。

 と、お兄ちゃんが僕を下ろす。

 

 「あ、母さん。今日も夜遅くなるかもだからご飯、冷蔵庫入れといて」


 「わかった」


 そうして、お兄ちゃんは手を洗ってご飯を食べて、ゴンスケお姉ちゃんを連れてお仕事に行ってしまう。


 家を出る直前、見送るとお兄ちゃんはとても嬉しそうに笑うので、僕はこの家に来てからずっとお兄ちゃんの見送りと、迎えをしている。


 「それじゃ、ドンベエ。行ってきます」


 撫でて、お兄ちゃんはゴンスケお姉ちゃんと出かけて行った。

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