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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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 「へぇ、おもしろい。ゲームみたい」


 俺は渡された地図を見ながら、そう呟いた。

 それは、レイが自然公園を回って作成された地図だ。

 地図はしかし、完成はしていない。

 未だ三分の一しか、記載されていないのだ。

 このご時世に、個人個人で確認出来るデータではなく、紙の地図だ。

 いや、紙に携帯端末のような機能を付けた地図だった。

 触れた箇所を拡大したり、縮小したりできる。

 それこそ、携帯端末のようにスライドさせれば別の場所の地図が出てくる仕組みだ。

 歩いて回ったところが自動でマッピングされていくらしい。


 「だろ?」


 レイは得意げに、だから作ったんだと言った。

 

 「で、これな、ちょっとした仕掛けがしてあって」 


 レイは地図をなにやら操作すると、もう一度俺に渡してきた。

 すると、


 「あ、消えた」


 「窃盗対策な。持ち主以外が触ると、バックアップとって初期化する仕様にした」


 やけに有能だな。あんな馬鹿なことするやつなのに。


 「へぇ」


 「基本、俺は自分とエステルだけ登録して消えないようにしてある。

 ついでだから、お前にも一枚やるよ」


 「え、いいの?」


 「いいよ。沢山あるし」


 沢山ある、ということは、作って売ってるのか?

 東大陸にはこういった地図は無かったので、純粋に嬉しいし、楽しい。

 仕組みはわからないけど。

 渡された地図は白紙だった。

 しかし、数秒すると現在地と周囲、うーん半径1キロほどが浮き上がるように記載された。

 おもしろい。

 

 「ゲームとかだと、敵の位置とかわかるけど、これでもわかるの?」


 「そうなるようにも出来た。でも、しなかった。

 その機能は別料金で付けれるようにした」


 やっぱり、売ってた。


 「なんで?」


 最初から、あったら便利なのに。


 「なんでって、敵がいたら避けるだろ」


 「そりゃあ、まぁ」


 「それじゃ、おもしろくないだろ。

 何にぶち当たるかわからないから楽しいんだし。

 最初から答え知ってたら、その楽しみが潰れるんだぞ」


 うーん、よくわからない。

 最近の創作物のように、最初から有効設定の方が楽だし、楽しめると思うんだけどなぁ。

 まぁ、ゲームだったらクソゲーになるだろうけど。


 「そう言うもん?」


 「そういうもん、そういうもん。

 だって、これゲームじゃないし」


 ゲームじゃない。

 たしかに、そうなんだけど。


 「人生にも攻略本があったらいいけど無いしな」


 「だから、付けなかった? で、別料金?」


 「そ、まぁ、ゲームはクリアすることが決められてるけど、人生はそうじゃないし。

 人生を攻略するのに必要なのは、攻略本じゃなくて経験だろ。

 地図は地図でしかないし。道具ではあるけど、攻略本ではないからな」


 うーん、話が噛み合ってるようで噛み合ってない気がする。


 「わからないから、どこへだって行けるだろ。

 で、たどり着いた場所が危険な場所だったら、それが経験になる」


 その経験を噛み締めながら、危険な場所で死ぬこともあるかもしれないのだが、それには気づいているのだろうか?


 「ぐぅるるるる」


 森に入らないの? とゴンスケがくいくい、と俺の服の裾を引っ張った。

 早く森に入って遊びたいらしい。

 


***



 「報告書、読んだよ」


 ジュリの執務室には、応接間も兼ねているためか来客用のソファとテーブルも用意されている。

 そのソファに座り、自分で淹れた紅茶を優雅に飲みながら、エステルはジュリの言葉の続きを待った。


 「で、感想は?」


 いつまで経っても、返答が無いのでエステルはそう促してみた。

 返ってきたのは、


 「困った」


 そんな短い言葉だ。


 「困ったことになったなぁ」


 「ま、そりゃ、困るよな」


 「あの馬鹿は、何を考えてると思う?」


 馬鹿とはレイのことだ。


 「さて、ね。俺もアイツとは腐れ縁ではあるけれど、考えが読めたことなんてない。

 今回のことも、何を考えてるやら」


 「…………馬鹿のことは、考えるだけ無駄かな。

 でも、この件、特別扱いは出来ないしなぁ」


 「はは、ジュリさんは厳しいなぁ」


 「そうでも無いけど。でも、ねぇ。さすがに迷うくらいは人間なんだよアタシも」


 疲れたようにジュリは息を吐き出すと、しばらく目を瞑り、考える。

 やがて、答えが出たのかジュリはエステルへ指示を出した。

 一通りのことを伝え終えると、最後に、


 「処分も視野に入れて、動ける?」


 ジュリは確認するように、そう訊ねた。


 「もちろん」


 エステルは紅茶を飲み干すと、そう自信満々に答えたのだった。


 「あーあ、でも今回の騒動、もうちょい報道されると思ったのに、全然で残念」


 「あ、そうだ。エステル。

 この件、たぶん東大陸に行くことになるよね?」


 「たぶん」


 「じゃあさ、ついでにこっちのことも頼もっかなぁ」


 言いつつ、ジュリは資料ととあるサキュバスの画像を見せる。


 「なに? 指名手配犯?」


 「うん。二、三十年くらい前に東大陸を引っ掻き回した魔神がいたんだけど、その配偶者、つまりは妻。

 この女が最近、またよからぬ事を企んでるっぽいからさ。

 こっちは、見つけ次第殺処分して」


 「了解」



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