66
有料チャンネルの設定を解除して、レイにリモコンを渡す。
適当なチャンネルを選んでもらい、今度は普通にこちらの国での推理ドラマを出してもらった。
ゴンスケは、すぐにドラマに集中し始めた。
ちょろいな。
「そういや、エステルから連絡があって、まぁ無事に人質は救出したらしいけど、後始末やらで後で合流するってさ。
というわけで、午後にはここ出るから荷物まとめとけよ」
「は?」
「なにそんなに驚いてんだよ」
「出るって、どこに行くんだ?」
「え、ボケ?
ツッコミいれるとこ?」
「違う」
「ひょっとしなくても忘れてるか?
元々、ここに来たのドラゴン狩りするためだろ」
そういや、そうだった。
忘れてたよ、馬とか全裸とか建物占拠のインパクトが強すぎて、すっかり忘れてたよ。
「というわけで、ここからはバスとか電車乗り継ぐから。
ゴンスケは、悪いけどこの中に入って貰うからな」
いったいいつ用意したのか、レイはペット用のキャリーバッグを取り出した。
満月を半分に切ったような形ーートンネル型のそれは犬猫兼用のやつだ。
名前を呼ばれたゴンスケはこちらを振り返る。
「手のひらサイズか、人型じゃダメなのか?」
「手のひらサイズなら、リードは必須だけど。そもそも外に出しておくことが嫌だって人もいる。
介護のためのペットならまだしも、どんなに飼い主がペットのことを家族だって言い張っても世間じゃ愛玩動物扱いだからな。人型になれても、その辺のマナーは守らなきゃだし」
どの口がマナーとか言うか。
少なくとも、こいつには言われたくないだろ、世間の方も。
「というわけで、ゴンスケ。ちょっと狭いけどしばらくこの中に入ってくれよ」
レイの言葉に、ゴンスケはキャリーバッグをしばらく見て、ぷいっと横を向いた。
そして、
「ぎゃっ!!」
尻尾でそのキャリーバッグをたたき落とした。
どうやら入りたくないらしい。
しかし、
「ふっふっふっ、お前みたいなタイプの弱点はだいたい予想がつくんだよなぁ」
実に意地の悪い笑みを浮かべると、レイはペタペタブンブンと揺れているゴンスケの尻尾を掴んだ。
そして、軽く握りこむ。
すると、
「ぎゃっ?! くぅるるるる~」
ゴンスケは力が抜けて、その場にへたりこんだ。
「さて、無理やり押し込められるか、それともいい子にして運んで貰うか、好きな方を選べ」
レイは実に楽しそうだ。
そうか、ゴンスケ尻尾が弱点だったのか。
弱点の割にめっちゃ使ってるけど。
どちらかと言うと、握られるのが弱いんだな。
「ぎゅうるるる」
少し悔しそうに、そして恨めしそうにゴンスケはレイを睨むと、その姿が変わる。
成猫くらいの大きさのトカゲ姿だ。
そして、そのままブスッとした顔で、自分が落としたキャリーバッグに入ってしまった。
「よしよし、良い子だな」
レイに褒められるが、やはりプイッと顔を横に向け不貞腐れてしまう。レイは、やはり気にすることなく、キャリーバッグを閉じてしまう。
というか、レイに対して唸ってるな。
レイは唸られてもどこ吹く風だ。
うーん、今まで基本放し飼いだったからなぁ、ストレスになったりしないんだろうか。
心配だ。
「ゴンスケ、悪いな。目的地に着いたら出してやるから」
「くぅるるる」
俺が言えば、唸るのをやめて、そんな甘えた感じで鳴いたのだった。




