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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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 頃合いだったのか、適当なところで目の前が真っ白になった。

 煙幕だった。

 それを合図に、俺はゴンスケを呼ぶ。

 と、また弾丸がかすりそうになる。

 しかし、外国、それも他大陸でも恐慌をきたした時の叫びって同じなんだな、と実感する。

 いや、この場合、他大陸の言葉がわかるレイやエステルが凄いのかもしれない。

 わざわざ、無人島の時も、そして俺がいる前では、基本的に俺がわかる言葉で話していたし。


 ゴンスケがこんなホワイトアウトな状況にも関わらず、正確に俺の元へ戻ってきた。

 俺は鳩マスクをとっぱらって、手に持つと、ゴンスケへ言った。


 「よし、乗れっ!」


 「ぎゃうっ」


 返事をして、ゴンスケは一声鳴くと思い切りジャンプした。

 その姿が光の玉になり、一瞬で小さくなる。

 可愛らしい幼女から一転。

 ポスン、と俺の頭に着地したのは拾ったばかりの頃のサイズになった、トカゲ姿のゴンスケだった。

 実は、この姿がゴンスケは一番のお気に入りのようだ。

 何故かというと、携帯端末で動画を観る時大画面で観れるからだ。

 もう、この辺のこだわりは飼い主に似たとしか言えない。

 リーチ達には言わなかったが、もう少し詳しく説明すると、携帯端末で動画を観る時は手のひらサイズのトカゲ姿、散歩の時は大型犬サイズ、そして空の散歩の時は通常の龍姿、そして風呂の時は人間姿と変えているのだが、そこはさすが雌ーー女子というべきか、実家にいる時、人間姿の時はさらに姉のお古を着てご満悦だった。

 母が買い物に連れ出すため、着せ替え人形のようにしていたのもあるが。

 ゴンスケもかわいい服を着ることは満更でも無さそうだったな。

 あの姉は、可愛いものより綺麗系な服装を好むので、高校デビューしてからは、サイズの問題もあったがそういったデザインのものは着なくなってしまった。

 とりあえず、この旅行が終わったら服も買ってやるか。

 下着は母に任せるとして。


 そんなことを考えながら、俺はその場を離脱した。



***



 「あ、やっと来た」


 外の騒ぎで手薄になった建物内。

 無線か通信魔法かはわからないが、外の騒ぎの報告を聞いた大半の者が戸惑っていた。

 それもそうだろう。

 怒鳴り声で復唱するというアホすぎる行為とその中身にも苦笑しながら、エステルは鉢合わせした、この建物を占拠している武装した者達を昏倒させて行った。

 ちなみに、怒鳴り声の中身というのは、


 「はぁ!? 馬がなんだって?!!」


 「全裸の馬の化け物が、女の子を襲ってる?

 寝言は寝て言え!!」


 「二足歩行の鳩の仲間がいる? いや、鳩は最初から二足歩行だろう。豆でも撒いとけ!!」


 こんな感じだった。


 そうしてたどり着いたのは、四大幹部の一人である人物が私室として与えられている部屋だ。

 その部屋にたどり着く頃には、武装した者達とはすっかり鉢合わせすることも無くなっていた。

 正直、これで良いのかとも思わなくも無かったが、まぁいっかと思い直して、エステルは扉に施されていた魔法術式を解除する。

 そして、開けた。


 そこに広がっていたのは、以前見た時よりも磨きの掛かった汚部屋だった。


 動画でも撮影したならモザイクが入るくらいの、華麗なる汚部屋である。

 その汚部屋の中心で、モザイクものの笑みを浮かべながら文庫本を読んでいる黒髪の、二十歳前後くらいの女性。

 その女性が振り返り、冒頭の言葉を述べたのだった。


 「ジュリさん、元気そうっすね」


 言いながら、エステルは上司であるその女性、ジュリを見た。

 特に、目。

 黒い瞳が、エステルを見返してくる。

 その瞳を改めて見て、思った。


 (レイの勘違いかとも思ったけど、言ってた通りだ。

 ジュリさんの目元、テツにすげえ似てる)


 「そりゃあ、元気にしてないと仕事できないし」


 「…………なら、なんで捕まったままなん?」


 「丁度いいから、どうやって部下が動くのか見て次のボーナス査定の参考にしようかと思って」


 「悪魔め」


 「使えない人材に投資するより、使える人材に餌まいた方がまだいいし。

 さて、と、で表が騒がしいのは、あのバカを陽動にでも使った?」


 ちなみに、今のジュリの格好だが、私服であり、寝巻き代わりのジャージ姿である。

 髪の毛も、とにかく面倒くさがったのか手入れされていないのか、ボサボサだ。

 フケがないところを見るに、風呂にだけはちゃんと入っていたようだ。

 いや、この様子からするに、転移魔法かなにかしらの方法でここを抜け出して、趣味の消化に勤しんでいた可能性が高い。

 エステルはその事を、わざわざ確認はしなかった。

 そのかわり。


 「まぁ、いつものように」


 疑問に対してそう返した。

 

 「それはそうと、他の人質は?」


 エステルの最もな疑問に、ジュリは答える。


 「あの人達が襲撃してくると同時に逃がしたよ」


 (ということは、やはり把握して今回のこと仕組んだのか、この人)


 そうでなければ、説明がつかないことが多い。

 たとえば、空からの規制だ。

 あれは迅速すぎるほどだったように感じた。

 被害も一般人ではなく、魔王軍関係者に集中していたし。

 むしろ、一般人の被害が全く無かったのだ。

 不幸中の幸いだ、と思ったが、これすらも仕組まれていたとするなら納得だ。

 

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