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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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 【ルリちゃん、ルリちゃん!

 いい報せと悪い報せがあるよ、どっちから聞きたい?】


 色々あって、先日友人となった少女、アストリアからそんなメッセージが届いた。

 厚かましくも頼んでおいたあのことを確認したのだろう。


 ゴクリ。


 緊張しつつ、【悪い報せから、お願いします】と、ルリシアは返した。

 待つ。

 ただ、返事を待つ。

 時間にして、一分も経たずにそれは返ってきた。

 あっという間だ。それでも、永遠に近いと感じてしまう時間だ。


 【悪いほうね。

 んーと、テツ君には好きな人がいるみたい。

 あと、今度の夏休みに友達の女の子、同じ歳くらいの子とあともう一人いるらしいんだけど、三人で旅行に行くみたい】


 男女で、お泊まり旅行。

 はしたないとは思いつつも、その意味がわからないほどルリシアも子供ではない。


 「…………」


 少しだけ、ほんの少しだけショックを受けつつも、ルリシアはさらに返信する。


 【で、では、良い報せは?】


 【テツ君の好きな人には、別に好きな人がいて、テツ君は告白する気が無いってことと。

 あと、今現在、テツ君には彼女がいないってことかなぁ】


 たしかに、それは良い報せだ。


 【まだまだチャンスはあるよ!頑張って!

 今度は、有名なチョコの詰め合わせよろしく!】


 そんな応援メッセージが添えられて、終わっていた。

 

 アストリアとの交流は、彼女の血筋故に許されている。

 ルリシアにとって、アストリアは彼との唯一の繋がりだ。

 ホテルからゴンスケによって、外へ運び出された後。

 ルリシアとアストリアは、アストリアの父の診察を受けた。

 その後、混乱する中二人は連絡先を交換し、少しの間、本当に少しの間だが交流を深めることができた。

 それから、その連絡先を交換したことが結局侍女にバレてしまったが、アストリアが留学中であるこの国の現王の孫ということもあり、やり取りが続いていた。

 そのやり取りの中で、二人は年頃の少女らしく恋愛関係の話に花を咲かせたのだ。

 その時に、ルリシアはアストリアに、テツへ想いをよせていることを話した。

 すると、アストリアはこう申し出てくれたのだ。


 『テツ君に恋人がいるかどうか確かめてみようか?

 お礼はウェルストヘイムのクラシックショコラ(チョコケーキ)で』


 と、返ってきた。

 願ってもない申し出だった。

 アストリアは、少し苦めの味が好みだと言うので、特別に王家御用達のお店で作ってもらい、保存用の魔法を施してもらってアストリアの家へ配送を手配した。

 こちらで出来た友人へのプレゼントだと、父親へメッセージを送ったのが功を奏した。


 アストリアに送ったものが届くと同時に歓喜のメールが、ケーキの画像とともに送られてきた。

 ずっと、こんな友人関係に憧れていたので、なんだか嬉しくてルリシアは少しだけ瞳を潤ませてしまったのだ。


 いや、正確には、あの頃に戻れたみたいで懐かしくなったのだ。


 王位継承権が繰り上がるまで、彼女は定期的に民間の学校へ通っていた。

 戦争が絶えなかったとされる時代ならまだしも、現在は、比較的平和だ。

 なので、他国へ友好の証として嫁ぐなどということは無い。

 そのため、ルリシアは帝王学と並行して、将来は降嫁することを踏まえた教育も施されてきた。


 学ぶことは多かったが、いずれ大人になった時の選択肢を増やすためでもあった。

 幼い彼女は、身分を隠して民間の学校に通っていた。


 でも、やがて起きた兄達の血なまぐさい兄弟喧嘩によって、彼女はその正体を明かすこととなり、もう顔もぼんやりとしか覚えていない当時の友人達との微かな思い出に蓋をして、今まで生きてきた。


 また遊びたくても、乳母である侍女やその他の教育係達に駄目だと言われ続け、ルリシアはいつしか諦めたのだ。

 何を、とは自分でもよくわからなかった。

 遊ぶことだったのか、せめてちゃんと()()()()を伝えることだったのか。

 

 あの日。ホテルの襲撃事件よりも前、テツに救われたあの日。

 テツはペットの話をしてくれた。

 他愛もない話だ。

 侍女も言っていた、ただの慰めだと。気を紛らわせる為だと。

 そんなこと、分かっていた。

 それでも、酷く懐かしくて、そして、彼は優しかった。


 そこに惹かれたのだ。

 そこを好きになってしまったのだ。


 懐かしい、諦めた何かを埋めてくれるような、そんな何かを感じてしまったのだ。


 「もちろんです」


 呟きながら、アストリアへのメッセージを打ち込む。

 そして、送った。

 彼のことは大好きだ。

 そして、彼との繋がりであるアストリアのことも、ルリシアは好きになった。

 ふつうの、懐かしくもあり夢見ていた友達として、ルリシアはアストリアのことが好きになってしまった。


 出来ることなら、ずっとこんなやり取りを続けたいと願うほどに。


 そんな微かな希望くらいあったって、良いじゃないか。

 だって、ここは、ルリシアの周りは、王様になることが決定してから今日まで、ずっと、いつだって。


 「少し、息苦しいんだもの」


 周囲を見る。

 ここは、学食だ。

 貴族の派閥によるグループがいくつも形成されている。

 交流が許されている、いわゆるご学友の一人である少女に、呟きが聴こえていたのだろう、首を傾げながら訊ねられた。


 「どうかなさいましたか? ルリシア様?」


 「いいえ、こちらのことです」

 

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