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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
なんかトラブルに巻き込まれた件
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 ニュースは連日大騒ぎだった。

 何しろ、有名優良企業の一つだと言われていた、魔法杖メーカーの跡取りがテロリストに加担しており、さらに隣国の王族への危害が目的だったとわかったのだ。

 現在、その企業を経営していた一族は国家反逆罪に問われている。

 表向きには、当日その王族はホテルにおらず、さらにたまたま居合わせた過去の英雄によって人質は無事全員解放されていたことになった。


 嘘の中に本当を混ぜると信ぴょう性が増す、アレである。


 ただ、その英雄は、表に出てくることを好まなかった。

 人質救出に協力したと言われている、彼の家族についても情報操作がなされ、国としても便宜を図ったらしい。

 一つ、問題があったとすれば、隣国の姫君と王族からは外れたもののその血筋を受け継ぐ少女を檻に入れて雑に扱ったことだった。



 「いや、その件は本当に申し訳ございませんでした」


 国家間の話し合いをするから、当事者が来て両者に改めて今回のことを報告してくれと言われてしまったら断ることなんて出来ないだろう。

 ちなみに、ゴンスケはお留守番である。

 俺は、あの鬼婆ーーじゃなかった。

 あの、おっかない侍女さんとルリシアお姫様、それと隠密護衛と呼ばれる黒装束の人達三人を前に、ルリシアお姫様とアストリアさんの両者を檻に入れて救助した件について問われた俺は、父からも以前お褒めの言葉を賜った土下座を披露していた。

 場所は、アストリアさんのお母さんの実家、つまりは俺が生まれた国を治める王様がいるお城、その一室だ。


 たぶん、会議室。


 というか、生きてたのか。良かった良かった。

 やっぱり、途中で鬼婆、じゃなかった。侍女さんとルリシアお姫様ははぐれていたらしい。

 その過程で、ルリシアお姫様を護衛していた隠密護衛さん達は命を落としたのだとか。

 今この場にいる隠密護衛さん達は、新しく呼んだ人達らしい。

 人質は全員助かったけれど、陰で働いていた人達は犠牲になったのだという。

 事務的に淡々と告げられたそれは、きっと業務連絡のようなものなのだろう。

 

 「あのウルクの倅と言うから、どんな者かと思ったが」


 俺のおデコは、今現在、この会議室の床と濃密なキッスをしている最中なので、王様がどんな顔でそんなことを言ったのか分からない。

 ちなみに王様は、マッチョメンの爺さんだ。

 テレビで見るよりも筋骨隆々(ムキムキマッチョメン)である。

 この国の王様なんて、テレビの中でしか見たことないのに、なんで俺こんな所にいるんだろ、ほんと。

 やっぱり、処刑されんのかな?

 あー、今期の深夜アニメまだ一話しか見てないのに。

 ずっと追いかけてるラノベもあと一巻で完結だったのになぁ。

 死にたくないなぁ。

 夏には、特撮の映画もあるし。

 今年はお金もあるし、舞台挨拶も見に行けるかなって思ったんだけどなぁ。

 姉に埋められる前に、公的に死ぬのか。


 「あのー、もしもし? ウルクの倅さん?」


 王様の戸惑ったような声が聴こえた気がしたが、正直死ぬならどうでも良かった。


 …………旅行、行きたかったなぁ。


 縛り首も、火あぶりもやだなぁ。

 斬首も勘弁してほしい。

 電気椅子も嫌だ。


 うぅ、死にたくないなぁ。


 「え、寝てる? これ、もしかして寝てる??」


 罪状を読み上げられて、終わったからか、俺の反応がないせいで、王様は戸惑いの声を漏らした。


 「あ、あの、テツさん? テツさん??」


 ルリシアお姫様の声も聴こえたが、うーん、顔上げて良いのかなぁ?

 と、こちらへ近づく足音に気づく。


 「テツ君、そんな怯えなくて良いから顔上げて」


 そんな優しい声は、アストリアさんのお母さんだった。


 「誰も怒ってないから。お話を聞こうとテツ君を呼んだのはこっちだから、ね?

 ほら、美味しいお菓子とお茶も用意したから、食べながらお話聞かせてほしいな。

 テツ君のお父さんからは別室でお話を聞いてるから、帰る時は一緒だからね?」

 

 「は、はい」


 父さんも呼ばれてたのか。

 というか、別部屋で話きかれてんのか。


 「お姉さんにも、後日お話聞くしね。

 とりあえず、あの日、テツ君に何があったのか教えてほしいの」


 優しく諭され、席へ案内される。

 促されるまま、席に座ると、湯気のたつお茶が出された。

 そして、俺は質問されるがまま答えていく。

 時折、ルリシアお姫様へ確認をしつつ補足が加えられながら話は進んでいく。

 あのエロい格好をしたお姉さんに絡まれた動画も見せたりして、話は進み。

 そして、


 「ウルク殿から、倅――――テツ殿が関わってることは公にしないでほしい、と言われている。

 しかし、この国と隣国ウェルストヘイムは数度、救われたことになる。

 必要以上の情報は流さない、個人情報も守ると約束する。だが今回の件に関して人質を無傷で救出したこと、さらに孫娘と隣国の姫君の命を救ったことに対して褒美を与えた、ということは公式発表することを許して欲しい。

 そうでないと、国民へ示しがつかないのだ」


 これ断ったら、あの筋肉が牙を向くのかな?

 それは、嫌だな。

 いや、痛くはないだろうけど、なんか嫌だな。


 「わ、わかりました」


 褒美の内容、ってそう言えば何だろ?

 ルリシアお姫様からは勲章と感謝状と、あと父の就職活動に関することだったし。

 とりあえず、まぁこれで、この騒動は終わったってことで良いのかなぁ。

 処刑はないみたいだし、早く帰って期末テストの勉強しないと。

 中間受けれなかったしなぁ。頑張らねば。

 

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