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さらに、翌日。
俺は父に連れられ、ギルドへ登録にやってきた。
冒険者、と呼べば一部には聞こえは良いが、その実態は人材派遣業者である。
仕事内容は様々で働きに応じて階級もあるのだとか。
本当に雑用から、公的機関からの極秘依頼まで様々らしい。
ちなみに、【人材派遣の〇〇】という呼称よりも【冒険者ギルド】の方が依頼が来るらしい。
ゴンスケの餌代くらいだったら、農家への手伝いか業者が練度の問題で入れない下水道の奥まで入って、巣を作っている魔物の駆除(かっこよく言えば討伐)、あとは、やはりそこそこ強力な魔物がいる森や山などでの薬草等々の採取などがあるらしい。
「ほい、これうちの戸籍謄本。受付でこれ出して、登録したいんですけど、って言えばいいから」
雑すぎな説明だ。
「わかった」
父はさっさと、建物の奥へ歩いていく。
そこは、ネカフェのように薄い板で仕切られたパソコンルームだった。
どうやら、あそこで仕事を検索するようだ。
俺は受付へ向かい、父に言われた通りに、
「すいません。登録したいんですけど」
と、受付嬢のなんというか横に広いお姉さんに言って、戸籍謄本を渡した。
少しキツめというか、強そうな女性だ。
すると、
「登録?」
何故か睨まれた。
そして、ジロジロと頭の先から爪先まで見られて。
「あんたみたいなヒョロいやつができる仕事なんてないよ」
戸籍謄本を突き返され、まるで汚いものでも追い払うかのように、手でシッシッとされてしまう。
「え、でも」
「何度も言わせるな。ここは子供の遊び場じゃないんだ」
「登録出来ないんですか?」
「しつこいね。出来ないものは出来ないんだよ!」
何をカリカリしてるんだろう?
「えっと、何故なのか教えてもらってもいいですか?」
「そりゃあ、ステータス表示の出てない人間なんて怪しいからね。信用できないからさ。それに、そういう隠し事をする輩は貧乏人の犯罪者ってきまってるんだよ」
決まってるんだ。
「わかったらとっとと帰った帰った」
「…………」
いや、確かにうちは裕福ではないけど、こういう差別ってたしか違法だったはずだけど。
まぁ、いいか。
別のバイトでも探そう。
「なに、言いたいことがあるならはっきり言いな」
「いえ、別に」
俺は、父を探しに行こうと体の向きを変えた途端。
けたたましい音が鳴り響いた。
そして、どこからともなく警備員さん達が出てきて、あっという間に床に押さえつけられてしまった。
「???」
「大人しくしろ!」
訳が分からず、俺は警備さん達を見る。
警備員さん達は、受付のあの女性から事情を聞いている。
ちなみにさっきのクソうるさい音は警報音だったようだ。
「ええ、そうなんです。
登録できないとわかると、急に怒り出して検索室へ行こうとしたんです。
ステータスの表示もないし、泥棒に決まってます!!」
ヒステリックに言われるが、俺は冷静に事実を告げる。
「…………いや、一緒に来た父があそこにいるので探そうかと思って」
「絶対に嘘です! こんな犯罪者の父親なんて仮にいたとしても碌でもない人間に決まってます!!
早くつまみ出してください!!」
警備さん達に無理やり立たされ、奥の部屋に(たぶん、事務所か警備室)強制連行されそうになる。
と、そこで父が戻ってきてくれた。
「あのぅ、すみません。ウチの子が何かしましたか?」
鋭い眼光で警備員さん達が父を見る。
受付嬢もだ。
しかし、父を見るやいなや、空気が変わった。
なんというか、戸惑いによるざわつきが大きくなった。
「なんの騒ぎだ」
と、今度は熊みたいな、ごついオッサンが現れた。
「あ、カリエルさん。お久しぶりです」
熊みたいなオッサンに、父がペコリと頭を下げる。
「え、お前、まさか!?」
ごついオッサンが父を見て、あからさまに驚いた。
なんだ、父さんの知り合いか。
「魔神殺しのウルクか??!!」
さらにざわつきが大きくなった。
父さん、今は普通だけど、学生時代にヤンチャしてたのかな?
ちなみに、ウルクというのは父さんの名前である。
「あはは、懐かしい呼び名ですね~。でも、この歳で呼ばれると恥ずかしいですね」
頬をポリポリ掻きながら、父が困ったように返した。
警備員さん達から、『あの英雄の?』とか『うわ、俺ファンなんだよ』とか『サイン貰おうぜ、サイン』とか、なんかミーハーな言葉が聞こえてきた。
俺は未だに取り押さえられたままだ。
そんな俺に気づいた父が不思議そうに、その場の全員へ訊いた。
「それで、ウチの倅が何か?」
あれ?
父さん、顔は笑ってるのに目が笑ってないな。
珍しいな、怒るの。




