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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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――――――……


 規則的な揺れのあとに不規則な揺れが続いた。

 一瞬、大きくガッタンと揺れて、俺は目を覚ました。

 車の助手席、その窓に顔を押し付けて寝ていたようだ。

 差し込む太陽が眩しい。

 

 「あ、やっと起きた」


 運転席から姉の声がして、俺は目を擦りながらそちらを見た。


 「……あれ?」


 「おはよ。

 あんた覚えてる?

 【白い家】の中でビビり過ぎて気絶したんだけど」


 「え、まじ?」


 「嘘言っても仕方ないでしょ」


 姉は、車のハンドルを握り前だけを見て返してきた。

 と、後部座席から寝息というかいびきが聞こえてきて、俺はそちらを見た。

 すると、人間バージョンのゴンスケが大きな口をあけ、涎なんぞを垂らしながら豪快に寝ていた。

 また、ガッタンと車が揺れてゴンスケも目覚める。

 寝ぼけまなこで、キョロキョロと周囲を見て俺に気づくと飛びかかろうとした。

 しかし、シートベルトで拘束されているのでそれは叶わなかった。

 というか、一瞬シートベルトに魔法陣が浮き出たような。


 「千切れたらまずいから、シートベルト強化しといた」


 とは、姉の言葉だ。

 やっぱり魔法、便利だな。


 「あ、これ勝手に改造したようなもんだからお父さんには内緒ね。保険、切れるから。

 あとでちゃんと証拠隠滅するし」


 怖いこと言うな。

 それと才能の無駄遣いすぎる気がするが、うん、気のせいだな。

 ゴンスケが邪魔臭そうにシートベルトを弄っていたが、ふとその手が止まる。

 そして、キョロキョロとまた落ち着きなく周囲を見まわしたかと思うと。


 「ぎゃうるるる~? ぎゃうっ! ぎゃうっ!」


 と、何かを伝えようとしているのか鳴きはじめた。


 「どした?」


 俺の質問に、身振り手振りで説明してくるもさっぱりだ。

 しばらく、ゴンスケは尻尾をペチペチしながら考える素振りをして、やがていつものようにその尻尾を変形させて人形劇のようなものを見せてきた。


 「なんだ?」


 それは小さなトカゲが、人間らしきものと出会って家の中に入って探索するという内容のものだった。

 途中で人形が増えた。

 バックミラー越しにそれを見ていたらしき姉が、呟くように言った。


 「夢の内容じゃない?」


 「ぎゃっ?! ぎゃうっ! ぎゃううるるる~!!」


 違う違うと、ゴンスケは否定しているようだ。


 「ドラゴンでも夢見るんだな。

 それも明晰夢」


 ゴンスケが、ちょっと心外だみたいな表情をして人形を消してゴンスケは尻尾を後部座席に叩きつけた。


 「夢じゃないとしたら、私らが【白い家】に入ったあと、出たのかもね」


 姉がなんてことないふうに言った。

 ゴンスケのことを信じるなら、幽霊が出たんじゃないか、そう言った。


 「ゴンスケ、幽霊見たのか?」


 ゴンスケは、え? というふうに固まった。

 姉が追撃する。


 「生きてる人間だったなら何か物証があるはず。

 ゴンスケ、その出会った人から何か貰わなかった?」


 姉の言葉にゴンスケは、自分の着ていた服を捲りあげた。

 何かしら、そこに痕のようなものがあると確信していたようだが、俺から見ても無かった。

 下着姿のまま、ゴンスケが首を傾げる。


 「私が気絶したあんたを連れて家から出た時、ゴンスケ待ちくたびれて寝てたし。

 やっぱり夢じゃないの?」


 まぁ、変身した姿とはいえ、肌に何やら痕のようなものがあったらそれはそれで大問題だとは思うが。

 少なくとも、知らないとはいえ正体がドラゴンの幼女に手をだしたということになる。

 物証がない以上、やはりそんな変態はおらず、ゴンスケの夢だったということになる。


 「ぎゃう、ぎゃうるるる」


 ゴンスケは納得できないとばかりに、鳴いた。人間の言葉にするなら、でも、でも、と言い募っているところだろうか。


 「あ、そうだ」


 姉が思い出した、と言いながら俺の携帯を寄越してきた。


 「その携帯、家に入る時に落として壊れたみたいだから、朝ごはんどっかで食べたあと、ついでにショップ寄ってあげるから、修理の依頼だしてきな」


 言われて、確認のために電源を入れようとするがつかなかった。


 「わかったよ、よろしく」


 結局、俺の嫌な予感は杞憂だったようで、姉が受けたこの妙な依頼は完遂することが出来なかった。

 まぁ、肝試しでもしたと思っておこう。


 夏休みも終わるし、学校はじまるのダルいなぁ。


 夏休み、永遠に続けば良いのに。



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