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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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 「どゆこと?」


 聞き流しているのがわかると、後が怖いので、俺は適当に聞いてみた。


 「なんでわざわざ過去世界なのか?」


 姉が、返す。


 「人の手が加わってなければ、それこそ掃除をした形跡がなければ、疑問を持たないんだけど。

 どうしても、ねぇ。

 ほら、何らかの形で突然の死を迎えた人の遺族って、あくまで例えばだけど。

 その人と同居していたなら、部屋を生きていた頃と同じように保つことがあるじゃん。

 これって、まぁケースバイケースなんだけど、魂が迷うから良くないって考え方がある。

 迷うし、現世に囚われるから。あちら側に行けなくなる」


 探索した結果。

 それを絡めて、姉は言う。

 家の中には他のクリーチャーはいなかった。

 そして、俺も気配を探ってみたが、死んでいる存在の気配は全く無かった。

 先程、姉が蹴飛ばした男は幽霊やお化け扱いではなく、どうやら生者の部類にカウントされるらしい。


 「つまり?」


 俺は先を促す。


 「つまり、幽霊達に勘違いさせるか、居心地よく感じさせるにはちょうどいい環境ってこと。

 幽霊には現在の法律が適用されないし」


 「?」


 「あくまで、ここが今でも使われている前提で妄想をはなすけど。

 非人道的な実験をしても、問題にならないってこと。

 当事者達は死者なわけで、そもそもここに隔離されてた可能性がある。

 死後も続く実験なんて、ほんとおぞましい」


 「…………」


 「とりあえず、ここ、調べてみようか?」


 家中を探索して、最後に残った場所を、姉は見つめた。

 その先には、隠し階段。

 どうやら、地下へ続いているようだ。


 「姉ちゃん、あのさ。

 一つ、聞いていい?」


 さっさと進もうとする姉へ、俺は湧いてきた疑問をぶつけてみることにした。


 「何?」


 「姉ちゃんは、なんでそこまで行動できるの?」


 「?」


 「ほら、俺みたいな魔力ゼロの差別や偏見が異様って、言ったじゃん?

 なんで、そこまで興味持てるの?」


 「それ、アンタが聞く?」


 「…………」


 「アンタだって、それなりに執着してるもんあるでしょ。

 それと同じ。

 それに、たぶん、大人になったらこういうこと出来なくなると思うし。

 なんにもしないままで、あとになって、大人になってから、やっておけば良かったって思いたくないからさ」


 姉は、すでに成人している。

 だから、大人のはずだ。

 

 「そうなの?」


 「アンタは、だから、旅行に行ったんじゃないの?

 史跡巡りとか、好きでしょ」


 「…………俺には無理だよ。

 行きたいとこに行くなんて、無理だ。

 こうして連れてきてもらわないと、どこにも行けない」


 「だから、外に出ろって言ってんの。

 自分の足で動かないと、行きたいとこに行けない。

 当たり前じゃん」


 姉には、わからないのだ。

 その当たり前が、俺にとってどれだけ難しいか。

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