69話 臨時パーティの初陣
翌日になりました。
世界樹を去ったあと家に戻ったが、ホープとマナは戻っておらず、なんなら昨日は家に戻ってきていない。
「タクマおはよう」
リビングにいたタクマに、ボサボサの髪で挨拶をしてきたのはコガネさん。
「おはようございます、いつもながら凄い寝癖ですね……」
一体どんな寝方をしたらこんな戦場跡地みたいな髪になるんだろうか。
「取り敢えずシャワー行って来てください。そんな髪じゃ外の歩けないですよ?その間に朝ごはん作っちゃいますね!」
「ん」
ゆらゆらとリビングから出ていった。
「……はぁ」
果たして今、普段通りに出来ていただろうか。
2人はどこ行ったのだろうか。
あんなに強い2人だから、簡単に魔物とかに負けることはない。
でも、流石に心のダメージは心配になる。
普段からしっかり振舞っていても、心は意外と脆かったりするんだな。
「って、ネガキャンストップ!」
両手でほっぺを叩き、
「今日から大事な依頼が始まるんだ!雑念は不要!」
いつのまにか下向いていた顔を持ち上げる。
「不安?」
「うぉ!?ってコガネさん、髪ボサボサー」
「私だけじゃ、不安?」
「っ!?」
無理矢理覆い隠してた感情を見られたようで、コガネの声が心を突き刺した。
「申し訳ないのですが、正直不安です。今までどれだけ2人に頼りっぱなしだったのかよくわかります。勿論、コガネさんは頼りにしてますけど…」
「だよね、私も不安」
「「……」」
昨日は何も感じなかったのに、今日になって突然、2人がいない恐怖感に襲われ始めた。
それは多分、コガネも。
「なになに!空気重いね!」
そんな気不味い空気を壊したのはシルフィ。
「どこから入ってきたんですか?」
「お姉さんの部屋の窓!」
「不法侵入」
「じゃあ外に追い出したら?」
「……」
おぉ、シルフィがコガネさんを黙らせた。
「そういえば、何しにきたんですか?」
「ん?お母様が、2人の様子ちゃんと見てあげてって言ってたから、見にきた!」
「はは、なるほど」
ドライアドめ、にくい事してくれたじゃないか。
「あと伝言も預かってきた!2人の依頼が終わったら、世界樹地上に出すから、それまでちゃんと生きてなさい!どこにいても見えるって言ってたけど、あの世にいちゃ何も見えないでしょ?って!」
「はは、これは生きて帰らないとですね!」
「……」
一方コガネは沈黙。
「コガネさんびびってます?それとも今日ホープさんに相手してもらえなくて寂しいんですか?」
「なっ、違っ!?」
「どんだけピュアな反応してんですか。ってかそうゆう意味で言ったわけじゃないのに何でそうゆう解釈したんですか?」
タクマが呆れながらぼやくと、懐からスッと杖を取り出してきた。
「嘘です!冗談です!」
「全く……お風呂行ってくる」
頬を膨らませて睨んでいたが、視線は全く痛くなく、むしろ少し笑っていた。
「なんか、良いですね!」
シルフィは昨日からそれしか言ってないような気もするが、タクマは自慢げに、
「良いでしょ?」
と返してみせた。
3人との話し方や関わり方は違えど、やっぱり仲間なんだなって思わせてくれている。
「さて、コガネさんが戻ってきたら朝ごはん食べて、とっとと依頼済ませちゃいましょ!」
「お兄さん」
「勿論シルフィの分もありますよ!朝ごはん!」
「やった!」
◯
朝ごはんを食べ終え、各々戦える装備を整え、ギルドに着いた。
「おはよう、思ったより来るの早かったね」
出迎えてくれたドライアドは緊張のせいか、少し声が強張っていた。
「おはようございます!伝言しっかり受け取りました!」
「おはよう、ドライアド緊張してる?」
そんなドライアドを蹴飛ばすような声で2人が明るい声で挨拶をすると、
「うん、さっきまでしてたけど、大丈夫そうだね!」
いつものゆるくも優しい声のドライアドに戻った。
「簡単に説明するね!そこに魔法陣あるでしょ?」
まさにギルドのど真ん中に、1つ2人がギリ入れそうな大きさの魔法陣があった。
ちなみにシルフィが手の平サイズだからそこは問題ない。
「その魔法陣に入って私が起動すると、2人が現れた場所に転送できる。正直いつどこに現れるかわからないから、現れた瞬間に転送することになる。だから、今のうちに身体動かせる状態にしておいてほしい」
「「「はい」」」
「取り敢えず、それまでは自由にしてていいけど、あんまりうるさくすると集中力切れちゃうから、そこはお願い!」
両手を軽く合わせ、ついでにウインクもして、椅子に座って瞑想し始めた。
「おー、光ってる」
ドライアドの身体が薄く緑色に光っている。正しく瞑想って感じだ。
「お母様は、ああやって森全体を見張ってるんだ。物凄い集中力が必要だから1ヶ月に1回もやらないんだけど、今回は流石にね?」
シルフィは憧れと心配を込めてドライアドに視線を送っていた。
「それくらい、今は森の危機に扮してる」
「はい……」
楽観視いていたと言えば嘘になるが、2人思っていた以上に、この森は今ずっとずっとやばい状態らしい。
コガネの声音がそれを教えてくれた。
「……」
「不安?」
どうやらタクマの表情がかなり険しい事になっていたらしく、コガネが声をかけてきた。
「正直、結構不安です。僕らにこの森の運命握らせていいのかなって」
自分では大げさな言葉だなって思うが、むしろ事実からしたら相当控えめな表現だろう。
「タクマ、1ついいこと教えてあげる」
「なんですか?」
「タクマ、実は結構強いよ。ヘビーナイト行ったら準エースになれるくらいには」
「……マジ?」
「マジ。ドライアドの言った通り、経験が足りないだけで、焦らず戦えば負けない」
「……」
そう言っているコガネの手は強く握られており、震えていた。
「はは……」
「……?」
「コガネさんだって不安なのに。自分で僕がしっかりしなきゃって言ってた癖に、助けられてばっかり」
「ん?」
漏らした声はコガネには聞こえなかったが、
「いつも本当にありがとうございます!」
「ん」
精一杯、感謝の笑みを浮かべた。
「大丈夫です、昔みたいに、1人でなんとかしようとしてた僕じゃない。今はコガネさんとシルフィがいますし!経験差くらい得意の不意打ちで埋めますよ!」
「悪だね」
「そりゃ子供ですから!」
いつもの調子が戻ったタクマを揶揄うように笑って見せた。
「みんな!2人を見つけた!」
緩い空気から一転、一気に空気が張り詰めた。
「魔法陣入って!直ぐ転送するよ!」
「「「はい!」」」
言われるままに2人で魔法陣に入り、シルフィはタクマ肩にちょこんと座った。
「準備はいい?」
「「「はい!」」」
「僕らが帰ってきたら、ホープさんとマナさん引っ叩いてやらんとですね!」
「あと、ドライアドに何か奢ってもらう」
「お母様!世界樹地上に出すの楽しみにしてる!」
3人で軽口を叩き合い、
【私の見る世界に彼らの姿を映し出し、その地に君臨せよ、テレポーテーション】
1つ詠唱を唱え、
「生きて帰ってきてね」
たった一言、それが全てと言わんばかりの言葉を託し、3人はギルドから姿を消した。
◯
「この辺りだろう」
「本当に?」
「間違いない」
木々以外何もないところで、2人の仮面は足を止めた。
「本当にここなんです!?」
「間違いなくここだ」
辺り一体は、なんの変哲もない木々。
「木を隠すなら森の中とは言うけど、封印は別に木製じゃないんだよな?」
「当たり前だろ、何言ってんだお前?」
赤仮面は、まるで信じていない様子。
「というか、逆になんでここって確信してるの?」
「それは……待て!?誰かくる!」
「へ?」
青仮面が不意に後ろを振り向き、赤仮面も一緒になって振り向くと、
「まぁ、この緊急事態、流石にドライアドが動くよな」
そこから2人の少年少女と、1匹の妖精が現れた。
「初めまして、でいいのかな?」
3人を見据えて赤の仮面が拳を握り、いつでも戦えるよう構えた。
「初めましてであってるよ」
コガネは杖を構え、魔法陣を生成し、1歩後ろに下がった。
「ついでにどちらかがさようならですね!」
タクマも剣を抜き、1歩前に立ち、剣を構えた。
「森を荒らす不届き者!許すまじ!」
シルフィはタクマの肩から飛び上がり、コガネの横に並んだ。
「そっちの男性はお久しぶりだね?」
青仮面はタクマを見て、戯けて手を振った。
「出来れば2度と会いたくないね」
「タクマ、何するかわかんないけど、絶対止めるよ」
「はい!」
そして戦いが始まる。




