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67話 子供な2人


「そんな事があったんですね……」

 3人の過去の話を聞き、なぜホープが今回の依頼に激怒したのか理解できた。


「リラの事を思い詰めちゃってね。リラが死んでから暫くは、マナもホープも上の空。一時は解散なんて騒がれてたね」

 懐かしさと苦しさを同時に味わうように淡々と話すドライアド。

 いつのまにか煙草のような何かを咥えている。


「人を殺すのが、自分を殺すほど追い詰める的なやつですか?」

「違うよ」

「え?」

 タクマの呟きはドライアイによって否定され、

「あれは、呪いだよ」

「呪い……?」

 この世界では聞きなれない言葉を耳にした。

「そう呪い。魔法と違って、特定の言葉と代償を媒介とする、厄介極まりないものだよ」


 確か魔法は、イメージしやすい自由な言葉と魔力が必要だ。


 完全に、魔法とは対の存在だ。

「リラは呪いによって殺された。それを2人ともわかってるんだけどね……」

 それでも、リラが少女を殺した自責の念で後を追ったと感じてしまうのだろう。

「そりゃ、人殺しの依頼を嫌がるわけですわ……」


「でも、そのあと私が無茶したせいで再結成」

「コガネさんのその言い回し、嬉しいのか嬉しくないのかわかんないですよ……」

 声音的に嬉しいんだろうけど、言葉が噛み合っていないよな。


「で、その無茶の内容は?」

「私が1人で依頼こなそうとして死にかけた」

「めちゃくちゃ無茶したじゃないですか……少し前の僕と同じことを……」

「でも、そうするしかなかった」

「その理由は聞かなくてもわかります」

 無理矢理にでも、リラさんが死んだ事から意識を逸らして、助け合わないといけないと思い出させたのだろう。


「なんというか、子はかすがいですね」

「タクマ、私の事子供って思った……?」

 ムッとした顔で睨んできたが、

「思いましたよ!とびきりいい意味で!」

 そんなコガネにとびきりの笑顔で返した。

「なんか不愉快」

「いやなんで?」





「さて、問題は2人をどう説得するかですよね?」

 2人がこの依頼を嫌がるのは重々理解できた。

 しかし、理解出来ただけで、テコでも動かない程にこの依頼やらないだろうという事も理解出来た。


「また無茶する?今度は私とタクマで」

「……正直あり」

 2人で妙な目配せをするが、

「絶対なし!君達失ったら今度こそマナとホープが壊れる!」

 ドライアドが思い切り横槍を入れてきた。

 まぁ確かにタクマとコガネが死んで、マナとホープ壊れたら、実質造花全員を失った事になる。


 結構痛手だよな。


「じゃあどうするんですか?」

「最悪、他のパーティに依頼するけど……」

 ドライアドが渋っている。何か不満があるのだろうか。

「絶対無理、私たちじゃないとこなせない」

「そうゆう事」

 コガネがドライアドの言いたいであろう事を言い切った。


「え、なんで僕たちじゃないと無理なんですか?」

「君達じゃないと2人の仮面に勝てないからよ」

 煙草のようなもので2人を差した。


 行儀悪いですよ……。


「でも、人数いればそれなりに戦えるんじゃないですか?」

「戦いにおいて質は量に勝るのよ!どれだけ頭数を揃えても、強者の前には無意味なの。ゴブリン100匹揃えてもホープやマナ1人に勝てないのと一緒!」

 ものすごくわかりやすい例えだが、ホープやマナがどれだけやばいかも理解で出来た。


 タクマはでかい奴1匹倒すので精一杯だったのに。


「そう考えると、3人は強いけど、僕足手まといになりそうだな……」

「謙遜するね?君も充分強いよ?」

「いやどう考えても僕は弱いですよ……」

「ホープとマナを基準にするから弱く見えるのよ、2人は桁違いだから。それに、君の場合は強さ云々もだけど、1番は魔力だね?」

「魔力?」

「そう、だって君全属性使えるでしょ?それに固有魔力は相手の魔法を通さない破壊ときた。剣士だから自覚ないかもしれないけど、結構化け物だよ?」

「……」

 そうだった、あまりにも魔法使ってなかったから忘れていたが、タクマは全属性使えるんだ。


「自分で言うのも変だけど、そりゃ僕も化け物だわ」

「だから、誇張抜きで、君達以外に頼れる人達がいないんだ」

 真剣な眼差しで2人を見てくる。

「とはいっても、僕たちに決定権はないですもんね……」

「2人からしたら、私たちはまだ子供みたいなもの」

「だから2人をー」

 両手を合わせて頭を下げるが、

「説得は絶対無理」

「やる前からー」

「やる前から決まってる。こればかりはホープも折れない」

 ドライアドの言いたそうな事を先回りして全て跳ね除けてしまった。


 当然だが、2人で依頼を受けるわけにはいかない。かといって、2人が折れないのは今の会話で分かった。


「……あ!」

「どうしたタクマ」

 妙案を思いついてしまった。


「コガネさん、パーティって自分がメインで所属している所以外にも所属しても大丈夫ですか?」

「大丈夫、そうでなければリラとマナはザザたちを手伝えてない……あ」

 どうやらコガネさんも気付いたらしい。


「シルフィいる?」

「いるよ!どうしたお兄さん!」

 正直いると思っていなかったが、ギルドの奥から出てきた。


 準備がいいね。


「冒険家、興味あるんですよね?」

「あるよ?」

「コガネさん、3人だった頃前衛やってたんですよね?」

「名目上、やってた」

 これでタクマとコガネが前衛、シルフィが魔導師の後衛。


「ドライアドさん!」

「何?」

「この3人でパーティ組みます!」

「……そうきたか」

 リラを失った時のコガネがやったような無茶は出来ない。


 それにまたそんな事したらコガネが怒られる。


 なら、タクマとコガネとシルフィの3人で、正式に手続きを踏んでパーティを組めば、ドライアドに止められる事なく、2人はいずれ2人を助けるために動かざるを得ない状況に押し込まれる。


「正直ダメって言いたいけど……」

「でも、君たちしか頼れない!って言ってた4人の内2人もこのパーティにいるんですよ?」

「……確かに、タクマもコガネも、今フォレストにいるどの冒険家より強い。全員奥に来て」

「よし」

 ドライアドは簡単に折れてくれた。


「タクマって意外と悪知恵回るね」

「子供は親の目を盗んで悪いことするのが得意な生き物ですからね!」

 今まで殆どマナとホープとしか関わっていなかったが、案外コガネとも合うかもしれない。


 お互い清々しい軽口を叩き、ギルドの奥へ向かった。





「はい、これ書いて」

 ドライアドから渡されたのは、いわゆる契約書。

 名前を書いて印鑑押して!の印鑑の部分が魔法に変わったようなやつ。


「自分で提案しといてなんですが、本当に良いんですか?」

「よくないよ!そもそもこの依頼は、一定の実績と信頼と正義感を持ち合わせているパーティに対してしか有効じゃないんだよ!」

「じゃあダメじゃないですか!」

 思い切りタブー犯してませんか?


「本来はね?でも、造花のメンバーが2人もいるパーティを作っちゃったから、ある程度の信頼と正義感が保障されちゃう!例えそれが入って間もない新人でもね?ちょっとしたルールの抜け穴よ!」

 鼻高々に語っているが、本当にルールの抜け穴上手に掻い潜ったんだな……。


 この人も案外、悪知恵働くね。


「というわけで、臨時パーティ結成!パーティ名は臨時パーティ!」

「まんまですね」

 なんの捻りもない。

「どうせ直ぐ解体するんだし、なんでもいいでしょ?」

「まぁ……ってかドライアドさんがパーティ名つけたんですか?」

「そうよ?悪い?」

「……」

 いや悪いだろ……って言いたいが、無駄に凝って時間費やして解体を惜しむよりずっとマシか。


「そんな事どうでもいい。2人の仮面はどこ?私たちは何をすれば良い?」

「!?」

 あのコガネさんが淡白な口調じゃない。今は本当に2人以外の事はどうでもいいらしい。


「具体的な場所はわかってない。神出鬼没な奴らでね、転々といろんな所に急に現れる感じ?でも、奴らの現れた所に必ず、大型の魔物が出現しているんだ」

「昨日のあのドラゴンみたいなやつですか?」

「あれは特別やばかったけど、似たようなものね。君たち以外の冒険家は今必死にその対処に当たってる」

 どおりでギルド内が4人しかいないわけだ。

 昨日一昨日空っぽだった掲示板は、片手じゃ数えられない程に増えている。


「大型の魔物なんて、どうやって操ってるんですかね?」

「言霊の魔力だね、あれは一度魔法発動すれば、言霊の魔力が切れるか、魔物が死ぬまで有効だから、とんでもなく厄介だよ」

「知っているかのように話すね」

 コガネがドライアドを睨むが、

「そりゃ知ってるよ、奴らの目的がわかったから前の依頼なしにして彼らを殺してほしいって頼んでるんだから」

 成る程、確かに同時並行って手段とかもあったはずなのにわざわざ破棄したのは、彼らが何をしているのか理解したからなのか。


 となると、

「目的?ってなんですか?」

 そっちが気になる。


「彼らの目的は、ユグドラシルを目覚めさせる事だよ」

 ドライアドさんは、吸い終えた煙草のようなものに憎しみを込めて、ゴミ箱に放り投げた。

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