表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/92

65話 過去 造花編3


 先に仕掛けたのはモブキャラの青年だった。

 人質を抱えたままマナに刃物を向け突進するが、

「遅い!」

 くるりとかわし、

「リラ!」

「おっけ!」

 後を向いている隙にリラが青年との距離を一気に詰め、刃物を持っている手を掴もうとするが、

「ー!?」

 人質の少女を盾にされ、手がすくむ。


「あれぇ、威勢よくかかってきたのにそんなものぉ?」

 心底楽しそうに煽るが、

「本命は私【逆風】」

 その背後からマナが詠唱を済ませた魔法を刃物を持って手に目掛けて放ち、

「っ!?」

「はい没収!」

 手放した刃物をマナが拾い上げ、


【灼熱の魔力よ、この刃物を焼き尽くせ、バーン】


 と詠唱を唱え、刃物が炭へと変わった。


 しかし、

「残念、これで終わりじゃないんだよぉ?【影の魔法よ、作り上げた形を実体化せよ、影絵】」

 詠唱を唱えた途端、青年の手元に真っ黒の刃物が現れ、再び少女の首元にその刃物を突きつけた。


「マナ、これどうする?あの子を手放さない限り永遠に命の危機っすよ」

 恐らく無限に刃物が湧き出るのと等しい状況だろう。

「なら、あの子が殺される前に終わらせればいい

【炎よ、眼前の敵を撃ち貫け、フレアショット】」


 魔法陣を生成しながら詠唱を唱え、炎の弾丸が青年の額めがけて撃たれるが、

「痛っ!?」

 の一言だけで終わり。

「嘘でしょ….」

 渾身の一撃でもなんでもないが、意識を奪う程度の威力はあった筈だ。


「この程度の詠唱でこの威力か、結構やばいねぇ」

 ニヤニヤしながら軽口を叩いているが、明らかに警戒心が増している。

「人質さえいなければな……」

 リラが苦渋の声を漏らす。


 リラの魔力は威力こそ凄まじいが、あまりに範囲が広過ぎる。今迂闊に使えば人質の少女どころか、影縫いで動けない3人も平気で巻き込んでしまう。


「僕、今マジ使えないっすね?」

「不貞腐れるのは後!別にオリジナル魔法が使えないだけで、手段はいくらでもあるでしょ?」

「そうだけど、迂闊に動けないんだよな」

「確かに」

 簡単な詠唱で攻撃してもあまり効果がないのはわかった。


 かといってリラが攻めようとおもっても、人質を盾にされて攻めれない。


 だからといって青年が人質片手に仕掛ければ、先程以上の返り討ちが待っているかもしれない。

「硬直だねぇ?」

 お互いそれをわかっている。だからこれ以上仕掛けられない。


 しかし、その硬直を破った奴がいた。

「あれ?まだ殺ってなかったの?」

 鬼の仮面をつけた白髪の女性が、青年の影からよじ登るように現れた。

「ちょっ、先輩!だってぇ」

 軽口を叩くような口調から一転、親しい人と話すような親近感のある口調に変わった。


「せっかくおびき出せたのになんで苦戦してる……って、おまけ多いね、4人もいる」

「どうやら僕もおまけ扱いらしいっすね?なんか屈辱」

 マナ以外をおまけ扱いされたことに対する憤慨、ではないが、大して脅威に思われていないことに少し苛立ちを覚えた。


 しかし、そんな軽口を叩けるようなお互いの余裕は一瞬でなくなった。


「っていうか、まだ荷物抱えて戦ってるんか?」

 そう言い、青年に人質にされている少女にゆっくり歩み寄り、

「………」

「何をぶつぶつ言っている……」

 少女の耳元で何かを囁き、

「ふふ、なんでも」

 無防備でゆっくりと歩いてくる。


「私は1番邪魔な青年ヤるから、対象は頼んだよ?」

「先輩!あれ相手は僕じゃ無理ですよ!」

「じゃあ1分時間を稼げ」

 軽口を叩きながら、無防備で。


 実力のある者が隙を晒して歩くなんて、何か罠を仕掛けているに違いないが、

「そんなの関係ないっすね!はぁあ!」

「がはっ!?」

 一瞬で鬼の仮面の目の前に迫り思い切り溝落ちに拳を入れる。

「お前!」

「何したかったのか知らないっすけど!」

「グハっ!」

 殴ったら同じ場所に蹴りを入れ、

「隙を晒した時点であんたの負け」


 かろうじて立っているが、意識を無理やり維持して上を向いて立っている。


 リラはそんな状態の敵でも油断せず、

「あの世で反省しな!」

 手刀に魔力を乗せ、鬼の仮面の首を、

「残念【ポディションジョーク】」

 刎ねようとした瞬間、目の前に人質の少女が現れ、

「あぁ……」

「な!?」

 リラは、少女の首を、切り落とした。





「おらぁ!?」

「グハっ!?」

 茫然とするリラに、鬼の仮面が思い切り蹴りを入れる。

「はは、どう?守らなきゃ行けない少女の首を落とした気分は?」

「っ!?」

「リラ!しっかりして!」

 マナはリラのフォローに入りたそうにしているが、

「仲間に心配してる暇はないぜ!」

「この……!」

 黒髪の男は、影で縛っている3人ばかりを狙い、離れる訳にはいかない。


「どうだ?幼い少女を手にかけた気分は?辛いだろうな?罪の意識に苛まれるよな?この、人殺し……」

「お前……!」

 リラの頭を思い切り踏みつけ、何度も何度も蹴り付ける。


「今度は私を殺すのか?あぁ、なんて可哀想な私!少女を攫ったのは私じゃないし、殺したのも私じゃないのに……」

「黙れ!」

「なっ!?」

 足が一瞬離れたのを見計らい、思い切り身体を捻り、けたぐりを入れ、鬼の仮面を転倒させる。

「人間業じゃないね……」

「お前は最早人間じゃない……」

 完全に立場が逆転し、リラが鬼の仮面の頭を足で抑えている。

「でも、学習はしないね……」

 そして鬼の仮面が詠唱を1つ


【偽りの力よ、かの者と私の状況を、真実として捻じ曲げろ、ポディションジョーク】


「イテッ!?」

「え!?」

 瞬間、リラが踏んでいた鬼の仮面は、ザザに代わり、影に縛られているのが鬼の仮面に代わった。

「おい、早く影縫を解け!」

「え……え!?」

「早くしろ!?」

「すみません!?」

 状況の変化に困惑しながらも、黒髪の男が魔力を解くと、

「ようやく動ける……!」

「よし!」


「バカ野郎……」

「ヤッベ!?」

 焦ったのか、リリィとネイヴィスの影縫も一緒に解いてしまった。

「流石に分が悪い、依頼はしょうがないから逃げるよ」

 鬼の仮面が急いで後退し、5人から距離を取るが、

「先輩、僕は無理っぽいですね?1人で逃げてください」

「馬鹿!お前は……!」

 鬼の仮面は何かに気付いたのか、荒げた声が突っ掛かり、

「……お前の事は忘れん」

 1人、森の奥へと姿を消した。


「お前はここで捉えてエスに預ける」

 ザザが剣を抜き、5体1でも一切油断せずに構える。

「さて、影の魔力使いでもう逃げられないし、シャドーハウス起動したからどのみち逃げないし、自分の失態は自分で拭うために、最後に置き土産はあげますよ」

 虚勢をはり、ニヤリとしてリラを見つめる黒髪の男に対し、

「……」


 構えてはいるが、ずっと少女を殺めてしまった、ドロドロとした気持ち悪い何かがへばりついている。

 そんなリラの心を読み取ったように、

「少女の件は残念でしたね?誘拐したのは僕ですけどぉ?」

「お前……」

 痛いところをつき、最初に会った時の気持ち悪さを取り戻してきた。


「ごめん、こいつは僕がやる」

「リラ!ダメ!」

 聞く耳持たず、1人前に歩いて行き、

「せめてお前の命だけでも!」

 黒髪の男が懐からナイフを取り、リラに襲いかかるが、

「ハァ!?」

「ガハァ!?」

 雑に避け、思い切り腹を殴り飛ばし、

「こんな……強いとは………」

 風穴を開けた。

「でも………お前は、殺す【我が声に答えよ、カースフレーズ】」

 風穴が開きながらも、聞きなれない詠唱を唱え出す。

「【我が命と引き換えに、この者の心を、殺せ】」

 瞬間、2人の下に、ただの丸を思わせる、中身の何もない魔法陣が浮かび上がり、そして消えた。

「これで………」

 そして、男は、リラの目の前で死んだのだ。

「………」

 リラはその場で立ち尽くしたまま。


「リラ……」

 マナの心配する声にようやく意識が戻ってきたのか、

「帰ろう」

 一言だけ呟いて、少女の遺体を運び、都市へ戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ