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56話 謝肉祭


 昨日ドラゴンと戦った場所までついた。

 思ったより迷わずに到着した。


「はえぇぇ、随分大きいね?」

 ドライアドがドラゴンの亡骸を見て圧巻している。


「でかいんですね?マナさんは前戦った奴より小さいって言ってましたけど……」

「え?小さい……よね?」

 マナ視点では小さく見えているらしい。

「あぁごめんごめん、2人で討伐したって言ってたからさ!」

「2人で討伐した割には随分大きいねって事ですか?」

「そうそう!まぁドラゴン全体で見ると小さいのは確かだけど、このサイズを2人は凄いよ!」

 どうやらしっかり小物らしい。


 しかし、そんなことより、

「こんな、ドラゴンの存在に気づかなかったなんて……」

 事実2人がドラゴンと遭遇した時、鳴き声を聞くまで気づかなかった。


 それにあれだけドンぱちしていたのに町にいる人や妖精が誰1人として気づかなかったのだ。

「誰かが1枚噛んでるね」

「誰か……とは?」

「それがわかったら苦労しないよ?」

「すみません、ご最もです」

 不意にドライアドが空を飛び出し、辺りをキョロキョロしだした。


「ドライアドさん、飛べるんですね?」

「言ったでしょ?私は妖精とエルフの始祖だって。エルフ並の身体能力と妖精並の飛行能力を持ち合わせているのさ!そんな事よりー」


 再び地面に戻り、今度は周りの木々に手を当て色々調べ始めた。

「「……?」」

 キョトンとしている2人と、

「……」

 ずっとなにかを探しているドライアド。

「やっぱり」

 何か確信した様子でドラゴンの亡骸の元まで戻ってくる。

「やっぱり?」


「この辺り一体に2つの防御魔法が張られてた形跡がある」

「2つ?何と何ですか?」

「気配を消す魔法と、魔力を消す魔法。君達がよく使ってる、気配を消す行為を魔法で再現している。で、それが結構広い範囲で張られてる」

 人間は意識的に気配や魔力を消せるが、魔物はそうはいかない。そのための魔法らしい。


「こんな巨大なドラゴンに気付かなかったのも、戦いに誰も気付かなかったのは2つの防御魔法のせい」

 どおりであれだけ魔力を使ったり、激震していたのに誰も気付かない訳だ。

 防御魔法の内側では、どれだけ魔力が溢れても気づかない。


「コガネさんとホープさん、よく気づいてくれましたね」

「嫌な予感がするって言って町を飛び出して行ったからね、あの2人!」

 予感も凄いが、四方八方森なのに方角まで引き当てるとは。


「いやぁ〜2人とも愛されてるねぇ〜?」

「当たり前だよぉ〜!」

 うわぁ、すげぇ百合百合しい光景だ。ハートが大量に見える気がする。


「なんか、マナさんとドライアドさんって似てますね……?」

「え、そう?そんな事言ったらホープとタクマも似てるよ?」

「そうですか?」

「って言うか私目線だと全員性格そっくりよ?ってそんな事は今はいい!それよりー」

 脱線した話を戻して進める。


「この魔法の広さ的にもドラゴン達を隠す為に作られた物だね」

「具体的にどれくらい広いんですか?」

 こんなに広いとかこの広さじゃわからないのでちょっと詳しく聞いてみたが、

「中心から半径1キロの円の広さくらいかな?」

 と言われた。


 魔力どうこうは未だに分からないので凄いのか不明だが、

「おぉぉ、バケモノだね?」

 らしい。あのマナがバケモノと評した。


「私もこんな途方もない事できる人は片手で数える程度しか知らない」

 世界の誕生からいたと言っているドライアドさんでも片手で数えられる程度しか知らないそうだ。

「片手で数えられる程度って、一気に犯人絞れましたね……」

 新たに生まれた生命に化け物がいなければ、その中に犯人がいる。


 生きていればだが。


「よし、戻ろう!」

「……え!?いいんですか!?」

「いいよいいよ、あとは部屋で調べる!それにここ自体来れない距離でもないし、現地で見て考えるのと部屋に篭って考えるのでは違うしね!よし、戻ろう!」


 そして町に戻る。


 本当に案内以外何もしなかった。





「忘れてた……」

 町の人全員が狂うように肉を食べてると思ったら、ドラゴンだ。

「この世界の人は本当にドラゴン食うんだ……」


 魔物食ったらパワーアップみたいなアニメ沢山知っているが、この世界は例外っぽそうだ。


「戻ったか」

 骨つき肉を持ったホープが声をかけてくる。

「ホープさん、何ですかこのお祭り騒ぎは?」

「謝肉祭だよ」

「………」

「謝肉祭だよ」

「ちゃんと聞き取れました!せめてカーニバルって言ってください!で、何でカーニバル状態なんんですか?」

「ドラゴン討伐されたしな。それに滅多に食べれない物が町の前に転がっているんだ。こうなるさ!」

 ホープも嬉しそうにドラゴンの肉であろう物にかぶりつく。


「美味しそうに食べますね」

 正直戻ってきた瞬間は食べる気一切わかなかったが、BBQっぽい匂いや皆の美味しそうに食べる仕草で思わずよだれが出そうだ。


「ドラゴンが討伐された周辺で沢山焼いてくれてるから、2人も取ってきなよ!」

「本当に!ちょっと行ってくる!ほら、タクマも行こ!」

「え、ちょっと!」

 マナに引かれてドラゴン肉の焼いているところまで行くと、

「2人共、戻ってたんだ」

 コガネも肉を頬張っている。

「あそこで沢山焼いてる。どれも絶品」

 肉がジュージュー焼ける音や、楽しそうに話す町の人の声が心地よい。


 そんな光景に見惚れていたら、

「はい!これタクマの分!」

 いつのまにかタクマの分まで持ってきていた。

「ありがとうございます、いただきます!」

 マナから受け取った骨つき肉をガブリと1口。

「うわ!美味い!」

 弾力があるのに簡単に噛み切れる。ジューシーなのにくどくない。

「んん〜!おいひぃ〜!」


 ドラゴンの肉、マジで様様だ。

「正直こんなに美味しいとは思っていませんでした」

「さっきあんなに顔引きつってたのにな!」

 ホープさんもこっちにきて茶化し出す。

「いやだって!」

 前世の知識が無駄に足を引っ張ってしまった。


「やあお兄さん、また会いましたな!」

「ん!?あの時の!」

 世界樹を案内してくれた妖精が声をかけてきた。


「そう、あの時の妖精!シルフィって言うんだ!よろしく!」

 なんか急に名乗ってきた。

「はぁ……よろしくお願いします?」

「お兄さん達の名前は?」

「タクマです?」

「俺はホープだ、よろしく!」

「私はマナ!よろしくね!」

「コガネ。よろしく」

「うん!覚えた!明日冒険連れてってよ!」

「「「「……え!?」」」」

「明日冒険連れてってよ!」

 全員肉を食べる手が止まった。


「明日冒険ー」

「いや今聞いた。なんで行きたいんですか?」

「ん?なんか楽しそうだから!」

「……?」

「大丈夫、ついていくだけだから!それに断ってもついていくよ?」

 いやそうゆう意味の沈黙じゃないし。


 それにどうやら最初から拒否権はなさそうだ。

「何もしないならいいんじゃないですか?」

 タクマは割と呑気な感じだが、

「でも……」

「……」

「どうするか……」

 3人はだいぶ抵抗ありげだ。

「じゃあ明日は特に簡単な依頼って事なら連れて行ってもいいですか?」


 どうせこの妖精はついてくる。だったらわざわざ危険な依頼ではなく簡単な依頼で済ませておくのがベストだろう。

「……まあ、それならいいか」

 既についてくる宣言しているので諦めも早い。


 そして謝肉祭もといカーニバルが終わり、再び普通の日々が始まる。

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