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55話 vs小型ドラゴン 後処理


 ドラゴン討伐から翌日。


 ホープとコガネはギルドに向かった。


 そしてタクマとマナは、莫大な疲労からか起きる気配がないとのことで置いて行かれた。


 そして現在、後処理はドライアドとその側近の妖精とエルフ、この町にいたパーティ5組の代表者数名の計10名で行われている最中。


「嘘!?ドラゴンとワーム!そんなバカな!?」

 ドライアドが台パンと共に立ち上がる。


「しかし、俺とコガネが訪れた時にはドラゴン1匹とワーム1匹は既に討伐されていました」

「たった2人でドラゴンとワームを1匹ずつ討伐だなんて……」

「ありえない!」

「これが最強のパーティの実力なのか……」


 他のパーティの代表者たちもざわつき始めた。

「そんな事……出来るの?」

 ドライアドが力なく座り込み期待と恐怖を交えて尋ねるが、

「無理ですね」


 仮に全力で魔法を出していたら、あの辺りはもっと大惨事になっていた。


「絶対無理。2人でドラゴンとワームに勝つなんて絶対無理。私達4人でやっても勝ち目はないのに」

 コガネとホープは確信している。


 タクマがいなかった時、3人と今は亡き仲間1人でドラゴンと戦った事がある。

 その時のドラゴンは昨日町を襲ったドラゴンより間違いなく強い。

 造花が再度4人になり、あの頃より更に成長したとはいえ、ドラゴンとワームを2人で倒したとは考え難い。


「ホープ、今すぐ2人を呼んできてくれる?」

 若干食い気味に尋ねてきたドライアドに対し、

「別にいいですけど、妙に執着しますね。そんなに大事な事じゃなくないですか?ドラゴンとワームを同時に倒した方法なんて?」

 ホープは思わず噛み付いてしまった。


 どのパーティでもそうだが、自分達の手の内を明かされるのは好まない。

 下手したらそれがそのチームの強さに直結している可能性があるからだ。


 だが、

「十分大事さ?化け物2匹を討伐なんて実力だけで考えたら不可能なんでしょ?それを討伐したってことは、2人で上手く対処出来る何かがあった。それを知ったら命を落とす冒険家も減る。これだけの理由じゃ不満かい?」


 ドライアドもちゃんと説明すると、

「いえ、十分納得できる理由です。すぐ呼んできます」

 ホープは首を縦に振り、少し速足でギルドを出た。





「ふああぁぁああぁぁ……ってて」

 おはようございます。


 とんでも戦の疲労が抜けきっていません。筋肉痛も凄いし、このままおやすみなさいたいが、

「……お腹すいた」

 扉の奥から漂ってくる小麦の香りが、軋んだ身体を起こさせる。


「タクマおはよう!」

「マナさん!おはようございます!コガネさんとホープさんはどこ行ったかわかります?」

「わかんない、でも多分ギルドでしょ?後処理とか大変そうだし!」

 最重要人物の2人が1番呑気にしている。なんて今の2人は知らない。


「あぁ〜、やっぱギルドにいるね!」

 マナさんが朝食が置いてあるところと一緒に置き手紙を見つける。


『ギルドにいる』


「これ書いたのコガネさんだな」

 椅子に座り、朝食を口に運びながら10文字もない手紙を読む。


「どうします、僕らもギルド行きます?」

「多分行かなきゃだけど……うーん、体中が痛いからな〜」

 タクマもマナも昨日の反動で今日はまともに動けません。


「それにこの家迷路みたいで迷いますし……」

「確かに!私達も最初はずっと迷っててー」

「おーいタクマ、マナ!起きてるか?」

 2人の会話をホープの声が遮る。


「私もタクマも起きてるよ〜!」

 マナさんが大声で返すと、

「今すぐギルドに来てくれ!」

 と返ってきた。

「えぇぇ〜」

「えー、じゃない!ギルドマスターがお呼だ!」


「どうします……?」

「無視しよう!」

「賛成です!」

 2人とも動かない気満々だ。


 が、ホープがドシドシと2人のいる部屋まで上がってきた。

「おい……」

「うわぁ、きた……」

「うわぁじゃない!行くぞ!」

「離せええぇぇ!」

「ダメだ!諦めろ!」

「あぁぁ……僕は煮るなり焼くなり好きにされるんだ…」

「煮もしないし焼きもしないよ!」

 そしてタクマとマナはホープに担がれて、家から引っ張り出された。


 許すまじ。





「今日くらいいいじゃん!」

「ダメだ。いい加減諦めろ!」

「zzz」

「タクマも寝たふりするな!」

「いやぁぁぁ!煮たり焼かれたりされる方がましだぁ!」

「そこまでいやか!?」

 扉の向こうから聞き慣れた3人の声が聞こえてくる。

「……」

 コガネが口元を必死に抑え、シリアスな空間の中1人笑いを堪えている。


 バタン!


 と大きな音を立てて扉を開け、

「戻りました!」

 と2人を担いだままギルドに入っていくホープ。

 果たしてこの場に揃っている皆様の反応は如何程か。

「「「………」」」

 周りの人は唖然である。

「あれ、どうしました?」

「いや……なんでもない。取り敢えず座って……」

 ドライアドも必死に笑いを堪えている。


 3人が席に着くと早速話題が振られた。

「タクマ、マナ、2人に聞きたい。どうやってドラゴンとワーム2匹を相手にして無事で入られた。ホープとコガネに聞いても2人で倒せる相手じゃないはずだ」

 ドライアドはめちゃくちゃ真剣な表情をしている。

「どう倒したと言われましても……期待しても別にそう大した方法じゃないですよ?」

「それくらいは察している。あの2匹を相手にしてまともな方法で倒せるなんて思っていない。ただ死人を増やさない為に出来る限り多くの冒険家に共有して欲しいだけ。聞かせてくれる?」

「別に構わないですけど、たまたま同士討ちになっただけですよ?」

「どうゆう事だ?」


 数人の代表者達の顔が歪んでいる。

「ドラゴンとワームの挟み撃ちにあって、ドラゴンが光線を撃ってきたのを避けて、たまたまワームに直撃したってだけです」

「で、間違ってワームを攻撃したドラゴンは呆然、その隙に私の魔法でドラゴンにとどめを刺した!はい終わり!」

 本当に大した説明をしていないが、これで言うのだろうか。

 しかし、

「つまり仲間撃ちさせたって事?」

「なんて卑怯な!」

「冒険家として恥ずかしくないのか!」

「なるほど、流石だ!」

「確かに仲間内は考えたことなかった」


 なぜか周りのパーティの人がざわつき始めた。

「なんかまずい事言いました?」

「さぁ?」

 タクマとマナ、というか造花の4人はなぜざわついているのか理解していない。


 ドライアドに聞くと、冒険家は魔物は自分達で倒してこそ意味があるという冒険家内だけのルール、というかくだらない暗黙の了解的な物が存在するらしい。


 勿論、周りの反応を見るに、一部の人たちが持ってるだけだが。


 自分達の力を誇示する為や自己満足、チームの自信に繋げる為など様々だが、そのおかげで自分達以外、つまり仲間撃ちさせたものはズルい手段、小細工、邪道だという考えが広がってしまった。


 なんだそのくだらないプライドは、まじ冒険家面倒くさい。


「これも冒険家が人気のない職の理由の1つなんだろうな……」

 思わず声が漏れる。


「本当にそう思いますよ」

 代表者のだれか1人も同じ感想を吐いていた。


「というかそもそもお前たちが森に出なければこんな事にはならなかったんじゃないか!?」

 そして別の代表者1人が何か言い出した。

「そ、そうだ!依頼でもないのになんで森に出たんだ!」

「確かにそうよね!」

 それにつられて全員2人をバッシングし始めた。

「うわ、まじ面倒くさい……」

 今度はマナがボソッと呟き、

「最低だ……」

 造花サイドの代表者も、ゴミを見る目をしている。


「なんでどの世界の冒険家のモブは屑しかいないのだろうか。っていやモブと思ってるのは自分の視点だけだから今の言い方ダメか」


 軽く現実逃避を始めようとしたところで、

「じゃあ2人が森に出なかったら被害は出なかったって思うの?」

 バッシングで埋もれそうな空間に、コガネとは思えない通った声が響いた。

 一瞬沈黙したが、

「……そうだ!お前たちが妙な事しなければ!」

「責任取れよ!」

 再びバッシングでギルドの空気が埋もれる。

「やばいな、超面倒臭い」

 更に、あのホープも不貞腐れたように呟いた。


「じゃあ、放っておいてワームが成長してドラゴンが3匹になってたらどうにかなったと思う?町を襲わない確証はある?」

 腐った3人に乗らず、言葉を発したのはコガネだ。

「2人が倒さずに3匹で襲ってきたらどうなってた?もし2人が森に出ずに、今日ドラゴン2匹がこの町に襲ってきてたら?もし私たちがいない時にドラゴン2匹でこの町を襲ってたら?どうするつもりだった?」

 あのコガネがめちゃ喋る。声音からして間違いなく切れてる。ブチ切れてる。

「それは……」

 反論することなく黙り込んでしまう他の冒険家。

「冒険家は依頼以外にも町を守るのも仕事でしょ?私達がいなくて町が壊滅してたら責任取れた?」

「コガネ、落ち着いて」

 さっきまで若干腐っていたホープがコガネさんを宥めると、

「……」

 まだ言い足りないと言いたげだが大人しくなった。


 彼氏パワーってすげー。


 少し静まったところでドライアドが、

「コガネの言う通りだね。私は冒険家じゃないから君達の思っている事に対してどうこう言うつもりはない。けど」

 そこで一旦言葉を区切り、2人を叩いていた人たちを睨み、

「例えば2人が森に行ってなくて、いつか3匹のドラゴン討伐の依頼書を出してもドラゴン3体を相手に出来るチームなんてまずいない。それを放置していつか町を襲ってきたら未来の被害は想像を絶する。それこそ文字通りの壊滅だってあり得る」


 ただでさえ1匹のドラゴン相手に壊滅してもおかしくない状況だったのに。

 3匹同時に攻めてくるとなると、その被害はフォレストの町1つで収まるものではない。


「2人のやり方が君たちとっては好ましくないやる方でも、私達や町の人間にはそんな事関係ない。ギルドマスターとして言わせてもらうと、プライドどうこう言って敗北するより、それを捨ててでも危険の芽は摘んで欲しいかな?」

 重く、よく通る声で、ヤジを飛ばしていた代表者をさした。

「「「……」」」

 文句を言っていた代表者達は黙り込んでしまった。何か言いたげだが、ギルドマスター相手に反論出来ない様にも見えた。


「あの、それより聞きたい事あるんですけど?」

 重っ苦しい空気の中そんな事どうでもいいと言わんばかりに質問するのはタクマだ。


「外のドラゴンどうするんですか?あのまま放置って訳にもいかないですよね?」

 一歩外に出れば何処にいても目立つドラゴンの亡骸。燃やすにしても時間がかかり過ぎる。


「ああ、あれは後で皆んなで食べようね!」

「………あの、ドライアドさん?なんて言いました?」

「後で皆んなで食べようね!」

「食べる、食べるんですか!?何故!?ドラゴンですよ!?」

「え?タクマ、食べないの?」

 言い方的にマナは食べるらしい。

「いや……ドラゴンを食べるなんて聞いた事なかったので……」

 周りの反応的にタクマの方が異常らしい。

「何故か凄く悔しい」

 彼、何かやっちゃいました?


 はい、やっちゃいました。未だに悪い意味での世間知らずなのです。


 日本では普通の高校生だったはずなのに。

 世の中不思議だ。


「まあとにかく、やり方どうこう言う前にちゃんと討伐しろって事」

 タクマのせいでちょっと拍子抜けたせいか、ちゃっちゃと話を終わらせた。

「「「はい……」」」

 納得いってないのか気圧されたのか、俯いて微妙な返事をする代表者面々。


「ふん……惨め」

「同意です」

 コガネと別の代表者が誰にも聞こえない声で呟いたが、

「あんたらも!タクマはともかく3人は新米じゃないだろ!冒険家の暗黙のルールの1つや2つは覚えな!でなきゃまた卑怯だとか言われるんだよ!」

 ドライアドさんは聞き取られたらしい。

「「「すみません」」」

 しゅんとしてしまう3人。

 まぁなんて新鮮な光景。


「それともう1つ!タクマとマナは後でドラゴンとワームを倒した場所まで案内して!」

「案内ですか?でもそんな詳しい場所覚えてないです……」

 町が見える範囲の場所とまでしか覚えていない。そんなところ360度何処でもある。


「ずっと真っ直ぐ行ったんでしょ?だったら町の何処から出たかだけでおおよそわかるよ!」

「まあ、そうですけど……どうしてずっと真っ直ぐ行ったって分かったんですか?」

 タクマもマナも昨日の行動を読まれた様な気がしてちょっと引いたが、

「当たり前でしょ?右も左もわからない森をくねくね歩く人なんていない!」


 まあそう言われればそうである。


「皆んなはもう解散でいいよ!ドラゴンを食べたい人は適当に解体しちゃって!私とこの2人は今から用があるから!また後でね!」

「え!?ちょっ!?」

 ドライアドがタクマとマナを担いで外に出た。


 そしてドラゴンとワームを討伐したところまで案内する事になった。

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