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49話 ドライアド


 翌日、再び依頼を受けにギルドに向かう。

 ところどころで妖精に声をかけられては返してを繰り返し、やっと到着。やけに長く感じた。


「タクマ、お前いつのまにか妖精と仲良くなったんだ?」

 この町についてまだ3日目。純粋な疑問だろう。ホープの嫉妬の目、もとい、疑問を抱いた目が刺さる。


 というかなぜタクマはこんなに話しかけられたのだろう。


「昨日ですよ。世界樹見に行った時結構話して……」

「世界樹!」

「見に行ったの!」

「どこにあるの?」

「え、いや……」


 3人が一瞬で喰いつく。てっきり全員見に行ったことがあると思っていたが。


「僕も妖精に案内されただけなんで、詳しくは……」

 お茶を濁す言い方になってしまったが、案内されただけなので詳しくは本当にわからない。


「へぇ〜、世界樹行ったんだ?」

 カウンターで書類仕事をしていたドライアドも持っていた羽根ペンを置き、話に喰いついてきた。


「そんなに凄いことなんですか?」

「うん。そもそも妖精はエルフ以外に心を開かないから。開いたとしても、わざわざ自慢の世界樹を見せようなんて思わないからね?」


「その様子だとドライアドさんも見た事あるんですか、世界樹?」

「ある、というか、あそこに木を創ろうって提案したのは私だし?主に創ったの私だし?」

「「「「へ?」」」」


 思わぬ発言に硬直する。


 タクマは世界樹の発案者というか製作者がドライアドだった事、タクマとマナとコガネはまだ見た事も無い世界樹が人工的に創られたものという事実に。


「え?でも、ドライアドさん、エルフ……」

 上手く言葉が出てこない。


「私はエルフと妖精のハーフよ?そもそもこの町造ったのも私だし!」

 爆弾発言がどんどん出てくる。


「あの世界樹が創られたのって……えっと300年前ですよね?貴女何歳なんー」

「黙りなさい?」

「……あ」


 笑っているがおでこに怒りマークが付いている。やってしまう所だった。


 いや、やらかした。


「何歳かは秘密!そもそも私がエルフと妖精の始祖だし!世界の誕生付近から存在している、崇め奉られる存在なのよ!」

「「「「嘘…」」」」


 全員驚きを隠せていない。


「どう?凄いでしょ?」

 妙なドヤ顔を決めてくるドライアド。

「ドライアド“様”って呼んでもいいのよ?」

「「「「……」」」」


 なんかうざくなってきた。


「つまり世界の最初から存在してたって事ですよね!じゃあ!ガイアって人のことー」

「タクマ!その名前は出さない」


 突然ドライアドから異様な圧が湧き出る。エス同様、しっかりNGワードだった。


「「「……」」」

 3人は黙り込む。

「……すみません。失言でした」


 何を失言したか知らない、ガイアという名前にどんな効果があるかは知らないが、とりあえず謝った、謝ってその後を聞こうと思ったが、

「さ、あんた達、依頼を受けるために此処に来たんでしょう?若者は働け働け!」


 一瞬で雰囲気を戻して手をパンパン叩く。


「そ、そうだな。とりあえず依頼だ。早く終わらせよう、今日は行きたい場所があるしな」

 無理やり空気を変えるホープに、

「うん!私も行きたい所あるし!」

 マナもホープの気遣いに乗る。

「僕は町の掌握の続きを!」

 一応空気に乗り、

「私は家でギター弾く」

 コガネは……多分いつも通りだ。


 無理やり空気を変えたが、全員揃えば本当に悪い空気はは一瞬で飛んで行った。





 昨日今日で依頼が総入れ替えなんてあるはずもなく、当然他の冒険家もこの町にいる訳で。


「本日、依頼書がありません!」


 マナがるんるんだ。

 昨日ですら片手で数えられる程度の依頼書しか残ってなかったのに、今日1日で昨日今日張り出された依頼が全てなくなった。


 これを意味するのは、

「仕方ない、今日は休むか!」

 なんだかんだでホープも嬉しそうだ。


 仕事が無い。それは他の職業には致命傷だが、冒険家にとっては話が別。


 冒険家は困っている人や害をなす魔物を倒す仕事だ。


 つまり困っている人がいない。

 つまり害をなす魔物がいない。

 つまり平和。


「じゃあ俺は行きたい所あるから先出るな」

 ホープがさっさと行ってしまう。

「私も」

 コガネもさっさと行ってしまった。

「デートだな!」

 マナが満面の笑みで2人が去った後のドアを見ている。

「よし、私もいきたい所あるし行くね!」

 マナも後を追うように去っていった。

「さて、僕も出よう」

 と出て行こうとした時、

「ちょっといい?」

 ドライアドがタクマを止める。

「何ですか?」


「君はガイアの事をどこまで知っている?」

 結構ド直球で聞いてきた。


「はっきり言って全然知らないです。エスさんは何か知ってそうでしたけど、ガイアって何者なんですか。」

「いや、知らないならいい。知る必要もないだろう」

 そこまで行ってギルドを去ってー


 行く前に、聞かないと!


「あの女性。僕らがあったあの女性がガイア、なんですか」

 ガイアと名乗っていたが、本人を知っている人物からも確証を得るために聞いておきたい。


 が、

「君の言うあの女性に私はあった事ないから何も言えないね?」

「それに、その女性の調査も含めて君たちをこの町に呼んだのだから、いずれ分かるでしょ?」

 そう言い残し、ドライアドもギルドから立ち去った。


「これ以上突っかからない方がいいのかな?」

 なんかエスもドライアドも知ってそうだが何も教えてくれない。


 触らぬ神に祟りなしというが、正直結構気になる。

「でもどうせ何もわからないし町の掌握の続きでもしよ!」

 思考放棄でギルドを出た。





 あの後、町を概ね回ったが、めぼしい物、めぼしい店はなかった。


 そして現在、町の隅にある鍛冶屋。

「……」

 店の中にはエルフ妖精人間の冒険家で溢れていた。

「繁盛してますね……」

 バーゲンセールでもやっているのではないかと思うほど人で溢れていた。

「今日だけだよ!ちょっと面白いものが作れたからね?それを出したらこの繁盛っぷり!」


 繁盛の嬉しさと慣れない過労に苦笑いで返す店主。


「その面白いものとは?」

「これだよ」

 店主がポケットから取り出したのは、ビー玉サイズの球体だ。


「これは魔球と言ってね、これに魔力を込めて投げれば魔法が発動する、俺お手製の超便利グッズだ!まだここでしか手に入らない!」


 怪しい笑みで見せつけてくる店主と、

「1つ買います」

 何も考えず即決で購入するタクマ。

「毎度あり!属性魔法だけじゃなくて固有魔法でも効果があるから使ってみるといいさ!」

「あと2つ買います!」

「毎度あり!」


 購入したものが入った袋を持って店を出た。


「いい買い物したな」

 魔法という言葉に惹かれて脳死で購入して満足している青年の姿がそこにあった。


「そういえば……このあたりは世界樹がある場所なのでは?」

 かなり見覚えのある風景だ。


 折角なら世界樹見て帰ろうと思ったが、

「あれ?世界樹がない」

 昨日まで此処にあった世界樹がなくなっている。


「当然!あれは妖精に誘われて始めて見ることが出来る貴重な遺産だからね!」

 いつのまにか後ろにドライアドがいた。


「うわぁ!?ドライアドさん!えっと、どうゆう事ですか?」

「実は此処には防御魔法がかけられてるんだ」

「防御魔法?あのオーロラのやつですか?」

「違う違う!防御魔法と言っても沢山種類があるからね!風景と同化する魔法だったり物に成りすます魔法だったり」

 一括りに防御と言っても、ニュアンスの違いは山ほどありそうだが。


「で、世界樹にかけられた魔法は、風景と同化する防御魔法」

「じゃあ昨日見えたのって、魔法を解いてたから見えたんですね?」

「それも違う。今言ったでしょ?妖精に誘われて見れるって。つまり魔法を解かずに見る方法があるって事!」

「全然わかんないです」

「私もこれ以上なんて説明したらいいのかわかんない!」

 ドライアドが説明を諦めた。


「妖精にだけ出入り可能な扉の魔法とでも思っておけばいいですかね?」

「おお、強ち間違いじゃない!」


 あら魔法って便利。


「なんでそんなに世界樹隠したがるんですか?」

「そっちの方がミステリアスでいいじゃん?」

 何故かドヤ顔で親指を立ててくる。


「……まぁわからなくもないです!」

 苦笑いと微笑みを込めて言葉を返す。


「じゃあなんで深い穴の中に世界樹建てたんですか?」

「あんなの地上に創ったら森が枯れちゃうよ?」

「……ごもっともですわ」

 養分吸い尽くされるどころの騒ぎじゃないだろうな。


「でも、そろそろ成長止めてから地上に出そうかな?このままだと一生成長し続けそうだし!」

「あの大きさでまだ成長途中なんですか……」


 既に世界樹の名に恥じない大きさだろうに、

「ってか、こんなのが突然地上に生えてきたら天変地異もいいところですよ……」

「確かに!」

「確かに!じゃないですよ!」


「まぁでも、世界樹地上に出そうとしてたのは本当だよ?この森迷いやすいからね、1つ目印欲しいなって思ってたし!」

「それは、確かに」


 これだけ一面森だと、自分がどこを歩いているのかわからなくなりそうだ。


 依頼から戻って来れなくて遭難なんてのもごめんだ。


「近々地上に出そうと思うから、その時は呼んであげるね!」

「多分呼ばなくてもどこからでも見えますよ?」

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