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38話 ユニコーン


「結構広いな……!」


 入り口から見た洞穴は、大人が1人通るのがやっとの広さだったはずなのに、中に入ってみると、3人横並びでも余るくらいのスペースはある。


「こっちだよ!」

 懐中電灯持った少年2人が先導して奥へと進んでいく。


「こんな暗いのによくさくさく進めるね?」

 少なくとも目視で陽気に走り回れるほどの明るさはない。


 懐中電灯持ってるとはいえ暗すぎるのには変わりない。


「ほらこれ!」

 最奥地ではないが、目的の場所には着いたらしい。

 少年2人が懐中電灯を照らして、それを見せる。

「……これって!」

 簡単に説明するなら、一本角と羽が生えた馬だ。

「ユニコーン、だな!」

 ホープが見上げて答える。


「はい、それは知ってます、でも……!」

 気になるのはそこじゃない。


 そのユニコーンが、石化しているのだ。


「成る程ね、だから蛇の……」

「おにいさん?」

「ううん、なんでもないよ」


 心の中の不安を悟られないよう、笑顔を作って誤魔化す。


「これって君たちが作ったの?」

 マナが3人に問う。

「ううん、俺たちが見つけた時からこんなだったよ!」

 少年はなんの疑問も抱かずに答える。

「じゃあやっぱり……!」

「うん」


 4人は今にも感電しそうな空気に息を呑む。


「なんでこんな綺麗な彫刻こんなところに隠してるんですかね?」

 タクマが思い切り素っ頓狂な事を言う。


 ピリついた空気が一気に和らいだ。


「お前なぁ、流石にわかるだろう?」

 ホープが思い切り呆れ果てている。


「わかんないですよ僕芸術家じゃないんで、なんでですか?」

「いやそうじゃなくてだな……!」

「タクマ、バカ」


 コガネはシンプルな悪口。


「2人はわかるんですね?僕さっぱりなのに」

 少し不貞腐れたように吐く。

「マナさんはわかります?2人教えてくれなさそうなので……!」

「……えっと、タクマ、あのねー」

 マナは顔が引き攣っているように見えるが、

「……!」

 マナに1つウインクすると、

「あぁ、そうゆう……」

 少しニヤリとして小声で呟く。


「私の推測だけど、この彫刻見られたくなかったんだよ!」

「……は、マナどうした?」

 ホープが呆気にとられたようにマナを見る。


「こんなリアルなユニコーンの彫刻作れるってことは、ユニコーンを見たことあるってことでしょ!もし治安の良くない連中に見られて居場所吐かされて捕らえられたら嫌でしょ?だからだよ!」

「はぇぇ、芸術家も大変なんですね?」


 適当に返す。


「「……」」

「2人ともどうしたの?石になっちゃった?」

 マナが呆気にとられた2人を見る。

「なってない、マナがアホの子になっちゃった」

 コガネが虚を向きながら呟く。


 そんなにショックか?


「君たち、この石像は誰かがここに隠したものだから、壊しちゃダメだよ?怒られちゃうからね!」

「わかった!」

 マナの優しい声に少女がにこやかに反応する。本来なら微笑ましい光景だな。


「君たちも、落書きとかしちゃだめだよ?」

「「えぇぇ〜!」」

「えーじゃない!」

 タクマの悪戯っぽい声に、少年2人は眉間に皺寄せて嫌そうに返した。


 冗談で言ったんだがマジでやるつもりだったのか?


「さて、あんまり長いこといたらこの子達の両親心配するだろうし、帰りましょうか!」

「「えぇぇ〜!」」

「そんなデジャブな反応いらんわ!」


 子供相手に思い切り突っ込み入れる異世界人の図。我ながらマジで哀れだな。


「こらこら、おにいさん怒らせちゃだめだよ!一緒に帰ろ!」

マナがにこやかに少年2人に話しかける。

「「……わかった」」

 少年2人は頬を赤くして同時に答える。


「マナさんガチ恋されましたね?罪な女ですこと!」

 マナはルックスは非常によく、優しくされたらコロリとやられそうだ。


「そんな事言ったらタクマだって!」

 マナの視線が少し下がる。

「ん?」

 同じく視線を下げると、タクマのズボンを摘む少女がそこにはいた。

「どうしたの?」

「おにいさん、あの……!」

 なんかもの凄い目で訴えかけてくる。

「あはは、おっけい!」


 流石に察した。


 というわけで、マナは少年2人と手を繋ぎ、タクマは少女を姫抱っこして撤退することになった。


 タクマ視点だと蛇の魔物を抱っこすることになるが、今は平静を取り繕う。


「コガネさんホープさん戻りますよ!」

「……あぁすまん!」

「ん」

 石のように固まってた2人が声に反応し、ようやく動き出す。


「なんかこしてみると、マナとタクマ夫婦みたいだな?」

 ホープが突拍子もない事言い出した。


「あはは、お母さんの方が強いのは夫婦っぽいね!」

「立場じゃなくて物理的に強いのが母親って不味くないですか?」

「じゃあタクマもっと経験積んで強くならないとね!」

「そこに話持ってくのズルくないですか?絶対言い勝てないじゃないですか!」


 まぁ夫婦っぽいを否定しなかったのは若干嬉しい。


「おにいさんとおねえさんって、ふうふなの?」

 姫抱っこされてる少女が2人に尋ねる。

「ううん違うよ!おにいさんとおねえさんは恋人だよ!」

「さらっと嘘つかないでください」

「あ、今のって、めおとまんざい!」

「……」


 なんでそんな言葉知ってんだよこの子は。


「おにいさんこの人の恋人なの?」

 少年2人がなんか切なそうな目で見てくる。

「ううん違うよ、ちなみに夫婦でもないよ?」

「なんだ!」

「よかった……!」

 安堵する少年2人。1人に至ってはよかったって言葉に出してるし。


「……マナは渡さない」

「コガネさん、子供の恋心にそんな対抗心燃やしてどうするんですか……」

「……」

 すごい睨まれた。


「ホープさんコガネさんをどうにかしてください……僕じゃ対処しきれないです」

「……」

「ホープさん?」

「……あぁすまん、どうした?」


 考え事をしているのか、タクマの声かけを聞き漏らすホープ


「こっちのセリフです、どうしました?」

 やけにぼーっとしている。

「すまん、ちょっと考え事をー」

「コガネさん、ホープさんをお願いします。僕とマナさんは子供たちで手一杯です」

「ん、わかった、任せて。ホープこっち。」

 コガネがホープの手を引く。


 むしろ向こうが夫婦だろ。


 とりあえずコガネの高圧的な視線からは逃れたが、そんなのどうでもいいくらいにホープが心配だ。


 何せあの真面目なホープが考え事で無視を決め込んでしまうなんて。


「おにいさん大丈夫?」

「……うん大丈夫だよ、心配させてごめんね?」

「ううん、へいき!よかった!」

 少女は無邪気に笑ってみせた。

「私とホープは先に言ってる」

「わかった、気をつけてね!」

 コガネがホープを連れて早足で去っていく。


 そんな感じで、雑談を交わしながら出口まで戻った。





「あれ、涼しい?」

 行きはあんなに暑かったのに、長袖が欲しいくらいにひんやりしている。


「あ、コガネ!ありがと!」

 マナが洞穴から出てくる。

「あー、成る程、ありがとうございます!」


 頭上には氷の塊が浮いている。

 これをするために先に外に向かったのだろう。


「ううん、マナと子供達のためだもん」

「……」

「タクマ、どうした?」

「……いいえ別に?」


 なんか癪だが、まぁいいや。


「帰りも乗っていいの!?」

「マジで!やったぁ!」

 少年2人がマナの手を離し、飛び乗ろうとする。


 しかしまぁ飛び乗れるわけもなく、ジャンプしても全然届かない。


「先乗ってますね!」

 タクマは少女を抱えたまま氷に飛び乗る。

「よいしぃっと、はいお疲れ様です!」

 氷の上で少女を下ろし、少し頭を撫でる。

「おにいさんありがとう!」

 少年は嬉しそうに笑う。


「マナ、早く」

 コガネが上から叫ぶ。

「早くって言われてもね……?」

「大丈夫、乗れる!」

「僕たちならできる!」


 コガネの両手から離れた少年2人は、必死に助走をつけて飛び乗ろうとするが、当然乗れない。


「君たちストップ!」

「「…?」」

 同時に足を止める2人。


【風の魔力よ、その力で彼を空の世界へ誘え、フライ】


「「うわっ!!?」」

 その瞬間、2人の足元に魔法陣を生成、詠唱し、氷の上まで吹き飛ばす。


「よっと!」

 マナも跳躍し、氷の上に飛び乗る。

「よし、出発」

 全員乗ったのを確認し、氷の塊が都市に向かって動き出す。


「いってぇ!」

「うぅ……」

 少年2人は見事なまでに頭から氷に落ちたため、目と頭をまわしている。


「ついでにマナさんも魔法で飛び乗ればよかったじゃないですか。そうすれば少年たちもクラクラせずに済んだのに?」

「タクマは私にスカートの状態で下から風魔法使えっていうの?」

「……すみません、忘れてました」


 冗談ではなく、マジで忘れてた。


「まぁちょっとは申し訳ないとは思うけど、男の子だし、強くならなきゃね!」

「それ免罪符にすればなんでも言えるわけじゃないですよ……?」

「全員乗った、進むね」


 コガネの氷塊が7人を乗せて進み出す。





「ねぇ君たち?」

「「「なに?」」」

 ホープが表情を曇らせて子供達を見る。

「あの石の像って、どうやって見つけたの?」

「え?あの穴の中で……?」

 子供達はなに言ってんのという目でホープを見る。


「そうじゃなくってね?」

 ホープの表情がどんどん曇っていく。


 まずい。今ホープがその疑問を聞くのはまずい。


「コガネさん!」

「……?」

 小声でコガネの杖を見る。


【音の力よ、その静かさを持って周囲の音を遮断せよ、サイレント】


 コガネは意図がわからないまま、ホープ以外の人間に魔法をかけた。


「おにいさんは、いつ見つけたのか聞きたいんだよ!」

 タクマが適当に続ける。

「いつだっけ?」

 少女が少年2人を見る。


「初めてここに来た時からあったよ!」

 1人の少年が答える。

「そっか、でも誰かのものだから、あんまり悪戯しちゃダメだよ!」

「わかってるって!」

 もう1人の少年が返す。

「……?」


 コガネも意図がわかってないようで、沈黙している。


 簡単な雑談をしながら、気づけば都市に戻っていた。





 7人はギルドに戻り、依頼完了の報告を済ませた。

「「「きょうはありがとうございました!」」」


 3人の子供が同時に頭を下げて、ギルドを去っていく。


「今日のは依頼っぽくなかったですね!」

 3人がギルドを出た後にタクマがボソッと呟く。

「だね、楽しかった!」

 マナが満面の笑みで返す。


「たしかに楽しかったけど……タクマ、聞きたいことがある」

「奇遇ですね、僕もホープさんに言いたいことがあります」


 こんなに真っ向から怒ってるホープと言葉を交わすのに、全然怖くない。


 多分タクマもそれ以上に怒ってるからだろう。


「帰り道、どうして遮った」

「逆に聞きます、なんで遮られたと思います?」

「質問してるのは俺なんだが?」

「じゃあ答えます、今日戦うにはコンディションが悪すぎるからです」

「なんの話?」


 コガネが割り込んで尋ねる。


「あの子供たち3人の話です」

「なんであの子供たちと戦うの?」

 ホープとコガネは察してないようだ。

「あの子供達がユニコーンを石化させた本人だからです」

 タクマが迷う事なく言う。

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