30話 vsゴーレム 開戦
ずしずしと重っ苦しい地鳴りを鳴らしながら歩いてくる。
「あれ関節ないのにどうやって歩いてるんですかね?」
こちらに来るまで時間はかかりそうなのでまだ呑気でいられる。
「いや、ない訳じゃないが、ゴーレムってあくまで岩みたいな頑丈な皮膚で出来た人型の生物だから」
ホープも構えてはいるがまだ呑気だ。
「あぁ、納得です!」
この世界のゴーレムは、繋ぎ目などで動かす人工生物ではなく、あくまで人型生物だ。
人間の関節に外から見える繋ぎ目が無いように、ゴーレムにも外から見える繋ぎ目がないだけで、ちゃんと存在している。
「よし!タクマの問題も解決したところだし、そろそろストレ……腹括って頑張るよ!」
活気の良いマナの声が響く。
「頑張って倒そう」
マナのような張った声ではないがコガネも生き生きした声だ。
「「……」」
「「完全にストレス発散って言おうとしただろ」」
男子2人の声が一致する。
女子2人に呆れていると、
「!?」
不意にホープが後ろの森に目をやる。
「……」
「ホープさん、どうかしました?森の方になんかあります?」
「いや、なんでもない。保険が出来たってだけだ。」
「保険?」
「あとで話す、来るぞ!」
「!!!!!」
色々終わった丁度良いタイミングでゴーレムが殴りかかってくる。
「うぉっと!」
振り下ろされた拳は空振り、地面に直撃し、地が割れる。
ずっとゴーレムを視界に入れていたから攻撃のタイミングがわかったが、他の魔物みたく叫んだり呻いたりしないので奇襲性がありそうだ。
いや、ずしずし重苦しい音立ててくるからそうでもないか。
「あれは、当たったらひとたまりもないですね」
だが、当たればの話だ。
実際、攻撃速度は速くない、むしろ遅い。過剰に反応しなくても簡単に避けられる。
「よし、一発でかいの上げるよ!」
マナが杖に手をかざし、魔法陣を生成して詠唱を唱え出す。
【灼熱の魔力よ、その煮えたぎる炎で敵を焼き尽くせ、フレアショット】
「うお!何ですかあれ!」
超厨二心くすぐる技名だし、最初に撃ったファイアボールとは比にならないくらいの魔力だ。
が、ゴーレムは避ける動作もなく、堂々と無傷で立っている。
「ふぅぅ……ありゃ、やっぱ効かないか?」
スッキリした!みたいな息を吐きながら当然効かなかったみたいに言う。
「次は私がやる」
どうやら2人ともストレス発散が目的らしい。
「あいつはエスあいつはエスあいつはー」
自分に暗示、というより洗脳をかけゴーレムの真上に魔法陣を生成して詠唱を唱え出す。
【氷の力よ、その冷徹で鋭利な一矢で敵を貫き凍結せよ、アイシクル】
ゴーレムの真上の魔法陣から1本の巨大な氷の槍が降ってくる。
が、当然岩に氷が刺さるわけもなく、無残にバラバラに砕け散ってしまった。
「よし、スッキリ」
全然ダメージは入ってないが、マナとコガネは御大満足の様子だ。
いいのかそれで、負けてるんだぞ!?
「よし、帰ろう」
コガネがゴーレムに背を向け出した。
「ちょっと待てぇぇ!!」
タクマが全力で声を張る。
「何?」
まるでなんで急いで止められたのかわからないような表情をしている。
「依頼!まだ残ってますよ!」
「本当に私達で倒せると思ってるの?」
「じゃあ何で依頼受けたんですか!」
思わず怒鳴ってしまった。
「過去の私に聞いて」
「はぃ!?」
「嘘」
「は?」
「本当に帰る訳ないじゃん」
そういうと再びゴーレムの方を向いて杖を握り直す。
「……はは、うざっ」
「ううん、うざくないよ」
小声で呟いたはずなのにコガネに思い切り聞かれていた。
「茶番もその辺にしといてそろそろちゃんとやるよ!」
ホープが全員の気合を入れなおす。
煮え切らないが仕方ない。
◯
「さて、本当にどうやって倒そうか」
ホープは本気で悩んでいる。
「うちのパーティで有効打ある人いないんですか?」
「いない。岩魔法を使える人がいたらまだマシな戦いは出来る」
「私砂魔法使えるけど覚醒してないんだ?だから無理!」
本当に打つ手なしだ。
「本当にどうする?」
全員煮えきった頭をさらに煮えたぎらせて考える。
「水をかけたらどうですか?」
「かけた後どうする?」
「凍らします!凍死させます!」
「却下だ!あんな硬くて分厚い皮膚なのにゴーレムの体の芯まで冷えきる前にこの暑さで氷が溶ける!」
無理っぽい。
「焼き尽くす!」
「ファイアボールが効いてなかったの見てなかったのか?」
「雷!感電死させる!」
「あんな岩みたいな皮膚なのに電気が体内まで届くと思うか?」
「空に飛ばして落下死!」
「重過ぎて飛ばない、却下!」
ことごとく却下されていく。
「どうするんですか!?」
タクマの脳ではこれ以上案が出てこない。
「だから俺らじゃ成功出来ない依頼なんだ」
今になって凄い納得した。
別にゴーレムは魔物の中で特別強いわけではないが、弱点が打撃しかなく、それがなければ手に負えないだけ。それは冒険家側からしたら、たまったものではない。
有効打がない、攻撃が効かない。敗北で死ぬ事は殆どなくても勝てない。
勝てない、討伐の依頼でそれを意味するのは依頼の失敗。
「厄介な相手ですね」
全然勝ち筋が見えない。
その後も何度か考えてみていくつか魔法を試してみたが、全くと言っていいほどダメージが与えられなかった。
◯
「嗚呼、嗚呼、嗚呼!!」
「タクマ、叫んでないでどうにかするぞ!」
頭のネジが数本飛んでいきそう。
「でも本当にどうする?」
何度も魔法を当てているが一向にダメージを与えられない。
剣は刺さらない。むしろ剣が折れそうで怖い。
正直体力や魔力には随分と余裕がある。しかし、気力に余裕がなくなってきた。
「飽きた……」
コガネの目が虚になっている。
「依頼承諾した張本人はコガネさんなんですから最後まで頑張ってください」
「最後……最後って何?撤退が最後?討伐が最後?どっち」
この子はもうダメだ。
「見た目だいぶ違うけど熔鉱炉に落とせば勝てるかな?」
「こんなところに熔鉱炉なんてある訳ないでしょ?ちなみにマグマ溜まりもないよ。あったらとっくに突き落としてる」
ついにマナの声にも活気がなくなってきている。
いよいよ全員の元気が無くなってきた。
「……そう!マグマ!」
きた!完全にビビッときた!
「なんだ!?マグマがどうかしたか?いい案思いついたか?」
突然大きな声を出したタクマに驚きながらもビビッときたタクマに期待を寄せるホープ。
「あの皮膚を溶かします!」
「溶かす?どうゆう事?」
マナとホープが喰いついてきた。黙ってはいるが、コガネも喰いついている。
はっきり言って、もうあの皮膚は岩だ。岩のように硬い皮膚ではなく岩。
だから、
「あの岩肌を火魔法で溶かしてマグマにします!」
「あのな、火魔法を当てても溶かすどころかダメージをー」
「だから当て続けるんです!ワームの時みたいに!相手の岩肌がマグマになるまで!」
「「「……」」」
「あははは!無茶言うねぇ〜!」
嬉しそうなマナ。
おそらく今までで一番勝ち筋のあるやりかだ。
「そんなに魔力持つの?」
コガネはあまり乗り気でない。
「大丈夫!いけるいける!」
【灼熱の力よ、魔法の耐性をも壊す炎で、敵を焼き尽くせ、バーン】
ゴーレムの体が燃え出す。
が、燃えているだけで熱がる様子もなく、岩肌が溶ける様子もない。
「これだいぶ時間かかりそう、ってか無理な気がしてきた」
既に諦めモードのタクマだが、
「……あ、多分大丈夫、上手くいく」
さっきまで乗り気でなかったコガネが前に出て詠唱を唱える。
【音の力よ、その情熱はマナの心に渦巻く炎となれ、コン・カローレ】
「おぉぉぉ!いいよいいよ!」
コガネの詠唱で炎の力が増す。マナのテンションも増す。
コガネの魔法のお陰なのか不自然な程に熱量を増していく。
「なんかめちゃくちゃ熱量ましてません?」
明らかにおかしい。いくらサポートがあったにしても上がりすぎだ。
「当然、私がかけた魔法だから」
「いやそうゆう事じゃなくて、えっと……」
「うん、聞きたい事はわかる。私がかけた魔法は魔力に干渉するものじゃなくて頭のイメージにかけたもの」
「すみません、ますますわかんないです」
「ホープ、説明して。私マナのサポート行ってくる。」
ホープに投げて立ち去るコガネ。
「はいはい。えっと、魔法ってのは頭の中のイメージを具現化するって話はしたよな?」
「はいそれはされました。魔力と詠唱と魔法陣を使って具現化するんですよね?」
「そう、例えば炎を見た事ない人が炎のイメージをしろって言われても見た事ないからイメージのしようがないだろ?イメージがーー」
◯
「……?」
もう何を言っているのかさっぱりだ。
「ええ……コガネの炎のイメージをマナに分け与えてマナの炎のイメージが増したって事」
「マナさんの頭の中で、一緒になって火の魔法を放ってる……的な?」
「まぁ…そうゆう事だ」
ややこしい、ややこし過ぎる。
「魔法って難しいですね」
この世界の魔法は複雑すぎてよくわからない。
「よし!赤くなってきた!」
説明を受けている間にゴーレム全体が赤くなり始めた。
「どう、凄いでしょ」
コガネが褒めて欲しそうに2人を見てる。面倒だから無視するが。
ゴーレムの岩肌はみるみる液状化している。
「……タクマ、ちょっと来て」
「……はい?って、え、何何!?」
突然首裏を掴まれた。
「魔力足りないから借りるよ」
「……はいわかりました」
先に言ってくれ。
【音の魔力よ、乱れた魔力を正しく戻せ、調律】
コガネの詠唱。
「あれ?」
何も起こらないが?
「本当に魔法使ってますか?」
力が徐々に抜けていく感じでもすると思ったが、特に何も起こらない。
しかし、
「うおぉぉ!魔力が!減らない!!」
どうやら魔法はちゃんと発動しているらしい。
マナの感嘆たる叫びと共にますます炎の勢いが増す。
「どんくらい時間かかりそう?」
ホープが雑にゴーレムを引きつけながら尋ねてくる。
こちらに注意が行かないようにしてくれている。
「わかんない!でもなんかもう直ぐいけそうな気がする!!」
「わかった!」
「ごめんね!ありがと!!」
まだまだ勢いが増していく。




