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26話 ご機嫌取り


 翌日、すぐに実態を持たない魔物の報告に向かった。昨日スッポがしたのもあり、流石に全員で向かった。


 昨日の出来事を話したら、呼び出しを忘れた事は許してくれた。


「………そうか、武器を持って攻撃か」

 重苦しい表情になるエス。


「森に武器が散乱してたのも気になる。商人が通る道でもないし、ボロボロの武器でも買い換えるより修繕の方が安いから冒険家もよっぽどのことがない限り捨てるなんて事はしないしな……」

「……」

 エスが眉間に皺を寄せながらぶつぶつ呟いている。

「回収したいが、冒険家からしたら実入りの少ない報酬に、莫大な範囲と、単なる物広い。しかし、放っておくと小さな村を襲われる危険もある。頭が痛くなる問題だな……」


 ついていないはずのため息が聞こえてくる。


「まぁ、対策は今後考えておく。報告ご苦労」

「はい、失礼します」

 4人で出て行こうとした時、

「タクマ君、君は少し残ってくれ」

「えっと、分かりました、皆さんは先に行っててください」

「わかった、下で待ってるな」

 3人が出て行ったタイミングを測り、話題を持ち出す。


「君に聞きたい」

 いつも以上に真剣で強張った表情と声で話しかける。

「ガイア、という女性を知っているかい?」

「いえ、知りません。その女性が何か」

「いや、知らないなら良い。行ってくれて構わないよ」

「え?でも……」

「……」

「……」

「流石にそれ聞く為だけに呼び止めて、知らないなら行っていい、はちょっとないですよ」

「はぁ……わかった、話すよ」

 折れた。思い切って文句言ったら折れてくれた。

「やった!」

「真顔でそんなセリフを吐くな」


 表情とセリフが噛み合っていない。


「君達が昨日会った女性が、まぁ間違いなくガイアだ」

「まぁ、そうでしょうね」


 正直察してた。


「その人がどうしたんですか?」

「人じゃない、神だ」

「……ちょっとそうゆうのは求めてないかも」

「まぁ嘘だと思うならそれでもいい」

「……」


「信じてないな」

「信じろって方が無理ですよ」

「正直すぐに信じてくれると思ったんだがね、特に君なら。彼女と似た外見の人を知ってるんでしょ?」

「記憶にあるような気がするだけですよ?」

「それなら信じてもおかしくないと思ったのだが?」


 転生前に女性と会ったはずだが、顔だけ塗りつぶされたように思い出せないのだ。


 だから自分でも、似てると思ったのが不思議だ。


「因みに、私は君が別世界から来た人間ってのも知ってるよ」

「……マジで?」


 思わず目を見開いて1歩後ずさる。


「なんで魔法を使わないんだい?」

 なんか色々バレている。

「それは……その……」

「まぁそんなことはどうでもいい。正直この場で色々話したい事はあるけど、3人を長く待たせる羽目になってしまうからな、続きはまたいずれ話すよ。今日は少し忙しいから、もう行っていいよ。明日またここにくるよう伝えておいてくれ、それじゃ」

 そう言い残してエスは部屋を退出する。


 顔色は真っ青になっていた。

 色々引っかかる点もあるが、どうせ今色々考えたところで何も答えは出ない。


「この手の問題は異世界来て間もない人が考える事じゃないな!」


 勝手に開き直ってタクマも部屋を後にした。





「お帰り、なにを話してたんだ?」

「話したって程話してはないですよ。ただ、ガイアって女性を知ってる?って聞かれただけで……はっ!」

 確実に3人に聞かれたくないからタクマだけに話しただろうに、時既に遅し。


 恐らくあの女の気配を感じ取ったタクマだけ、もしくは、タクマが転生者だから話したのだろう。なのにうっかり言ってしまった。


「ガイア?知らないな。マナとコガネは知ってるか?」

「私は知らないかな〜?」

「私も」

「タクマは知ってるのか?」

「僕も知らないです」


 うっかり喋った贖罪も兼ねて、取り敢えず知らなかったフリをしておいた。

 さらっと話が流れたお陰でなんか助かった気がした。


「でも余計な詮索はしない方がいい」

 コガネが依頼タブレットを見ながら全員に呟く。


「別のパーティに依頼してるかも知れない。冒険家に頼めないなら暗部を使うかもしれない。なんにせよ関わって欲しくなさそうだから関わらない方が私達の為だし、ギルドマスターの為」

 コガネが淡々と語る。


 いつも説明嫌いなコガネが説明していると妙に大人っぽく見える。


「それにエスの隠し事なんてろくな事じゃない」


 成る程そっちの理由が大本命か。


「コガネが怒ってる……」

 あのマナがビビってる。

「え?怒ってるんですか?」

 全然怒ってるように見えない。というか何に対して怒っているんだ?


「はぁ……」

 露骨にため息聞こえたが、ホープが視線をタクマとマナに向けてくるのはなんなのだろう。

 視線の理由に気付かず首を傾げると、

「タクマ、私達ちょっと散歩しに行こ!」

「え!?ちょっ!?」


 マナがタクマを強引に外に連れ出す。





「マナさん!?どうしました!?」

「あはは、ごめんね!」

 ギルドから出されて武具店まで来た。

「ここでタクマの防具見てから戻ろう!」

「別にいいですけど、急にどうしたんですか?」

「まぁまぁ!」


 何故かヤケにご機嫌だ。さっきまでコガネ怖いとか言っていたのに。


「それより今日ちょっと寒いからここでゆっっくりして行こう!」

「確かに今日寒いですけどそれただの口実ですよね?」

「……」

 無視された。

 理由は後で聞くとして、とりあえず中に入る。


「「こんにちは!」」

 同時に声を上げ、店に入る。

「おぉ、久しぃな!今日は何の様だぁ?」

 武具店weapon shopの店主のゲイルの低い声が響く。

「タクマの予備の防具の買い出し!ちゃんと選んで買うんだよ!」

「……はい」

 その場で直ぐ考えた言い訳には聞こえないほどしっかりした理由だった。


 別に要らないんだが。


「そうかぁ!防具は命を守る衣だからな、ちゃんと選びな!」

 それだけ言って奥に行ってしまった。

「防具は2階だね、行こ!」

 1階では何も見ずに2階に直行した。





 2階は初めて来た。


重そうなプレートや甲冑、皮っぽいもので出来た手袋みたいなこと奴だったり、しっかり普通だ。


 RPGで見かけるあれだ。


「さて、どうしましょう!」

 正直何が良いのかサッパリだ。


 ゲームみたいなステータス表示なんてないからわからない。

 重そうなプレートはカッコいいが動けなくなりそう。革で出来てそうな奴は軽いだろうが、防御が弱そう。


「って別に予備要らないですよ?」

「いいやいるの!もし今日着てた防具がボロボロになって明日使えませんってなったらどうするつもり?」

「それは……はい」

 返す言葉も見つかりません。


 どうやらマナは既に買う事前提だったらしい。


「どうしようね!」

 マナは呑気だ。


 正直なんでもいいと思ってきている。

 結局分からなさすぎるから前着てたのと似た様な革防具っぽいのを一式買った。


「いぃもん選んだな!」

 らしい。

 何がいいのか分からない。


 とにかく分からない事だらけのこの状況を打破したい。

「はは、どうもです」

「よし!もうそろそろ戻ろっか!ありがとうございました!」

 マナがタクマを引いて退店する。


 嵐の様な時間だった。


「結局なんだったんですか?武具店行くためにギルド出た訳じゃないですよね?」

「あぁぁ……ちょっとあれはホープにしかなんとか出来ないと思うから!」

 今日のマナはずっとニコニコだ。

「……?」

 ホープにしかなんとか出来ない、どゆことだ?さっぱりわからん。


「ささ、早く戻って依頼やろう!多分コガネの機嫌も戻ってるし!」

 意図がわからないまま再びギルドに戻ってきた。





「どこ行ってたの?」

 機嫌が直ったっぽいコガネが尋ねてくる。

「ちょっと野暮用!機嫌直ってよかった!じゃあチャチャっと依頼終わらせよう!」

「あれ、タクマ、その防具!」


 ホープが目を見開いて買った防具を見てる。


「あぁこれ、ちょっと着替えてくるので待っててください」

 それだけ言い残して個室に向かう。

「おいマナ!なんだあのタクマの防具!めちゃいいもんじゃん!」

「やっぱそうなんだ!店主もそんな感じの事言ってたし!」

「あれ、てっきりマナが選んだものかと?」

「私ローブはともかく防具には疎いからさっぱりなんだ!」


 そもそもこのパーティに防具に詳しい人はホープしかいない。

 なので選んだのがたまたまいいものだったのは幸いだ。


「すみません、戻りました」

 チャチャっと着替えを済ませて合流する。

「よし、行くか!」

 タクマとマナがいない間に依頼内容は決めていた。


《砂地に人間みたいな魔物がいる。どうにかしてほしい》


 大分意味がわからないが引き受けた。ホープとコガネもわかってなさそうなので行ってからのお楽しみにだ。

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