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22話 ギルドマスター

 決着は思ったより早かった。

 というか一瞬だった。


 鐘が鳴った途端に剣尖を向け突進して来る。


 猪突猛進ボーイ。いやあの曲はガールか。


 ダメだくだらないこと考えてる暇はない。


 剣を軽く撃ち払い、突進の勢いを利用して回転して回避する。


 その回転した勢いを利用して様子見がてら風の力を込め一閃。威力はないがカマイタチがノウンを襲う。


「くっ!?」

 そして直撃。


 え、直撃?


 ホープなら絶対に避けるか捌くかしているので、少し意外だ。


 が、所詮は真似事魔法。怯む程度。


 再び攻めて来る。多分同じ手は通用しないからタクマも同時に攻める。


 剣が撃ち合うだろう瞬間に体を思い切り屈める。

 ノウンは当然対応は出来ず、勢いに任せて突っ込み、思い切り飛び込むように倒れる。

 念の為背中を足で押さえ、そして倒れたノウンの喉元……がない。


 うつ伏せだったから頸に剣尖を突き立てる。


「僕の勝ちです」

 倒れたノウンに勝利宣言。


 一緒に戦っている相手が2つ名持ちで化け物級の強さのせいで呆気なく感じる。


 というか絶対侮って相手してただろ。

 何が本気で行くだ!


 タクマが熟練者相手に勝てるわけがない。


「……」

 未だに殺気を放っているノウン。

 少し後退り、

「怖いんですけど?」

 突如首に向かって剣が飛んでくる。

「やばっ!」

 思わず体を屈めるが、

「そこまでだな」

 ザザが素手で止める。

「……」

 殺気を収めないノウン。


「僕、なんか恨まれる事しました……?」

 ザザに尋ねると、

「同じ新人なのに完敗したのが悔しいんだよ。許してくれ」

「……」

 あんたも新人かい。


 玄人感満載だったのは気のせいかよ。


「ザザ、邪魔」

 ノウンの殺気はタクマからザザへと移っていた。

「お前が殺意と剣を納めたら邪魔しないよ」


 どのチームでもリーダーは苦労するものなのだろうか。


「見事だ!」

「凄かったよ!」

 周りの人が拍手する。

「あはは、どうも」


 雑に笑って返すが、状況は笑えない。


「……」

 黙り込み続けるノウン。


 マジでなんなのこいつ、本当になんか恨まれる様なことしましたか?


「帰る」

 剣をしまい、訓練所を後にするノウン。

「ま、待って、ノウン!」

 とレイが呼び止めるが、

「止めなくていいよ、どっちにしろここを出なきゃいけない時間だし」

 ザザの見ている時計を見つめると、利用時間残り2分の文字が浮かんでいた。


「じゃあ、僕はこれで、失礼しました……」

 ノウンが怖いから逃げる様に立ち去る。


 まぁ既にそこにはいないんですけどね。


「あぁ、ちょっと、青年!」」

 とリリィがタクマを呼び止めようとするが去ってしまう。

「リリィどったん?……は!タクマ君の忘れ物……」

 リリィとネイヴィスの見つめる先には、試合の為に置いた剣があった。





「はぁ……」

 疲れてたから休みにしたのにもっと疲れた。

「「おーい!タクマ君!」」

 後ろからカナエとカナデが声をかける。


「あれ、どうしました?って、あ!剣!」

 来た理由を察したタクマ。

「そうそう!君の忘れ物!」

「危なかったね!」

 カナエとカナデが剣を渡す。

「ありがとうございます、助かりました」

と謝罪し、個室に向かおうとすると、

「タクマ君!」

 今度はザザが止める。

「これ、ノウンがホープに渡しておいて欲しいそうだ」

 タクマに1枚の紙を渡す。

「はい、わかりました」

 手紙を受け取り、立ち去る3人。

 少し中を開いて見ると、


『果たし状』


 の文字が見えたのでそれ以上開くのをやめた。


 ヤバイもの受け取った気がしてならない。

 マジでなんなのだろうか。





「ただいま」

 活気のない声でドアを開け、リビングに行くと、

「やぁ、またあったね」

 エスがいた。

「エスさん、どうもさっきぶりです。用事ってここだったんですか?」

「丁度いい。これから本題に入るところだったんだ。君も聞くといい」

「え、これから本題?」


 さっきエスと別れてから大分時間が経っているが。

「まぁ、えっと……」

 ホープは苦笑いしている。

「「ごべんなざぃ…」」

 マナとコガネが泣きべそをかいている。

「この2人、呼び出しを蹴ったんだよ….」


 2人に哀れみの目を向けながら教えるホープ。

「え、でも僕も昨日……」

「昨日のことじゃないんだ。1週間くらい前かな、色々あって呼び出したんだが、結局私が此処に出向くことになった」

「……」


 めちゃ自業自得だな。


「なんというか……大丈夫ですか?」


 ボロクソに泣いている。なんか凄い哀れ。


「放っておけ。本題に移らせてもらう」

 挨拶の時の柔らかい声とは裏腹に、緊張感を纏った声で話し出す。


「先程、タクマ君以外には少し話したが、君たちが遭遇したと言う奇妙な女についてだ」

 昨日会った、巨大なワームをペットと呼んでいたあの女。


「タクマ君、君だけが女の気配に気づいたと聞いているが、あの女とどこかであった、或いは、感じた事のある気配だったか?」

「あの女性とあったことはないですけど、どっかで会ったことあるような、気がする、ようなって感じです」


 確か転生する前に出会った女性と同じ顔だったような気がする。流石に1度あっただけの人の顔を明確には覚えていない。


 明確に覚えてないというのもあるが、顔だけ記憶から塗りつぶされているような気もする、ような。


「どこで感じたかわかるかい?」

 グイグイ聞いてくる。

「そこまではちょっと……」

 流石人転生する前に会った気がします!って言ってもなぁって感じだ。

「そうか」

 悩み込んでしまった。


 なんか、申し訳ないことをした気分だ。


「エスさんは心当たりあるんですか?」

「ある。が、今は関係ない事だ」

「心当たりがあるのに、関係ないんですか?」


 ちょっと突っかかってみると、

「ああ。君たちには関係ない事だ」

「……」

 強張った口調で返すエスに黙り込んでしまうタクマ。


 どうやら話す気はないらしい。


「……」

 なんか怖いな。

「大丈夫か、タクマ。顔色悪いぞ」

 ホープが椅子でぐったりしているタクマの背中を叩く。


「大丈夫です。部屋に戻ります」

 と答えるが、正直大丈夫じゃない。

 エスとの話の最中で離脱してしまった。


 非常に申し訳ないことに、タクマの顔色の悪い原因は、寝不足の中ノウンと1戦交えたからなのだが、流石に今回は好意に甘えておこう。


 いくらなんでも辛すぎる。疲れすぎた。





「1人居なくなってしまったが、続けさせてもらう」

 余裕のない声で話を続ける。


「エス、何か知ってるんでしょあの女性のこと」


 まるでマナらしくない強張った声が響く。


「言っただろ、君達には関係ない。私の問題だ、君達は私の問題に巻き込まれただけ、それだけだ」

「でも!」

「話を続けたいんだが?」

「……」

 無理やり黙らされた。


「後でタクマ君にも伝えておいて欲しい、君達には普通の依頼の他にやって貰いたい事がある」

「それって私達じゃないとダメなの?」

「私が信頼しているチームが君達くらいなもんでな」

 安易な褒め言葉だが、誰もご機嫌な顔になる事はなかった。


「私達のチーム今新人いるんだけど?」

「彼は強い。それに君達がいれば別に何も問題ないだろう?」

「そうゆう問題じゃー」

「そうゆう問題じゃないなら彼は今頃死んでいるだろ?君達がいるから問題ないんだよ」


 コガネの横槍も無理やり黙らせた。


「それに、マナが初心者の頃よりもずっと肝が据わっているようだしね」

「……なんで私?」

「いいやなんでも。とにかく今日はあまり聞く気がなさそうなもんで、明日私の下に来なさい。そこで話す。では失礼」


 結局進展することなく帰ってしまった。


「どうする?」

「…明日行くしかないだろ。断ったら信用問題だしな」

 答えは出ていた。

「……」

「コガネ、心配なのはわかるよ?でも」

「うんわかってる。タクマに無茶はさせない」


 そして、重い空気が振り払えないまま明日を迎えることになった。

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