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17話 強さと弱さ


 自由な1日は終わった。


 そして今日は休みでも何でもない日なので依頼を受けにギルドに向かうのであった。

 まだ新人であるタクマがいるのでそう大した依頼は受けないが、仕事なのでやるしかない。


 その筈なのだが、

「簡単な依頼が……ない」

 タブレットを何度もスライドさせながらコガネがぼやく。

「参ったね」

 頭を抑えるのはホープ。

「どうする?」

「何故マナさんは僕の方を見て言った?」


 造花のリーダーであるホープ言うべきセリフだ。


「ちょっと見せて下さい」

 コガネが持っているタブレットを横目で見てみると、


《タールまで護衛を頼みたい》

《王都の道の途中にオーガの群れがいる》

《巨大なスライムが通行の邪魔をしている》

《森に大きな蛇がいた。どうにかしてほしい》


 などなど。


 残念ながら素人のタクマが見ても、難しいのかわからない依頼が並んでいる。

「この中で1番簡単なのってどれですか?」

「これ」


《タールまで護衛を頼みたい》


 タール。谷間に栄えたコガネの故郷だ。

「じゃあ、これでいいんじゃないですか?」

「絶対嫌、この依頼受けると4日はここに戻れない」

「マジか……」

 タクマのぼやきに、

「マジだ……」

 同じノリで返すコガネ。


 この人案外ノリいいのかな。


「タールまで1日半かけて行き、物資を届けた後、向こうで1泊。そしてネオンまで1日半かけてこっちに戻ってくる。何事もなければそんな依頼だな」

「ちょっと大変そうですけど、4日ならまぁ何とかなるんじゃないですか?」


 そう大した苦悩と感じていない。


 そう呑気な事を言っているタクマに、

「もう1度言うぞ、何事もなければ4日なんだ、何事もなければ」


 何事もなければを異常に強調してくるホープ。


「つまり、大抵何事か起こるんですね……」

「うん、あと野宿が嫌だ」

 コガネが補足する。


 というか野宿嫌が9割占めてるだろ。


「これ、受付の期限いつまでなんですか?」

「当日まで」

「当日までに誰も依頼受けなかったらどうなるんですか?」

「1人で行く」

「え、それって!?」

 心当たりがある。転生して最初の出来事。


 護衛も誰もいないのに王都に向かった行商人。ゴブリンに襲われた行商人。


「多分タクマ君が今想像した通り。かなり危険だけど1人で行く事になるね!ゲイルさんの弟さんみたいに」

「まぁ、王都は此処からそんなに遠くないし、危険なのはあの森くらいだからそう大して厄介じゃないんだ……」


「でもタールは遠い。だから危険」

「それじゃあ、やった方がー」

 タクマが言いかけたところで、

「でもね、冒険家をやっているのだって人だからね。出来る限り危険は侵したくないんだよ。だから数日戻ってこれないような護衛の依頼は人気がないんだ」

 マナは苦笑い、いや、諦めのような乾いた笑みを浮かべながら補足する。


 常に命を賭けて仕事をしている冒険家。


 パーティを組んで守り合う規定があり、人数が少ない。


 自分の命を軽く見ていない。


 だからこそ、リスクの高い依頼は人気がない。


「なんか……納得です」

 それでもモヤモヤする。

「でも、それでもー」

 やろうと言おうとした時、

「あれ?」

 タブレットから受諾完の文字が現れた。


「あら!取られちゃったね?」

「え、取られたって?」

「タクマの返答次第でこの依頼を受けようと思ってたけど、別のパーティが受諾したね」


 この依頼、受けようとしてたんだ。


「どうする?もう本当に簡単なのないよ?」

 マナがタブレットを弄りながら問う。


 まだタクマが初心者なので簡単な依頼しかやってない。タクマ自身もまだ難しい依頼をやりたいとは思っていない。


 だが、

「難しいクエスト受けてもいいですよ」

 少し軽い口調で3人に言うタクマ。

「俺らはいいけどタクマが……」

 ホープが何か言ったところで、

「僕なら大丈夫です。これから沢山依頼をこなして、皆さんに鍛えて貰って、いつか難しい依頼もやらなきゃいけない時もくると思うので、今日がその日って思えば大丈夫です」

「でも……」

「いいと思う。難易度の高い依頼受けても」

 今度はマナが何か言おうとしたが、コガネが言葉を遮った。

「……」


 タクマを見つめ、沈黙を続けるホープ。


「大丈夫です。ヤバかったら逃げて全て任せます。なんなら今回は見学だけってのも?」


 ずっと見つめてくるホープに語りかける。


「多分、マナとホープが思っている程、タクマはもう弱くない」

 タクマをフォローするコガネ。


 気持ちの面の強い弱いを言ってくれているのがわかったからか、嬉しいし安心も出来る。


 しばらく黙りが続いた。


 そして、

「わかった。その代わり、ちょっとでもヤバイと思ったらとにかく逃げろ、自分の身を守る事だけ考えろ。それでいいな?」


 余程心配なのか、強めの口調だった。


「おっけいです!」

 ホープとは反対に、軽い口調で返す。

「これなんてどう?」

 依頼タブレットをホープに渡すコガネ。


 依頼内容は、


《森に大きな蛇がいた。どうにかしてほしい》


 相変わらず漠然としている。


「森に大きな蛇とは、異世界というよりかファンタジーですね!」

「え、どうゆう事タクマ君?」

 何故かマナが食いついて来た。

「そのまんまの意味です!」

 華麗に流した。


「この依頼かぁ……この依頼やるの?」

 頭を抱えるホープに、

「何か不味いんですか?」

 何も知らないタクマ。

「この依頼、難しいの」

 コガネが依頼タブレットを見ながら眉間に皺を寄せている。

「それは反応見ればわかります……何が不味いんですか?」

 再度聞き返す。

「この依頼の相手が……ね?」

 重い口を開くマナ。


「多分ワーム。最強の生物ドラゴン。その幼虫」

 コガネが珍しく説明してくれる。

「あぁ……マジか」

 最強の生物とはなんともまぁ不穏な響きである。


 こう言った類の敵はクソ雑魚か、わけわからん強さの2択だが、反応を見るに恐らく後者の説が濃厚だろう。


「じゃあ他の依頼の方がー」

「他はもっとダメ、相手が複数だとタクマ守りながら戦えない」

 らしい。


 確かに分散して戦われたら1vs複数になってしまう。タクマに複数を相手する力なんて備わっていない。だったら多少強くても相手が1体だけの方がいいとの考えだろう。


 暫く沈黙が続く。


「タクマがいなかった時、私達はこんな依頼ばかり受けてた」


 コガネが沈黙を破る。


「でも、タクマとあって、オークの依頼を受けた時、命を奪う怖さを思い出した。この数日で気づいた。私達、タクマと出会うまで、自分の命を軽く身過ぎてた。強くなったからって調子に乗ってた。だから多分、あの時、リラも……」

「……」


 何か必死に語っているような感じがする。

 普段あまり話さないからだろうか、それとも、リラという人が関係するのだろうか。


 今は知る由もない。


「今は……本当はタクマに無理させたくない。でも、私達は冒険家。命を張って、都市を、皆んなを守る仕事。だから……その……」

 最後に言葉を詰まらせるコガネ。


 でも言いたい事は3人に伝わっただろう。


「……そうだな。コガネの言う通りだ。タクマに無茶させない事ばかり考えてたな。やってみるか!この依頼!」

 どこか吹っ切れた表情になるホープ。

「マナは?」

「……」

 いまだに沈黙を続けているマナ。


 そして、

「わかった。いいよ!この依頼受けよう!それに、こういう依頼出来るの私達のパーティくらいだし!」

 こちらもどこか吹っ切れた感じがしていた。


 その頃合いを見て、

「わかりました。皆様の予想通り、討伐対象はワームです。本当に危険なので気をつけてください」

 受諾しつつも、心配そうな声をしている受付人。


 この人も、送り出すのは不安なのだろう。


 それでも、4人は行かなきゃいけないし、受付人は送り出さなきゃいけない。


 相手はワーム。幼虫とはいえ、最強の生物ドラゴンの子。


 オークやゴブリンの時以上に腹をくくり、森に向かう。





 マナとコガネは更衣室でローブと杖を取りに行った。タクマとホープは暫く待ち時間。


適当に話しながら座って待っていると、

「タクマさん」

 受付人がタクマを呼ぶ。

「すみません、少し席外します」


「此方をどうぞ」

 渡されたのは、

「……なんですかこれ?」

 なんだこれ?

「装備です」

「……まじで?」


 無償でくれるのか!?


「お、出来てたのか!」

 ホープが横から覗いてくる。

「え、出来てた?」

「マナの案でな、俺達で頼んだんだ、タクマに装備一式揃えてくれって」

「……幾らしたんですか?」

「いやそこじゃないだろ……」


 現実的な反応をしてしまった。


「値段は後で聞くとして、着替えて来ますね!」

 それだけ言って更衣室に向かう。

 そして速攻で着替える。


「うぉぉ……!」

 個室で着替え終え、鏡を見てみる。


 軽くて丈夫な靴。


 少しダボっとしていて動きやすい長ズボンと7部丈のシャツ。


 腰に添えられた剣。


「やべーな!」

 今まで、とはいえ2日ホープのを借りていたが、遂に自分のが手に入った。


 自腹じゃないけど。


「よし、頑張ろ!」

 両手で頬を叩き、気合を入れ、個室を出る。

「あれ、タクマ君も来てたんだ!」

 出た先にローブ姿のマナがいた。

「はい、ちょっと装備をもらったので!」

「あ、出来てたんだ、よかったね!装備一式貰っただけで超ウキウキするの初々しいね!」

「これ幾らしたんですか?」

「もう、お金なんて気にしないの!」


 高かったのだろうか。


「分割払いじゃないと買えない値段」

 更衣室から出てきたコガネがなんかやばい事言い出した。

「嘘つかないのコガネ!大丈夫、タクマ君が心配する程の値段じゃないから!」


 それなりって感じの値段らしい。


「これ本当に貰っていいんですか?」

「要らないなら捨てるよ?」

「有り難くもらいます!」

 もうお金は気にしないでおこう。


 ちなみに、ホープは私服も装備も武器も家で管理しているから個室は使わないらしい。


 そんな感じで受付に戻り、ホープと合流する。


「お待たせ、じゃあ行こっか!」

 3人で受付にいたホープと合流する。

「タクマ、しつこいようで悪いが、やばいと思ったら絶対にすぐ逃げろよ。依頼の達成も大事だが、生きて帰るのが一番大事だからな」


 余程心配なのかホープが両肩を強く掴んで強く念押ししてくる。


「大丈夫です、絶対やばくなる前に逃げます。それより皆さんも気をつけてくださいね?」

 凄い不安になってきた。

「大丈夫、タクマいなくても勝てるから」

「……」

 心配してくれてるのはわかるが、コガネのそのフォローが酷すぎる。


 人によっては嫌味にしか聞こえないだろ。

 でも心配してますオーラが顔から出てるからなにも言えない。


 そしてギルドを後にして、4人で目的地に向かう。


 場所は森の中という情報しか無いが、商人が見つけているため、そこまで探すのに苦労しないだろうと楽観視して、森の中へと向かった。

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