15話 休みの日
今日は正しくおはようございます。
体を起こし、立ち上がり、下に降りる。
リビングにはまだ誰もいない。
時計は6時半を指している。
朝練感覚で早く起きたのだろうか。
いや、昨日寝るのが早すぎただけだ。
それに朝練があったとしても30分遅刻だ。今頃慌ててる。
「……うそ」
たった今、前世の事を考える気持ちの余裕に気づいた。
そういえば、この世界に来てから張り詰めっぱなしだった。
やっと、他ごとを考える余裕ができたのだ。
「あれ?タクマ君、おはよう!今日は早いね?」
後ろからマナが来る。
「おはようございます。ちょっと早く目が覚めちゃって。というか、昨日、一昨日が遅すぎただけで…」
先日の起床時間を思い出して自分に呆れる。なんだよ9時起きって、大遅刻じゃねーか。
「そっか、起きて早々悪いけどちょっとお手伝いお願いしてもいいかな?」
「全然いいですよ?」
「ありがとう!じゃあ、朝ごはん作って!私シャワー行きたいから!」
「……」
「マジか!」
思わず声を上げる。
「行っちゃったけど、料理出来ないんだよな」
多分カレー作ったせいで料理出来ると思われたんだ。
あんなもの具材茹でてカレーの素入れれば完成する代物なのに。
「よし!作ろう!」
ノリと勢いで出来る料理ってカレー以外になにかあるはずだ。
◯
「おはよう。今日は早いな」
「ホープさんおはようございます。早く目が覚めちゃって」
のんびりマナを待っているうちにホープが降りてきた。
「マナはシャワーか……長くなるな……」
壁越しにシャワー室を遠い目で見ながら呟く。
「……おはよう」
今度はコガネが降りてきた。
「……」
髪ボッサボサで巨大な隈に細っそい声。
「おはようございます……」
反応に困るが、挨拶は大事だ。
「今日も……夢の中で説教を?」
と聞くと、
「うん、ずっと怒られてた。タクマにも殴られた」
「いや殴ってません。平然と嘘つかないでください」
「ううん、殴られた。夢の中で」
「それは知りません」
もう呆れるしかない。
「そんなことより、朝ごはん食べよ!」
いつのまにか戻ってきたマナが言う。
「ごめんね、作ってもらっちゃって!」
「全然大丈夫ですよ!早く食べましょう!」
茹でた卵とソーセージ、焼いたパンに生野菜。料理という料理をしていないから失敗するはずがない。
「「「頂きます!!」」」
また1日が始まる。
◯
「そうだ!今日の依頼でー」
とタクマが言おうとしたところで、
「あぁ、今日は休みだ」
ホープが話す前に横槍を入れる。
「私達は3〜4回依頼こなしたら、1回休みを入れてる。昨日で3回依頼こなしたから今日は休み」
コガネが続けて話す。
「ホープさんに聞きたいことあったけど、明日でいいか」
どうせ大した内容ではない。
「この日は自分のやりたいことやったり皆んなで出かけたり、かなり自由なんだ!いわゆるメンタルケアって奴だね!ちなみに私はやる事なくて困ってます……」
「……」
後半の切なげなトーンは気にしないでおこう。
「私はー」
「音楽ですね!ホープさんは何するんで………」
コガネが頬を膨らましてる。
めちゃ怒ってる。
「すみません、コガネさんは何するんー」
【音の力よ、その重さを持って憎き、憎き、憎っくき敵を潰せ、ぺサンテ】
◯
「すみませんでした」
現在、土下座で謝ってます。
急に体が重くなった。
というか何かに潰されそうになった。
ギャグアニメなら完全にペシャンコになっていた。
「私はピアノかな。ホープは?」
「俺は部屋で読書かな。読みたい本とかまだあるし」
「本ですか、なんかちょっとだけ意外です」
勝手なイメージだが本を読む人ってあまり集団行動やら運動やらが得意って感じではない。
どちらかというと、教室で1人で本を読んでいる頭いい系なイメージだ。
とは言ってもタクマもよくライトノベルとか読んでいたからそうでもないか。
「やっぱり変か?」
何故かやけに切ない表情をしている。
「いや、変じゃないと思いますよ?僕もたまに読むので」
「本当か!なら良かった」
「……?」
やっぱりってどうゆう事だろう。以前に言われたりしたのか?
それともこの世界で本を読むのは女子の特権みたいなところがあったりするのか?
少しとはいえ本を読む身としてはいつかは知っておきたい事案だ。
「僕は、都市をぶらぶらしようと思います。まだネオンに来て3日目ですし、知らないところが多いので、ちょっと散策がてら」
「私はどうしよう?」
マナらしくない活気のない声が聞こえた。
「ご馳走さま」
食器洗い、片付けて部屋に戻るコガネ。
「ご馳走さまです。よし、俺も戻るな」
ホープも食器を洗い、片付け、2人に一声かけて部屋に戻る。
無慈悲な2人だ。
「ご馳走さまです。もし良かったら一緒に来ます?」
マナに声をかけてみると、
「別にいいよ。やる事あるなら邪魔したくないし……」
絶望に満ちたマナの声が広がる。
「別に邪魔だなんて思わないですよ?もしやる事がなければ案内してください!」
少し言い換えて頼んでみると、
「本当に!いいの!」
希望に満ちたマナの声が広がる。
「はい、是非お願いします!」
異世界に転生して3日目。まだまともに家の場所も把握出来てない。
というか、転生して1日2日で全てを把握する他の異世界主人公が凄すぎるだけだ。
「なんですか、完全記憶能力でも備わってるんですか?1度行った場所ならワープも自由自在てどうゆう事やねん。こっちは徒歩だぞ徒歩!僕にはそんな能力持ち合わせていない!それにこっちは魔法陣と詠唱が絶対必須なのに、ポンポンと最強魔法を使うんじゃない!」
なんて文句言っても始まらない。
「ゆっくりでいいのでこの都市を知っていきたいと思います」
「うん、その方がいいよ!一気に全部知ったってつまらないし!」
まぁなんて理想的な答えを返してくれるんだ!
やっば、この子女神だ。
「よし!行きましょう!いろんな場所教えてください!」
張り切って家を出る。
◯
張り切って家を出たはいいが、
「どうやって都市を見て回りましょう?」
マジで無計画。
「取り敢えず、頻繁に利用する場所案内するよ!ついてきて!」
「わかりました、お願いします!」
そして真っ先に向かった先が、
「まずはここ!」
「……」
「どうしたの?反応薄いね?」
「どうしたのこうしたも、ギルドじゃないですか?」
案内も何もない。
もう既に訪れている。
「そう、ギルドだよ!タクマ君はまだギルドのほんの一部しか知らないからね、まず案内するならギルドしかないでしょ!」
「まぁ頻繁に利用すると言う意味では確かに1番案内して欲しいですけど……」
最初どこ行くんだろうのワクワク感が台無しである。
「さ、入ろ!」
そしてタクマは目の当たりにする事になる。非常に大きいギルドの内部を。




