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47.預言者は全力で聖女様を消すつもりです

 ティアの前から姿を消した預言者レイ・オニキスは、隠された街ダイアトに来ていた。

 聖都ケイテルの南に位置するこの街に入れるのは、真に神に選ばれた者のみ。

 そうでない者は、そこに街があることすらわからない。ある程度の距離まで近付くと、なぜかそれ以上進みたくなくなる。

 そんな不思議な力――神の力――で、街は人の目から隠されているのだ。


 ダイアトにいるのは、レイだけではない。

 普段は無人のこの街には、マルクト聖国内で活動している聖女――その多くは各国から半ば強奪した聖女――の大半が集められていた。

 その数、およそ300名。多くが人間だが、エルフやドワーフ、獣人も混じっている。


 聖女たちは中央広場に集っており、そこにレイが瞬間移動してきた形だ。

 レイは聖女のリーダーに尋ねる。


「テレーザ殿、準備はできていますかな」

「見ればわかろう。ちゃんとできておる」


 レイに返したのは、エルフの聖女テレーザ。

 アニメでは白く塗られそうな銀髪の彼女は、大人のお姉さんでエロフ体型である。実年齢は非公開だ。


「わかりました。それでは、移動しますよ」


 レイはアイテムボックスから光沢のない黒い杖を取り出し、左人差し指で複雑に表面をなぞった。

 それは、彼にとっては慣れ親しんだ動作。ゲームでウインドウを開き、メニューを選択するのと同じ動きである。


 レイの足元が輝き、瞬間移動の魔法陣エフェクトが現れた。

 それは、彼のみならず、聖女たち全員をカバーする大きなもの。


 レイと聖女たちは、頭から足へと、アニメの変身シーンを思わせる虹色のシルエットに変わり、程なく姿を消した。


  ☆


 レイたちが現れたのは、シアターホールを思わせる空間だ。客席数は500程度だろうか。その後ろには、VIPルームがある。

 前方には大スクリーンがあり、マルクト聖国の大聖堂が映っている。


「来たか、レイよ」

「ああ、打ち合わせ通りに頼む」


 レイを迎えたのは、イケボの男性。

 顔が影で見えないのは、読者に正体を知らせたくない時のお約束だ。


 レイは聖女たちに向き直る。


「それでは皆さん、椅子の上にある物を頭に被って、着席してください」


 聖女たちはVR用ヘッドセットに酷似した物を被り、そして席に着く。ひじ掛けを隣と共有しない、ゆったりした作りだ。


「そろそろ、決着がついた頃でしょうかね」


 レイは杖を持ち、メニューを選んだ。

 スクリーンの右半分の映像が、ティアとデーモンロードの戦いに変わる。

 背景の映り具合から見て、真新しい神像の目がカメラになっているようだ。


「これは、思っていたより健闘していますね。ですが、もういいでしょう。皆さん、祈ってください」


 事前に説明済みだったのだろう。

 聖女たちは、一心不乱に祈り始めた。

 その思念と魔法力は、ヘッドセットを介して謎の巨大装置へと送られる。そこで魔動まどうエネルギーへと変換され、蓄えられるのだ。


 レイは謎の男に告げる。


「こちらの準備は完了だ。後は任せる」

「承知した」


 レイと謎の男はVIPルームに入った。



 VIPルームの中は、調度が豪華な指令室。

 謎の男の部下たちが、起立して二人を迎えた。


 レイは悠然と一番後ろの席に着席。

 謎の男は一番豪華な席に座り、命令を下す。


爆散魔動砲ばくさんまどうほう、発射準備。目標、マルクト聖国大聖堂」

「了解。爆散魔動砲、発射準備に入ります。目標、マルクト聖国大聖堂。魔動エネルギー充填開始します」


 攻撃部門の長が、命令を復唱。

 このやり取りは、館内中に聞こえている。


 攻撃部門の長は、モニターを見ながら状況を伝える。


「エネルギー充填50%……80%……100%……120%。爆散魔動砲、発射準備完了しました!」

「よし。爆散魔導砲、発射せよ」

「了解。爆散魔動砲、発射します。総員、対閃光防御」


 発射命令を受け、全員がゴーグルを着用した。


「カウントダウン開始。爆散魔動砲、発射10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2、1。爆散魔動砲、発射!」


 パンゲイア大陸の西部から、強大なエネルギーが放たれた。


 まっすぐ天に向かったエネルギーは大気圏外まで上昇。

 そこで何かに当たって反射したかのように方向を変えることを繰り返し、聖都ケイテルを襲った。


 大聖堂の真上から降下したエネルギーは、上空で一部が拡散。隕石群のように降り注いだ。

 一方、メイン部分は大聖堂を直撃し爆散。ケイテルは大きなクレーターに変わった……。


「目標の消失を確認。作戦は成功しました」

「うむ。上出来だな」


 部下の報告を受け、謎の男は満足げにうなずいた。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 今回は三人称視点でお送りしました。

 私の場合、三人称視点だと淡々とストーリーを追うだけになりやすいので、普段は避けてます。

 でも、今回はレイ視点だと無駄に長くなりそうだったので、こちらにしました。


 爆散魔動砲ばくさんまどうほうは、拡散波動砲+反射衛星砲のイメージです(笑)


 お知らせ

 現在、間章~第四章導入部の再考中です。

 次回の投稿は、遅れるかもしれません。

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