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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第十六章

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邪神

 雷に撃ち抜かれ、半壊する新築の魔王城。


 惨状を前にして、リリヤとアリサは唖然とした。


「また……くるっ!」


 建物じゃなく、空を見上げていたおれはいち早く異変を察した。


 黒めく空、轟く雷鳴。


 稲妻が――落ちてきた!


「くっ!」


 とっさにDORECAをかざし、空中に石の家を緊急生産。稲妻がそれを撃ち抜き、一撃で粉々にした。


「すごいパパ様!」


「ありがとうですのお兄ちゃん」


「二人ともおれの背中に隠れてろ! あんたもこっちに来い!」


 母娘奴隷を背中に隠し、女神(仮)を呼ぶ。


 その間もおれは目をそらさなかった。


 空はまだ唸っている、色がますます不吉に染まる。


「いきなりなにが起こってるんですの? どうなってるんですの?」


「……」


「お兄ちゃん?」


「多分……これは」


「これは、なんですの?」


 ちらっと女神(仮)を見た。腰を抜かしてままこっちに来れてない、その姿を見てるとまた怪しくなってくるが……。


 が、彼女が本当にあの女神であるという前提が正しいとしたら、一つの可能性が浮上する。


 それは――。


「ふ、ふふふ」


 どこからともなく笑い声が聞こえてきた。


 声は辺り一帯にこだまして、奴隷の二人がおれにしがみついた。


「な、なんですのこれ」


「パパ様……」


 それは――正しかった。


 嫌な感じを伴って全身にまとわりつくような笑い声。聞き覚えのある男の声。


「ふはーはっはっはは!」


 次の瞬間、空から人がふってきた。


 ゆっくりと、立ち姿のままおりてくる。


 両手を広げてまっすぐ伸ばした足でつま先まで揃えて。


 その姿から「降臨」というフレーズが頭に浮かんだ。


 しつこさに定評のある――聖夜。


 おれの前にゆっくり着地した聖夜は、前にあった時の邪神の姿のままだが、何かが違う感じがした。


 なにが違う? どう違う?


 強いていえば……オーラ? 

 今までとまったく違うオーラが聖夜から感じられた。


「久しぶりだな、秋人」


「聖夜、やっぱりお前か」


「なんだ、予想はついてたって顔だな」


「彼女が本物ならな」


 女神(仮)をちらっと見る。


 いや、邪神の聖夜が現われた時点で、(仮)はもうとっていいだろう。


 彼女は間違いなく、あの女神だ。


「その見た目、普通のよりも遙かに強いサル、そしていま空からやってくるお前。これだけ揃ってればなにが起きたのか想像がつく」


「ほう」


「女神の力、手に入れたんだな」


「そおだ!」


 笑みを浮かべる聖夜。


 母娘の奴隷が「ひぃ」って声を揃えておれにしがみつくくらいまがまがしい笑み。


「おれは考えたよ秋人、なんでこのおれがお前に勝てないのか。邪神の力まで手に入れたおれが、なんでお前なんかにに勝てない理由を考えたよ」


「……」


「何だと思う? 秋人よ」


「解答用紙をぶら下げて答えを聞くのかお前は」


「相変わらずむかつく野郎だな、お前は」


 嗤う聖夜、言葉とは裏腹にやたらと上機嫌だな。


「そう、この女神の力だ。お前が強いのは結局そいつの力をもってるからな」


「お前もあの時もらってただろう。ライサと一緒に」


「ちがうな、それは違うぞ。おれがあの日もらったのは劣化したまがい物だ」


「は?」


「同じ奴隷を持つのにどうやってもお前の十分の一、いや百分の一の力しか出ない。何故か? まがい物だからさ」


「……」


「お前が何をしてその女に取り入れて、歓心を買ってひいきしてもらったのかは知らん。今となっては興味もない。重要なのは本物を手に入れるにはどうしたらいい、ってことだ」


「……」


「本物を手に入れるにはどうしたらいい? 簡単さ、そいつを殺して手に入れれば良いんだ。そしておれはそうした。簡単だったよ。邪神の力だけじゃたどり着けなかったが、邪神の力をもったおれは簡単にたどりついた。オリジナルの邪神でさえもなしえなかったその女――女神を殺すことが出来た。そして、力を手に入れる事ができた」


「そうか」


 また女神をちらっと見る。今の彼女から力の類はまったく感じられない。


 ただの人間、ただの女のようにしか見えない。


 邪神が地上を滅ぼしたころ、彼女はきっとあそこで見てたんだろう。


 邪神の力さえも届かないあそこで。


 それを別の世界の出身で、一度は行った事がある聖夜が攻め込んだ。


 なるほどな。


 その聖夜は両手を広げて、恍惚した顔で空を見上げる。


「今ならわかる、感じる、そして出来る!」


 顔がよりまがまがしくなった。


「なにができるっていうんだ?」


「地上の人間すべてを、奴隷にするのよ」


 静かに、しかし力強く言い放つ聖夜。


 眉をしかめた。自分でも顔が強ばったのが分かる。


「地上の人間全員を奴隷にすれば、おまえの力を余裕で越える。そう思わないか秋人よ」


「……」


 まずい、それは非常にまずい。


 地上の全員を奴隷にする、多分それはエターナルスレイブだけじゃなくて、普通の人間もそうするって事だ。


 魔力の還元無しに聖夜がそう考えるとも思えない、つまりそこから力を得られる算段がある。


 人間全員が奴隷になれば、例え聖夜のやり方でも膨大な魔力になる。


 それは……まずい!


「……お前をここで止めなきゃならないようだな」


「出来るか? 今のお前に。武器もない今のお前に」


「それでもやるさ」


「ふっ。なら肩慣らしだ。今のお前を軽くひねってやる」


 邪神聖夜が手をあげた。おれはDORECAを取り出した。


「お兄ちゃん!」


「パパ様!」


 二人の声が切羽詰まってる。状況がヤバイのが二人にも正しく伝わってるみたいだ。


「やるぞ、手を貸してくれ」


「はいですの!」


「任せるだの!」


 頷く二人。奴隷がいればなんとかなる。


 と、おれが思った――次の瞬間。


 黒めく空が光った。赤と黒がない交ぜになった稲妻が落ちた。


 落ちて――聖夜に直撃した!


「ぐはっ! な、なんだ、と?」


 がくっと、両膝が地に着く聖夜。


 一瞬で黒焦げになって、体がぼろぼろだ。


「どう、いう……こと、だ」


「ふふ、お疲れ様。ぼうや」


 声が聞こえた。さっきと似てる、空間全体から響いて聞こえてくる声。


 聞いたことのない、男とも女ともつかない不思議な声。


 ぞっとした、背筋が凍った。


 さっき以上のプレッシャーを感じた。


 一体……何か起きてるんだ。


「邪神……」


 ぼそっとつぶやく女神。


 ……まさか!?

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