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瑞雲高く〜戦国時代風異世界転生記〜【1周年感謝】  作者: わだつみ
三章・明日をも知れぬ村(青年編壱)

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86・腕自慢

「~~♪~~♪」

前を春がご機嫌に歩いている。

 昨年の切端の帰りは大量の生若布と干物を背負わされて帰ったが、今年は更に酷い事になっている。

 前を歩く春の両肩から、後ろを歩く俺の両肩には駕籠舁きの如くそれぞれ細い竹竿が渡されており(駕籠舁きは片方だけだが)、そこには春が昨日から今朝に掛けて釣って来た魚がぶら下がっているのだ。当然俺は若布の入った籠も背負わされている。


 春は切端でちょっとした人気者になった。昨日は釣りを始めて早々に大きな石鯛を吊り上げるとその後も手を変え場所を変え鯵だの鯖だのを釣り上げ続けたらしい。そこに、春の素直で明るい性格と釣りに対する情熱も相俟ってすぐに漁師達に受け入れられたのだ。北敷でも女衆が釣りに精を出す事は余り無いらしい。

 特に独り身の若い衆や若い息子のいる漁師達は熱烈だったらしく、嫁に来ないかと言う誘いが引っ切り無しだったらしい。春も春で常に釣りが出来る環境に一瞬心が動いたらしいが、流石に思い留まったそうだ。思い留まった理由が宗太郎の存在であるかどうかは不明だ。教えてくれなかった。哀れ宗太郎…


 結局の所、当初は北敷の産物を湊に運ぶ為に預かろうと思ってやって来たのだが、その目的は話に出た腕自慢達によって運ばれる事になり、彼等を呼び出す船が今朝早く出て行った。彼等は一両日中には切端に集合し、そのまま飯富に向かうとの事となった為、俺達はこんな間抜けな格好で帰る事になったのだ。


「祥治殿、今年もお世話になります。」

「吉兵衛殿もお変わり無い様子で何よりです。」

俺達が飯富に帰り着いてから二日後。流澤吉兵衛を始めとした四名の男達がやって来た。

「あんたが一番強いのか?」

そこへ、我等の挨拶に割って入る様に一人の男が口を開く。

 背は低いが幅の有る体格に太い腕、そして半信半疑と言った表情の男だ。成程、腕自慢とは良く言ったものだ。他の三人も程度こそ似た様な態度である。これは最初にガツンと分からせておかないといけないやつだな。しかし、何とも分かり易い奴達が来たものだ。

「安継殿、失礼の無い様にと切端でも申したはずだぞ。」

吉兵衛が強い調子で嗜めるが態度が改まる様子は無い。

「構いませぬよ吉兵衛殿。こう言う輩は一度痛い目を見ねば分からぬのです。彼方此方で似た様な者を見て来ました故。」

俺は吉兵衛殿をそう宥める一方で、

「宗太郎。木刀を二、三本持って来い。お前のもだ。急げ!」

「え?あ、は、はい!」

そう宗太郎に命じると、宗太郎は慌てて駆け出した。


「で、誰がお前等の中で一番強いんだ?」

「俺だ。」

「安継殿、何を勝手な事を。俺に決まっているだろう。」

「何だと!?」

「年寄りは無理しないで下さいよ。」

「「何だと糞餓鬼!!」」

俺がそう尋ねると、三人は何とも分かり易い会話を展開する。

「つまり三人共、吉兵衛殿より強いんだな?」

更にそう尋ねると、三人共悔しそうに顔を背ける。

 成程、去年吉兵衛が少しばかりここで囓って帰ったもんだから歯が立たなくなったんだな。


「持って来ました!」

そこへ、お堂の物置きから宗太郎がいつも稽古に使っている木刀を持って来た。

「じゃあ年上からだ。誰が一番年嵩だ?」

「俺だ、田之濱安継たのはまやすつぐだ。」

そう言って進み出たのは最初に声を上げた背の低い男だ。きちんと名乗る所は悪く無い



「良し、安継。好きな木刀を選べ。」

俺は安継にそう指示する。吉兵衛には殿を付けて呼ぶのに、自分が呼び捨てにされたのが気に入らなかったのか顔を赤くしながらガニ股でドシドシと歩いて来る。そして、宗太郎が持って来た木刀を何度か持ち替え重さを確認すると、一本を手に取りブンブンと振る。


「これにする。さぁ勝負だ!」

安継はそう言うと俺に向かって木刀を構える。

「何を言っている。相手をするのはそこの宗太郎だ。」

「何だと!?」

「えっ、俺ですか!?」

対する俺がそう答えると、二人から違った方向の抗議の声が上がる。

「おい、巫山戯るな!こんな餓鬼と勝負しろってのか!?」

「これでも俺の稽古を一年以上毎日受けている弟子だ。こいつに簡単に勝てる程強ければ、その後で幾らでも相手をしてやろう。」

そう言って俺に詰め寄ろうとする安継に小馬鹿にする様にそう言うと、安継は顔を真っ赤にして、

「大怪我したって知らねぇからな!」

そう叫んだ。

 何と扱い易い男だろう。まぁ、一年以上毎日と言ってもその多くは祥猛が稽古を付けていたんだが、弟の手柄は兄の手柄である。問題有るまい。


「た、大将…本当に俺がやるんですか?」

すると、今度は宗太郎が情け無い顔をして俺に詰め寄る。

「何を情け無い顔をしているのだ。いつもの稽古通りにやれば良い。」

「で、でも…」

そう言っても宗太郎の表情は変わらない。安継の外見や言動に恐怖を感じるのだろう。

「お前は本当はもう分かっているはずだ。お前にはもう相手の動きの端々から相手の力量が見えているはずなのだからな。」

俺は諭すように宗太郎に言う。

 そう、足の運び、木刀の振り、様々な所から相手を識る力が身に付いているはず。後は相手に惑わされずにそれを見られるかどうか。

「わ、分かりました…」

まだ少しぎこちない表情で頷くと、宗太郎は安継と向かい合って木刀を構えた。


 構えは正眼。尤も、まだそれしか教えていないのだが。対する安継は構えとも呼べない右手で木刀を力任せに握り締めただけの格好だ。

 俺は睨み合う二人からゆっくりと距離を取る。一歩、二歩と離れた所で安継が動いた。真っ直ぐに踏み込むと大上段に振りかぶる。

「あっ!」

それは、見守る誰の声だっただろうか。

 何の手加減も無く振り下ろされた木刀は地面を叩き、一歩左に動いて半身の姿勢となった宗太郎の木刀は安継の喉元に突き付けられていた。


 最初から書き直したくなるのはあるあるの模様。

 でも、皆さんが思い浮かべるのはストーリーの変更なんですね。

 私は文章の拙さが気になって書き直したくなってしまいます…もう少し上手く書けないものか…

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