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瑞雲高く〜戦国時代風異世界転生記〜【1周年感謝】  作者: わだつみ
三章・明日をも知れぬ村(青年編壱)

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75・思い込み

18時台に投稿出来たからセーフ…(セーフじゃねぇよ

最後に大事な?お知らせがございます。

「で、出来たぁ…」

鍋の底に白く沈む物質を見ながらガックリと力を抜いてそう溢す。

 正月を越えて一月程、雪もめっきり深くなり、外での仕事はほとんど出来なくなった。唯一雪の上を滑らせる事によって運搬が楽になる木材の切り出しについては去年より多くの量の木材を確保する為に継続しているが、それ以外は専ら屋内で出来る仕事に変わっている。

 皆が糸績みだの竹割りだの材木曳きだのをやっている中、俺は作業小屋に篭って硝石抽出の研究に時間を割いていたのだが、ここに来て前述の通り土を煮出した水から白い物質を抽出する事に成功したのだった。

「灰汁かぁ…石鹸と一緒やんけ…」

そう悪態を吐きながらも鍋から上澄みの水を捨てる。

 小学校の頃に夏休みの工作教室で、手作り石鹸を作ろう的なやつに参加した時の事を朧気ながら覚えていたのだ。あの時は確か重曹か何かを使ったのではなかったかと思うが、その中で昔は灰を使っていたみたいな話を聞いた覚えがあったのだ。要するにアルカリ性の物を添加するのだと言っていたのではなかったか。

 いや、科学的には全く違う作用が働いているのかもしれないが取り敢えず出来たのだから良いだろう。

「んー…後は乾くまで放っとくしかないかな…」

鍋の底に溜まった白い物質と、これ以上流して捨てようとすると大事な白い粉まで流れそうな量になった底に溜まった水を見ながらそう呟く。

「よし、やっと前へ進んだんだ。焦らず乾かそう。」

俺はそう自分に言い聞かせる様に言うと、鍋を小屋に残し、風呂へ向かうのだった。


 まだ日暮れ前に良い気分で風呂に浸かりながら、眼下を見渡す。まぁ、風呂から見渡せるのは湯の川の東の森から門の周辺を通って館跡の在る桃山までの範囲だけで、ここは村の入り口周辺なのに殆ど有効活用されていない土地と言う何とも困った範囲だったりする。農地には向かないし、防衛的観点から言うと火矢の標的にされそうだし、門を突破されると真っ先に標的になりそうなので家も建てにくいと言う困った場所なのだ。将来的に人口が増えれば家を建てる事になるかもしれないが田畑に使用出来る面積から逆算すればその可能性は低い気がする。その場合は西にもう一箇村作った方が無難だろうし。

 丘に遮られた西側を見ながら開拓作業についても考える。雪が少ない内は必死に田への転換作業を行ったが、進捗率は甘めに見て半分ちょい。新たに畑から田に転用する土地は粗方作業が終わったが、元から田の場所に対する排水機能の設置に関しては殆ど進んでいない。しかも設置後、新しい田の方に退避してある土を戻す作業が丸々残っている事を考えると新しい田もまだ使用出来る状況には無いと言えるので、現状すぐに使える田は一枚も無いと言える。更に、新しい田については注排水の試験も全く行えていないので本当に機能するかは未知数である。春になって田に水が溜まりませんでしたなんて事になったら我が村は全滅するかもしれない…


 建築面を考えると、木材は現在進行形で多めに確保している。秋には上手くすると長屋が二棟建てられるかもしれない。いや、それよりも門が優先だな。そうなると蝶番やら鎹やらに使う鉄も必要になるな。どの位の在庫があっただろうか…

「あー…そうか…何て間抜けなんだ…」

と、そこで気が付いてしまった。

 何に気が付いてしまったか。そう、門である。俺の頭の中になる門は製材された板やら角材に四隅を鉄で補強し、観音開きで開く、現代のお寺やお城で見かける様な形式の門だ。疑う事無く門はこの形しか無いと思い込んでいたのだ。

 だが、良く考えたら丸太同士を鎹で固定した門扉を綱で引き上げる形式ならもっと簡単に作れたのでは無いか。西洋の城で見る、真上に引き上げる鉄格子みたいな形式ではなくて、下部を押すか曳くかして、上部を軸に回転する形式の物だ。確か、有名な狼に育てられた少女のアニメ映画に出てくる蹈鞴場の村の門がそんな造りをしていたのを覚えている。観音開きに比べて開け閉めには労力が必要だが、開け難いと言う点は基本引き篭もる予定のこの村の事情から考えたら、そちらの方が適しているとまで言える。

「しまったなぁ…どうしよう…」

 どうして観音開きしか頭に無かったかと言えば、その方が見た目が良いからだろうと思う。いや、この時代の寺社や城の門も普通に観音開きだ。返坂峠の関所の門も同様だった。だが、出城や砦の様な簡易な造りの場所では上下式の門を見る事もあったのだ。だが、頭の中にあったのは観音開きだけだったのだから思い込みは恐ろしい…

 さて、どうしたものか。丸太で作ればひょっとしたら春に予想される襲撃に間に合うかもしれない。だが、そうすると田の整備が遅れる事になる…

 もう少し早く気が付いていれば対応出来ただろうに、門の周辺は今、去年同様に雪を積み上げて通行不能にしてしまったのだ。

「あぁ…」

当初の良い気分はどこへやら、俺は暗澹たる気分で湯船にプカプカと浮かぶのだった。


 数日後、何とか立ち直った俺は乾燥させていた硝石の実験をするべく作業小屋にいた。

「何か石灰みたいだな。」

すっかり乾いたその白い粉を見た最初の感想はそれであった。触ってみてもほとんど石灰のそれであったが、兎も角火を点けてみる。

「…燃えない?」

燃えないってどういう事?最悪爆発するかもしれないと危惧し、火を点けた(結果点いていない)瞬間に小屋の外に飛び出したが種火にした火の点いた枝だけがそのまま燃えている。火薬の材料なのだから火を付ければ激しく燃えると思っていたのだがそんな様子は一切無い。

「うーん…炭と混ぜてみるか。」

硫黄はまだ手に入っていないので取り敢えず磨り潰した炭の粉と混ぜて火を付ける。配合は良く分からないので等分だ。今度も一応外に飛び出るが後ろから爆発音がする様な事は無い。

「燃え、てるのか?」

確かに火は点いている。点いているのだが…

「これ、炭を燃やしたのと変わらんのでは?」

そう思う程、普通に燃えているのだ。

 試しに同量の炭の粉と並べて燃やしてみる。この頃には、もう外へ飛び出す気も失せており、顔を近付けて観察する始末である。

「全っ然変わらん…寧ろちょっと火が弱くないか?」

その結果は只の炭の粉の方が良く燃えると言う惨憺たるものだった。

「これ、硝石じゃないんじゃないか!?」

 えー…前回、飯富まりえさんご結婚と言う話をした訳ですが…正しくは飯豊まりえさんでした…大変失礼致しました。お詫びして訂正致します。

 10年も間違えて覚えていたよ…もう恥ずかしぬ!恥ずかし過ぎて更新出来ないかもしれませんw

 タイトル思い込み、硝石、門、お名前で三段落ちとなっております(爆

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