36 矢文
俺達がダンジョンを設置してから数日が過ぎた。
あそこは国が管理する事になり今では周囲をバリケードに囲まれ許可の無い者の立ち入りを制限している。
内部の調査と定期的な魔物の駆除に関しては自衛隊員が中に入りレベル上げと並行して行っているそうだ。
そのおかげでダンジョンの中では資源となる素材が採取されており、各国が注目する所となっている。
そして、持ち出された素材については鑑定スキルを所持している者が名前を調べ、不明な物に関してはライラやアリシアに問い合わせが来る。
その為、この数日は二人が大忙しで対応していたため俺達は家でのんびりと過ごしている。
そう言えば俺の会社だが、あれから工場に向かうと全ての機械が運び出されもぬけの空になっていた。
どうもこの混乱に乗じて機材を全て売り払い夜逃げしてしまったらしい。
俺は別に辞めるつもりだったので問題ないがそうでない人たちはこれから大変な人もいるだろう。
そして、結界石についてだが政府は驚くべき速度で市場に流通させ始めた。
どうやら今回の事でリストラされる人間が多く、その中から募集を掛けると途轍もない数の応募が来たそうだ。
そのおかげで無事に人員を手に入れる事が出来たので魔物が多い地域でレベルを上げさせて既に働いているらしい。
しかも近日中には仮としてではあるがギルドの様なモノも立ち上がる。
初めての試みなのでまずは実際に運営しながら問題点などを洗い出すらしい。
場所はあくまでも仮なので市役所などの一部を使い登録ももうじき始まる事になっている。
そして、現在の世界の状況が少しずつ分かって来た。
どうやら融合によって世界の数カ所に新大陸が発生し世界地図が大きく書き換わっているようだ。
特に大きいのは太平洋とインド洋で、そこには大きな大陸が出来ている。
総理が言っていたライラを犯罪者だと言った者達はそこから来ているようで中には高圧的な態度を取っている所もあるそうだ。。
恐らくは異世界の人々が住む大陸だろうがもう少し仲良くして欲しい所だ。。
しかしライラが言うにはあちらの世界では侵略が政治戦略の1つになっていて頻繁に戦争をしている国もあったらしい。
ただ、もしこれで異世界人に対して偏見や差別意識が生まれるかもしれないので今後の動向には注意しておこう。
まあ色々分かった事はあったがこの家が今日も平和ならそれで良いと思っている。
そして俺は暇を潰すために庭の手入れに向かうアリシアと一緒に外へ出て行った。
庭には先日アリシアが作った畑があり、そこには既に薬草が植えられている。
しかし、数日しか経過していないのにそこには薬草が大きな葉を広げ、空に向けて葉を生い茂らせていた。
そして今は12月だというのにあまり寒くはなく、秋服でも問題がないくらいだ。
これはアリシアが精霊を使い、家の敷地内だけ薬草が育つ事の出来る気温まで上昇させているからで日差しが差すととても心地良い。
ちなみにだが精霊を召喚し、維持するには2つの方法がある。
1つは通常通り自分の魔力を継続的に消費する方法だ。
しかし、これだと眠る事も魔力を自然回復させる事も出来ない。
その為、今はもう一つの方法を使用している。
それは魔石を代償として精霊召喚を継続させる方法だ。
俺達には使い切れない程の魔石があるのでそれを消費して精霊を維持している。
そのおかげで家は少し肌寒いくらいの気温を保ち続けていると言う訳だ。
「それにしても数日で良く育ったな。」
俺は庭の畑を見回して素直な感想を呟いた。
アリシアが耕してすぐは魔力が中々土に馴染まず種を植えるのに3日ほど消費している。
それから種を蒔いて数日だが、目にする度に成長して行く薬草を見ながら過ごしていたので早送りされた映像を見ている様だった。
そしてアリシアが最初に言っていた通り、あっと言う間に収穫できる状況になってしまい素直に言えば驚いている。
「これも全ては彼女のおかげですよ。私だけだとこんなにも速くは収穫できませんでした。」
そしてアリシアは家の庭にある大きな木に視線を向けると、その太い幹から一人の妖精が顔をみせる。
その子も既に我が家の一員として俺との挨拶も済ませているが、知り合ったのはそれよりも前の事だ。
その妖精は俺達の傍まで飛んでくると今日も腕を組んで胸を逸らすポーズを取った。
「私もここが気に入ったから気にしないで良いのよ。ここなら甘いお菓子もあるし、丁度良い感じに私が宿るに足りる立派な木もあったしね。」
そう言って現れたのは京都の嵐山で知り合ったドライアドのジェネミーだ。
彼女は以前までエルフの村の村長と共に居たのだが今はこちらで生活している。
それにジェネミーは凄い甘党でこの世界の甘味にご執心だ。
この家なら安全なので薬草の栽培を手伝う代わりにここへ居候している。
変わりにこちらは定期的に甘いお菓子を提供するという感じで良い関係を築いている。
「でもあちらは良かったのですか?村長が困っているのでは?」
「それは大丈夫よ。あちらには私とは別のドライアドを紹介しておいたから。今頃楽しくやってると思うわよ。」
どうやら意外と強かな性格の様でアリシアからハニービーの蜂蜜を受け取り口に運びながら質問に答えている。
しかし、こちらに彼女の仲間を紹介しても良かったのに先に報酬を言ったのが良くなかったのかもしれない。
それにこちら側の甘味も美味しそうに食べるが、彼女の一番の好物はこの蜂蜜の様で頻繁に催促している。
俺達も毎朝食べているがやみつきになりそうな味だ。
特に寒いこの時期には温かい飲み物に入れる機会も増え、かなりの消費速度になっているが大量に貰ってあるので今のところ心配はない。
そしてこうしていても収穫は終わらないので俺達は早速、薬草の採取を始める事にした。
「それで、どう摘めば良いんだ?」
俺は薬草の前にしゃがむとどうすれば良いのか分からずアリシアに顔を向けた。
すると彼女も俺の横にしゃがむと薬草に手を伸ばし目の前で手本を見せてくれる。
「こうやって土から5センチくらい上を積んでください。今回は半分を薬の材料にして半分は種を取るのに残します。積んだ後はまた地面から生えて来るので根までは抜かないでくださいね。」
「分かった。それじゃ素早く終わらせてお茶にするか。」
「はい。」
そして、アリシアも最近は今の様に柔らかく微笑む事が増えてきた。
最初の頃は情緒不安定で何か焦っている様にも思えたが、今では本当に落ち着いている。
すると俺達の上で飛んでいたジェネミーは指を鳴らして盛大にはしゃぎだした。
「やった~。それ私も参加しても良いのよね!実は今ね、とっても餡子にハマってるの。だから羊羹ちょうだい羊羹!以前食べたあの芋の奴!」
どうやら今日のジェネミーは芋羊羹を御所望の様だ。
それなら俺は栗カステラにでもするか。
ちなみにこのカステラは四国の道後にある御菓子屋の物で大きな栗がゴロゴロ入っていてとても美味しい。
ただジェネミーは見た目は小さいのによく食べるのできっとこのカステラも欲しがるだろう。
最近行っていないので久しぶりに温泉に入りに行っても良いかもしれない。
そして俺達は素早く薬草を採り終えるとそれを持って家へと戻って行った。
「ふー、通常よりは温かいと言ってもやっぱり寒い事には変わりないな。」
「フフフ、そうですね。でも、あまり気温をあげると魔石の消費が高くなりますから。」
ちなみにレベルが上がって強くなっても寒さも熱さも普通に感じることが出来た。
違うのは怪我をしない範囲が広がるだけなのでこうやって四季を楽しむ事も可能だ。
するとアリシアはポケットに手を入れて歩く俺の横に並ぶと同じポケットに手を入れ優しく握って来る。
すると俺の手はかなり冷たいのにアリシアの手はとても暖かい。
そしてその手の温もりが流れ込んでくるようでとても心地よく感じた。
旅行の時は身の危険を感じるほど積極的だったが家に居る時は皆こうして何気ないスキンシップで満足してくれている。
きっと旅行で少し開放的になっていたのだろうがおかげで部屋の扉を付け替える必要が無くなった。
そして、居間に入るとエアコンの効いた部屋にアヤネとメノウがのんびり寛いでテレビを見ていた。
最近の番組で頻繁にしているのは政府が売り出している結界石の事だ。
彼らは下がり続けている国民の信頼に応えるために連日こうやって作業の状況を報道している。
この調子なら広範囲結界石を除いて任せてもよさそうだ。
アヤネも結界の範囲が広がりマンション位はカバーできるようになってきている。
そのため客層が被っていないので更に売り上げが上がっている状況だ。
特にマンションだと共同購入する人が多いので個人の負担額は小さくなる。
その為大手からの買い注文が多いが日に作れる数が決まっている為、こうしてアヤネはのんびりできている。
今や、結界石は駐車場完備のマンションと同程度の価値のある謳い文句となりつつある。
広告にも『結界石、駐車場完備』と書いてあるのだ。
そして俺達に気付いたメノウが立ち上がりキッチンへと向かって行った。
どうやらお茶の準備をしてあるようでケトルから急須に湯が注がれている。
それに外での会話が聞こえていたようで、ジェネミーの前には準備してあった芋羊羹が置かれた。
「ユウさん達はどうしますか?」
「俺は栗カステラを頼む。」
「私も一緒のにします。」
「分かりました。すぐに持ってきますね。」
するとアヤネもテレビの前から立ち上がりテーブルへとやって来た。
どうやら皆でオヤツの時間となりそうだ。
「私も貰える?」
「それならライラさんも呼んでみんなで食べましょう。」
そう言ってメノウは急須をテーブルに置いてライラを呼びに向かった。
そして、すぐにライラも下りて来ると全員が揃ってのお茶会が和やかに始まった。
「それで、ライラの方はどんな感じだ?」
「もう少しでレポートも書き終わるからあれを提出すればかなり楽になるわ。それにしてもパソコンって便利よね。最初は使い難かったけど馴れると手で書くよりもずっと早いし書き間違えても大丈夫だから助かるわ。」
そう言ってライラは嬉しそうに芋羊羹を小さく切ると口へと放り込んだ。
そして日本茶を啜ると幸せそうに笑顔を浮かべている。
時々ちょっとだけ年寄り臭い所が出るがきっとレポートの作製で疲れているのだろう。
頭を使うと甘い物が欲しくなるというのでメノウもそれを分かっていてライラの芋羊羹だけは少し大きめにしている。
その横ではジェネミーも同じような表情を浮かべており二人で揃ってこの部屋に笑顔の花を咲かせてくれる。
しかし、そんな楽しい時間も長くは続かなかった。
それは遥か彼方、遠い地から放たれた一本の矢によって打ち砕かれる。
『バリーン!』
俺達が寛いでいる部屋の窓ガラスを破って1本の矢が飛来し、床に突き刺さると同時に光を放ちながら1枚の手紙に形を変えた。
それを見てアリシアの顔が明らかに青く染まり手紙に視線を向けて硬直する。
しかし、俺の視線はすぐに逸らされ別の物に釘付けにされる。
そこには先程の手紙があるが目を向けているのはそちらではなく、その横に空いている床の穴の方だ。
(家の床が・・・。)
そして俺の中には底知れぬ怒りが湧いていた。
大事な家を傷つけられ、さらに団らんを邪魔されたからだ。
しかも不意を突かれた事でホロの耳と尻尾が飛び出し垂れ下がっている。
『限界突破のレベルが2に上昇しました。』
『限界突破のレベルが3に上昇しました。』
『限界突破のレベルが4に上昇しました。』
『限界突破のレベルが5に上昇しました。』
『限界突破のレベルが6に上昇しました。』
(何処から撃って来た!)
『五感強化のレベルが2に上昇しました。』
『五感強化のレベルが3に上昇しました。』
『五感強化のレベルが4に上昇しました。』
『五感強化のレベルが5に上昇しました。』
『五感強化のレベルが6に上昇しました。』
俺は五感以外の全スキルも全力で使い周囲を探索する。
この様な事が出来る人間がこちら側の人間のはずはないからだ。
『探知がマップに進化しました。』
『マップのレベルが2に上昇しました。』
『マップのレベルが3に上昇しました。』
『マップのレベルが4に上昇しました。』
『マップのレベルが5に上昇しました。』
『マップのレベルが6に上昇しました。』
『マップのレベルが7に上昇しました。』
『マップのレベルが8に上昇しました。』
『マップのレベルが9に上昇しました。』
『マップのレベルが10に上昇しました。』
探知がマップになった事で更に詳細な情報がマップに映し出されるようになった。
その中には種族やどちらの世界の人間なのかも表記され色分けされている。
その表示で新たに加わったのは彼方の世界の人間は緑で表示されハティルトスと書かれている。
しかし矢の軌道上を調べるが異世界人は何処にも居ない。
そうしていると視界が変わり遠くを見通す事が出来る様になった。
『千里眼を習得しました。』
『千里眼のレベルが2に上昇しました。』
『千里眼のレベルが3に上昇しました。』
『千里眼のレベルが4に上昇しました。』
『千里眼のレベルが5に上昇しました。』
『千里眼のレベルが6に上昇しました。』
『千里眼のレベルが7に上昇しました。』
『千里眼のレベルが8に上昇しました。』
『千里眼のレベルが9に上昇しました。』
『千里眼のレベルが10に上昇しました。』
そしてマップの圏外のずっと先。
山を越え、その更に向こうの海を越えた先に1つの城を発見した。
そこにはエルフが住んでおり、玉座に座る者は何処となくアリシアに目元が似ている気がする。
「見つけたぞ!」
俺は地の底から響く様な声で告げると周りを見た。
するとライラとジェネミーは震えておりホロは立ち直ったのか機嫌よく尻尾を振っている。
メノウとアヤネはいつも通りにニコニコした表情を浮かべ、アリシアは先ほどまでの暗い顔から苦笑に変わっていた。
しかしその様子に俺は首を傾げるしか出来ない。
いったいどうして皆はこんな態度を取っているのだろうか?
「どうしたんだ?」
するとジェネミーはビシっと俺を指差したのでどうやら原因は俺にあるらしい。
「アンタが途轍もない殺気を放つからでしょ!私はカヨワイ精霊なんだからそんなの受けたら消滅しちゃうじゃない!」
どうやら俺は知らない内に殺気を放っていたようだ。
しかし、ジェネミーの場合はカヨワイではなく大喰らいか威張りん坊の方が似合いそうだが。
「それは悪かったな。でも大事な家を壊されたんだぞ。これからも皆で住む大事な家なのに。これが怒らずに居られる様ならそいつは俺の偽物だ。」
そして俺の言葉にジェネミー以外の女性陣は嬉しそうな表情を浮かべ始めた。
そんな中、メノウはスキップでもしそうな軽やかな足取りで手紙に近寄るとそれを拾い上げた。
「どうやらアリシアさん宛の様ですね。」
「やっぱり・・・。」
そう言ってメノウは手紙を渡すが、アリシアには既に予感があったようだ。
そのせいでさっきはあんなに暗い顔をしていたのか。
「それとこれはどうしますか?」
「追加が来るかもしれないから少し待ってみよう。次に飛んで来たら床に刺さる前に確実に受け止める。」
ちなみにメノウの力なら床の穴も割れたガラスも簡単に修復できる。
以前にも洗剤に慣れていなくて洗い物で食器を割った時に直していたからな
そしてアリシアは手紙を受け取るとそれを開いて中の文章を読み始めた。
「どうやらゴブリンに襲われた時の護衛に生き残りがいた様です。テレビにも出ましたし何処かで私と知られたようですね。すぐに国へ帰って来るようにと書いてあります。」
しかしメノウは納得できない事があるのかアリシアにむかい首を傾げている。
それは俺も同感でついさっきまで手紙には危険察知のスキルが反応をしていたからだ。
メノウが拾った瞬間に消えたので何もしなかったが恐らく何かに気づいたのだろう。
「なら、どうして手紙を最初に受け取った者に死の呪いを掛けるのですか?私だから簡単に返しましたが、アリシアさんだと死んでましたよ。」
そう言えばアリシアはゴブリンの件が家族にバレると命を狙われるかもしれないと言っていたな。
しかしアリシアは既に覚悟が出来ていたのか苦笑を浮かべ溜息を吐いた。
「そうですか。でも帰らないとこの家に迷惑が掛かります。ユウさん。すみませんが少し実家に帰りますね。もしジェネミーが消えた時は私はそれまでだったと判断してください。」
そしてアリシアは立ち上がると準備をするために部屋へと向かい始めた。
いや、もしかすると準備ではなく片付けをするためかもしれない。
今は何に対してかは分からないか危険察知のスキルが警鐘を鳴らし、それはまるで今すぐに呼び止めろと言っている様だ
しかし、そんな事を教えられなくても俺の決心は既に決まっている。
それに呼び出しがあったからと言って用があるのは本人だけではない。
家を壊された俺にも当然、相手に用が出来た!
「アリシアはいつ出立するんだ?」
「準備が出来れば今日にでも。」
「なら送って行こう。ついでに初めての海外旅行だな。」
さっき俺が見た先は明らかに日本ではなかった。
そこは先日聞いた太平洋に現れた大陸の一つでそこにアリシアの実家はあるのだろう。
どうやって行くかが問題だがそこは総理に相談してみるしかない。
しかし、そんな俺に向かってアリシアが慌ててストップを掛けて来る。
「危険なんです!ユウさんは絶対にここへ残ってください!」
するとアリシアは今にも泣きそうな顔と声で訴えてくる。
しかし、そんな事では今の俺を止める事が出来る筈がない。
「別に一緒が嫌なら俺達は別で行く。ただその中にアリシアが居てくれると俺は嬉しい。」
「そんな言い方は狡いです。・・・それなら、少しだけ。・・・ほんの少しだけでも縋ってもいいですか?」
するとアリシアは目に涙を浮かべ咄嗟に後ろを向いて顔を隠した。
俺はそんな彼女の傍に行くと背中からそっと抱きしめ耳元で小さく呟きを零した。
「いつでも縋って良いから勝手に居なくなるなよ。俺の人生はまだ長いんだからな。」
アリシアは小さく頷くと俺の手を掴んで強く握り締めて来る。
やっぱり、本当は不安と怖さでいっぱいだったのだろう。
誰だって殺されると分かっているなら例え行先が実家だからと言っても帰りたくはない。
それでも帰るのは他に選択肢が無く、俺達に迷惑を掛けない為だ。
俺はアリシアが落ち着くまでそのまま抱きしめ、先程分けて貰った温もりを返してやる。
「・・・もう大丈夫です。」
「また怖くなったらいつでも言って良いからな。」
「そう言う優しい言葉はベットの中でお願いします。」
「・・・。」
どうやら墓穴を掘ってしまった様だがアリシアも元気が出て来たみたいだ。
そしてアリシアも落ち着きを取り戻したので俺達は出発の準備を始めた。
ライラは収穫したばかりの薬草でポーションを作り皆に均等に配って行く。
アヤネはアリシアを連れて旅の準備に向かいメノウは窓だけ修復し戸締りを確認しに向かう。
ホロは冷蔵庫の生ものを回収し俺はアキトに連絡を入れた。
恐らく日本では初めて異世界の国に向かう者となるだろう。
俺は5割の思いやりと4割の怒り、そして1割の好奇心を胸にアキトが電話に出るのを待った。




