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214 神の使徒

ヴィシュヌが話を終えて帰ろうとした時にダンジョンに異変が起きた。

異変と言っても地震が起きたとか階段から水が押し寄せて来たとかではない。

天井の空間に亀裂が発生し、そこから一人の男が舞い降りて来た。

しかし、今の俺にならこいつが何者なのかが分かる。

力の大きさから言って俺と同じ亜神だろう。

しかし、そうなるとこいつも何らかの試練を神から受けたのだろうか。

俺はヴィシュヌに視線を向けるが今の彼は俺達と会った時には見せなかった、とても冷酷で冷たい目を男に向けている。

どうやら、この男は味方ではなさそうだ。


そして、気が付くとビヴィシュヌもガルーダも、今は極限まで神気を抑えている。

そのため、今では俺よりも小さな神気しか感じない。

俺はまだスキルのレベルも低く使い慣れていないのでそんなにうまく調整が出来ない。

すると、男の注目は自然と俺に向けられる事になった。


「何だ。主様に言われて来てみりゃあ雑魚ばっかりか。」


しかし、それも少しすると外れ、周りを見回すと後ろの女性陣に視線は移った。


「なんだ。いい玩具だけは居るじゃねえか。これだけ居ればしばらくは遊べそうだな。」


男はそう言って邪悪な笑みを浮かべてこちらにやって来るがその進路を俺が前に立つ事で妨害する。

すると男は舌打ちをした後に拳を持ち上げながら俺を睨みつけて来た。


「雑魚はすっこんでろ。アイツ等で遊んだ後にでも適当に殺してやるからよ。」


そしてその手を振るわれ俺の顔面に裏拳を放って来た。

後で殺すと言う割には何もしなければ確実に殺す事の出来る一撃だ。

攻撃に神気が宿っている為、普通の方法では防ぐ事も出来ないだろう。

それは先程のガルーダの一撃で経験済みだ。

しかし、それは何もしなければであって聖剣ならその体を切り裂く事が可能なのも分かっている。

しかも亜神ではなく神の体も切り裂けるので結果は予想通りとなった。


「ん?どうして手前は無傷で立ってるんだ?」

「それはお前の手がそこに落ちてるからじゃないか。」


俺の言葉を受けて男は先程振り切った自分の腕に視線を移す。

するとそこには水鉄砲の様に血を吹き出す腕が振り切った形で静止していた。

そして俺の足元に落ちている腕を見て男は絶叫を上げる。


「どうなってんだ!?俺、腕が・・・どうして!?があーーー、痛てーーー1貴様の仕業か!」

「それ以外に誰がお前の腕を切り落とせるんだ。」

「貴様ーーー!」


俺はそのまま男の顔面を掴むとドレインで神気を吸い取りながら冷笑を浮かべる。

今の俺は信仰を得られていないので神気の補充方法が無い。

不本意ではあるがコイツの神気はありがたく使わせてもらおう。


「貴様・・お、俺の力を・・・。」

「油断したな。それがお前の敗因だ。しっかりと後悔するんだな。」


そして吸っている間にも微量の信仰が流れ込み、神気が生成されている。

こんな奴でも信仰を捧げる奴がいると言う事だろう。

コイツを見てると俺も少しは信仰を得られるんじゃないかと自信が湧いてくる。

俺は男を掴んだままヴィシュヌの所まで行くと今後の対応を問いかけた。


「そうだねえ。神は殺す事は可能だけど一定以上に信仰を溜めると復活するから面倒なんだ。信者を皆殺しにするしかないかもしれないかな。」

「一定以上って言うのはどれくらいだ。」

「コイツだと200年ってとこかな。」

「結構長いな。」


それならその間に俺が力を付けて再度始末すれば問題ないだろう。

それまでコイツの信者が残っていればだけどな。


「殺すにはどうすれば良いんだ?」

「普通は首と胴を切り離すのが一番早いかな。」

「そうか。」


俺は聖剣を構えると剣を後ろ手に構えた。

それを見て男は俺に命乞いを始める。


「た、助けてくれ。200年も先まで俺に信者が居るわけねえ。今死んだら本当に消滅しちまう。」

「お前は俺の家族に手を出そうとした。俺はそういった奴を生かしておける程に他人を信じちゃいない。」


俺はそう言うと男の首を斬り取ってその場に投げ捨てた。

それを後ろで見ていたヴィシュヌとガルーダから再び軽い拍手が送られてくる。


「その敵に対する容赦の無さは素晴らしい。君にはこれから期待させてもらおう。」

「どうしてコイツが現れた時に気配を消したんだ。あんたらならこいつを始末するくらいは簡単だろう。」


今の俺だから分かるがガルーダなら簡単にこの男を切り裂けただろう。

ヴィシュヌなら動かなくてもその身に宿る神気を放つだけで消滅させられたはずだ。


「我々には極力だが現世には干渉しないという決まりがある。神によっては関わるだけで世界が滅ぶ者も少なくないからね。だから、あの程度の事は君たちで対処してもらう必要がある。当然この国の南で起きている災厄に関してもだ。・・・ん?」


しかし、その説明の途中で再び異変が起きた。

先程殺した男の体と首が炎に包まれ、そのまま一つになると宙へと浮かび上がる。

そしてその炎は人の形になると俺に襲い掛かって来た。


「亜神でもゴーストになるのか?」

「そうみたいだね。私も初めてだから少し驚いたよ。」


するとゴーストとなった男は周りに目もくれず俺にだけ攻撃を仕掛けて来る。

どうやらターゲットは完全に俺の様だが攻撃というよりもまるで捕まえようとしているみたいだ。


『貴様の体を寄こせーーー!』

「どうやら君の亜神としての体を乗っ取って生き延びようとしているみたいだね。君の体は神の器としてはとても適した物に変わっている。奴はそれを無意識に感じ取っているんだろう。」


誰のせいかは何となく分かるがコイツを受け入れるほど俺の中は広くない。

今も俺の中には引き籠りの居候が居るので、それが増えるのは勘弁願いたいものだ。 

しかし、急激な能力の上昇は身体感覚と意識にズレを生じさせる。

俺は避けている最中に窪みに足を取られてその場で尻餅をついてしまった。


「しまった。」

『その体貰ったーーー。』


そして俺の中に男のゴーストが飛び込んで消えてしまった。

それを見て周りから心配の声が向けられるが俺に変化はない。

そのため意識を俺の中に向けると何やら声が聞こえて来た。


『なんだこいつの中は・・・どうなっているんだ。』

「これは・・・何かの物語・・・それに・・・絵本か。それにしても何だこの部屋は。」

(部屋?何の事だ?)

『それにこの四角い黒いものは何だ?ウオ、勝手に映像が出たぞ。なんだこれは・・・少女が魔法で戦っているのか?なんだあの杖は。もしや何かの最終兵器!?』


先程からとても不穏な発言が聞こえて来る。

どうやら俺の中には部屋があり、そこにはテレビや漫画に小説などが置いてあるらしい。


『それにこのボタンの沢山付いた薄い物は何だ。ボタンには文字が書いてあるぞ。もしや何らかの秘密情報がこの中に。』

『ん?先程から邪魔だと思っていたら部屋に下着が干してあるではないか何だこれは。女物か。もしや奴は男に掘られるのが好きな変態だったのか?』


おいおい、何を誤解しているんだ!

それは恐らくスピカの下着だ。

アイツ、ちゃんと下着を着てたんだな。

それに俺の中でもちゃんと着替えはしていたようだ。


(・・・そうじゃねえ!こいつの誤解を解く方法は無いのか。スピカ、そう言えばスピカは何処に行ったんだ。)


『フ~今日も大変でした・・・て。あれ・・・。あなたは誰ですか?』

『貴様は!やはり先住者が居たか。どおりでおかしいと思ったのだ。しかし、貴様にはここから出て行ってもらう。この体は今日から俺の物だ!』

『あの、その手にあるのは何ですか?』

『ん?先ほどここに吊るしてあった布切れ・・・。』

『それは私のパンツじゃないですか!この変態の不法侵入者がーーー!』

『ボゴ、ベキ、バキ』

『グホ~~~!』


どうやら男はスピカの私室(俺の中)に入り下着を手に持って迫ったため変態と思われてボコボコにされた様だ。

しかもその時の反動で俺から弾き出され、今にも消えてしまいそうである。

そして、男のゴーストは這いながら俺から離れていくと丁度目の前に犬の姿のホロと鉢合わせた。


『し、仕方ない。この際・・獣でも構わん。その体を寄こせ~!』


そう言って飛び掛かった瞬間にホロは大きく口を開ける。

するとゴーストは口に吸いこまれる様に入って行き『へ?』と声を洩らすと同時にその口は閉じられた。

それと同時にホロは口を微妙な顔でモグモグし始める。


『ぎゃ~~~やめろ~~~!何でこんな獣にまで力が吸われるんだ~~~!』


しかし、しばらくモグモグと口を動かした後にホロは珍しくペッとゴーストを吐き出した。

どうやら余程口に合わなかったようだ。

しかし、限界まで力を吸われたゴーストは既に虫の息だ。

まさに殺虫剤を掛けられたコックローチの様に手足であろう部分をピクぽくさせている。

俺は男のゴーストに聖剣を突き立てて始末するとホロに歩み寄った。


「ホロ、昔から広い食いはダメだって言っただろ。それで何度も病院に行ったのを忘れたのか。」

『ごめんなさい・・・。』


ホロは俺の言葉に項垂れて素直に謝った。

まだ幼い時だが広い食いでよくお腹を壊してて薬などのお世話になっている。

犬用の薬は苦い物が多いので今もしっかり覚えているのだろう。

まあ、分かってくれればいい。

俺はホロの首元を擦りながら体調を確認する。


「分かれば良いんだ。体調に問題は無いか?」

『神気ってスキルが手に入った。』

「・・・そうか。良かったな。」

(先程の俺の苦労はいったい何だったんだろうか?)


俺はホロを抱き上げるとその頭を撫でながらヴィシュヌの許に向かった。

二人もスキルに気付いているのか驚いた顔でホロを見ている。

まさか吸収で神気を獲得するとは思っていなかったのだろう。


「この子はまさに神の予想すら上回る存在ですね。面白いので私が直々に加護と称号を与えましょう。お前にヴィシュヌ神の加護と獅子人の称号を与えます。」


そう言ってヴィシュヌはホロの頭に手を置いて力を注いだ。

するとなんだか体毛がサラサラの艶々になり、毛が伸びてまるでダックスフンドの様な毛並みに変わった。


「こ、これは!」


俺はホロを抱いたままその毛並みを確認する。

これはもしや、凄く稀に生まれると言うウェルシュ・コーギーの長毛種。

おれも今までに実物は一度しか見た事が無い!


「やばいな。俺は今度からアンタの事をヴィシュヌ様って呼ばないとイケないのか。」

「我にはそれが普通だと思うのだがな。」


何やら横から突っ込みが入るが今はホロだ。

この肌触りはまさに神が与えた至宝。

後で家に帰ったらテニスに自慢してやろう。

俺はお礼にと甘味を大量に渡し、ヴィシュヌは笑顔でガルーダと共に帰って行った。

後は地上に上がりティオネに報告するだけだ。

そして転移陣に乗って上に戻ると俺達はすぐに異常に気が付いた。


「気配がおかしいな。」

「そうね。これは・・・呪いの気配?あっちから近づいて来る!」


クオーツは気配を探ると南の空を指差した。

そちらに視線を向けると暗雲が立ち込めており、その下には雨が降っているのが分かる。

しかし、その雨の色がおかしい。

通常なら灰色か白く見える雨粒がまるで墨汁の様に真っ黒だ。

このままだとあの雨はこの街を覆い尽くす事になるだろう。

俺達は急いでギルドに向かい、今知った事を報告する事にした。


「ミリは居るか!?」

「はい。どうかしたんですか?」

「この街に呪いを含んだ雨が向かって来ている。すぐに人々を建物に避難させろ。」

「わ、分かりました!」

「俺達も手伝うぜ。」


そう言って来たのは以前に助けたマキアス達だ。

彼は周りの人間にも声を掛けると外に走り出した。

それ程時間は無いが高レベルの者達の足なら町中を走り回るのにそれほど時間は掛からないだろう。

俺はこれから出来る事をするためにギルドから出て行った。


外に出るとそこは混乱に包まれており、逃げ惑う人々でいっぱいだ。

自分の家に入る者も居れば近くの店に避難する者も居る。

子供を抱いた母親に馬なども非難させようと奮闘する者も居る様だ。


「皆行くぞ!」

「「「はい!」」」


俺達には浄化の力が強いメンバーが揃っている。

霊力を使えるメンバーの他に白魔法による浄化が得意な者もだ。

それに全員が精霊力を扱えるので浄化は得意分野になっている。

そして、雨雲の前まで行くとその呪いが如何に巨大かが分かる。

範囲にして10キロはあり今も呪いで大地を汚染しながら進んでいるのに衰える様子はない。

余程、強い呪詛がこの雨雲の中心にあるのだろう。


すると俺の横にオリジンがやって来て悲しそうな顔で声を掛けて来た。


「これは精霊の呪いよ。凄く苦しくて悲しんでる。」

「精霊。もしかしてガストロフ帝国の仕業か?」

「恐らくはね。もしかしたらこの子たちはもうダメかもしれないわ。」

「ダメってどういう事だ!?」

「もう救えないかもって事よ。ここまで穢れてしまうと殺すしかないかもしれないわ。」


オリジンはこう言っているが内心では助けたいと思っているはずだ。

コイツはなかなか本心を口にしないがそれくらいは俺にも分かる。

それなら俺は最良で最善な結果を出すために全力を持ってこの事態に対処するだけだ。


「期待はするなよ。」

「ええ、分かってる。でも、信じてるから。」


そう言われるとどうしても願いを叶えてやりたくなる。

皆には周囲から浄化を頼んで俺は呪いの核となる中心へと向かって行った。

雲の中は激しい風と雷が飛び交い、呪いを含んだ黒い雨からは苦しみの思念が俺に流れ込んでくる。

そして地上に落ちた雨は全てを腐らせ、不毛の大地へと変えている。

俺は雲の中を一直線に進んで中心部へと到着した。


「これが核か。」


俺の前には黒い球体が浮かんでいる。

しかし、それに近寄るとその表面は滑らかではなく幾つもの顔が浮かんでいるのが分かる。

それらは苦しそうな声を上げながら涙と共に言葉にならない声を上げていた。

しかし、俺には思念伝達があるのでその顔一つ一つから何を悲しんでいるのかが伝わって来る。

どうやらこの球体は精霊を合成して作られている様で属性も入り混じっているようだ。

俺が近寄るとその顔たちは俺に対して悲鳴の様な声を浴びせ、それには明確な拒絶の意思が感じられた。

しかし、ここで諦めたらオリジンが悲しみで泣いてしまう。

俺は諦めずに前に進むとその球体に手を当てて作業を開始した。


「スピカ、分かってるな。」

『彼らの精神をサルベージするのですね。』

「その通りだ。並列作業で一気に行うぞ。それと同時に肉体の再構成も行う。先日ナトメアのを見たから今の俺なら出来るはずだ。」

『ドゥームエネルギーは目の前に大量にあるので可能です。問題はユウさんがそれに耐えられるかです。』

「耐えるしかないだろう。こんなに混ざり合ってる状態だと同時に処理しないと解放は無理だ。」

『分かりました。ならば奥の手を使いましょう。』


そう言ってスピカは黙るが俺のスキルを使い思念を幾つも飛ばして誰かに何かを伝えたようだ。

俺には何を伝えたかは分からないが今は全力で彼らを救うしかない。

まずは肉体の再構築と精神のサルベージを行い体の浄化をしていく。

特に浄化は慎重に行わなければ精霊ごと浄化して消してしまう恐れがある。

そして、精神のサルベージの際には相手の記憶を垣間見る事になるがそれによって彼らがどういった扱いをされて来たのかがよく分かった。


水の精霊は奴らに捕まった後はまるで魔道具の水道の様な扱いを受けていた。

人がするべきトイレの浄化作業から給仕の様な事までさせられている。


火の精霊はまるでコンロの様に使われ町にある街頭にはガラス管に閉じ込められた状態で町を照らしていた。


風と土の精霊は町の浄化に使われていたようだ。

ゴミの処理等を担当し、人の為に働いているにも拘らずまるで彼らに向けられているのは邪魔者を見る様な視線だ。


そして、どの精霊にも言えるが限界まで酷使され地獄の様な苦しみを毎日味わって来ている。

これでは俺が傍に来た瞬間に拒絶しても仕方ないだろう。

恐らく、彼らは既に人間に対する信用を完全になくしている。


そして、記憶から分かるがここに居るのは全て下位精霊の様だ。

力が弱いのでこうして融合させて強い呪いの核にしたのだろう。

しかし、精霊はあまり昔の事を覚えていないのか見える記憶は捕まった後の事ばかりだ。

そのおかげで俺の脳が焼き切れずに耐えてくれているが亜神になっていない状態なら確実に不可能だった。

期間が短いと言ってもそれでも精霊50人分はある。

そんな人数の記憶を並列処理出来る程に俺の脳は優秀ではない。

そして、ここに来て最も大きな山場に差し掛かった。

それは彼らが最も苦しんだ瞬間がやって来たからだ。


彼らは何処かの建物に集められ、中央に赤い宝石が設置された魔法陣の様な物の上に集められる。

そして次の瞬間、彼らの体は次第に溶け崩れ、痛みと苦しみと絶叫の中で黒い球体へと変わっていった。

すると今までに無い程の苦しみの感情が俺に押し寄せて来る。

まるで津波にでも飲まれたかのように上下すら分からなくなり俺の意識が消えてしまいそうになった。


『来ました!』


しかし、俺はスピカの声で意識を取り戻しなんとか自我を保つ事が出来た。

そして気が付けば体に何故か強い力が湧いてくる。

これはドゥームではなくまったく別の力だ。


「スピカ、これはどういう事だ。」

『今までにユウさんが助けた人々に思念を送りユウさんに祈りを送る様にお願いしました。信仰とはその者を信じる心です。その結果、ユウさんは信じる者、信者を得ました。』


確かに、今まで会った人々の思いが伝わって来る。

どうやら雲の外で浄化をしてくれている皆からも同じように力が流れ込んでいる様だ。


『これがユウさんが歩んで来た事の結果です。』

「そうか。俺は自分勝手にしてきただけのつもりだったけどちゃんと感謝もされていたんだな。」

『その通りです。これで全ての条件が揃いました。このまま一気に終わりまで進めます。』


俺は神気で更に能力を強化して作業を進める。

そしてとうとう精霊達を個別に分離し浄化するまでに至った。

後は周りの雲を消し去るだけだ。

しかし、それを行おうとした時に俺はある光景を思い出した。


それは彼らを一つにするために魔法陣の中央で赤く光っていた宝石の様な存在。

彼らはそれを中心にするように集まって行き一つの黒い球体へと変わった。

それならば、分離したことでそれが再び現れているかもしれない。

そう思い視線を走らせると俺達から少し離れた場所でそいつは落ちる事なくその場で静止していた。

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