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195 100階層ダンジョン ③

日が昇る前に眠りに着いたが1時間ほどで目が覚めた。

起きてすぐはまだ少し意識がハッキリしなかったがしばらくすると昨日の事が僅かに思い出せてくる。

左右を見れば大きなベットに皆が裸で毛布に包まり眠っている。

昨日は僅かに残る記憶の通り、爛れた一夜を過ごしたようだ。

そして、フと何かが思考に引っ掛かり額に手を当てて昨日の事を思い出そうと必死に頭を捻る

しかしなかなか浮かんで来ず、気分を入れ替える為にホロを探した。

ホロは基本的に寝る時は犬の姿なのですぐに見つかるはずだ

しかし視界の端にここにあるはずの無い物体が飛び込んできた。

そちらを見れば9本の尾を寝ながら揺らすリアが大人状態のワカバと抱き合って寝ている。

しかもその姿は皆と同じで一糸纏わぬ姿だ。


(・・・スピカさん、あの二人がどうしてここに居るのでしょうか?)

『昨日は御盛んでしたね。』


俺はその瞬間に額から汗が流れ落ちるのを感じた。

まさか理性が薄らいでいたと言っても家族でない者に手を出してしまうとは予想していなかった。

経緯はどうあれ、この状況から考えて後でしっかりと責任を取らないといけないだろう。

それにここに居ると言う事は他の皆も了承済みと言う可能性が高い。

まさか好きでもない男と一夜を共にさせる様な非道な事は誰もしないだろう。


そして、その場合は俺の意思よりも彼女たちの意思が優先されるので皆が良いなら過去を悔やむのは止めておこう。

しかし、ワカバは年齢的にアウトなのでしばらくはこういう事は無しだ。

それだけはしっかりと言い聞かせてライラに後の処理をお願いしておこう。


そして見回せばスフィアは居なかったのでそれだけはホッとする。

彼女は正真正銘の10歳の子供なので彼女まで興味本位に混ざっていたらどうしようかと思った。

しかし、代わりと言ってはなんだが別の者があと数名ほど紛れ込んでいるのに気が付いた。


1人は天使のヒスイだが彼女もとうとう皆からのお許しが出たのだろう。

最近では周りとも打ち解けて機会を待っていたようなので今はとても幸せそうにメノウの隣で寝息を立てている。


しかし、反対を向けばそこには再び何故かアリーナの姿が目に飛び込んで来る。

彼女は体こそ二十歳前の姿だが中身は10歳の少女だ。

ここが日本なら完全に通報されて俺はお縄に付いている。

流石に未成年と体の関係を持ってしまっては警視総監のキサメさんも助けてはくれないだろう。

アリーナには後でしっかりと口止めして年齢が適齢期になるまではもうこういう事はしないように言い聞かせなければならない。


そして、俺は最後に頭を抱えたのは眷族の反応だ。

薄れていた意識の中でワカバから些細なお願いを聞いて眷族にした記憶が残っている。

しかも、眷族になった者がもう一人いる様だ。

そちらに視線を向けるとそこには小さな少女が寝息を立てている。

年齢は100歳以上と聞いているので問題は無いのだがその見た目は完全に少女のそれだ。

ここがドワーフ王国でなければ完全に俺の手には手錠が付いていただろう。

そして、返って来る言葉は予想はつくがスピカに再び問いかけた。


(何でツボミまで居るんだ?)

『昨日は御盛んでしたから。ちなみに私は参加していません。初めてはしっかりと互いの記憶に残るモノでありたいので。』


こう言っているが、これはスピカも完全にグルと言う事で確定だろう。

俺はやらかした事の数々が記憶に残っていないので、これは後で色々と話し合う必要がありそうだ。

これは、朝から周りからの目が痛そうだな。

おそらくは昨夜の事に気付かないのはミサキくらいだろう。

他は個人差はあれどこの事には確実に気付いているはずだ。


(俺は日本に帰っても無事に生活出来るのだろうか・・・。)


しかし、悩んでいても仕方がない。

俺は複数の問題を一度に解決出来る程に優秀な人間ではないので簡単な問題から片付けていく事にした。

まずはレベルを上げてガストロフ帝国をどうにかする。

その後にでも今日の事を考えよう。

それまでは個人の意思の確認だけで十分だ。

互いに合意が得られていれば最低でも俺の精神は平穏を取り戻せる。


俺は幾つもの赤いシミのあるシーツと部屋に立ち込める女性特有の甘い香りを魔法で消して綺麗にすると皆を起こしにかかった。

一人一人を起こすのは大変だが乱暴に起こす訳にはいかない。

既に起きて狸寝入りしている者も居るが気付かないふりをしながら順番に起こしていく。

どの女性も俺が起こして嫌な顔をしなかったので昨夜の事は同意の上の事だと信じたい。

その後は皆はそれぞれに服を着てお風呂へと向かって行った。

どうやらここの風呂はかなり大きいらしく、あの人数でも余裕で入れるようだ。

俺は服を着ると皆を見送ってから食堂へとやって来た。


「昨日は盛ってたねえ。」

「薬を盛られたので。」


入ってすぐにトキミさんからそんな事を言われたので準備していた言い訳を口にする。

しかし、本当の事なので他に言い様がない。

まさか、あそこまで効果があるとは思わなかったが、俺にあのタルトを食べないという選択肢は無かった。

家族サービスも兼ねたつもりだったが一部の紛れ込んだ者達の事は口にしないでも良いだろう。


「そうかい。しかし、媚薬は毒耐性スキルの対象外なんだねえ。ゲンから聞いたけど早めに知れて良かったよ。」


やはりゲンさん達も気付いていたか。

あちらにも後で言い訳をしておこう。

アキト達は・・・あっちは察しが良いので問題は無さそうだ。


「トキミさんも今は若返っているので気を付けてください。油断をしていると足元を掬われますよ。」

「分かってるよ。昨日のレベルアップで十分に理解したからね。それとミサキの件だけどねえ。どうやらレベルを上げるには初回から10ポイント必要らしいよ。」

「やっぱりそうですか。特殊なスキルはレベルを上げにくいですから。俺も習得に1000ポイントとか訳の分からないものがありますからね。」


するとトキミさんは珍しく驚きの表情を浮かべた。

やはり普通では考えられない数値だからだろう。

普通のスキルがスキルポイントを1しか消費しないのにこれはハッキリ言って異常と言うか虐めだ。


「後学の為にどんなスキルか聞いても良いかい。よっぽど凄いスキルなんだろうね。」

「いえ、大したスキルではありませんよ。ポーカーフェイスという表情を隠せるスキルです。」

「・・・ははははは!ないだいそれは!もしかしてアンタ、呪われてるんじゃないかい。」


そこは俺も考えて毎日一度は浄化しているがまったく変化がない。

これはどう見ても『誰か』の意思が働いているとしか考えられない。

まあ、それは既に犯人と思われるスピカから告げられているので足掻いてもしょうがないだろう。

毎日の浄化もそれをすると寝起きがスッキリするという側面の方が大きい。


「俺の事は良いとして特殊なスキルはレベルを上げるのに通常よりも多くのポイントを必要とします。問題は何処までポイントを使用して上げるかですね。」

「そうだね。出来れば10まで上げたいけどそれは厳しそうだ。身を護るスキルも持たせたいしね。」


確かに彼女のスキルはレアスキルなので今後は誰に狙われるか分からない。

その気になれば幾らでも金儲けに利用できるので可能性はまさに数えられないほどある。

トキミさんなら放置しても問題ないだろうがミサキは普通の子供になっている。

護身術さえ一から教えて行かないといけないだろう。


「それならまずは10を目指しますか。それなら予知夢のレベルを3~5に上げれると思います。残ったポイントで基礎的なスキルを覚えさせましょう。」

「それしかなさそうだね。以前も箱入りだったから碌なスキルは無いだろうしね。」


見た感じからそれは予想していた。

ある意味で子供からやり直せることは彼女にとっては幸運だったかもしれない。

しばらくはトキミさんに負んぶに抱っこだろうが数年もすれば立派な後継者になるだろう。


その後、俺達は食事を終えて昨日のメンバーで出かけて行った。

今日は他の皆は足りない物の買い出しをする事になっている。

何せ予定よりも新しいメンバーも増えてしまった。

家具が足りていないので急いで揃えてもらう必要がある。

運の良い事にここはドワーフの国なので良い物を安く揃える事が出来る。

魔石や一部のアイテムを売却すれば資金は十分に揃える事が出来るはずだ。


「それじゃあ、夕方には帰るから。」

「行ってらっしゃい。気を付けてね。」


俺は皆に見送られながらダンジョンに向かって行った。

今日の目標は60階層だ。

40階層からは慣らしも兼ねてなるべく多くの魔物を狩って行く事にしている。

しかも、ここからは潜っている冒険者の数が一気に減るので今後の生活資金も考えれば魔石だけでも手に入れておきたい。

ドロップに希少な鉱石も出るダンジョンなので良い稼ぎにもなるだろう。


そして、40階層から始めてしばらく進むと戦闘音が聞こえて来た。

そちらに進むと4人程のパーティが巨人で一つ目のサイクロプスと言う魔物と戦っているのに遭遇する。

パーティ構成は大盾1、片手剣小盾2、魔法使い1とバランスは良さそうだ。

見ていても安定した戦闘を行っているし連携も良さそうに見える。

これなら助けは要らないだろう。

魔物の確認も出来たので俺達は気配を抑えて横を進んで行った。


そしてしばらく進むと俺達の前にも5メートル級のサイクロプスが現れた。

体はオーガよりも逞しく手には先の尖った戦鎚を持っている。

殴られたらかなり痛そうだ。

そしてこの階層は生息している魔物に合わせているのか通路はかなり広い。

高さは10メートルはあり横も20メートルはある。

これなら複数でも十分戦えるだろう。

しかし、俺達なら1対1で十分な相手だ。

そして、相手をする者は立候補と仲良く順番性だ。

その結果、しばらくはトキミさんに満足するまで戦ってもらう事になった。


「それじゃあ、少し遊んでこようかねえ。」


そんな感じで気楽に言っているがあの戦鎚を喰らうと彼女なら即死の可能性もある。

先程の戦闘を見た感じならあの攻撃が当たるとは考えにくいが油断は禁物だ。

この世界で人間という種族は肉体的に脆弱なので不意を突かれれば簡単に死んでしまう。

そしてトキミさんはサイクロプスの前に立つと両手で大太刀を構えた。

その後姿はどう見ても相手の攻撃を躱す様には見えない。

しかも片手で来い来いと挑発までしているのでサイクロプスも目を赤く血走らせ、両手で戦鎚を掲げると全力でトキミさんへと振り下ろした。


それに対して彼女はやはり剣を切り上げて迎え撃つ。

そして圧倒的に不利な態勢で剣と戦鎚が衝突し、その瞬間に受け止めたトキミさんの足元は重量で陥没した。

すると土埃が舞い上がりその姿が見えなくなるが、サイクロプスの手元は見えるため戦鎚が最後まで振り下ろされていないのが分かる。

そして、魔法で風が起こり二人の姿が再び見える様になる。

しかしその姿は部分的とはいえ、姿が見えなくなる前とは異なっていた。


「これをするのは久しぶりだけどここまでは必要なかったかもしれないねえ。」


そして姿を現したトキミさんはその腕が異形へと変わっていた。

手から肩までが鱗に覆われ、更に太く筋肉が発達している。

それはまるで蜥蜴、いや、龍の様だと言った方が良いかもしれない。

トキミさんは受け止めた戦鎚を軽々と弾き返すとそのままガラ空きになったサイクロプスの正面に滑り込み返す刃でその体を真っ二つに切り裂いた。


しかし自力で龍化を習得しているとは驚くしかない。

しかも口ぶりからすると世界が融合する前から使えたようだ

どうやら二人の師匠と言うのは現在も継続中のようで頭が上がらないのも納得できる。

何せ、二人はいまだに部分変化には成功していないからだ。


この人はいったいどれだけのスキルを既に得ているのだろうか。

恐らくは同じレベルまで上げればゲンさんとサツキさんを追い抜いてしまうかもしれない。

これで加護まで同じになったら最強の座は揺るがないだろう。

それに俺の場合は攻撃の威力は高いが実力はまだまだ二人にすら及ばず、接近されれば勝ち目はないと確信している。

ただ、防御に関しては自信があるので互いに決め手が無くてドローにはなるはずだ


そして俺達がダンジョンを進んでいると話の内容は自然と先ほど見た部分龍化に移って行った。


「ところで、いつから龍化を使えるようになったんですか?」

「ああ、これかい。」


すると俺の言葉にゲンさんとサツキさんが即座に反応を示した。

先程から直に聞こうとはしないが、やっぱり興味はあるようだ。

何気ない素振りで周りを警戒しつつ、こちらにも意識を向けているのが分かる。


「実は実戦で使うのは初めてなんだよ。私は30年以上も巫女をしているけど能力は寝ている間に発動するだろ。だから起きてる時は常に暇でねえ。色々と試している内に出来る様になったんだよ。年月でいえば10年位は前からだねえ。」

「それじゃあ、完全な龍化はした事は?」

「まだないけど少し試してみるかねえ。」

「ちょっとストップ!」


俺は即座に完全龍化を試そうとするトキミさんを止めた。

確か、京都でゲンさん達が初めて龍化した時のサイズは10メートル前後。

それを考えればこの階層の天井だとギリギリだ。

しかし、今まで俺達の予想を上回る実力を見せた彼女の龍化がそこで止まるとは思えない。

最低限、スキルは慣れると自然に効果が高くなる傾向がある。

10年前から自力で龍化が使用できたトキミさんのサイズがそれに収まるとは考え難い。

ここは慎重に外でスキル使用をしてもらって結果を確認した方が良いだろう。

それを話すとトキミさんも素直に納得してくれたので後で試す事に決まった。


「流石に大きすぎて動けなくなったら恥ずかしいからねえ。後で二人を連れて試しに行って来るよ。」


恐らくそこでは怪獣大戦争が起きるかもしれないが俺には関係のない事だ。

俺は宇宙の果てから来た正義のヒーローではないので巨大化は出来ない。

そこは非常に残念だが二人に頑張ってもらおう。


『ライラとヴェリルは巨大化できますよ。』

(あの二人にトキミさんの相手をさせる危険を冒すくらいなら俺がこのサイズで相手をする。)

『チッ』

(何、今の舌打ち!?もしかして巨大化のスキルがあるの?)

『・・・ありますよ。』

(あっぶね~!またスピカに変なスキルを取らされるところだった。)


俺は背中に大量に汗を掻きながら少し前の自分をしっかりと褒めてやる。

どうしても必要な時は取るしかないが今はそんな時ではない。

しかも、俺の服にはサイズ調整の付与はされていないのだ。

急に体が大きくなった場合、都合よくズボンだけ残るなんて事はありはしない。

巨大化後は確実に全裸での登場になるはずだ。

それを避けるためにもライラに頼んで俺の服にも早急に、サイズ調整を付与してもらう必要がある。


『残念です・・・。』


するとスピカからは本当に残念そうな思念が届いた。

コイツは本当に俺をどうしたいのか時々分からなくなる。


『今は巨大化できる忍者ヒーローでしょうか。』

(盛り過ぎだろ!)


そして、再び前方から戦闘音が聞こえて来た。

しかしどうも様子がおかしく、怒号と悲鳴がここまで聞こえて来る。

マップを見れば6人のパーティで2体のサイクロプスと、もう一匹の初めて見る魔物と戦っているいる様だ。

千里眼で確認するとそこには1メートルを超える巨大な目玉の魔物がサイクロプスの後ろに守られる様に待機し、冒険者たちを見詰めている。

そして、冒険者たちはどうやら全員が状態異常に掛かっている様で麻痺をしている者や仲間同士で戦っている者も居る。

どうやらあの目玉の魔物はデビル・アイというらしく、アスカに特徴を話すとしっかりとした情報を教えてくれた。


「その魔物は状態異常に特化した魔物です。戦闘能力が低い代わりに周りの魔物を魅了して従える事が出来ます。ただこの魔物はかなりのレアモンスターで滅多に現れる事はありません。でも見つけたら安全のために最優先討伐対象にするくらい危険な魔物です。」


確かに時間が経てば経つ程に魅了された魔物が増え、デビル・アイの討伐が困難になってしまう。

そうなればその階層に立ち寄る冒険者が激減し誰も立ち寄る事が出来なくなる。

ここはトラブルが大きくなる前に俺達が処理しておくのが一番安全だろう。


「それじゃあ誰が行きますか?」

「時間が無いならユウが最適じゃろう。儂らで冒険者たちを適当に処理しておくから、お前はその魔物を倒して来い。」

「分かりました。」


俺達は素早く役割を決めると魔物の許へと走った。

ただし、ここでもっとも危険な人物には釘を刺しておく。


「トキミさん。相手を殺さないで下さいよ。」

「善処しておくよ。」


どうして確約してくれないのだろうか。

彼女の実力なら余裕なはずなのにとても良い笑顔で向かって行くので凄く不安になる。


しかし俺には別の役目があるのでそのまま魔物の所へと向かった。

するとサイクロプスは手に持つ巨大で無骨な棍棒を構え俺の進路を塞ぐ様に立ちはだかる。

その後ろからデビル・アイは俺に向きを変え、巨大な瞳に俺を写し込んだ。

その瞬間、奴の上下から瞼の様な部位が動き、笑ったような目付きへと変える。

どうやら奴は、俺が何らかの状態異常になったと思っている様だ。

しかし、俺の動きに変化があるはずはない。

全ての異常をレジストし、そのままサイクロプスに剣を横なぎに振るった。

それだけで油断していたサイクロプスは胴を断ち切られ、悲鳴と共に魔石へと変わる。

その光景をデビル・アイは限界まで見開いた瞳に映すと、何も出来ないまま一刀の下に斬り捨てられた。


「終わりましたよ。」

「こちらもなんとか大丈夫だ。」


すると俺の言葉にアキトがすぐに返事を返してくれる。

そちらを見ればどうやら死んでいる者は居ない様だが、腕が取れかけていたり大きな傷もあって死にかけている者が多い。

俺が見た時はこれ程の大怪我な者は居なかったが・・・。


そしてその横を見ればトキミさんが唇を尖らせてそっぽを向いている。

どうやら、やり過ぎた人物が一人居たようだ・・・。

いや、その横にサツキさんが同じ表情と仕草をしている。

どうやらやり過ぎた者は二人の様だが良い大人が何をやっているのやら。

俺は頭を抱えて溜息を吐くと冒険者たちに秘薬を飲ませた。

アリシアの話では数日中にはライシアの収穫が可能になるそうなのでそれまでは無駄にしたくないと考えてはいたが仕方がない。

仲間の責任はパーティ全体の責任なので出来る者が対処をする必要がある。

俺がリーダーと言う訳ではないが、まるで言う事を聞かない猛獣と居る気分になる。

しかし、相手は俺よりも年上なのでなるべく言いたくはなかったが、注意をしておく必要はあるだろう。


「頼みますから、次は気を付けてくださいよ。今は秘薬の増産がストップしているんですからね。」

「つい、やり過ぎてしまったんだよ。」

「私も横に同じく・・・。」


まあ、反省だけはしている様なのでマシと思い諦めよう。

それに口ではこう言っているが直ることはまず無いだろう。

付き合いとしては短いがそれくらいの事は簡単に分かる。

これからもそういう所は上手くフォローするしかない。


「反省している様ならそれで構いません。でもあまり酷いと次からはご飯のオカズを1品減らしますから覚悟してください。」

「そ、そんな・・・私の楽しみが・・・!」


トキミさんは世界が終わった様に顔色を悪くしてその場に膝を付いた。

しかし、無用に相手を傷つけないというだけでどうしてこんなに落ち込むのか。

別に宇宙の深淵について話している訳では無いのに、常識が欠如しているにも程がある。

そしてやはりと言うか、サツキさんはあまり動じていない様だ。


「わ、私はそんな事平気だもの。」

「なら、次にやったら1週間戦闘禁止です。」

「な!私の楽しみが・・・!」


そして、どうせサツキさんは言い返して来るだろうと既に準備していた言葉を投げつけた。

それだけでサツキさんはトキミさんと同じポーズで膝を付いて地面に向かって項垂れてしまう。

この二人には戦闘よりも先に常識を教える必要がありそうだ。

しかし、これは俺一人では無理な罰なので協力者を用意する。


「ゲンさん任せましたよ。奥さんなんだから少しは厳しく言い聞かせてください。」

「ま、任せろ・・・。」


この返事ではあまり期待は出来ないが秘薬の節約のためには頑張ってもらうしかない。

いざと言う時に在庫がなければ俺の家族まで危険に晒してしまう。

ここは俺も心を鬼にするしかない。

たったの数日の我慢なので無事にやり過ごせると思いたい。


そして、俺達は助けた冒険者たちを起こす事にした。

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