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183 フェニックスの地 ②

俺達は町の入り口に居た兵士に案内されてグレンの屋敷へと向かっていた。

しかし、手にはさっきの訓練で切られてしまったリアの片腕を持ち地面には赤い血の雫を滴らせながら歩いている。

そして、案内をしてくれている兵士も最初は黙って見ないフリをしていた様だがとうとう我慢の限界に達したようだ。


「あの・・・その手に持っているモノは何ですか?」

「ああ、ちょっとした餌かな。」


案内をしている兵士は俺の手を見て濁した質問をしてくる。

当然ながらその顔は引き攣っているが俺は軽く答えて持っている腕で手を振ってやる。

しかし、この兵士は鳥なのに夜目が効くようだ。

ここに来る前にテニスから聞いた話では鳥人には夜が弱い者が多いらしいのだが。


「この暗さでよく見えるな。」

「我々鳥人は目と鼻が弱い者が多いですからね。こちらに住んでいる者は弱点を克服するために強化している者が殆どなのです。」


それなら、まだ危険分子が残っていた場合でもすぐに釣れそうだな。

出来れば居ない事を願うが油断は禁物だ。


「それで・・・そちらは何でしょうか?」

「餌じゃダメ?」

「ダメです。子供が見たら怖がります。」


どうやら餌では納得してくれなかったようだ。

まあ、餌と言っても廃品の再利用の様なものだが、これを見た子供がトイレに行けなくなったら大変だろう。

既にこちらを見ていた何人かの子供が逃げ出しているので手遅れな気もするがいつかはいい思い出に変わるだろう。

それにこれは必要な事なのでここで止める訳にはいかない。


「これは九尾の手だな。もし残党が居ればこれに向かって来るだろうからついでに捕まえようと思っているんだ。撒き餌にする程は無いが近くに置いておけば匂いに釣られて襲って来るだろう。」

「そ、そうだったのですね。・・・頑張ってください。」


すると兵士は再び顔を引き攣らせると視線を前に戻して口を閉じた。

まあ、見た目はタダの腕なのでその気持ちも分かると言えば分かる。

横を歩いているリアも自分の腕なのに微妙な顔をしているしワカバにいたっては視線すら逸らしている。

しかし、それも少しの辛抱なので我慢してもらおう。


そして屋敷へ到着すると兵士は扉を叩いて中へと声を掛けた。

すると中から昨日分かれたグレンが扉を開けて出迎えてくれる。


「早かったな。聞いてると思うが準備にはもう少し掛かる。すまないが今日はここに滞在してくれ。」

「分かった。ついでにこれをぶら下げておきたいんだが何処か良い所はあるか?」


俺が腕を見せるとグレンはそれが何なのかすぐに理解したようだ。

そしてリアの手に視線を向け、そこに両手がある事を確認するとニヤリと笑みを浮かべた。


「良い物持ってるじゃねえか。この家の天辺に吊るしても良いぜ。」

「話が早いな。それじゃ少し上がらせてもらうな。」

「アンタたち、人の腕を何だと思ってるのよ!」

「別に良いじゃねーか。変な事に使ってる訳でもねーんだからよ。」

「へ、変な事って!そんな事に使ったら許さないんだからね!」

(いったい何に使う事を想像してるんだ?まあ、切断された断面さえ見なければ肌は白くてキメ細かい綺麗な手ではあるけどな。)


するとリアは恨めしそうな視線を向けて来るが俺達はそれをスルーして準備を行い家に入って行った。

それにしてもグレンもやはり捕らえている者が全員とは思っていないようだ

そうでなければこんなにあっさりと話が進む訳がない。


「それで、あの腕はどうしたんだ。俺もその手は考えない訳じゃなかったが流石に回復に時間が掛かり過ぎるからな。今の状況では危険すぎて出来なかったんだ。」

「ちょっと修行をしてた時に不慮の事故が起きたんだ。」

「あれが不慮の事故?」


するとリアからすかさずツッコミが飛んでくるがサツキさんの訓練では良くある事だ。

それどころか、片手で数えられるので少ないと言えるだろう。


そしてどうやらグレンの思考は俺に近いらしい。

頭の回転も速そうだし自分の身を削る覚悟もある。

こういう男になら少しは協力しても良さそうなので今回の事を可能にした種明かしをする事にした。


「俺達にはこの秘薬があるから手足ぐらいならどうにかなる。沢山あるから念のために何本かやるよ。」

「ハハ、ありがとよ。それと飯は何にする。昨日の飯は美味かったがここに来たならこの地域の飯でも食うか?」

「この辺は何食ってるんだ?」


流石に虫とかだと勘弁なので確認は怠らない。

地域によってはイナゴや蜘蛛。

更にはゴキ・・・黒い悪魔を食う国さえある。

ただ異文化を否定はしないが食べ物が喉を通るかは別問題だ。


「そうだな。この辺だと野菜をふんだんに使った蒸し料理や川魚が美味いな。そう言えば初めて見る赤い魚が川を上っていると情報があったんだよ。まだ食った事はねえが今朝届いたのがあるぞ。」


そう言ってグレンは厨房から魚を受け取り戻って来た。

そしてその手には大きな鮭が握られており、まだ腹も裂かれていない様だ。

普通の鮭は自分の生まれた川に戻るがどうやら世界が融合した影響で迷った群れがいたのだろう。


「そいつは俺達の世界では有名な奴で鮭という魚だ。取り過ぎると居なくなるから取るなら程々にな。そうすれば来年はもっと多くの鮭が川を上るはずだ。」

「おお、そうか!情報まで貰えるとは思わなかったぜ。それなら良い食い方も知ってるのか?」

「塩で焼いても良いが鍋も良さそうだ。甘めの味噌はあるか?後の食材はこちらで用意しよう。似てる味の物があれば次回も同じ料理が作れるからな。」


そして俺は一緒に厨房に行き魚を捌いて味噌の味を確認する。

少しだけ癖はあるがこれ位なら大丈夫だろう。

今回はブレンドはせずに甘めの白みその様な味噌を使いこちらにある食材を使って作るようにする。

鮭は雄と雌がいたので白子と卵は取り出して処理を行う。

白子は中に血管がありそれを取り除く必要もあり、処理をしないと臭みもある。

塩でもんだり加熱したり、牛乳で臭みを取る方法もあるが料理スキルを使えば簡単に解決できる。

これは後で適当な形に切って天婦羅にでもしよう。


卵も料理スキルを使えば簡単にバラすことが出来る。

通常は塩を入れたぬるま湯で丁寧に解したりと大変だがスキルを使えば時間も掛けずにイクラの完成だ。

これはイクラ丼にでもする事にして鍋に醤油、酒、味醂、水を入れて一煮立ちさせる。

そして冷ましたツユにイクラを入れて他の準備を行う。


(身の方も少し使って漬けにしておくか。)


その間に沸騰した鍋に昆布を入れて出汁を取り、そこに野菜と味噌を投入。

野菜は芋、人参、白菜の様な物を入れている。

沸騰したのを見計らい鍋は火を弱めて温めた油で白子の天婦羅を揚げていく。

揚げ過ぎると固くなってしまうので最も注意が必要になる。

これには塩と天ツユの両方を準備しておこう。

個人的に言えば塩が好みだがそれは人それぞれだ。


そして野菜の煮えた鍋に鮭を投入し、煮えると同時に食卓へと運んで行く。

白子の天婦羅とイクラは既に収納しているので後は食べる時に出すだけだ。

そしてテーブルに着くと俺達は卓を囲んで食事を始めた。

まず俺は彼らにイクラを乗せたイクラ丼を渡す。


「これはさっきの魚の卵か?」

「俺達の国ではイクラと言って海鮮丼では定番の一つだ。」


グレンたちは初めて食べるようだが臆する事なくそれを口へと投入する。

やはり余程の事が無い限りは毒があっても霊獣なら問題ないからだろう。

それにどうやら味付けが気に入った様で二口目からはガツガツ食べている。


「美味えなコレ。醤油と米にピッタリじゃねーか。」

「肉の方でも美味いぞ。」


そう言って一応作って置いた身を取り出し、今度は漬け丼を渡す。


「うめ~~~!こんなに食い応えがある魚は初めてだぜ!」


確かに焼いたり蒸したりが主流ならこの反応も仕方ないだろう。

それに淡水魚には淡白なものが多く、日本でも川魚を刺身などの生で食べる所は少ないはずだ。

無い訳ではないが一般的ではないのであまり知られていない。

それに魚にはどうしても寄生虫等の問題がある。

今では魔法やスキルがあるので大丈夫だが、以前は無かったので食文化としては廃れている。

美味しいのは事実なので家でも試してみても良いかもしれない。


そして今度は天婦羅を彼らに配る。

その姿に彼らは首を傾げるがどうやら揚げ物は見た事が無い様だ。


「これは何だ?」

「雄がいたから白子だな。柔らかくて美味いぞ。」

「でも白子と言やあ・・・。えーい男は度胸!」


俺の言葉がどう伝わったかは分からないがあの顔では生物学的な言葉で伝わったのだろう。

しかし、口に入れてすぐにその手は次の白子へと伸びて行った。

どうやらこちらも気に入ったようで今は美味しそうに食べている。

白子は日本のスーパーで安く売っているので今度メノウに言って家でも作ってもらおう。

彼女なら現地で仕入れて来そうだが、これに関しては鮮度が命なのでそこは本人に任せれば良い。


そして次に鍋を開けて最後の料理を披露する。

先程の3品に比べれば普通だが鮭は骨も太くてとても食べ易い魚だ。

頭やアラも骨以外は無駄なく食べられるので子供に魚を慣れさせるにも向いている。

鯛なども骨は太いが硬いので間違って飲み込むと喉に刺さり易い。

俺も昔はそれでよく泣いたものだ。


「これが最後だな。全てこちらの材料で作ってある。季節ものだからしっかり味わって食べてくれ。」


これに関しては全員で頂かせてもらう。

白子とイクラは量が少なかったので俺達は遠慮して食べていない。

食いたくなったら日本ならいつでも食べられるからだ。

そして俺達は鍋を囲み全員で夕食を堪能した。


その間に屋根に吊るしたリアの腕からは新鮮な血の匂いが町に広がり、奴らも動き始めたようだ。

それにリアは俺の眷属なので彼女に敵意や害意を向ければマップに赤く表示される。

俺は魚群探知機の様にマップに移った光点がこちらに接近してくるのを確認すると食事を中断して立ち上がった。


「来たのか?」

「ああ。でも今日は任せておけ。すぐに片付ける。」


予想通り潜伏させている者が居た様で次に襲撃する時の足掛かりにするつもりだったのだろう。

数は10人程と少ないが全員が空を飛んでこちらに向かって来ている。

撃墜すると死んでしまうかもしれないので餌にはもう少し役に立ってもらおう。


俺は屋根にぶら下げていた腕を回収すると地面に下りて奴らの来るのを待った。

すると闇夜の空から奴らは猛スピードで襲い掛かってくる。

まるで血に飢えた野獣、野鳥か。

のような目をして突撃してくるが、俺はそれを受け流すと同時に一撃入れて気絶させいった。

そして魔法で風のクッションを作りながら死なない程度に地面に落としていく


(獣帝の効力を確認したかったから丁度良いな。)


いい感じに今日中には検証も出来そうなので俺は捕獲した鳥人を一カ所に集めてから館へと入って行った。


「終わったから早速スキルを試そうか。」

「そうだな。とっとと終えて酒が飲みてーぜ。今日の飯は酒に合い過ぎだ。」


確かに酒にはとても合うメニューばかりだった。

最初の3品目は日本酒を片手に食べたいほどだ。


それに風の精霊にお願いして匂いは町中へと拡散させてもらった。

恐らくあの獣王の影響を受けた者はもう居ないだろう。

奴らも慎重に行動したはずなのでそれほど広範囲には被害者を広げられてないはずだ。

もし居たとしても秘薬は渡してあるので後は自分達の血肉で誘き出せれば良い。

帰るまでに捕らえる事が出来ればついでにでも片づけて帰れば良いだけだ。


「それじゃあ頼むな。」

「任せて。・・・・と~う。」


そして間の抜けた掛け声と同時にホロは手を振ってスキルを発動する。

俺の目には何か靄の様な物が彼らを包むのが見えた気がするが見た目には変化がない。

霞の色も昨日の獣王が出していたドス黒い色とは違い、真っ白い色をしていた。

これはきっとスキルの違いではなく使っている者がどういった思いで使っていたかだろう。

それだけホロには邪な思いが込められていないと言う事だ。


(流石ホロだな。)

「終わったよ~。」

「こんなに簡単に終わるのか。何かこう、ビクビク!ガクガク!といった感じになるかと思ってたが。」


それは俺も想像したが問題は彼らが解放されたかどうかだ。

そのため、まずは一人を起こして確認する事になった。


「おい起きろ。」


俺は彼らの体を回復させると鞘に入れた剣でその体を揺らす。

見た目は悪いが安全面を考慮したと考えれば文句を言う者は誰も居ない。


「う・・ここは?」

「起きたか。これが何に見える。」

「人の手ですか?それは美味しいのでしょうか?」

「・・・よし、正常だな。」

「おい待て。今の答えが真面な答えに聞こえるのか。美味いのか聞き返してたぞ。」


確かにそれも正論だ。

しかし、先程までは無条件に食べに来ていた。

すなわちこれはあの獣王ではなくホロの影響と言う事だ。


「大丈夫だ。これはホロの影響だろう。意識がハッキリすればもっと良心的な答えが返せるようになる・・・はずだ。」

「はずなのかよ!・・・まあ、分かった。しばらくは様子を見るしかなさそうだな。」

(どうやらコイツ等を甘く見ていたのかもしれない。俺も食われない様に気を付けねーとな。)


そして他の9人も確認するが全員が同じような答えを返してきた。

どうやら問題なく解放された様なので明日からの作業も心配は無さそうだ。


そしてその日は解放された彼らも加えての宴会となった。

追加で鮭を料理し酒の肴として並べられる。

そして夜もそれほど遅くならない内に俺達は部屋に案内されると布団に潜り込んだ。

ただ、何故かそこには昨日と同じようにワカバとリアの姿がある。

しかし昨日と違い二人とも何かの夢にうなされ、ひっくり返って足をバタバタ動かし何かから必死に逃げている。

見当はつくがこれも反省している証だろう。

しかし横に眠るワカバは軽く頭を撫でてやると次第に落ち着いて来たのか穏やかな寝息を立て始める。

そしてワカバがこんな風に育ってしまった元凶のリアはそのまま放置しておいた。

彼女は一晩掛けてもっと深く反省をするべきだ。

後は夢の中に出て来ているであろうサツキさんに期待しよう。


そして、朝になると足元にいたリアはどうやらベットから落ちた様だ。

それでも目を覚ましていないようなので昨日は精神的にもかなり疲れたのだろう。

放置しても良いが一応確認で起こしておく。

記憶喪失オチだけは避けたいからな。


「起きろリア。」

「う~・・・。」


そして何かとても疲れた様に重い瞼を開けて俺の顔を見ると突然飛び起きて抱き付いてきた。

狐の姿なので傍から見れば動物と触れ合っている様にしか見えないがそれでも中身はリアである。

まるで人懐っこい犬の様に頬擦りをしたり顔を舐めて来るので宥めるのが大変だった。


そしてその騒ぎに目を覚ましたホロはワカバを抱えて何くわぬ顔で部屋から出て行った。

その後ろを同じようにクオーツも続いて行くが誤解をしていないかが心配だ。

しかしリアのこの様子からすると一晩中悪夢にうなされていたのかもしれない。

これで反省してくれれば良いが今後の旅でそれを確認していけば良いだろう。


「リア、そろそろ離れろ」

『フルフル』


俺の言葉にリアは首を横に振るだけで離れる気配は無い。

仕方なくリアを背中に背負い部屋から出た。

今のリアは耳は前に倒れ、尻尾は垂れ下がったままでピクリとも動かない。

そしてみんなと合流すると俺達の姿に周りからは苦笑いが向けられた。


「お前らそういう関係だったのか?」

「それは酷い誤解だな。こいつが離れないだけだ。」

「まあ、それは置いておいて今日の午前中には捕らえた奴らも到着する。それと昨日の夜に処置した奴らと話して探りを入れてみたが問題はなさそうだ。だから今回の報酬は前払いで渡しておく。」


そう言ってグレンは大量の赤く光る羽を取り出した。

それはまるで燃えている様な煌めきを放ち強い霊力が籠っている。


「これは俺達フェニックスの尾羽だ。九尾と同じように力の集中する部分だが、麒麟同様に定期的に生え変わる。霊力を込めておいたからしっかり保管しとけよ。」

「ああ、ありがとう。大事に使わせてもらうよ。」


ライラに渡しておけば何かに使ってくれるだろう。

俺にはどう使うか分からないが何かの薬になるかもしれない。


そして朝食を終える頃になると扉を叩く者が現れた。

外には複数の鳥人が来ているのでようやく全員を集める事が出来たのだろう。


「グレン様。彼らが到着しました。」

「分かった。それじゃあ頼む。」

「任せて。」


そして外に出ると奴隷の首輪をはめた20人程の鳥人が地面に蹲り鋭い視線でこちらを睨んでくる。

この状態から昨日の状態まで回復したと考えればかなりの改善があったと見るべきだろう。


「こうして見ると昨日の奴らが真面に見えるな。」

「俺も同感だ。最低でも無差別には襲わないしな。それに子供を大事にするなら問題ないんじゃないか。」

「そうだな。」


そして俺達が話している前でホロは昨日の様に彼らの前で手を振った。


「えい!」


すると鳥人達の強張った表情が急に緩み辺りを見回し始める。

どうやら、今ので正気?に戻ったようだ。


「あれ・・・グレン様。おはようございます。」


その声で他の者たちも口々にグレンを認識し挨拶をして来た。

先程までは会話も出来ない程だったのでその変化が余計に大きく見える。

グレンもその変化に驚きながらも仲間の意識が戻った事を喜んでいる。


「おはよう。お前らはここに来た理由とかは覚えてるか?」

「・・・。よく覚えていません。移動していた記憶はありますが周りの認識が上手く出来ていなかった気がします。」


すなわち何を食べたのかも覚えていないと言う事だろうか。

彼らは捕縛後は普通の食事を与えられていたはずだが、それまでの期間の事は分からない。

記憶が無いのも一つの救いかもしれないな。


「そうか・・・。」


そして彼らから奴隷の首輪が外され連れて来た者たちと一緒にこの場から去って行った。

後でこれまでの説明と細かな確認が行われるのだろう。

しかし、これで意識があってもホロのスキルが有効であることが証明された。

彼らにとっては危険なスキルに映る可能性もあるのでやる事を終えればすぐにこの大陸から退散する必要がありそうだ。


そして、テニスはグレンに歩み寄るとアイテムボックスから水晶玉を二つ取り出した。

どうやらあれが通信用の魔道具の様だ。


「これを渡しておくから今度は壊されないようにね。」

「感謝する。こちらの大陸のダンジョンはこういった魔道具が出難いんだ。」

「こちらでも貴重なのよ。次に壊したら請求書を出すからね。」

「俺が責任を持って管理しよう。」


魔道具の一部は製作が困難でダンジョンからしか手に入らない物がある。

そう言った類の物は例外なくとても高価で数にも限りがあるそうだ。

グレンは魔道具を慎重に受け取るとそれをアイテムボックスへと収納した。


ただ、最近になってライラの成長が著しいので、もしかすると作れるようになる時が来るかもしれない。

そしてこれでここでの用事は終わったので俺達は次の場所に移動するために準備を始めた。


「もう行くのか?」

「どっちみち一度戻らないといけないからな。」


俺の言葉にグレンは納得して今も俺の背中に張り付くリアとすぐ横で俺の服を握るワカバに視線を向けた。

先程の状況からあまり見ても楽しいものではないのですぐに理解してくれたようだ。


「そうだな。それじゃあ、縁があったらまた会おうぜ。」

「ああ、何かあればギルド経由なら連絡も届くだろう。お前らも気を付けろよ。」


そして、俺達は出発の準備を整えると一旦ヒイラギの待つであろう家に飛んで行った。

どのみち少し迂回する予定で居たのでそれほど距離に違いが出る訳ではない。

野宿も考慮していたが今から帰れば夜までには到着できそうだ。


そして、予定通り俺達は空が暗くなる前にヒイラギの許へ到着する事に成功した。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ダシの取り方は沸騰する前に昆布を出し、沸騰後にカツオ節をいれます。 ですので沸騰したところに昆布をいれるのは変です
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