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157 アリーナのファミリア

俺は移動中の車の中で以前と大きく違う事が一つあるため質問を投げかけた。


「ダニールはどうやってバンパイアになったんだ?」


当然の事だがマイヤとアリーナには血を渡していない。

その為ライラが詳細鑑定をしないと分からないが彼は中級以下のバンパイアであるはずだ。

なのに彼は一切の吸血衝動が見られない。

それどころか俺が今まで見たバンパイアでは最も人間らしく見える。


「逃亡中にしくじってしまってマイヤに頼んでバンパイアに変えてもらった。こうならなければ死んでいた可能性が高かったからな。」

「そうか。それにしてもやけに精神が落ち着いてるな。」

「ああ、スキルに精神耐性があるからだろ。おそらくこいつが俺の衝動を抑えてくれてるんだろうな。」


俺は少し驚きながらもその答えに納得する。

自分も持っているのでその効果は身をもって体験しているからだ。

しかし、耐性系は持っていない者も多く、特に精神となると更に少ないらしい。

条件としては命がけで精神を追い込めば習得できる可能性が高いそうだがそこまで出来る人間はそれほど多くないだろう。

もしかすると滅ぼされた国にも居たかもしれないが、全てを殺しつくしたのでそういった検証が出来ていなかったようだ。


「そりゃ運が良かったな。」

「俺もそう思うよ。それで、さっきは聞けなかったが条件とはなんだ?モルモットになれとか言ったら今からでもこの国を出て行くぞ。」

「実は、少し行った先にダンジョンが発見されたんだがスタンピードの兆候があってな。」

「車を降りて良いか?」


まあ、普通はこうなるだろうな。

ライラの渡した資料は日本政府を通して世界中に配られている。

ダニールは元軍人なのでその危険性をしっかりと知らされているのだろう。

家族を守るためにこんな所まで逃げて来る男がそんな危険な場所に家族を連れて行こうとするはずはない。


「待て待て。スタンピードはこちらでどうにかする。その間にお前らもそのダンジョンでレベルを上げてくれ。その後に安定したダンジョンの管理をしばらく任せたいだけだ。」


ダニールは立ち上がりかけた腰を座席に戻すとホッと息を吐きだした。

もし彼ら家族が普通の人間ならそれでもこの国から出て行ったかもしれない。

しかし、現在ではここ以上に安全な場所を探しに出るのは危険だろう。

ここに居ればしばらくは人目も避けれるので情勢に応じて今後の行動も取り易くなる。


「それで期間はどれくらいだ?」

「分からないな。暖かくなって来たら自衛隊が駐留する施設を作って彼らが監視と間引きをするらしい。しかし自衛隊が来れる様になるまで半年もかからないだろう。細かい事は総理大臣に直接聞いてくれ。今はダンジョンの前で待ってるから。」


するとダニールの顔が驚きに染まり次に笑い始めた。


(やっぱりそういう反応になるよな)

「冗談が下手だなユウは。兵士も来れない所にデスクワーク専門の総理大臣が来るはずないだろ。」

「(普通なら)そうだろうな。」


彼の言っているのはもっともな意見だ。

俺もゲンさんと旅をするまでは同じ事を思っていたからな。

しかし、今の総理大臣は根本からして違う。

どちらかと言えば戦う事しか出来ない総理大臣なのだ。


「ダニールの気持ちは痛いほど分かる。俺も最初に会った時は同じ事を考えていたからな。しかし、本当の事だから気を付けろよ。お前らを日本に受け入れる事を認めたのはお前が笑った総理大臣本人だからな。」

「いや、この国の総理大臣にそんな権限無いだろう。」

「それがな・・・。」

「いや、そこからは聞かないでおこう。知らない事で守れる命もあるからな。」


流石、軍で非合法な仕事に付いていただけはある。

俺が話す前に危険性を察知して詳しくは聞かないようだ。

それにこの3人はそれでなくても微妙な立場に立っているので危険に巻き込まれそうなことは事前に回避したのだろう。

俺達と違い軍人として危険を潜り抜けて来たダニールは危機管理に対してかなりのやり手らしい。


そして他の話を幾つかしているとダンジョンの前に到着した。

今夜はジンギスカンを準備ていたので彼らを招くには丁度良いだろう。

俺達の中で寒さ対策をしていない者はいないので当然テーブルは雪原に設置してある。

しかも何処で聞きつけたのか精霊王たちも来ており激しい風は治まり空気すら暖かく感じた。


(あれ、これなら自衛隊来れるんじゃね?)


しかし、その思考はすぐに中断されてしまう。

みんな俺達が戻って来るのを待っていた様で半数以上から早く来いと威圧交じりに視線が飛んで来た。

仕方なく俺はダニール達を連れて家のメンバーが居るテーブルに向かう。


「今日は皆でラム肉を使ったバーベキューをする事になっていたんだ。」

「あら、そうだったのね。それならお肉を分けてくれたらお礼にシャシリクを作りたいわね。あ、でも漬け込むのに少し時間が・・・。」


そう言って諦めようとするマイヤにメノウが声を掛けた。


「その心配はありません。料理スキルを使えば時間を短縮できます。材料を言ってくれればお渡ししますよ。」

「そうなのね。もっとスキルについて知らないとダメね。それではお願いします。」

「すぐに終わりますから皆さんは先に食べていてください。」


するとメノウはテーブルと材料を準備していき、周りは肉を焼き始めた。

準備されているのは大量のラム肉と玉ねぎ、人参、モヤシ、ピーマン。

トウモロコシが無いのは食べにくいからだろう。


その間にメノウはテーブルにマイヤに言われた材料を準備していった。

出されたのはニンニク、塩、胡椒、砂糖、レモン、白ワイン、ローリエ。

マイヤはそれらを受け取ると大きなボールに入れて味を調えて行く。

そしてそこに人参、ピーマン、玉ねぎ、ラム肉を投入した。


「準備出来ました。普通は4時間くらい置くのですが大丈夫ですか?」

「分かりました。それくらいなら数分で終わります。」


するとメノウは料理スキルを使いタレを材料に適度にしみこませ準備を終えた。


彼女はそれを別のコンロを準備して乗せると肉を中心に焼き始める。

すると周囲に食欲をそそる少し酸味の効いた匂いが立ち上り人目を集めた。

特にダニールとアリーナの食いつきが激しくそちらに駆け寄って行くほどだ。


「わ~い。ママのシャシリクだ~。」


そして、幼い口調に戻ると子供の様にはしゃいで喜んでいる。

どうやら彼女は感情が高まると精神が子供よりになるようだ。

元が10歳の子供なので仕方ないが時間が経てば落ち着くだろうとヘザーも言っていた。

するとダニールもその横に並び目に涙を浮かべはじめる。

見た目が厳つい軍人顔が涙を浮かべると怖く見えるのは俺だけだろうか?


「またお前の手料理がこうして食えるとはな。少し前だと諦めていたがこの国には感謝しないといけない。」


しかし、その言葉を聞きマリーナは少し頬を膨らませ、ダニールを睨むと先ほどの言葉に訂正を加えた。


「もう。パパったら。その前に2回も『ユウが』助けてくれたんだからね。そっちの方が重要だよ。」

「え?」


すると、その途端にダニールの表情が固まり俺に顔を向けて来る。

そしてその威圧交じりの顔からは「家の娘を誑かすな。」という思いがハッキリと感じ取れた。


(そんな顔されても知らんがな。お前の家庭の事情に俺を巻き込むな。)


こちらとしても会話もあまりしていないのにそんな顔を向けられても困る。

するとそれを見てマイヤが仲裁に入ってくれるようだ。

しかし、マイヤは笑顔を浮かべてダニールに声を掛けるが、そちらも何故か威圧交じりなのでダニールは視線をすぐさまそちらに向けられた。


「ア・ナ・タ。ユウ様を困らせちゃダメよ。あなたには私が居るでしょ。」


するとダニールは渋々頷いて答えるとマイヤの傍に行き寂しそうに抱きしめた。

本当に仲のいい夫婦なので、あの時助けたのは正解だったと思えるがその後の過程が凄く微妙だ。。

それでも多くを見殺しにしてきたので少しでも救えた事が俺の中では僅かな救いになっている。

そして、そんなダニールにマイヤは更に言葉を重ねた。


「それに子供はいつか巣立って行くものでしょ。それが信頼できる所なら安心できるじゃない。」

「そ、そうだが・・・。」

「安心できるでしょ。」

「そ、そうだな。お前の言う通りだ。」

(2人は何を話しているんだ?)


その後は出来上がったシャシリクをみんなで食べながらそれぞれ親睦を深めていった。

間でダニールとマイヤはゲンさんと真剣な顔で話し合っていたが俺は我関せずと他のメンバーと明日からの予定を話し合っている。


「それじゃあ、ダニールは中級なんだな。」

「そうね。だから今日中に上級に上げておいて明日からみんなでダンジョンに入りましょ。武器はその間にクラウドが作ってくれるだろうから戦闘には明後日から参加してもらえば良いわ。」


「そう言えば武器は何を持たせば良いんだ?」

「上級なら影移動が使えるでしょ。私と同じレイピアで良いと思うわよ。」

「なら一旦は在庫を確認してからだな。明日までにはクラウドも起きるだろう。」


そして明日からの事を話しているとダニールたちが戻って来た。

丁度良いのでダニールに今決まった事を話しておく。


「と、言う事だから早速進化してくれ。」

「いきなりだなおい。まあいい。これからの事を考えれば必要だろう。」


そう言ってダニールは受け取った血を飲み干し呆気なく進化を終えた。

おそらくは精神耐性が精神への負担を軽減し、肉体の痛みは意地で耐えきったのだろう。

もし軍にいた時に痛みに耐える訓練をしていれば痛覚耐性も持っていそうだ。


その後はヘザーの指導で3人は影移動を練習して明日に備えた。


そして、朝になるとクラウド達も起きてきたので武器の相談と間に合わせの武器を受け取ってダンジョンへと潜っていく。

まずは15階層に移動して魔物を全滅させながら進む。

その後は麒麟たちが森を焼き払う手筈になっているので日に進むのは15階ずつだろうか。


15階に到着するとそこには既に魔物が現れ、数は50を下回るくらいだろう。

ここは麒麟たちが後で焼き払ってくれるので俺達はそれらを放置して下の階へと向かっていった。

そして16階層にはカマキリの魔物がひしめいている。

通常は待ち伏せを得意とするらしいのだがダンジョンの魔物はそこまで我慢強くないようだ。

まあ、来ないならアリシアとアキトの良いカモなので良いのだが来る以上は倒さなければならない。

今回は低レベルであるメンバーのレベル上げも兼ねているので来る者拒まずだ(コックローチ以外)。


そして俺達は進んで行くと当然魔物も強くなる。

今日は30階層を目指しているのでそこでいったん終了にする予定だ。

当然、途中ではツボミやダニール達にも戦闘をしてもらう。

するとダニールとマイヤはそれなりに戦えるがアリーナはイマイチである事がわかった。

どうやら近接戦の才能がないらしい。

その代わり魔法に対する適正と特殊なスキルがある事が分かった。

その為近接戦はそこそこにして魔法方面のスキルを強化し、さらに特殊スキルを鍛えていく事となった。


そのスキルも3つあり、1つはファミリアというスキルである。

これは相手と契約し助けてもらうテイムに似た能力だ。

しかし、テイムと違いファミリアとなった者はファミリア召喚というスキルで何処に居ても相手が応じれば呼び出す事が出来る。

これが2つ目のスキルでアリシアの精霊召喚に近い。


そしてもう一つが影収納。

これを使えばファミリアは彼女の影に入り込む事が出来る。

通常それ系のスキルがなければ影に入れないのだがそれを可能にするとても便利なスキルだ。

しかも影の中に居れば瀕死の傷すら回復するそうだ。

回復にはアリーナの魔力を使用するが今からレベルを上げて行けば魔力枯渇の心配はなくなるだろう。

特にアリーナは魔法系のスキルが充実しているそうなので魔力を回復させるスキルも持っている。

手ごろな魔物を見つけて契約を手伝えば彼女自身に不安は無くなりそうだ。


そして、俺達が30階層まで下りた時にそいつは現れた。

そこは今までに無く階層間の階段が長く、通常100メートル程の所が200メートルはあった。

そのため天井は高く100メートル以上はあるだろう。

そしてこの階層に居るのはたった1匹の魔物である。

体長は5メートルはあり、体は獅子、足は膝の先が鳥の様になっており鋭い爪もある。

そして白頭鷲の頭に背中には大きな翼があった。

それを見てダンジョンに詳しいアスカが解説をしてくれる。


「あれはグリフォンですね。しかもこのフロアに一匹だけと言うのは階層主かも知れません。」

「階層主ってあれか。ボス的な奴か。」

「はい、出現する条件が2つあってその階層に一匹だけ生まれる場合と、一匹が全ての魔物を殺しつくす2通りあります。ちなみに前者の方が魔素の浪費が無いので遥かに強力な個体が生まれます。あれは恐らく前者ですね。グリフォンは通常40階層より下に現れますから。」


そして、アスカの説明にライラも説明を加えてくれる。


「それとグリフォンは霊獣の一種で先日見たケルピーと似たような存在ね。普段ならとても賢くて気高いんだけど、もしかしたら会話が可能かもしれないわ。」


確かにライラの言う通りグリフォの目には理性が感じられる。

俺達がこうして話していても襲って来る気配が無いのがその証拠だろう。

それにどことなく観察されている気がする。

以前にパワースポットの傍ではシラヒメと言う特殊な前例もある。

魔物は生まれながらにある程度の知識が備わっており個体差もあるので正確ではないが攻撃してこないなら会話を試みる余裕はありそうだ。

こういう時にはアリシアとホロが居ると助かるので二人にも一緒に来てもらう。


そして早速このグリフォンに声を掛けてみる事になった。


「お前は会話が可能なのか?」


するとグリフォンは俺達を見下ろし落ち着いた声で言葉を返してきた。


「会話は出来ます。しかしあなた達をここから通す訳にはいきません。」


どうやら、言葉自体は人の物ではないが会話が出来る知能と理性はあるようだ。

急に襲い掛かられても良い様に警戒はしていたがこれなら大丈夫だろう。


「どうして通してくれないの?」


そんな素直な質問がホロの口から飛び出した。

やはりこうしてダンジョンの中に生まれた魔物は外とは違うのだろうか?


「私はいまだにダンジョンに囚われています。もうじき出られるチャンスでしたが何故か魔素の濃度が激減し、それも叶いそうにありません。通路も小さくなりあれでは私が通り抜けるのは不可能でしょう。」


それは確実に俺達の責任だな。

しかし、ダンジョンの魔物が全て理性的なら問題は無いかもしれないがそうではない。

コイツの様に理性が備わっている方がとても稀な事なのだ。

しかし場合によってはここから出るのに協力しても良いかもしれない。


「お前は自由を求めているのか?」

「生まれたばかりの私にそこまで贅沢な希望はありません。ただ知識にある本物の空をこの翼で飛んでみたい。」


確かにここの天井は他の階層に比べれば高いがそれでも低すぎる。

横の広さも大したことは無いのでこの巨体から考えれば窮屈だろう。

ならばと俺はアリーナに声を掛けてこちらに呼ぶと言語のスキルを6まで上げさせて話に加えた。


「なら、こいつのファミリアになる気は無いか?力を貸してくれるならここから出るのに協力しよう。」


するとグリフォンはアリーナに顔を近づけその顔を覗き込んだ。

彼女もこれほど大きな生き物を間近で見るのは初めての経験だろう。

少し怖がっているが頑張って目を逸らす事なく見つめ返している。


「本当に可能なのですか?」

「それは試してみないと分からないな。ただ、もし戦ったとしてもお前は俺達に瞬殺される。そちらを望むなら俺は別に構わないぞ。」


少し脅しの様だが仕方ないだろう。

弱気に出て侮られるよりは強気に出て現実を見てもらった方がまだマシだ。


「・・・分かりました。試す事に異存はありません。ただし、不可能な時はやはり戦いとなります。それは覚悟してください。」


その時は諦めて俺がコントラクトで契約してマリベルにゲートを開いてもらおう。

今はここを通れればそれで十分だからな。


「それじゃあアリーナ。スキルを使ってみてくれ。」

「やってみます。(ユウさんの期待に応えないと)う~ん・・・エイ!」


アリーナ掛け声と共にスキルを使うとグリフォンは薄い光に包まれた。

そして光が収まると二人は同時に首を傾げて見つめ合う。

そのあまりのシンクロ具合に周りからは少なくない笑みがこぼれた。


「成功したのですか?」

「どうだろう?」

「ステータスのログを確認してみろ。どちらにしても何か書いてあるはずだ。」


アリーナはステータスを開くとそこに書かれている文字を確認した。

するとその顔には笑顔が浮かびそれだけで結果がどうだったのか想像できる。


「やった~!成功してます。ああ、でも暫定って書いてあります。」

「暫定って事は更に何かをしないといけないって事か。スキルの説明には何か書いてあるか?」


するとアリーナはスキルの説明を確認しすぐに納得してその事を俺達に教えてくれた。


「どうやら名前を与えたら暫定が消えるようです。どうしますか?」


恐らくは名前を受け取ってくれるくらいの信頼関係が出来れば本採用なのだろう。

まずは暫定で何処までの事が出来るかを試してみないといけないな。


「それならまずは影に入れるか試してみよう。入れれば今は暫定で良いんじゃないか。」

「分かりました。それでは影に入れるか試してみてください。」


そう言われてグリフォンはアリーナの小さな陰に足を近づけた。


「本当に入れるの?」


その疑問も見ていれば納得できる。

アリーナの影の大きさはグリフォンの前足より小さいからだ。

しかし、影に前足が触れると大きく拡大し、5メートル以上のサイズに広がった。

そしてグリフォンは恐る恐る中に入るとその巨体を影の中に消していく。

そして全てが影に沈むと元通りのサイズに自然と戻っていった。


「入れたみたいですね。」

「そうみたいだな。」


俺は試しに影に触れてみるがそこには硬い地面があるだけだ。

やはり影に入れるのは暫定でもファミリアだけの様だな。

すると影が突然広がりそこからグリフォンが顔をのぞかせた。

どうやら出入りは自由の様だ。


「中はどうなっているんだ?」


このグリフォンはアリーナのファミリア第1号だ。

俺達も中がどうなっているかは見た事がないのでこうして当事者に聞くしかない。

するとグリフォンは何やら興奮気味に声を掛けて来た。


「な、名前を下さい!」

「え!もう良いのですか!?」


いきなりの宣言にこちらが驚いてしまうがこの変わり様はどういう事だろうか。

一体中はどうなっているのか余計に気になって来る。

しかし、まずは落ち着けるために名前を与えた方が良いだろう。


「アリーナは何か考えてるか?」

「はい。それならイネスでどうですか。」

「イネス・・・分かりました。それでは後ほど。私はもう少し空を飛んでいますので。」


そう言ってイネスは影の中に消えたが気になる言葉を残して行った。

しかし本当に中はどうなっているのだろうか。

かなり気になる所だが俺達はここに結界石を設置して地上に上がっていった。

結局その日はイネスは出てくる事無く日が沈んでいく。

そして、その日の夜になり俺達がテントに入る頃になってトラブルはあちらからやって来た。

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