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152ドワーフ王国、門前の戦い

あれから数日が過ぎた。

皆との関係は良好で全員に俺の寵愛が付き力も増している。

特にアヤネの成長が大きく結界石の効果が格段に上昇した。

そのため一般での直接な取引を終わらせ国に仲介してもらう事にしている。

最近は値切り交渉や悪質な客が増えて来たのも理由の一つだ。

利益は減ってしまうが皆の安全には変えられないだろう。

嫌がらせをしてきた相手を皆殺しにしていいなら楽だが、ここは日本なのでそうもいかない。

幾ら国が庇ってくれると言っても必ず限度がある。


そして俺達は現在、ドワーフの国に行くための計画を立てている。

今回向かうメンバーは俺、ライラ、アリシア、ホロ、カーミラ、マリベルだ。

同行するのは武器を持って戦うメンバーでその強化が目的である。

ライラは違うのだがクラウドたっての推薦で参加する事になった。

彼が言うにはライラの力(幾らでも酒が飲める)が必ず必要だろうとの事だ。

最初はバカバカしいと思ったのだがあまりに真剣な顔で言うのでその提案を了承した。


そしてゲンさんとサツキさんも当然同行する。

ゲンさんは自分の新たな武器を得るためだ。

彼の刀に対する要求は高く、妥協をしないのでクラウドも手を焼いている。

その為にあちらでも良い武器が無いかと探しに行くそうだ。

それにもしかすると国レベルでの話もあるのかもしれない。

ダンジョンも深くなれば現代兵器が通用しない敵が出て来るので武器の強化も必要だろう。

その最初のモデルケースになるのがアキト達自衛隊組になる。


そしてサツキさんは自らの武器である血飲丸と血喰丸をもっと使いやすくするために向かう。

彼女曰「この子達ヤンチャだから、もう少し大人しくさせないとね」との事だ。

この人にヤンチャと言われると凄く危険な刀に見えるのでとても不思議である。

理由は口が裂けても言えないが周りも分かってくれるだろう。


そして自衛隊組から参加するのはアキト、カエデ、アスカだ。

アスカは自分の武器を作り直す為に参加する。

今までは騙し騙し使っていたそうだがそれも限界を感じている様だ。

命を預ける武器なうえに死ねない理由がある彼女も妥協は出来ないだろう


そしてアキトも理由は同じだが他のメンバーに使わせる武器を選びに行くためでもある。

自衛隊組も敵が次第に強くなる事で接近戦に不安を感じている様だ。

一度アキトが行って話を行い、その後で再び全員で赴く事に決まった。

マリベルに運んでもらう必要はあるが彼らも今までの戦闘で手に入れた大量の魔石を所持している。

自腹と言っても魔石を渡すだけなので大丈夫だろう。

その際はクラウドも同行し不備が無いかを確認をしてもらう予定だ。


すると前回は行かなかったカエデが珍しく我儘を言って二人に同行を申し出た。


「二人が行くなら私も行きたいです。」


その一言で二人はカエデの同行をあっさり認めた。

甘やかしているように見えるがカエデが二人にこんな事を言ったのは初めての事らしい。

面倒は自分達が責任を持って見ると言っているが一緒にお出かけしたいだけな気がする。

まあ、家にも同じような娘が2人いるのでその気持ちも分からないでもない。


ちなみに今回は今までと違い目的地へと直接ゲートを開く。

国の様子はクラウドから聞いているし今回は時間をあまり掛けないつもりだ。

そして、さらに数日が過ぎて全員が我が家に集合した。

場所はディスニア王国の北側で周囲は山に囲まれているらしい。

山には至る所に鉱山が彫られ幾つもの鉱山系のダンジョンもあるそうだ。


さらにこの地には幾つかの高ランクダンジョンが存在し、その中には100層を超える物もある。

少し興味があるので時間に余裕があれば行ってみても良いかもしれない。


そしてゲートを潜り外に出ると、そこには一つの山を囲むように巨大な城壁がその存在感を放っていた。

どうやら町は斜面に作られているらしく町並みは上に上がるにつれて綺麗になっているようだ。

そして下の方では今も鍛冶が行われているのか、町からは多くの煙が立ち上っていた。

俺達は道なりに移動を開始し、城門へと歩き始める。

すると門の前には多くの人が並び列が出来ていた。

俺達はその列に並ぶと順番が回って来るのを回りの様子を確認しながら待ち続ける。


「やっぱりドワーフの方が多いな。でも何でみんな武装してるんだ?」


ドワーフたちは全員が鎧を着ており、巨大で柄の長い斧を持っている。

ハルバードという武器の様だが全員が常に目を光らせ周囲を警戒している様だ。

俺は周囲を見回し何も居ないのを確認するとマップで更に地中も確認する。

それでやっと彼らが警戒していた理由が判明した。


「ここって地中にワームが多いな。」

「そうらしいわね。この国はワームの群生地の上に建ってるらしいから。」


そう言って教えてくれたのは横を歩くライラだが口ぶりから事前に確認を取っていたのだろう。

俺はそれに頷きながら更に広範囲を確認していく。


「でもワームは振動にも敏感だけど魔力にも敏感なの。だから私達みたいに極端に魔力が強い者には滅多に襲い掛かって来ないわね。まあ、ディスニア王国での事は聞いたけど、あれはデーモンの連れてた魔物だからでしょうね。私達を襲うとすれば余程の大物しかいないわ。」


そう言って笑うライラだがそれをフラグと言う。

そして5メートル程度の小さなワームは俺達を避けて進んでいるがその更に下。

小さいワームが居る地表1㎞よりも何倍も深い場所から巨大なワームが一直線に向かって来る。


(いや・・・、これはワームではなく別の魔物だ!)

「皆、何か上がって来るぞ。こいつはワームじゃない!」


俺の言葉に皆は即座に戦闘態勢に入り、周囲は俺の言葉に首を傾げて視線を向けて来た。

しかも周囲からの声を聞いてもあまり良い反応は帰って来ない。


「アイツ何言ってんだ?」

「放っておけ。目立ちたいだけだろ。」

「緊張で気でも狂ったのか。」


などの危機感のない言葉ばかりだ。

接近中の魔物はかなり大きく30メートル以上はありそうだ。

しかし、地表からまだ1キロ以上は下にいるため誰も気付けないのだろう。

俺達はそれぞれの手段で空に飛び上がりその魔物に備えた。

恐らく俺達の魔力に反応して上がって来たのだろうが列から離れても進路を変える様子はない。

どうやら魔力の反応ではなく地上を歩く人々の足音にターゲットを変更したようだ。

すると次第に巨大な何かが地中から来ると気付いた他の者も騒ぎはじめ、勘の良い者は逃げ始めた。


「やべえぞ!アイツの言った事は本当だったんだ。早くここを離れろ!」

「な、逃げるって言っても何処に行くんだ!確実に誰かがターゲットになってんだぞ!」

「おい、お前ら何逃げてんだ。下りてきてどうにかしろよ!」


先程せっかく忠告したのにそれを鼻で笑った者たちが俺達を汚く罵って来る。

中にはこちらに囮になれと叫ぶ者まで現れ始めた。

そして魔物が地表から100メートルまで接近したところで周囲は激しく揺れ始め更に混乱し始める。

それを見て俺は手に魔法を準備してその時に備えた。


「あ、アイツ俺達ごとやる気じゃないだろうな。」


そして残り10メートル。


魔物は10人程のドワーフが固まる場所を標的にしたようだ。

すると振動から自分達がターゲットになっている事に気付き分散して逃げ始める。

しかし地面が揺れて上手く動く事の出来ない彼らは、成す術なく顔を青くしていた。


周りの者もそれに気付いた様でその場から転げながらも離れていく。

そんな彼らの顔には、既に諦めの表情が色濃く浮かび動く事を諦めた者も居る。

そして残り5メートルの所で俺は準備しておいた風の魔法を放ち暴風によりその場からドワーフたちを吹き飛ばした。


「「「わあーーー!」」」


その瞬間、地中から茶色の鱗に覆われた巨大なワームの様な魔物が出現した。

ドワーフ達を見れば、俺の魔法で怪我はした様だが喰われた者は一人も居ない。

ただ彼らは全員が体格が良く重量もそれなりにあったのでどうしても強めの魔法を放つしかなかった。

出来れば怪我をさせたくは無かったが緊急事態なので彼らも納得してくれるはずだ。


そして魔物を見ると目はない様だが口の中には粉砕機の様な歯が大量に並んでいる。

あれに飲み込まれていればその体は粉々に砕かれて飲み込まれていたに違いない。

しかし、俺の魔法が旨い具合に働いたらしく音は風で掻き消され、魔力は魔法でかき乱されているので完全に標的を見失っている様だ。

すると相手を鑑定したライラが俺達にその情報を教えてくれた。


「あれはワームが亜竜まで進化してる。かなり硬いから気を付けて。」


どうやら早速、かなりの大物が釣れた様だ。

餌が自分達でなければもっと楽しめるのだが俺達に気付いた亜竜は再びターゲットを変更しこちらに口を向けた。

すると亜竜は口を開いてそこから岩の弾丸を高速で発射し、俺達を撃ち落とそうと狙って来る。

俺はそれを前衛として防ぎながら周りへと指示を出した。


「カーミラとホロはカエデと一緒に下がっててくれ。ゲンさんも今回は3人の護衛を頼みます。」

「分かった。今は武器が無いから仕方あるまい。アスカも下がるぞ。」


カエデは戦闘面に問題があり、他の4人はいまだにまともな武器が無い。

以前に山の主である大蛇と戦った時もまともなダメージを与えられなかった。

今回の相手はそれ以上に硬そうなのでダメージを与えるのは難しいだろう。

武器の破損を無視すれば出来るかもしれないが来たばかりでそんな事をするのは危険がある。

龍化も慣れていないので今は下がってもらうのが一番だ。


「サツキさんは前衛、その他は後方から魔法で攻撃。アキト、後方の指揮は任せた。」

「早速出番ね。」

「後ろは任せろ。」


そして今回の俺はクラウドから貰った剣の試し切りも兼ねている。

その為、剣にはスキルではなく魔力を流して軽い強化だけしか行わな。


俺は打ち出される岩を切り裂きながらその間合いへと飛び込んだ。

その瞬間に相手へ剣を一振りするとその一撃は鱗と共にその下の肉を大きく切り裂いた。

そんなに力を込めた気は無かったが、以前の剣と性能が段違いだ。

魔力の通りが良いためロスも少なく、扱いも簡単になっている。


「これなら思ってたよりも楽に倒せそうだな。」


そして俺が切り裂いた場所に更にサツキさんが攻撃を行い傷を広げた。

するとその血を吸って二本の小太刀は赤味を増し、更なる血を求めて目を覚ましたようだ。

2度3度と切る付ける内にその切れ味も増していき今では容易く鱗を切り裂いている。

そして周囲からの魔法攻撃とアキトの射撃が的確に相手の気を逸らし、俺達は安定してダメージを与えて行く。

そして、最後に俺はもう一つの武器である刀を抜いた。

すると刀は俺の中から水の精霊力を吸い上げ刀身に水を纏う。


「勝手に力を吸ってるから少しじゃじゃ馬感があるな。まあ、今回は試し切りだから扱いは後で練習するか。」


俺は亜竜に急接近し、まだ傷のない部分に剣を振り切った。

すると以前の剣の様に属性に応じて水の刃が飛び出し、その体を真っ二つに両断して見せる。


「お~スゲー威力!これで最高傑作じゃないんだからクラウドって凄い鍛冶師なんじゃないか?」


しかし両断された亜竜は持ち前の生命力でいまだに暴れ続けている。

メガロドンの時もだったが亜竜以上になると生命力が半端なく高い。

完全に首を切り落としても油断できないほどだ。

しかし、そんなワームの頭部と思えるところにサツキさんは両手の小太刀を突き刺した。

すると次第に動きは鈍くなり1分もしない内に動かなくなる。

恐らくは頭部の血を完全に抜き取って止めを刺したのだろう。


「ユウ!血が勿体ないから早く収納して~!」


サツキさんの方を確認していて大事な事を忘れていた。

亜竜クラスになると血の一滴まで貴重な素材になる。

しかもせっかく受肉している魔物の体だ。

無駄にすることは無いだろう。

それなりに血は流れたがあれは仕方ない。かなり大きな個体なのでまだかなりの血が残っているはずだ。

それにこれでまたヘザーの好物が一つ増えそうだな。


俺はライラの言葉に従い急いでアイテムボックスに収納すると剣を鞘に収めた。

そして頭部も収納すると周囲を見回し様子を確認する。

今回の死亡者は0だが怪我人は多数出ている。

しかし、これに関しては不幸な事故なので放置で良いだろう。

決してライラがフラグを立てたからではない筈だ。

そして、門の方を見ればようやく兵士たちが準備を整えてこちらに向かって来た。

しかし、その様子は何やら不穏な物を感じる。

兵士たちは俺達を取り囲むように動くとその手に持つハルバードを向けて来た。


「これはどういう事だ!?」

「あの魔物がお前たちを狙って来た事は既に分かっている。大人しく我らと共に来てもらおう。先ほどの魔物も証拠品としてこちらで押収する。」

「押収するというが後で返してくれるのか?」


俺は兵士の態度に不信を感じ密かに審問を使用して問いかけてみる。


「何を言っている。それ程の素材を返すはずがないだろう。こちらで有効活用させてもらう。な!」

「お前達と行ったらどうなるんだ?」

「牢に幽閉し武器はすべて没収する。お前達ヒュームには勿体ない武器を所持しているからな。こちらで存分に解析させてもらう。ど、どうなっている!?」


俺の問いかけに兵士は素直に全てを話してくれた。

それを聞いて周りからも彼らに対して冷たい視線が向けられている。

どうやら全てのドワーフが彼らのような考えではないらしい。

その事にホッとすると俺達は兵士たちに背中を向けた。


「おい、何処に行く!?こちらの命令が聞けないのか!」

「ああ聞けないな。ただし日を改めてまた来る事にする。それまでにもう少し真面な対応を学んでおけ。」


他のメンバーも揃って背中を向けると目に付く者を全員魔法で回復させて歩き出した

別にコイツ等に頼らなくても俺達にはクラウドが居る。

ここに来たのは今の日本には必要な材料が少なく、クラウドが十全と力を発揮できないからだ。

最悪、素材だけでも買えればと思っていたがあの対応だと町にまともに入るのも難しい。

強行突破も出来るが今後の事を考えるとそれは控えた方が良さそうだ。

俺達はその場を離れると溜息を吐いて日本へと帰って行った。


そしてその後、ドワーフが自分達の行動を後悔するのに、それほど時間は掛からなかった。

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