147 お仕置デート【ヴェリル】
今日はヴェリルとのデートの日だ。
前回の埋め合わせと言う事だが一日町をぶらつく予定である。
ちなみに後デートが確定しているのは昨日約束をしたオリジンと、皆の大プッシュによりカーミラも加わった。
何故かは分からないが昨日の件もあるので断る事は出来そうにない。
まあ、一緒に住む仲間として親睦は大事だろうと素直に了承した。
マリベルとジェネミーは先日の旅行で満足したそうなので今回は見送られたが周りの様子から何かを企んでいそうだ。
マリベルに関してはもっといろいろな所を見せてやりたいし、ジェネミーはせっかく出歩ける様になったのだから頻繁に連れ出してやりたい。
そしてヒスイに関しては時期的に関係ないのでデートは見送られることになった。
それに彼女はあの時やらかした側なので俺と同様にお仕置も兼ねているのだろう。
そして、ヴェリルは俺と出かけるのではなく待ち合わせをしてみたいと言い出した。
それを聞いて周りの女性陣に電撃が走ったようだが別にデートは今回が最後ではない。
次回にそうすれば良いのではと思いそれを伝えると集まって何かを話し始めた。
俺はそろそろ時間だと思い軽く声を掛けて出かけて行く。
ちなみに何を話しているか分からないがかなり白熱した議論なのか返事は帰って来なかった。
少し寂しさを感じるが彼女たちなりに楽しく過ごしているので良いだろう。
そして待ち合わせ場所の駅前に向かうとそこには大きな人だかりが出来ていた。
何かと思い近づけばその先から歌声が聞こえる。
どうやら誰かがこの先で路上演奏をしているようだ。
しかし、楽器の音が聞こえないのでアカペラで歌っているのだろう。
その声はとても澄み渡り車などの騒音を無視して耳に届いている。
(この声はもしかして?)
俺は周囲を歩くがどこにも割り込む隙間は無く、通る人は次々に足を止めてこの声に聞き入っている。
俺は仕方なく上空を歩いて進みながら中心に視線を向けた。
するとそこには噴水に腰かけて歌を奏でるヴェリルの姿があった。
周囲にはハトや野鳥が集まり、人間と同じように歌に聞き入っている。
それが壁になり少し離れた場所に人の壁が出来ていた。
噴水には美しい少女の像が立っているがヴェリルはそれ以上に輝いて見える。
すると俺に気付いた彼女が歌を止めて俺に手を振った。
「ユウ~こっちこっち~!」
すると周りの視線が一斉に俺に集中した。
その瞬間に鳥たちは舞飛び彼女の周りに空間が出来る。
周囲の人々は俺が空中を歩いている事にやっと気付いた様でどよめきが広がって行った。
そして俺はヴェリルの傍に降り立つと彼女を抱き上げて軽く声を掛ける。
「それじゃあ行こうか。」
「ええ、お願いね。」
ヴェリルは嬉しそうに笑顔で頷くと俺とその場を離れた。
かなりの人数が集まっていたので一斉に押し掛けられたら面倒だ。
怪我はしないがさせる可能性は十分にある。
それに駅前は変なスカウトやナンパが居たりするので早めに離れるに限る
そして一気にこの場を離れると幾つもの駅を越えて隣の市へとやって来た。
こちらはこの県でもかなり大きな町なので色々な店がある。
食べるにしても買うにしても便利な所だ。
そのため人も多く歩いているので逸れると大変だ。
そう言う名目で俺はヴェリルと手を繋いで歩き出した。
「今日は何処に行こうか?」
「そうだなー。まずは裁縫店に行って毛糸でも買うか。」
「どうして?」
「ヴェリルの手が冷たそうだから。今度はミトンを作ろうかと思ってな。好きな色で作ってやるから毛糸を選んでくれ。」
「やった~!」
ヴェリルは嬉しそうに飛び跳ねると俺と一緒に歩き出した。
そして店に入ると俺は以前のおばちゃんに声を掛ける。
「おはよう。毛糸買いに来たよ。」
「あら、ユウじゃないか。今回は意外と早く来たのね。その子は彼女かい?」
するとおばちゃんは口元をニヤケさせながら聞いてくる。
俺も隠す事ではないし以前に来た時に少し話しているので素直に頷きを返した。
「そうだな。今後の為に紹介しておくよ。」
そう言ってヴェリルの背を優しく押して挨拶を促した。
ちょっと緊張しているが固くなる必要は無いんだけどな。
「マーメイドのヴェリルです。」
「丁寧にどうも。外人さんなのに日本語上手いね。私はここの店長をしてる者だよ。まあ、気楽に見て行っておくれ。」
どうやらおばちゃんはヴェリルを外人と勘違いしたようだ。
大まかには外人ではなく人外なのだが今はまだ正す必要は無いだろう。
意思疎通が可能な魔物の扱いにはどうしてもデリケートな所がある。
もう少し世間の反応を観察してからでも遅くは無いだろう。
そして俺達は上の階に向かい毛糸を見ていった。
するとある一点で彼女の動きが止まりその毛糸に手を伸ばす。
「これが良いです。」
そう言ってヴェリルは自分の髪と同じ鮮やかな緑の毛糸を選び取った。
俺はそれを受け取ると同じものを計4玉持ってレジに向かう。
「すぐに作るから待っててくれな。」
そして俺はおばちゃんに言って毛糸を購入するとその横にあるスペースを借りて道具を取り出した。
「ユウ、デート中だろ。時間は大丈夫なのかい?」
「ああ、すぐに終わらせるから。」
「すぐにってアンタねー。適当な物作ったらタダじゃおかないよ。」
このおばちゃんは編み物の腕がプロ級だ。
店内のあちらこちらに自分で作った編み物が飾られており、独学で覚えた俺も時々相談に来ていた。
だから職人として下手な物は許さないのだろう。
それがやり始めた素人ならともかく俺達の付き合いはそれなりに長い。
下手な物を作ると拳骨くらいは降ってきそうだ。
俺は気合を入れ集中して手を動かし始めた。
それと同時に周りの風景や音も消え、手元だけが俺の目に映し出される。
『集中が無我の境地に進化しました』
『無我の境地のレベルが2に上昇しました。』
『無我の境地のレベルが3に上昇しました。』
『無我の境地のレベルが4に上昇しました。』
『無我の境地のレベルが5に上昇しました。』
『無我の境地のレベルが6に上昇しました。』
『無我の境地のレベルが7に上昇しました。』
『無我の境地のレベルが8に上昇しました。』
『無我の境地のレベルが9に上昇しました。』
『無我の境地のレベルが10に上昇しました。』
『魔石を使用しミトンを強化しました。』
『スキル付与を使用しミトンに形状変化を付与します。・・・成功しました。』
『更に魔石を使用しミトンを強化しました。』
『スキル付与を使用しミトンに隠蔽を付与します。・・・成功しました。』
『更に魔石を使用しミトンを強化しました。』
『無我の境地を使用し付与の成功率を引き上げます。』
『スキル付与を使用しミトンに不壊属性を付与します。・・・・・・成功しました。』
『付与を終了します。』
そしてその様子を目の当たりにしておばちゃんは息を飲んでいた。
こちらにとっては普通に編んでいる様でも周りから見ると異常な速度で手を動かしているからだ。
「これが人間なのかい?」
「私も初めて見たけど、こうやって私達のマフラーは作られたのね。」
おばちゃんはまるで機械の様な速度で編上がるミトンに驚き、ヴェリルは驚きながらも何処か嬉しそうだ。
それは恐らくいつになくユウの真剣な顔が見れたからだろう。
そして10分程度でミトンは完成しユウは大きく息を吐いた。
「これで完成だな。・・・うん。出来もまずまず。時間もそんなに経ってないな。」
俺はミトンを手にヴェリルに歩み寄り彼女の手にはめて確認を行った。
(サイズもぴったりで問題ないな。)
するとおばちゃんはヴェリルの手を取りミトンの出来を確認する。
最初に何も言わなかったのはこれが贈り物だと知っていたからだろう。
出来て最初に触れて良いのは作った者と送られた相手だけだ。
こういう所に気を使ってくれるので今も仲良く付き合っていられるのだろう。
おばちゃんは鋭い視線で縫い目を確認し、笑顔で大きく頷いた。
「良い出来だね。まさかここまで上達しているとは思わなかったよ。」
(俺もこんなになるとは思っていませんでした。)
編み物は趣味でしていた部分も大きいがやはり贈る相手が居ると込める重みが違う。
最近はなんだか凄く心が籠っている物が作れている気がするからだ。
そして、俺はヴェリルの笑顔にある事に気が付いた。
「この調子だとみんなの分も作らないとな。」
「ははは、若いねー。あと何人くらいいるんだい?」
俺はおばちゃんの言葉に指を二本立てた。
するとおばちゃんは笑いながら俺の肩を叩き力強く励ましてくれる。
「あと二人かい。それなら余裕じゃないか。」
(いや、桁が一つ違うんだけどこれは言わないでおこう。義理も含まれてるしな。それに何人かにはマフラーもプレゼントしないといけないし、今度は皆で毛糸を選びに行こう。)
以前は色が被らない様にできたが、ここまでの人数になると厳しくなってくる。
次からは本人が好きな色を選んでもらってそれで作る事にしよう。
そして俺達はおばちゃんに見送られながら店を出て行った。
次に向かうのは動物園だ。
ヴェリルは陸の動物を見た事が殆どないらしくテレビを見て興味が湧いたそうだ。
中に入ると目の前には猿山があり、そこには糞の投擲に注意と書いてある。
(そう言えば小学生の時にクラスメイトがくらって大爆笑した記憶があるな。)
そう考えていると一匹のサルが目についた。
奴は何かを手に持ち俺を無垢な目で見つめている。
するとその手は振られ、俺に向けて何かを投げつけて来た。
その瞬間、サルの口元がニヤリと歪む。
(コイツ、シめてやろうか。)
しかし、俺達には矢避けの加護がある。
投擲系は通用しないのだ。
その為サルが投げた物は俺達に届く事無く大きく外れて通り過ぎていく。
それを見た途端に笑顔が歪み次弾を投げつけて来た。
そしてそれが何度も続くがまったく命中しない。
周囲は汚物まみれだがとうとうサルも出る物が出なくなった様で腹を抱え始めた。
そして周囲のサルを捕まえて何かをせがんでいるがあれでは周りも堪ったものじゃない。
牙を剥かれ、殴られを繰り返すと最後は腹を抱えて隅へと消えていった。
何があのサルをあそこまで駆り立てたのか知らないが俺達は地面を踏まない様に進み次へと向かっていく。
「何だったのかな?」
「さあな。でも面白い見世物だった。」
後で掃除が大変だろうがあれだけ出せばしばらく他の客への被害も減るだろう。
そして次に向かったのはキリンのエリアだ。
そこでは穏やかなキリンが木の上の葉を食べようと舌を伸ばしている。
キリンの舌は30センチは伸びるそうなのだが葉が高すぎるために届いていない。
するとヴェリルが俺の袖を引っ張るのでそちらに視線を移した。
「可愛そうだからどうにかしてあげて。」
その言葉に俺は苦笑を浮かべた。
別にあの葉を食べなくても飼育員が決まった時間に餌をあげるはずだ。
しかし、ヴェリルが言っているのはそう言う事ではないのだろう。
俺は精霊力を高めてそれをキリンエリアにある木に送り込んだ。
属性はあるが魔法として発現していない精霊力は目に見えない力で植物の成長を促すことが出来る。
そして、精霊力を受けた植物たちは枝を伸ばし多くの葉を芽吹かせ、キリンは怖気ずく事無く喜んでその葉を食べ始める。
そして葉を頬張ったままこちらに顔を向けるとその長い首を大きく上下に動かした。
(ありがとうございます。)
俺は一瞬キリンがお礼を伝えてきた事に面食らうがすぐに先日の事を思い出した。
(ああ、獣王の寵愛のおかげか。)
確か効力に動物と意思を通わせられる様になれるとあったはずだ。
その効力でキリンの考えが伝わって来たのだろう。
それにしてもやけにハッキリ聞こえた気がする。
もしかするとステータスを持っているのかもしれない。
俺はキリンに手を振ってから次へと向かって行った。
「ありがとう。キリンもきっと喜んでたね。」
「きっとじゃなくてお礼を言われたよ。お前の優しさが伝わったんだな。」
「ふふ、なら良いけどね。」
そして俺達が向かう先には象が待っていた。
するとそこに大学生くらいの男が数人おり、手にリンゴを持っている。
(確かここでの餌やりは禁止のはずだが・・・。)
しかし、彼らは象が鼻を伸ばしても与えようとはしない。
それどころか笑いながら揶揄っている様だ。
すると象は次第に外円部の堀に近づき必死で鼻を伸ばした。
しかし次の瞬間、象の鼻は叫びと共に大きく下に振るわれる事になる。
そして象は大きな叫び声と共に堀に落ちて体を横たえた。
「やっべ、逃げるぞ!」
「お前ら何やってるんだ!」
そして異常に気付いた飼育員が走って来るが大学生たちは逃げ出してしまう。
すると飼育員は手摺りに手を掛け下を覗き込んだ。
「何てことだ!落ちた衝撃で足が折れてる!」
飼育員は急いで連絡を入れると危険も顧みず堀へと飛び込んだ。
「大丈夫か!?」
「・・パオ~。」
そして象に駆け寄るが象の反応は弱々しい。
片足も変な方向に曲がっており飼育員の顔に焦りの表情が浮かんだ。
(どうして動物園に来ただけでこんなにトラブルが起きるんだ?)
俺は堀に飛び降りると飼育員の肩を軽くたたいて声を掛けた。
この程度なら俺にとっては雑作も無い事だ。
「おっさん、手伝ってやるから少し離れてろ。」
「な、手伝うって、それよりもここは危険だ早く上がりなさい!」
象は仲間を大切にする生き物だ。
そのためこの状況に気付いた象が襲って来る可能性もある。
象の突進は車の衝突に匹敵するので普通の人間には危険だろう。
しかし、それはこの飼育員も同じ事だ。
今はこの状況を可能な限り素早く処理する必要がある。
「良いから任せろ。」
俺はオール・エナジー・クロスの形態を調整し象の体の下に差し込むとゆっくりと板状にして象を持ち上げた。
流石に5トンを超える象を1人で持ち上げるのは大変だがメガロドンの引きに比べれば大した事は無い。
俺はそのまま象を堀の上に置くと秘薬を取り出して象の口に流し込んだ。
すると象は次第に元気になり何もなかった様に立ち上がり歩き出した。
「痛い所は無いか?」
(大丈夫そうです。)
「足元に気を付けろよ。」
(ありがとうございます。)
象は鼻で俺の頭を撫でると仲間の許に戻って行った。
後ろではその様子を見ていた飼育員が呆然と見つめている。
「上がるから掴まれ。」
俺も抱えるが一応念のために声を掛けておく。
そしてゆっくりと浮き上がると飼育エリアの外へと出て行った。
「治ったとは思うが後でちゃんと検査しておけよ。」
「何が起きたか知らんが助かったよ。」
象は体重が重く、足の骨折は命に係わる。
しかし飲ませたのは人間用で量も少ない。
そのため飲ませた量が足りていない可能性もあるので一応注意しておく。
「連絡先を教えてくれないか?今度お礼をする。」
「いや、大した事はしてないから気にしないでくれ。行こうかヴェリル。」
「そうね。でもいきなり飛び込むから驚いたわよ。」
「緊急事態だから仕方ないだろ。」
そして俺達は笑顔で話をしながらその場を離れて行った。
ちなみに事件を起こした大学生は他のスタッフに捕まり、こっぴどく怒られたそうだ。
それでも賠償や治療費の請求をされなかっただけ良いだろう。
頑張れば払えない額ではないだろうが確実に人生に影響しそうだ。
そしてその後はのんびりと園内を回ることが出来た。
しかし、そんな穏やかな時も束の間。
俺達の向かう先から一匹の猫がやって来た。
「ユウ、目の前から何か大きいのが近づいてくるよ」
「そうだな、あれはライオンって言うんだ。今日は対策訓練日だったか?」
「そうなの?それにしても気合が入ってるよね。訓練なのに本物を使うなんて。」
そう言われれば周囲を見回すと誰もいないようだ。
しかも先程、何かの放送が流れていた事を思い出した。
焦っている様な声でハッキリと聞き取れなかったが、もしかして訓練じゃなくて本当の事件なのかもしれない。
そんな事を考えていると後ろから何人もの男たちがやって来た。
手には銃や吹き矢を装備し、物々しい雰囲気を放っている。
「そこの君、早く逃げなさい!それは本物のライオンだ。誰かが檻のカギを閉め忘れて出てきてしまったんだ!」
すると一人の男が押し殺した声で俺達に逃げる様に警告を送ってくる。
どうやら思った通り事件で間違いない様だ。
それなら丁度良いので穏便に解決できるか聞いてみよう。
俺は近くまで来たライオンに話し掛けた。
「檻に帰る気はあるか?」
(腹減った。肉食いたい。お前肉。だから食べる。)
片言だがこいつの思いは十分過ぎる程に分かった。
それと檻に入れられている間に野生を失った様だ。
例えいかに強い力を持った肉食獣だとしても最強な訳ではない。
相手の力を感じ取り、勝てないと思えば手を出さない筈なのだ。
俺は溜息をついて一歩前に出るとライオンは俺目掛けて飛び掛かって来た。
その瞬間、俺はライオンの懐に入り首を押し上げ体を回転させてから落下と共に地面に抑えつけた。
しかし、前足は自由なためその鋭い爪が俺を襲う。
だが、その程度の攻撃では俺の防御は突破できないのでそのまま手加減した威圧を放った。
するとライオンの動きが止まり体を震わせながら縮こまってしまう。
そして手を離すと大人しく俺の前で体を伏せた。
「戻る気はあるか?」
(あそこ安全、俺、戻る。大人しくご飯待つ。)
「よし、ならそこまで案内しろ。ちゃんと戻るか見届けてやる。」
ライオンは立ち上がると自ら来た方向へと歩き出した。
すると俺の横に来たヴェリルが良い機会だと思ったのかライオンの体を撫でる。
(ボス、どうしたら良い?)
「撫でられてろ。」
そしてライオンは檻に戻り無事に捕獲された。
今回は被害が出なくてみんな一安心だ。
・・・と、思っていたらやはり俺は叱られた。
「女性を連れてるのに危険な事をするんじゃない!次回からしっかり放送を聞いて指示に従う様に!」
「・・・はい。」
俺が叱られている間、ヴェリルはふれあい広場で動物と触れ合っている。
まあ、今回は仕方がないのであまんじてお叱りは受けよう。
そして解放された俺はヴェリルと合流し動物園を後にした。
一応、色々やらかしたが向こうも助かった部分が多いので最後にはお礼を言われている。
今度は皆で来るので出入り禁止にならなくて良かった。
そしてヴェリルを見れば満足そうなので今日の所は成功だろう。
「今日は楽しかったね。」
「もう少し穏やかなデートにしたかったけど思いのほか楽しめた。」
「そうよね。ユウと居ると毎日が楽しいよ。」
「なら、また一緒に出掛けような。」
そして新たな約束を交わして俺達は家に帰って行った。
その日の夜は動物園のニュースが流れ、謎の協力者Xとして俺が登場する事になる。
みんなからは色々な視線を向けられたが今日の事は良い思い出としておこう。
そして、俺が部屋に戻って少しするとヴェリルがやって来た。
「あのねユウ。みんなが鉄は熱い内に打てってよく分からない事を言うの。聞いてもユウに教えてもらえって。」
どうやらヴェリルはみんなに送り出されてここに来たようだ。
良く分かっていないようなので俺は彼女を部屋に入れてベットに座らせ、俺もその横に座る。
「そうだな。今日は楽しかったか?」
「とっても楽しかったよ。」
「そうだな。俺もとても楽しかったな。だからその気持ちのままに最後まで関係を深めろって事だ。」
俺はそう言ってそのままヴェリルの唇を奪った。
彼女は突然の事に驚くがすぐに顔を嬉しそうに綻ばせると自分から体を密着させて来る。
そしてそのままベットに倒れ込むとジャレ合う様に体を重ねて行った。
彼女は終始楽しそうに笑いながら俺を受け入れてくれる。
そして事が終わるとヴェリルは最後に嬉しそうに笑顔を浮かべ、幸せそうに俺の腕の中で眠りにつき、俺も少しして眠りについた。




