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137 ナイトメア(ナトメア)再登場

朝に目が覚めると横のベットでオリジンが俺を見詰めていた。

時刻は朝の5時と早いがそろそろお風呂が空く時間だ。

俺はベットから起き上がるとタオルを取った。


「またお風呂?」

「ああ、一緒に行かないか?」

「・・・行く。」


俺の誘いにオリジンは起き上がると服装を整え、同じくタオルを肩にかけた。

それを見てホロも尻尾を振って起き上がると人の姿に変わって付いてくる。

二人とも昨日と同じ子供の姿なので一緒にお風呂に入れる。

そして俺達はそのまま大浴場へと向かって行った。

露天に入りたいがあちらは朝でも人気がある

オリジンは人の目を気にするのでこちらの人気のない方が良いだろう。

そして中に入ると予想通り人は誰もいない。

これなら3人でのんびり入れそうだ。


そして俺達は体を流し湯船に浸かった。

こちらの風呂は大理石作りでとても大きいため3人ならのんびり入ることが出来た。

ホロは昨日と同じく楽しそうに泳いで遊び、オリジンは昨日と違い俺と肩を並べて手を握ってきた。

少し顔が赤いが昨日の事を意識しているのだろう。

フレアがオリジンの事を初心だと言っていたので間違いなさそうだ。

そして、俺は昨日精霊王に聞けなかった事をオリジン本人に問いかけた。


「それで、昨日は何をしたんだ?」

「この世界にある大量破壊兵器の一つを消し去ったの。確か核ミサイルとか使用済み核燃料とか。全て消すとエネルギー問題がまだ大きいから無理だけどあれはこの星を汚すから数を減らしたの。だから・・・その・・・。」


オリジンは説明を終えると顔を赤くして俯き、股を擦り合わせ始めた。

その仕草に女性から言い出すのは恥ずかしいだろうと思い、オリジンが言葉にする前に返事を返す。


「いいよ。また協力するから。でも理由が無いとダメって事は無いからみんなと話し合って予定を決めると良い。」


俺の言葉にオリジンは顔を上げて「うん!」と元気に返事を返してきた。

するとホロも俺の横に来てオリジンと反対の手を取り笑顔を浮かべる。


「オリジンも家族?」

「そうだな。昨日家族になった。ホロも仲良くな。」

「うん、ご飯以外は仲良くする。」


どうやら家族でもご飯を譲る気はない様だ。

するとオリジンも対抗するように強気な顔で言い返した。


「私だって負けないわよ。」


そう言って二人は笑い合い体が温まって来たので俺達は風呂を後にした。

そして部屋に入るとみんなと合流し朝食へと向かって行く。

ここの朝食は食べ放題のバイキングだ。

いくら食べても良いが常識の範囲内にしてもらえるようにいつもの3人には言ってある。


3人に加え、カエデまで加わると全ての料理を食い尽くしてしまう恐れがある。

なので控えめに3人前程度に抑えてもらう事にした。

それでも彼女たちの1人前の基準は大食いチャンピオンに匹敵する。

俺達は消えていく料理に頭を抱えながらその光景を見詰めていた。

ちなみにオリジンに関しては昨日の内に子供を一人追加してある。

そのためご飯を食べても問題が無いとはいえ、ホテル側もこんなに食べられるとは思っていなかっただろう。

確実にこのバイキングで食べた量だけで宿泊費が浮きそうだ。


そして食事が終われば長居は無用。

俺達はまるで逃げる様に支払いを済ませてホテルを後にした。

出る時に色々やらかしているので支配人らしき男にアヤネの結界石を説明書付きでプレゼントしておく。

あれがあればここのホテルも今日から安全だろう。

結界石を渡した瞬間、それまで微妙そうな顔をしていたフロントの人達も笑顔になったので正しい判断だったと言える。

出入り禁止にされると俺達も困ってしまうので一安心だ。

こっそり説明書に混ぜて露天の植物の事を詫びておく手紙を入れておいたので後はホテル側でどうにかするだろう。

木々が葉を付け、花が咲き誇るくらいは問題がないはずだ。


俺達は人目のつかない所に行くとマリベルにゲートを開いてもらう。

そして家に帰り着くとすぐにテレビを付けた。

するとそこには重大ニュースが映し出されているようだ。


『本日、大量の使用済み核燃料と汚染されていた土壌や水が消えている事が確認されました。また、事故があった付近の土壌からも放射能反応が消えているそうです。さらに詳しい状況は確認中ですがこの現象は他の国でも確認され、詳しい状況を調査中との・・・。』


すると何故か周りから俺とオリジンに対して冷たい視線が集中する。

その目には「犯人を見つけた」という意思が込められている様に感じた。

その為、俺としてはこう言うしかない。


「皆さん何か?」

「確保~~~!」


その言葉と同時に俺は捕まり椅子に座らされる。

当然俺の横にはオリジンが並んで座り、目の前にはゲンさんとアキトが司令官ポーズで席に着いた。


「それで、犯人のユウ君。」

「容疑者すっ飛ばして確定かよ。」

「いや、こんな事が出来るのはお前らだけだろ。昨日の夜の事を誰も気付いてないと思ってるのか?」

「流石にそれはないじゃろう。あんな富士山が噴火したような力の波動を立ち昇らせておいて。」


やっぱり皆には既にバレていたようだ。

確かにあれに気付くなと言う方がこのメンバーには不可能だろう。

俺は観念して一部を省き真実を伝えた。

オリジンとの事は我が家のメンバーだけ知っていれば十分だろう。

そして俺の話を聞き、ゲンさんとアキトを含め知識ある者は呆れた表情を浮かべた。


「それはまた・・・凄い事をしたな。」

「各国のパワーバランスが崩れるかもしれませんね。」


するとその言葉にいち早く反応したのは俺の横に座るオリジンだった。


「それは大丈夫よ。」

「どうしてじゃ?」

「デーモンがもう動いてるから。」


しかし、いきなりそう言われても俺達にとってデーモンとは世界の敵という知識しかない。

特に先日のディスニア王国で起きた事件は俺達の脳裏に深く刻まれている。

そのデーモンが行動している時点で心配しか湧いてこないのだが何故ここでオリジンは安心しているのだろうか。


「基本的には知られてないけど、デーモンも世界の管理者の一つなの。私達精霊は自然を管理し、天使は人の希望を管理する。」

「ならデーモンは?」

「人の悪意を管理するのよ。適度な悪は世界を回すけど過ぎた悪は世界を滅ぼすでしょ。ディスニア王国はあなた達が行く前からかなり腐敗してた。だから一度リセットされたの。デーモンは極悪のない場所には現れない。ここは大丈夫だけど今は世界中でデーモンたちによる選定が行われてるわ。」


そして俺達がオリジンの話を聞いていると、突然リビングの扉が開き一人の男が現れた。


「ははは、久しぶりだな勇者たち・・・ブベラ~!」


その男は先日ディスニア王国で出会った最上位デーモンとかいうナイトメアだ。

そして、入って来ると同時にその顎を見事なアッパーで殴りつけて口を塞いだのは家のメノウである。


「フフフ、少し待っていてくださいね~。」


そう言ってメノウはナイトメアの襟を掴むと有無を言わせぬ態度で引き摺って行った。

すると外から『ドゴ、バキ、グシャ』と聞こえてはいけないような音が聞こえて来る。


(家・・・、壊れてないかな。)


我が家はマリベルが空間を弄っているが材料は普通の物を使用している・・・はずだ。

高レベルの者が繰り出す衝撃に耐える事は出来ない・・・はず。

まあ、もし壊れたとしてもメノウが羽でサッと撫でれば直ってしまうのだが。

そして外から声が聞こえるがどういう訳か聞き取ることが出来ない。

まるで周波数の合っていないラジオを聞いているような感覚だ。


そしてその頃外では。


「貴女、来るときは事前に連絡を入れなさい。みんな驚いているでしょう。」

「何を言っている留守番電話とかいうのにしっかり入れておいたぞ。」


メノウはそう言われリビングにある電話を透視して確認する。

するとそこには伝言がありますという風にボタンが点滅していた。

帰ってすぐにニュースを見て事件を知ったため、完全に見落としていたようだ。


「それでも普通は直接伝えてから来るものです。それとユウさんを勇者と呼ぶのは禁止です。分かりましたね。」

「そこは理解したがどうしてだ?勇者とは人々の希望の象徴。選ばれた戦士ではないか。なにが不満なのだ。」

「そこは本人の自由です。ユウさんは自分が勇者だと思っていないのですから。その代わりもう一人いるでしょ。」


そう言ってメノウはアキトがいる方向を指差した。

扱いが酷いが彼女はユウ付きの天使なので担当ではない者に関してはこんなものである。


「今回の天使長は変わっているな。まあいい、一人いれば問題はない。」


そしてナイトメアも納得すると何もなかったかの様に立ち上がり、二人でリビングへと戻って行った。

そして再び登場シーンからである。


「フフフ皆さんこんにちは。私はナトメア。以後お見知りおきを。」


俺達は入って来た者を見て思ったのは「誰だこいつ?」である。

先程出て行ったのはナイトメアと言う男だった。

しかし、今回入って来たのは側頭部に羊の様な巻き角をも持ち、黒い髪に妖艶な体つきをしているが顔は穏やかな保母さん風の美人だ


名前も一文字抜けているだけでパチモン臭が甚だしい。

すると俺達の思いと言うか考えを汲み取りメノウが説明を挟んだ。


「彼女はナトメア。こちらの姿こそ最上位デーモン、ナイトメアの真の姿です。」


すると紹介されたナトメアは片手にピースを作ると目元で横に構え、ウインクをしながら前かがみで「よろしくね」とか言い出した。

あざといというより現代かぶれと言った方が正しいだろうか。

しかも見た目も良く、様になっているから質が悪い。

顔立ちは清楚そうなのにその他がそのすべてを冒涜している。

まあ、立って話すのもこちらが疲れるのでまずは場を整える事にした。


「まあ、紹介はそれくらいにして適当に座れ。せっかく来たんだ。何か話す事があるんだろ。」


俺がそう言うとナトメアは「ふ~ん」と言いながら鋭い目線で周りを見回す。

現在アキト達はかなりの威圧を放っているしゲンさんとサツキさんはいつも抑えている気配を解放している。

その中で普通に対応しているのは家のメンバーだけだ。

カーミラは流石にライラの後ろに隠れているがそれ以外は緊張はしていても敵対行動と取れる動きは見せていない。


そしてナトメアはそんな中で俺の横に腰を下ろした。


「ナトメアと言ったな。」

「何?」

「俺から少し離れろ。」

「あらどうしたの?私に欲情しちゃった。」

「いや、お前の体に1ミリの興味も無い。皆の威圧の余波がきついから離れてくれ。」


俺のその言葉にナトメアの表情に罅が入る。

そしてそれを期に周りの威圧が低下していった。

笑っている者はいないが場は和んだ様だ。


「もう、意地悪ね~。そんなこと言うと暴れちゃうわ・・・。」


その瞬間、俺はナトメアを睨みながら威圧を叩きつけた。

昨夜のオリジンのおかげで力だけはかなり上昇している。

俺は大事に思える全てを守る覚悟を持って一瞬だけ全ての力を解放した。


するとナトメアは額から大量の汗を流しながら言葉を止め、オリジンに縋るような目を向ける。


「この子怖い。オリジンどうにかして。」


そう言って俺の横に座るオリジンに泣きついた。

しかし、オリジンから返された答えは無情なものである。


「ここはもう私の家でもあるの。暴れるなら容赦しないわよ。」


そして今度はメノウに視線が移る。

しかし、先ほどの事を思い出し、すぐに視線はそらされた。


「ハイハイ分かりました。ここに私の味方は居ないのですね。」


何か自棄になっているが何故そうなるのか俺は首を傾げる。

言っている意味は間違っていないが俺は今のところ中立だ。

ゲンさんとサツキさんも敵対する気なら威圧を放つか来た時よりも気配を薄れさせるはずだ。

自衛隊組の機嫌が悪いのは王都で救助活動をしてその惨状に心を痛めたからだろう。

そのため俺は軽い感じにナトメアに声を掛けた。


「まあ、そう自棄になるな。お前が暴れなければ敵対もしない。こうして顔を見せたんだから何か用事があるんだろ。ほら、これでも食って気分を落ち着かせろ。」


俺は道後で購入した芋ケンピを取り出し彼女の前に出したお皿に盛っておく。

するとナトメアは一つ摘まみ上げるとじっくり見て匂いを嗅ぎ、慎重に口に運んだ。

毒など入っていないので安心なのだがやはり警戒するのは当たり前なのかもしれない。

そうしているとクリスがお茶の準備をしてくれたので更に幾つかの皿にも出して周囲へと配った。

そして俺も芋ケンピを手に取り食べながらお茶を啜る。

その頃になるとナトメアは貰った芋ケンピを頬張り頬をリスの様に膨らませていた。

そんな事をしなくても取ったりはしないのだがきっと味が気に入ったのだろう。

何故か猫に餌付けしている気分になるが・・・。


(そう言えばあっちの者にこれはどうなんだ?)


俺は新たな皿を出すとその上に紫芋のスイートポテトを乗せた。

当然、紫芋なのでその色は毒の様な紫色だ。


「これも美味いぞ?」

「なんで疑問形なのよ。色がどう見えも毒ですって言ってるわよ。」

「そうか。残念だな。ならこれはオリジンに・・・。」


するとナトメアは俺の腕をガッシリ掴んで動きを止めた。

しかもその顔は俺の手にあるスイートポテトに釘付けだ。

誰が見てもその顔には食べたいと書いてあるのが分かる。


「美味しいのよね?」

「・・・不味くはない。」

「も~、なんでそんな所で溜を作るのよ。素直に喋れないの?」

「なら美味い。」


その途端、ナトメアは皿の上のスイートポテトを素手でつかんで口に放り込んだ。

すると一度咀嚼して口が緩み、二度咀嚼して頬が緩み、三度咀嚼して顔が蕩けた。

その表情の豊かさに呆れながらも周りで涎を垂らしそうに見ているメンバーに普通のスイートポテトを配る。

それを見て彼女は口の中の物を飲み込むと俺に視線を向けて来た。


「なんで色が違うの?」

「ああ、さっきのは紫芋のスイートポテトなんだ。こっちは普通のサツマイモ。お前がさっき頬張ってたろ。」


するとナトメアは机の上を見て驚いた表情を浮かべる。

どうやら知識としてオリジンと似た所があるようだ。


「これ芋だったの?」

「そうだな。でも美味かったろ。」

「え、ええ。でも芋ってモサモサしてて苦かったり、毒もあるって。」


まあ、そう言うのもあるな。それに昔の芋はあまりおいしくなかったとも聞いている。

品種改良万歳だな。


「まあ、お前も毒くらい無効だろ。」

「やっぱり毒だったの!?」

「いや、芋が紫だからこのお菓子も紫なだけだ。少し揶揄ってみただけだから気にするな。」


するとナトメアはガックリ肩を落として溜息を吐いた。

先程の仕返しはこれ位でいいだろう。

そして俺達はナトメアが何故ここに来たのか、話を聞く事にした。

ふざけた所もあるがこれでも一応はデーモン達の首領だ。

ただバカをしに来た訳ではないだろう。

オリジンとメノウの前例があるのでその可能性は拭えないが最低限一人くらいはまともなのがいる事を望む。

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