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123 警察署での騒動

次の日の朝。

俺の家の前にパトカーが止まった。

何かと思えば警察は同行してくれとしか言わない。

仕方なく俺はパトカーに乗ると彼らと一緒に移動して行った。

そして警察署に到着すると急に奥へと通されちょっとした不安が頭を過る。

するとそこには昨日見た院長が椅子に座り警察から厳しく聴取を受けていた。

どうやら不安の一つが的中し院長は黙秘を決め込んでいる様だ。


「ここで俺にどうしろと?」

「アナタなら奴から話を簡単に聞き出せると聞いている。手伝ってくれないか?」

「それは良いが俺は一般人だ。この映像は録画されているんだろ。」

「それは問題ない。顔は出なくても良い様にここの小窓から声を掛けてくれ。」


そう言って彼は小さな小窓を指差した。

俺のスキルならこれでも十分だし冤罪も発生しない。

手柄が欲しい訳でもないので別に良いだろう。


「ところでその話を誰から聞いたんだ?」

「警視総監から連絡があったとだけ。」

(ああ、あの人か。ゲンさんとも親しそうだったからそっち経由だな。)


そして俺は頷いて答えると警察官は俺にメモ用紙を渡した。

どうやらそこには彼らが知りたい事が書かれている様だ。


読んでみるとそれなりに重要な質問がある。

院内や政府内の協力者について。

誰が彼に今まで指示を出していたか。

今回の行動の目的。

そして今までの不正なども含まれている。


聞くのはすぐだが聞き取りには時間が掛かりそうだ。

そして予想通り、俺が解放されたのは昼頃になってしまった。

流石は国立病院の院長だけはあり、かなりの情報を持っていたからだ。

これでこの国の医療もかなり改善されるだろう。


そして、頼まれていた事も終わったので外に出たのだが、俺の元にまた一人の警察官が駆け寄って来た。


「すみません。もう一度来てもらえませんか?」


何やら切羽詰まっている様だ。

俺は再び嫌な予感を感じて言われるままに後に付いて行った。

すると複数の警察官が何やら倉庫の様な所に集まっている。

そして、俺が来ると事情を話し始めた。


「実は朝まではここに昨日の証拠が保管されていたのですが何者かが盗み出したようで見つからないのです。どうか協力してください。」


どうやら、警察内部で馬鹿をした人物がいるようだ。

まあ、この付近では保管されていたお金が盗まれたり、捕らえた容疑者を自殺で死なせてしまう不手際が起きている。

そういう事もあるのでこの程度は想定の範囲内だ。


「それなら全員を1つの部屋に集めてくれ。さっそく聞いてみる。」


すると数人の警察官が怒りに染まり俺に掴みかかって来た。


「貴様、俺達を疑っているのか?」

「俺達は警察官だぞ。そんな奴は誰もいない。」


あちらの大陸でも頻繁に聞いたセリフだ。

都合が悪くなるとこうやって暴力と権力に訴えて来る。

しかし、俺は別に疑っている訳ではない。

確信しているのだ。


「なら、潔白を証明すれば良いだろう。それとも都合でも悪いのか?」


すると彼らは歯を食いしばると勢いよく俺を着き飛ばそうとした。

しかし、彼らは自分の力に押されてその場に倒れ俺は微動だにしない。


「貴様、警察に手を上げるとどうなるか分かっているのか!」


しかし、その声は虚しく響き渡る。

周りには何人もの警察官がおり、俺がただ動いていないだけである事を見ているからだ。

その為、年嵩の警察官が彼らの前に行くと容赦なく拳骨を振り下ろした。


「いい加減にしろ!お前らこそ護るべき市民に何をしているのか分かっているのか!?」


俺はその人を見て何処かで見た気がする事を思い出した。


(そう言えばこの人、自警団で見たな。警察もちゃんと混ざっていたのか。)


彼は振り向くと俺に頭を下げて謝罪をしてくる。

こういう所でも人の繋がりがあるのかと思っていたが、全てが腐敗していた訳ではなさそうだ。


「すまなかったな。すぐに集めるから勘弁してくれ。」


それに恐らく彼は俺の強さを知っている。

そのために問題が起きる前に仲裁してくれたのだろう。

それを抜きにしても今の彼らの対応には問題がある。

しかし、こういう人が少しでもいるなら警察も少しは信用できそうだ。

俺は彼らが移動している間に証拠品を探してみると、どうやら駐車場に止めている車にある様だ。

俺はそれを回収するために先程の男に声を掛けた。


「証拠品は駐車場の車の中だ。取りに行けそうか?」

「責任は俺が持つ。破壊してでも回収してくれ。」

「ならカメラを持ってきてくれ。出来ればビデオカメラが良い。証拠を残しておきたい。」


実際に現行犯なら一般市民でも出来るのだが警察が証拠を記録していると違って来る。

俺が勝手に行って取って来たのでは先ほどの様な者達にまたイチャモンを付けられる恐れがあった。

それだけならまだいいが捏造や俺が盗んだと言われると流石に堪忍袋の緒が切れそうだ。


俺達は準備を整えると証拠品の回収をするために駐車場へと向かった。


「この車か?」

「ああ、誰のかわかるか?」


そこには白い普通自動車が止まっていた。

しかし、上手く隠しているが座席の下のマットの下に床が簡単にはがせるようになっておりそこに証拠品が入れられている。

俺はまず遁術の風門を使い自らを風となって中へと入る。

そして鍵を開けると外に出て来た。


少し年式が古いのか警報は鳴らないようだ。


俺達はそこからカメラを回しドアを開けると証拠品を取り出した。

ここにはカルテにメモリースティック。

あとはあの時にアクドイが中身を入れ替えた瓶の全てが揃っている。

それを回収すると俺達は再び全員の集まる部屋へと向かって行った。


「あの車、誰のかわかるか?」

「調べればすぐに分かるはずだ。伊達にここは警察署じゃないからな。」


俺はそう言えばと納得して苦笑を浮かべて部屋に入った。

かなりの人数なのでさっそく始める事にする。

そしてまずは10人のグループに分けて話をして行く。

最初に確認するのは賄賂を受け取った事がある人間を聞き、そして更に今回の盗難騒ぎについて関わっているかを確認する。

すると以外にも半数もの人間が賄賂を受け取った事があるらしい。

まあ、人間なのでそれは良しとして問題は今回の事に関わりがあるかだ。


すると先ほど俺に掴みかかって来た奴らが動き逃走を企てた。

しかし、俺はそれを許すつもりはない。

鋭い視線を向けると彼らに一声かける。


「動くな!」

「「「!?」」」

「あ・・・が、う、動けない。」

「何しやがった!」

「クソー!」


周りの警察官はそれを見て一瞬動きを止めるがすぐに行動に移した。

彼らに手錠を掛け俺の前に連れて来る。


「お前ら馬鹿だな。もう少し考えて行動しないとダメだぞ。」


そして、俺は彼らに質問をして行った。

さっきまでは核心的な事は聞いていないが、これからはストレートに聞けば良いだろう。


「お前らは賄賂を貰ってたよな。それはあの病院の院長か?」

「「「ああ。」」」


「今回証拠を盗んだのはお前らか?」

「「「ああ。」」」


彼らはレベルがあっても低い様で抵抗なく俺の質問に答えて行く。

そして俺は最後の質問をした。


「他の協力者を教えろ。」


すると彼らは1人の人間の名をあげた。


「「「マサキさんだ。」」」


すると他の者が周りを見回し始めるが誰も見つけられないようだ。

マップで確認するとそいつは既に車に乗ってここから離れようとしている。

しかもそいつは院長とアクドイを連れている様だ。

おそらく、ここに全員が集まった隙を突いて連れ出したのだろう。


「お前らは見捨てられたみたいだな。」

「な、何を言ってんだ。あの人が俺達を見捨てる訳がねえ。」


しかしコイツ等にも、そのマサキとかいう男にもここに帰る場所は無いだろう。

これだけ世間を騒がした事件の妨害を行っているのでどれ程の罪になるのかが分からない。

最低でも世間は許さないだろう。

人によっては命に直結する問題なので多くの人が重い罪を求めるに違いない。

そして彼らは既に確認が終わっている警察官たちに連れられて留置場に連れていかれた。

後日、彼らは懲戒免職となり厳しく裁かれる事になった。

警察の信用を徹底的に貶めたので同僚だった者も声すらかけなかったという。


そして俺は他の者の確認を済ませるとその場を飛び立った。

後は馬鹿3人を生きたまま捕まえる必要がある。

そして、俺は電話で警察官に場所の指示をしながら彼らが追い付くのを待った。

別に俺が捕まえても良いが少しは信用を回復させるためには身内の問題は自分たちで片付けたいだろう。

俺は彼らが追い付くと車のタイヤを魔法で切り裂き停車させた。

少し横転するなどの問題は発生したが車内を水で満たしておいたので上手く生き残った様だ。


俺は確保を終えた警官たちに軽く手を振るとそのまま家に帰る事にした。

それにしても俺の休日が何故か削られていく。

俺の安らぎの明日はどっちだ・・・?


そして家に帰るとまた知らない番号から電話がかかって来た。


(またか。俺の個人情報はどうなってるんだ。)


そんな事を考えながら電話に出ると相手は自己紹介を始めた。


「私は神崎カンザキ 鬼鮫キサメだ。君には警視総監と言った方が分かり易いかな。」


どうやら今回、俺の個人情報を漏らしたのはゲンさんで間違いないようだ。

今度きつく言っておこう。

聞いてくれる見込みはないけど。


「それで何の用ですか?」

「今回の話は聞いた。テレビであれだけハッキリと言っておいて次の日にこの騒動だ。君が内々で処理してくれなければ日本の警察官は信用を失っていただろう。」


どうやら俺の思った通り、今回の事はある程度、揉み消すつもりの様だ。

まあ、それが分かっているから最後は彼らに任せ、俺は何も言わずに去ったのだが。

別に御礼状や勲章が欲しい訳ではないし、単純に町が平和であってほしいだけだ。

病院と警察の腐敗はそれを妨げるので結果として手を出したが別に全ての腐敗を断罪したいわけではない。

その様に伝えると電話先から笑い声が聞こえて来た。


「ははは・・・。いやーすまない。本当に自分本位な奴だな。君のおかげでこの国も色々助かっているが本当にそれで良いのか?」

「良いも悪いも平和を守るのはそちらと自衛隊だろ。俺は俺の家族と平和に暮らしたいだけだ。」

「そちらの要望は理解した。そちらの町の警察官で賄賂を貰っていた物が多数いた事も聞いている。近い内にその手のスキルを持った者を監査に向かわせよう。そうすれば少しは腐敗も収まるだろう。」


それはありがたい申し出だ。

警察機関は一般人だと手が出せない。

これで少しはこの町も住みやすくなるかもしれないな。


「感謝します。稀になら密かに頼みごとを聞いても良いですよ。俺の事は既に総理から聞いてそうですから。」

「それは助かる。いまだにこちらのメンバーにはスキルの習熟度が低い者が多い。どうしても必要な時にはお願いする。」


これでこの人とも一応の繋がりが出来た。

こちらから権力を利用する気はないが縁を繋いでおいて損をする相手では無さそうだ。

そして電話を切ると俺は窓から外を見詰めた。

まだ1月で日が落ちるのが早い。

外は既に暗くなり始め1日の終わりを知らせている。


(ああ、俺の休日が・・・。)


未だに帰って来てからまともに休めていない気がする。

そして、今回の事で家に残っていた天使全員に働き口が出来てしまった。

その為彼女たちはこれからこの町で白衣の天使として働く事になる。

国立病院が国からの要請・・・、命令で強制的に魔法を取り入れる事に決まったからだ。

あそこは中国地方でも有数の癌センターなのでそういった人々が自然に集まって来る。

そして末期癌ですら癒す彼女たちはまさにうってつけの職場である。

既に実績があるのであそこのフロアから人が消える日も近いだろう。

報酬もかなり良く、俺達の中では最も安定した職に就いている。

ただ、その力の源はメノウなので一応確認しておく事にした。


「メノウは大丈夫なのか?」


すると彼女はニコリと笑い「大丈夫です」と答えた。


「私には既に億人単位の人が力を送ってくれています。その力を貯めていますから今なら世界中の半分くらいの人を癒しても問題ありません。それにしばらくすると彼らも自分たちに向けられる思いだけで人々を救えるようになるでしょう。」


どうやら、無駄遣いしているように見えてしっかり溜めてもいた様だ。


「しかも、今回の事で更に力が沢山流れ込むようになりました。ここから旅立った子達にはそういった所を重点的に回る様に言ってあります。私から力を送り易い様にバイパスを強化しておいたので力が尽きることは無いでしょう。」


確かに、余命宣告をされた者にとっては天使どころか神の様な存在だろう。

しかも彼女たちは向けられた希望を力にして人に返すので上手く循環も出来ている。


(人間には希望があっても力は得られないからな。)


「それなら良いんだ。さすがメノウだな。」

「えっへん。惚れても良いですよ。手を出しても良いのですよ。」


そう言って胸を張りそれを左右に振ってアピールする。

俺はそんな彼女の頭に手を置いて握力を加えた。


「ぎゃあああーーーー。こういう痛い愛はノーサンキューですーーー。」

「そう言えば昨日の事のお仕置がまだだったよな?」


その後、俺はメノウと少し戯れてから夕食を食べた。

その後ろではクリスがまたですかと呆れた視線を向けていたが止める事はしない。

聞いた話では彼女は俺の意図を正確に見抜き、ちゃんとメガロドンの肉を使おうとしたからだ。

あの肉と初期の秘薬ならあそこまでの変化が無いのは既に分かっている。

それを知っていてあえて蛇肉を使ったメノウは確実に有罪だろう。


「痛い~痛いです。誰か助けてくださ~~~い。」


そして、今日も我が家に平和なメノウの叫びが木霊するのであった。

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