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103 捕虜を連れて町を進む

俺は今夜からの修行を無理やり確約させられ溜息をつきながら城に戻っていた。

今度はホロの事をしっかりと二人に頼んでいるので安心だろう。

今の彼らなら例えこの国の人間が全て的に回ったとしてもホロを守ってくれる。

そして俺が移動しているとスピカから通知が届いた。


『条件が満たされた事により特殊スキル、フェイト・ブレイク(運命破壊)を習得しました。』

『これにより予知夢を見ても運命の変更が可能になりました。』

『オリジンよりメッセージが届きました。』

「読んでくれ。」

『そのスキルを悪用したらユウをこの世界から消します。だそうです。』


思いがけないスキルを習得したが悪用するつもりはない。

ただ、オリジンの言う悪用とは何を指すのかが分からないので今度会った時に確認が必要だろう。


「そのスキルのレベルを上げるのに必要なポイントはどうなっている?」

『1レベル上げるのに10ポイント必要です。』

「確か今あるスキルポイントは131だったな。」

『はい。』

「ならレベル10にしておいてくれ。もしもの時があるかもしれない。ここで貯金を使っておく。」

『分かりました。スキルポイントを使用しレベルを10に上昇させます。』

「それとそのスキルはそちらで管理しておいてくれ。通常時は封印指定のスキルだ。」


これで不意な事でこのスキルが発動することは無くなる。

気付かずに誰かの人生を勝手に壊したくないからな。


そして、俺は再び城に残る兵士の前に現れ声を掛けた。


「さっきはどうも。」

「「「ぎゃーーー!お化けーーー!」」」


お化けとは酷い言い草だ。

足もあるし実態もある。

それにこうやって普通に話しているだろう。

俺が今まで見たアンデットで言葉が通じる者は居なかった。

意思が残っている者は居たがどれも会話ができる存在ではなくなっている。


ちなみに物語によっては吸血鬼はアンデット枠だがこの世界では違うそうだ。

心臓も動いているし俺達よりも少し低いが体温もある立派な生き物である。


「それで、もう一度聞くが捕虜になる覚悟は出来たか?さっき何か言っていたがそれはお前たちの自業自得だろう。それでも死にたいなら俺が苦しまない様に殺してやるからアイテムボックスの中身だけ置いて逝け。」


すると彼らは暗い笑みを浮かべると腰の剣を引き抜いた。

しかし、その切っ先は俺ではなく自分達の首元に向いている。

どうやらこちらの目的を知り、自分を人質にするようだ

追い詰められた者が取る行動は予想できないというが何とも有り触れた事をする。

そんな事をしても無駄と分からないのだろうか。


「お、お前たちの目的が食料なら俺達が死ねばすべて消えてなくなるぞ。それが嫌なら俺達をここから解放しろ。そうすれば食料は返してやる。」

「それとお前が生きてるならさっきの獣人の女も生きてるだろ。そいつを俺達に差し出せ。人質として連れて行く。」


前言撤回。

やっぱり追い詰められた者の行動は理解できそうにない。

ホロを指し出せだと。

俺にとってアイツの命はこの国の全ての命より優先される。

それならいっその事こいつらを全員殺しておくか。


そう考えた時にある事を思い出した。

それは先日ゲンさんの使っていた言霊の事だ。

今ならスキルもあるので使える気がする。

俺は瞬間的に威圧を込めた言葉を彼らに放った。


「動くな。」


「「「「「!」」」」」

『バタ・バタ・バタ・バタ・バタ』


しかし、どうやら失敗したようだ。

どうもホロの事で殺気を込めすぎてしまったらしい。

何はともあれ彼らの動きは止まった。

それに威圧に殺気を込めると効力が高まる事も分った。

まさに一石二鳥のファインプレーだ。


俺は彼らに近づきと縛り上げて食料を抜き取って行く。

そして、彼らを一本のロープで数珠繋ぎに結ぶと引き摺って町の外へと向かって行った。

その結果、彼らは城から出る前には目を覚まし叫び声を上げている。

そして俺が町の中を普通に歩き始めたことで顔色を悪くし始める。


「待て、その先には侵入者用の罠が・・・。」


その通り。

この町には彼らが張り巡らせた罠が幾つもある。

外の連中もそれがあるからいまだに城まで到着していない。

俺は聖装を纏うと歩く先にある罠を尽く踏み抜いた。


ここは城の近くであるため最初から致死性の罠が張り巡らされている様だ。

最初に出たのは猛毒で、霧の様に散布された。


「こいつ早速最悪の罠を踏みやがった。がああーーー目がーーー。」

「誰かこいつを止めてくれーーー。」

「こんな死に方は嫌だーーー。」


俺には効果は無いが後ろの5人は悶え苦しみ魔法で回復する余裕もなさそうだ。

仕方なく死なない程度に回復させなら毒霧を抜けた。

その頃には5人は再び意識を失った様だが俺は彼らを引き摺って先へと進む。

気を失った彼らもすぐに目を覚まし俺に怒りの籠った視線を向けて来る。


そして次は横からバチスタの様な太さの弓が家の中から大量に放たれた。

俺はそれを遊園地のアトラクションの様に躱して行くが後ろはそうはいかない。

再び目を覚ましているが地面に限界までしゃがみ俺に引き摺られなければ移動すらできない状況で攻撃をやり過ごしていた。


「先程の暴言はお許しください。」

「どうか俺達をここに見捨てないで。」


そんな時、次に踏んだ罠で彼らの中から悲鳴が上がる。

どうやら家の影から投石機による石礫が放たれた様だ。

大きさは拳から人の頭程度。

小さい物は何とかなるが大きい物が彼らの一人の足に直撃してしまった。


「ぎゃーーー俺の足がーーー。畜生が、少しは避けるって事をしやがれ。」


そして先程まで俺に命乞いをしていた口から罵詈雑言が飛び出した。

ここまで簡単に掌を返されると呆れを通り越して笑えて来る。

俺は足が潰れた男の傷を放置して先に進む。

別に奴隷にして魔法を禁じている訳ではない。

放置しても勝手に自分たちで回復させるだろう。

そして今度は落とし穴のエリアの様だ。

俺はいつも通り歩くように見せかけ実は飛翔で浮いている。

その事を知らない奴らは俺が通った先は安全だろ付いて来た。

しかし、一人が落ちるとそれに引き摺られて他の者も落ちて行く。

下に待ち受けているのは毒蛇や槍衾などの危険なモノばかりだ。

しかし、雪山でクレパスを警戒しながら進むときは今の様に互いの体をロープなどで繋いで慎重に進む。

しかもその一方は俺が持っているので最後まで落ちる事はあり得ない。


そんな時、男の一人から怒声が上がった。


「お前、俺達を生かす気があるのか。わざと罠にハマってるんじゃないだろうな。」


なかなか鋭い事を言うな。

実は男の言っている事は正しく、俺は罠発見のスキルを使い見つけた罠で目ぼしい物を起動させながら進んでいる。

そのおかげでスキルレベルを5から8に上げる事が出来た。

そして俺は男の問いに答える事無く笑みを浮かべて次の罠へと向かって行く。


その後、幾つもの罠を起動させて遊んだ後に俺は外の連中と合流を果たした。

その頃には後ろに連れた男たちは幾度も罠の犠牲となり傷を負って精神を擦り減らしている。

しかし、それを見ても周りの者達は一切の哀れみを見せない。

恐らく王国兵の非道は有名なのだろう。

全てがと言われれば肯定は出来ないが、兵士たちは自分がしている事をそうであると認識していた。

ならばどのような結果が待っていようとも有罪である事は確かだ。

あれでも最後に潔く負けを認め、彼らの言う反乱軍に加わっていれば違ったかもしれない。

しかし、彼らは投降すら拒否しているので扱いは反乱軍に任せよう。

俺のここでの用事は全て終えたので次はゲリライベントが待ち構えている。

すなわちゲンさん達との修行の事だ。


(はいはい。分かってますからそんな良い笑顔で手招きをしないでください。まるで黄泉へと誘う死神に見えてしまいますから。)


そしてその横には死にそうな顔のアキトが連れられている。

恐らくは既に話を聞いているのだろう。

しかし、クリスマスの日の事から考えれば厳しい修行になるのは確実だ。

問題は明日の運転をどうするかだがそれは明日考える事にする。

とにかく、今日は生き残る事だけを考えよう。


俺達は仮称、反乱軍に食料を渡して挨拶を済ませるとその場から立ち去って行った。

呼び止められるかと一瞬期待したが彼らも笑っているゲンさんとサツキさんが怖い様だ。

最初に話したリーダー格の男以外は誰も視線すら合わせてくれない。

何とも冷たい対応だが誰だってとばっちりで死にたくはないだろう。

最低限、俺でも彼らと同じ立場なら同じような対応をする。

彼らの引けない戦い、命を懸けるべき時は既に過ぎ去っているのだ。


俺達は車に乗り込むと町を離れて行った。

そして誰もいない平地に到着すると車を降りる。


「ここなら問題なさそうだな。アキトよ、剣を構えよ。」

「なら、私はユウ君ね。楽しみだわ。」


この時点で俺の運命は決まり、アキトを見れば若干口元がほころんでいる。

恐らくサツキさんに比べればゲンさんの方が力加減が上手いのだろう。

というよりサツキさんの訓練は最後の方では殺し合いに発展してしまうのでそこが一番の問題だ。

そして、俺達の横ではアスカがホロに指導を行っている。

その光景はとても微笑ましく、丁寧で優しさまでも伝わって来る。


(俺もあっちに混ざりたい・・・。)


しかし、俺の思いとは関係なく訓練が開始されてしまった。

細かな所は割愛するがまさに手取り足取りの指導を受ける事になった。

別に丁寧に教えられたのではなく本当に体から切り離されたという意味だ。

今回も危うく首も飛ばされそうになったのはご愛敬では終われない。

そして、結果として俺はサツキさんから数々の技を盗み取ることが出来た。

彼らが言っていた通り技として一番難しいのはツクヨミで、後は魔力操作で応用を聞かせる事が出来る。

その分、修得も早かったが技を一つ見せてもらう毎に体の何処かが欠損するのでそちらの回復の方が大変だったくらいだ。

アキトを見れば同じように切られてはいるが骨までは達している傷は無い。。


そして、修行は朝まで続き俺の修行は一定以上の成果を得て完了となった。

アキトもほぼ技を収めた様なので明日からは少しは楽になるだろう。

だが、アキトは修業が終わると同時にその場に倒れて眠ってしまった。

俺も倒れたいがスキルのおかげでそれほどの疲労は無い。

しかし、これ以上続けると体や精神よりも心を病みそうなので遠慮しておく。

そして修行は終わり俺達は車に乗り込んだ。


「それじゃ~行くわよ~。」


そして朝になっても顔が何故か艶々しているサツキさんがハンドルを握る事になった。

もしかしたら徹夜でハイになっているのかもしれないが実戦であれだけの動きを見せているんだから運転くらいは余裕だろう。

日本と違って交通量が多い訳では無いので事故も起きないはずだ。


「サツキさんは運転が出来たんですね。」

「任せておきなさい。こう見えても運転は得意なのよ!」


しかし、本人はこう言っているがいつもシートベルトを着けないゲンさんが助手席でしっかりとシートベルトをしているのは何故だろうか。

しかも俺の直感が今までに無い程の警鐘を鳴らして危険を知らせて来る。

後部座席ではアスカも寝ているアキトをしっかり固定し、自分もその横でシートベルトを着けてまるでジェットコースターが急加速する直前の様な表情を浮かべている。。

ホロも何故か急いで体を固定しているがこれは何かの前兆か?


そう思っていると俺の準備が整わない内に車は発進した。

しかもフルスロットルの急加速だ。

俺は一気に加速した事で慣性の法則に従い後ろへと飛ばされ危うく車から落ちる所だった。


「サツキさん。安全運転って知ってますか?」

『ドン!ベキバキ!』


どうやら魔物か何かを轢殺したようだ。


「ユウ君何か言ったかしら?」


そう言って前も見ずに後ろを振り向くサツキさんの表情はとても良い笑顔だった。

これを見ればゲンさんが何も言わずに助手席に座ったのも分る。

顔色は次第に悪くなってるけど。


『ドン!バキバキ!』


そして、再び何かを轢殺したようだ。

俺は話しかけるのを止めて運転に集中してもらう事にした。


「いえ、運転頑張ってください。」

「ええ、任せておいて。」


もしもの時は横に座るゲンさんにお願いしよう。

まさか人を轢殺す事まではしないだろう。

王国兵なら構わないけど一般人は勘弁してほしい。

後でバンパーに血の跡が残っていないかを確認しておこう。


『ドン!ベキベキ!ドン!ドン!』


(人が含まれていない事を切に願う。)


そして、俺達は殺した魔物?を放置して走行を続けた。

その間にアキトも回復したようで目を覚ますが、サツキさんが運転しているのを知ると再び眠りに着いた。


(サツキさん、どんだけなんだ。この人は日本で免許を持たせちゃいけない人だ。)


その後は次の町まで4時間の間、俺達は安全装置の無い絶叫マシーンに乗り続けた。

そして町に到着すると昼と言う事で食事を取る事にする。


「ようこそ商業都市タスクへ。身分証はお持ちですか?」


いつもながらにこの国の門番は対応が親切だ。

もしかすると王国兵があれなので反面教師にでもなっているのかもしれない。

俺達はギルドカードを見せると門番は納得して中に通してくれた。

しかし、入る前に彼が再び声を掛けて来る。


「この町は現在、人攫いが横行しております。女性の方は3人ともお美しいのでお気を付けください。」


するとその言葉に真っ先に反応したのはサツキさんだった。

楽しい運転の後でテンションも高かったのか花が咲いたような笑顔を浮かべている。

それを見て門番は顔を赤くしているが彼には恐らく向日葵にでも見えているのだろう。

しかし、俺には毒花のスズランに見えるから不思議だ。


中に入ると、ここも結界石のおかげで人々は平和そうに暮らしている。

今までと違い服装も何か現代っぽい感じがして裕福そうだ。

ここからあと3日ほど進んだ所にこの国の王都がある。

その日数から日本よりも大きな国であるのは言うまでもない。

国境線がある訳ではないので確かな事は言えないが日本の倍はあるのではないだろうか。


そして俺達は平和に見える町を進んで行った。

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