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魔法少女異譚【書籍化決定】  作者: 槻白倫
第5章 ■■■■

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祝勝会 1

復調してきたので、ゆっくり更新します。

SS幾つか挟んでから次章になります。

 少女達が帰還してから翌々日。


 対策軍は戦いに赴いた少女達を労って、会場を借りて祝勝会を開催していた。


 祝勝会には魔法少女だけでは無く、中国、韓国、イギリスの大使や日本の政治家、魔法少女と繋がりのあるアイドル等々、魔法少女以外にもたくさんの著名人が祝勝会には参加していた。


 凛風やチェウォン、レクシーは各国の代表魔法少女でもあるので御偉方に挨拶回りをしている。


 本来であればそこにはアリスも加わるべきなのだが――


「……これ、美味しい」


 ――もぐもぐと口を動かして、提供される料理に舌鼓を打っていた。


「キヒヒ。確かに美味しいね、アリス」


 テーブルに乗ったチェシャ猫は、時折アリスにご飯を食べさせて貰って美味しそうにもぐもぐ食べる。


 アリスは政治家などの御偉方に挨拶をするような事は無い。政治の事は良く分からないし、著名人に興味関心は無い。


 祝勝会などという面倒な集まりに参加しなくてはいけない事が億劫で仕方が無いばかりである。


 会場の広さの問題もあって、祝勝会に参加している魔法少女は作戦に参加した魔法少女達だけだ。それ以外の魔法少女は別の会場にて主役の居ない寂しい祝勝会を行っている。と言っても、来賓が居ないお陰で主会場よりもリラックスして食事や会話を楽しんでいるけれど。


「はぁ……やんなっちゃうヨ。挨拶回りは苦手ヨ~」


 一人でもぐもぐと食べているアリスの元に、疲れた様子の凛風がやって来る。


 凛風は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っていた。深く入ったスリットからすらりと伸びる美脚の先には、黄金の刺繍が施された美麗なチャイナシューズを履いている。


「お疲れ様」


「ほんとに疲れたヨ~。あ、それ美味しそうネ」


 アリスが食べようとしていたものを凛風が横からぱくりと食べて奪い取る。


「うむ、美少女の唾液も合わさって美味ネ!」


「気持ち悪い……」


 気色の悪い事を言う凛風にドン引きした様子のアリス。


 凛風は気にした様子も無く自身の皿に料理を乗せて行く。


「それにしても、ちょっと気まずいネ」


「気まずい?」


「うん。大した戦果を上げられなかったからネ。ちやほやされるのは居心地悪いヨ」


 たははと気恥ずかしそうに笑う凛風。


 凛風の今回の大きな戦果と言えば、異譚侵度Aクラスの異譚支配者を一体倒したのみだ。それでも十分に凄い戦果だけれど、異譚侵度Sの異譚支配者を前に戦果を上げられなかったのもまた事実。


 挨拶回りで色んな人に褒めそやされたけれど、活躍しきった自覚が無い分、どの言葉も素直に受け取る事が出来ない。


「それを言うなら、私の方もだな。イギリス(こちら)最後(フィニッシュ)は譲ってしまったからね」


 二人の会話を聞いていたのか、レクシーがアリスの隣に並んで料理を皿に取る。


 レクシーは白を基調とした上品なパンツスーツに身を包んでおり、所々に装飾品(アクセサリー)を散りばめてはいるけれど、厭味にならずむしろ良いアクセントとなってオシャレに見える。


「そっちは槍使ったネ。アシスト点があるヨ。こっちはチクチクしてただけネ」


 ぱくぱくもぐもぐと料理を口に運ぶ凛風。


「アシストとは言うが、槍を貸しただけだ。最後は殆どチェウォンに持って行かれてしまったよ」


 肩を(すく)めながら言い、皿に盛った料理を口に運ぶレクシー。


「それでもチーム単位で戦った結果ヨ。こっちは個人競技だったから、手柄はアリスが総取りネ」


「そんな事は無い」


 凛風の言葉をアリスは素早く否定する。


「私の時は、魔法少女は私一人しか生き残れなかった。でも、今回は違う」


 言って、アリスは周囲を見渡す。


 会場には笑みを浮かべて会話や食事を楽しむ少女達の姿がある。


「こんなにたくさん生き残った。一人一人の実力が高いのは勿論だけど、皆を引っ張った凛風の功績は大きい。倒すだけじゃ無くて、生き残る事も魔法少女の仕事だから」


「アリス……」


 アリスの言葉に感激した様子で目をうるうるさせる凛風。


 凛風はそのままアリスにぴとっと身体を寄せ、さすさすとアリスのお尻をまさぐる。


「やっぱりアリス可愛いヨぉ。中国(ウチ)来るネ~。悪いようにはしないヨ~」


「もう悪いようにされてる」


 すっと凛風の魔の手から逃れ、レクシーを間に挟むように立つ。


「何故私を盾にするんだい?」


「キヒヒ。レクシーガードだよ」


 レクシーの問いに、アリスと合わせて移動したチェシャ猫が答える。


 レクシーは凛風の趣向の外側に居るため、凛風の魔の手にかかる事が無い。アリスにとっては丁度良い盾である。


 因みに、何故凛風の趣向の範囲外なのかというと、レクシーはその外見から大層女の子にモテる。魔法少女としてのモチーフも騎士王なので女子受けが良い。凛風の孫悟空とは大違いである。


 モテる気も無くモテるレクシーが、凛風はどうしても苦手なのだ。あとはシンプルに凛風の好みから外れているのもある。凛風はレクシーのように凛とした少女は好みでは無いのだ。


「アリス、こっち来るヨ~。もう何もしないネ~」


「その台詞が何度目か答えられたら考えてあげる」


 ちょいちょいっとアリスに手招きするも、すげなく断られる凛風。


 だが、凛風はめげる事無くアリスの隣に移動しようとする。


 それをレクシーが頭を引っ掴んで止める。


「ともあれ、生き残っただけでも功績、か……。今回はそれで良しとするか」


実際、異譚侵度Sの異譚を生き残れるだけの実力がある、と言う事に他ならないから良い実績ではある。何せ、異譚侵度Sの異譚を生き残った者は数少ないのだから。


「命あっての物種」


「違いない。強敵との戦闘経験を(かて)に、今後に向けて精進するとしよう」


「我も、課題が見えたヨ。国に帰ったら早速特訓ネ」


 レクシーに頭を掴まれながら、凛風はうんうんと頷く。


「っと、御偉方がお呼びのようだ。すまないねアリス。少し席を外すよ」


「あわぁ……こっちもお呼びのようだヨ……。残念、ジジババと話してても面白く無いヨ~」


 レクシーは面倒な気持ちを表に出さず、凛風は悪態をつきながらアリスの元を離れる。


「国の代表は大変」


「キヒヒ。他人事(ひとごと)とは恐れ入るよ」


「何が?」


「キヒヒ。別に……」


 日本の英雄たるアリスは日本の魔法少女の代表と言っても過言ではない。


 だが、アリスは来賓と挨拶をする事も無く、一人勝手にご飯を食べるだけである。


 本来であればアリスが挨拶周りをするのだけれど、誰もそれを指摘はしない。何せ、こういう時は毎回割を食う人物が決まっており、最終的に本人から指摘をされるのだから。


「キヒヒ。アリス、次はローストビーフが食べたいな」


「分かった」


 アリスが挨拶回りに行くのであれば、チェシャ猫もそれに同行しなくてはいけないので、チェシャ猫からすればアリスがこうしてゆっくりしてくれているのは非常にありがたい。凛風ではないけれど、英雄(アリス)目当ての者の話は長くていけない。


 それに、アリスに気の利いた長話が出来るとも思えない。適材適所である。


「キヒヒ。美味しい」


「うん。美味しい」


 まったりした空気を醸し出す二人。


 それを横目に、割を食っている人物は額に青筋を浮かべるのであった。


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