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宝石級美少女の命を救ったら付き合うことになりました  作者: マムル
第二章・前編

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◆第54話◆ 『父さん、母より害悪説』


「と、父さん」


「おお、庵。久しぶりに顔を合わしたな。呆けた面してないで、帰ってきた親父には「お帰りなさい」と言うべきだろう」


 無精髭を擦りながら、まじまじと庵の顔を覗きこむのは父――天馬恭次(てんまきょうじ)である。恭次はこの天馬家の大黒柱であり、彼の収入がこの天馬家の生計を成り立てている、この天馬家に無くてはならない人間だ。だが、恭次は仕事の都合上で家に帰ってくるのは基本夜八時を越えた辺りであり、自室に引きこもりがちな庵は、あまり恭次と顔を合わせるタイミングはなかった。


 そうして久々に対面することとなった今。とりあえず何故こんな早い時間帯に帰ってきたのかという疑問は置いておこう。そんなことは、今どうでもよくて――、


「なんで今帰ってきたんだよ!」


 父に向かって声を荒げる庵。何故なら、今この家には星宮が居る。青美に見つかってしまったのはもう仕方ないとして、父の恭次にまで星宮のことが見つかってしまうのはさすがに嫌だった。星宮のためにも己のためにも、これ以上、事を大きくしたくなかったのだ。


 対する恭次は、ただならぬ様子の庵に目を丸くする。


「なんでって、母さんが帰ってこいというからわざわざこうして帰ってきたんだ。それよりも庵、「お帰りなさい」はどうした」


「は......? 母さんが?」


「ああ。ちょっと買い物を頼まれてな」


 そんな会話をしていると、後ろからスリッパの足音が聞こえてくる。間違いなく青美だ。


「あらお帰りなさいお父さん。無理言ってごめんなさいね」


「ああ、ただいま青美さん。全然無理なんかじゃないさ」


 何か料理中だったのか、手にピーラーを構えたまま青美はリビングにやってきた。夫婦は朗らかな笑みを交わしあう。


「今日最低気温が3度まで下がるらしいわよ。寒かったでしょ」


「3度か。道理で寒かったわけだ。もう少し厚着していくべきかもなぁ」


「そうね。明日の着替えはあったかいのにしとくわ。カイロも買ったからシャツの上にでも付けとくといいわよ」


「ああ、助かるな」


 庵の目の前で会話を始める夫婦。その会話に割り込む隙もなく、庵はただ見ていることしかできない。


 そして不意に恭次の視線が青美から外れる。


「それでお母さん。庵の彼女さんっていうのはあの子かい?」


「ええ、そうよ」


 リビングの奥を指差す恭次。庵が想定していた最悪の事態『青美が恭次に星宮の存在を既に知らせていた』ということは不運にも想定通りだったようだ。


「は?」

 

 庵は反射的に声を漏らして、直ぐ様後ろを振り向いた。そこには奥の壁から少しだけひょっこりと顔を覗かせる星宮の頭部が見える。隠れているつもりだったのかもしれないが、目立つ雪色の髪の毛でバレバレだ。


「やっ。そのっ......」


 バレたことに気づいた星宮が気まずそうに声を漏らす。そして初めて星宮を見る恭次は顎を擦りながらまじまじと観察して――、


「......おお。すごいべっぴんさんじゃないか。......初めまして。庵の父の天馬恭次です」


「あっ。はい、どうも......です」


「おぉ......なんかうちの庵が世話になってるみたいだね」


「そう、ですね。はい」


 庵の目の前で行われるぎこちない会話。その様子を間近で見せられた庵は謎の羞恥心に襲われて、今すぐにでもこの場から逃げ出したくなってしまう。


「マジでもう......最悪」


 星宮には悪いが、そっと自室に逃げるのも手かもしれない。そんな悪巧みを考えているところ、タイミング悪く恭次の視線が庵に向いた。


「そうだ庵。母さんに頼まれて、お前に買ってきたものがあるんだ。お前の彼女を見たくて帰ってきたのもそうだが、これをお前に渡さなければな」


「......あ?」


 真面目な顔をして、仕事の鞄から何やらレジ袋を取り出した恭次。恭次はそのレジ袋を庵に押し付ける。


「なんだよ、これ」


 レジ袋の中から出てきたのは縦長の箱。パッと見では何か判別できず、視線を恭次に向ける。恭次は腕を組んだまま、庵と奥の星宮に視線を向けてこう言った。


「――それはだな、避妊具だ」

 

 瞬間、空気は凍る。いや、凍ったのは庵と星宮の周りの空気だけであり、青美と恭次はいつも通りだ。言葉を返せなくなった庵は、ポロリと手から避妊具を落っことす。


 だが、空気の読めない天馬家の大黒柱は、この最悪の空気に更に追い打ちをかけるかの如く口を開く。


「いや、青美さんから庵が彼女さんとそういった行為をしようとしてるって聞いてな。高校生で妊娠とか笑い話にならないから、それを買ってきてやったんだよ。今度からはそれを使ってちゃんと避妊をするんだぞ」


「――」


「ああ、あとそれともう一つ。そういった行為をするときはちゃんとお互い合意のもとでするんだ。無理やりは本当によくないぞ。これは俺の経験則から言えることだ」


 聞いてもないことをペラペラと語る恭次。そんな憎き父の様子に、もはやどこか吹っ切れてしまった庵は満面の笑みを浮かべた。


「父さん、本当にウザイ死ね」

今度こそ更新ペース戻します。どうか温かい目で見守ってやってください。あとそろそろ第2章のセッティング終わります

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― 新着の感想 ―
[一言] パパ…不器用ですね…。家族が凍るやつ…です…笑
2022/12/30 22:22 退会済み
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