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宝石級美少女の命を救ったら付き合うことになりました  作者: マムル
第二章・前編

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◆第36話◆ 『"今まで"と"今"』


 冷たい風が吹く夜空の下、三人は思わぬ邂逅を果たした。


「――え? 庵と、星宮さん?」


 目を丸くした暁はぽかんと口を開けてそう言った。その暁の視線は庵と星宮の両方に向けてられている。最悪の事態に庵の心臓はひやりと凍りついた。


「あっ。え、えーと、え、えーとなぁ」


 何か言葉を発しようにも何も思い浮かばない。というより、星宮が真横に居るこの状況で庵が暁に言える言葉など何があるというのか。


 ここで大体の状況を察した星宮が、庵に小声で話しかける。


「あの人は天馬くんのお友達ですよね。どうしましょう」


「どうしましょうって言われても......いや、本当にどうしましょう」


 星宮が整った眉を寄せて困り顔をし、対する庵は星宮の倍に困り顔だ。


 交際ルール【その三】である『交際関係は二人だけの秘密』が破られてしまう大ピンチ。このピンチを乗り切る打開策を探そうにも、テンパりすぎて最早思考はぐちゃぐちゃになっていた。


「ど、どうする星宮。どうする星宮!?」


「わ、私に聞かれても困りますっ」


 こそこそと会話をするも、すればするだけ暁に訝しまれる。案の定、暁は更に目を丸くして、手に持っていた部活道具をその場に落っことした。


「え。めっちゃ仲良さそうじゃん。何。え、本当にどういうこと」


 未知なるものを見つけたかのような反応をする暁は、落とした部活道具はそのままに庵と星宮が居る場所まで歩み寄ってくる。そんな暁に庵は一歩後ずさるが後ずさったところで何の意味もない。


「はじめまして星宮さん。こんばんは」


「こ、こんばんは」


 星宮に短く挨拶を済ませた暁は直ぐに視線を庵に移した。庵は目を泳がせまくるも、暁の鋭い視線に撃ち抜かれてしまう。結果、二人の視線は交わった。


「......こ、これはだな暁。たまたまさっき星宮とこのカフェで会ったんだよ。本当に、たまたまでさ」


「僕には仲良さそうに二人が店から出てきたように見えたけどな......本当か?」

 

「......っ。本当だぞ?」


 痛いところを突かれて庵は一気に冷や汗をかく。その庵の変化を見逃さなかった暁は鋭く目を細めた。


「庵......お前、もしかして」


「いや、マジでないないないっ。本当にないっ。付き合ってなんかないっ」


「......僕まだ何も言ってなかったんだけど」


「あっ」


 焦りすぎた庵は致命的なボロを出す。更に強まった冷たい風が三人の間を過ぎ去り、冷たい沈黙を置いていった。呆れ顔となってしまった暁は庵から視線を外し、二人の様子をおどおどと見守っていた星宮へと向ける。


「星宮さん、ちょっと聞いてもいい?」


「え、えぇと。は、はい」


 星宮は初対面の暁にもじもじとするが、対する暁は柔らかな表情をしている。こんなときでも百点満点スマイルを発動できる暁には場違いだが本当に尊敬でしかない。


「僕、そこの庵と友達なんだよね。僕は庵のことを一番の友達だと思っててさ、めっちゃ大切な奴なんだよ」


 こんなときに中々に良いことを言ってくれる暁だが、そんな暁の言葉に耳を貸す余裕は今の庵にはなかった。


「それで少し失礼な失礼するんだけどさ」


「......はい」


「庵と、星宮さんって付き合ってるの?」


 暁は心配そうに星宮にそう聞いた。ストレートに放たれた暁の言葉に庵の心臓は大きく鼓動を打つ。果たして星宮はどう答えるのか。長いようで短い数秒間が過ぎ去り、星宮は桜色の唇を開いた。


「私と、天馬くんは......」


「う、うん」


 星宮の顔が赤く染まる。言葉が詰まってしまい、そこから先が途絶えてしまった。


 再び焦れったい数秒間が流れ出す。星宮が呼吸を整え、真っ直ぐに暁を見ていた。その割り込める様子でもない二人の会話に庵も呼吸を荒くする。


(星宮、早く付き合ってないって言ってくれ。早く......)


 庵は心の中でそう願う。『この関係は二人だけの秘密』、この約束は二人で決めたものである。お互いのためにも、この関係は絶対に口外しないようと決めたものだ。


 律儀な星宮は必ず約束を守る。庵は星宮をそう信じていた。きっと『今まで』の星宮なら、暁にしっかりと否定の言葉を言ってくれるはずだ。『今まで』の、星宮なら。


「......私は」


「うん」


 突風が三人の間に吹き荒れる。星宮が口を開くと同時に、雪色のセミロングヘアが大きく靡いた。



「――私は天馬くんと付き合っています。天馬くんは私のか、彼氏さんですっ」



 決意に満ちた眼差しと共に放たれた星宮の言葉。その声は少し震えていたが、少し自信に満ちているようにも聞こえた気がした。

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