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宝石級美少女の命を救ったら付き合うことになりました  作者: マムル
第一章・後編

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◆第28話◆ 『俺は君を助けにきた』


 翌日、時は火曜日となる。この日の放課後、星宮のクラスにて。


「みんな! 聞いてほしいことがある。少しだけ時間をくれないか」


 教卓に手をつき、大声を上げたのは北条。クラスがざわつきだして辺りの注目が北条へと集まっていく。無論、それは星宮も例外じゃない。星宮は瞳を儚く揺らして、心配そうに北条を見た。

 

 ざわつきが落ち着きだした頃合いを見て、北条が一つ咳払いをする。


「......ありがとう。今から大切な話をするから聞いてほしい」


 前置きをして、北条の瞳に真剣さが強く宿る。その瞳はクラスメイト全員を映していた。


「俺が昨日、星宮さんに告白したのはみんな知っているよな。昨日の昼休憩にやったことだ」


 話を切り出した北条。それを聞いたクラスメイトは再びざわつきだす。星宮は体をびくんと跳ねさせ、朝比奈は強く舌打ちをする。様々な反応がある中、北条は構わずに口を開いた。


「簡潔に言って、この事は俺たちのクラスだけの秘密にしてほしいんだ。俺が星宮さんに告白していたって噂したいのは分かるけれど、それをやめてほしい」


 そう北条が口にすると今度はクラスが沈黙に包み込まれた。北条の言葉にどう反応すればいいか分からないのだろう。だがその沈黙を突き破り、一人の男子生徒が声を上げる。


「――北条ー、その話とは別なんだけど、北条は星宮さんに告白オッケーされたのか?」


 気だるそうな様子で今の話とは関係のない質問が飛んだ。


「いや、まだ答えはもらってないよ。俺は急かすつもりはないから」

 

「なーんだ」


 その答えを聞いて男子生徒は興味をなくしたのか直ぐに視線を外した。しかし、その男子生徒はクラスメイト全員に聞こえる声でポツリと呟く。


「まぁ、別にいいんじゃねーの。プライベートな話なんだしな。俺は北条たちのことを言いふらしたりしないぞ」


 特にそれといった熱意の含まれていない、さりげない発言。しかしその言葉はクラスメイトたちの心を強く動かしていた。再びクラスがざわつき始める。


 そのざわつきに乗じて、北条が再び声を上げた。


「改めてもう一回言うけど、俺と星宮さんの話を他クラスの生徒に持っていくような事はやめてほしい。それとこのクラスでも話題には出してほしくないんだ。このお願い、聞いてくれるか?」


 北条の訴えを聞いて、少しずつクラスメイトが頷いてみせる。中には渋々といった様子のクラスメイトも見受けられたが、結果、ほとんどが北条の訴えを飲み込んでくれた。一人が動いたことにより、連鎖反応が起きたのだ。


「......ありがとう、みんな。勝手なお願いをして申し訳ないけれど、これからも星宮さんや俺とは自然に接してきてほしい。特に星宮さんには、みんなも優しく接してあげてほしいな」


 そうして百点満点スマイルを放った北条。いつもならクラスの女子がきゅんきゅんときめくところであるが、星宮を擁護する発言であったために大した反応は起こらなかった。


「じゃあ、わざわざ俺のために時間をくれてありがとう。俺の気持ちがみんなに届いて本当に良かった。明日、また学校で会おうな」


 最後ににこやかにクラスメイトに微笑みかけ、この話は終わりとなり、クラスメイトは解散された。周囲が部活動の準備やら帰宅の準備やらで騒がしくなるなか、一人の女子生徒は自身の机に座ったまま、己の拳を強く握りしめる。


 瞳を涙で潤ませた朝比奈は、顔を真っ赤にして静かに叫んでいた。嫉妬の炎とは言い難い、殺意の炎をまといながら教室の隅の席に視線を向け――、



「――星宮ァ!!」



***



 放課後。一人の女子生徒が星宮の制服の袖を掴み、強引に廊下を歩かせていた。


「許さない許さない許さないッ! 絶対に、許さないッ!」


「や、やめてくださいっ」


 再び心を乱された朝比奈は精神不安定といった状態に陥っていた。星宮の言葉に耳を貸さず、友達の女子も呼ばず、一人で星宮を捕まえていた。


 朝比奈は星宮とどこに向かうのか。そんなの決まっている。前回と同じく、屋上だ。


「黙ってさっさと歩きなよ星宮! もう殴っていいの? 私は本気で殴るけど!?」


「ご、ごめんなさい。殴らないでくださいっ」


「喋ってないで足動かせよ! このクソ女ッ」


 理不尽な言葉を何度も浴びせられ、星宮の心は再び闇に包まれる。感情を失いつつある瞳を儚く揺らして、されるがまま星宮は朝比奈の荒ぶる足取りに合わせた。歩くペースが早すぎて、今にも転んでしまいそうだ。


「だから歩くの遅いんだよッ! どんだけあんたは私を不快にさせれば気が済むわけ!? 殺すよ?」


「ごめんなさいっ。ごめんなさいっ」


 屋上に続く階段まで歩かされ、星宮の足は今にももつれそうだった。しかし星宮の心配を一切しない朝比奈は、前回よりも心が荒れている。一歩間違えれば本当に星宮の命が危うくなる状況だ。


「あっ」


 階段を上っている最中、ついに星宮は足をつまずかせた。大きくバランスを崩したが、間一髪のところでバランスを立て直す。倒れなかったのはいいが、それだけでも朝比奈の怒りを買うには十分だった。


「あんたさぁ、何止まってんだよッ!!」


 目を血走らせた朝比奈が大声を上げると同時に、一切の容赦のない拳が星宮の顔面向けて放たれようとした。回避しようにも、最早そんな暇は星宮には残されていない。避ける選択肢はなかった。


「いやっ」


 咄嗟に目を瞑る。しかし、来るべき衝撃はいつまでも訪れなかった。代わりに乾いた音だけが星宮の耳に届いていて――、


「......え?」


 恐る恐る目を開ければ、そこには一人の男がいた。朝比奈の拳を代わりに顔で受けた、一人の男の姿が。


「痛ってぇ......! お前、星宮を本気で殺す気かよ」


「はぁ? 誰よあんた?」


 男は朝比奈の拳を受けたことによりふらふらとバランスを崩していたが、直ぐにバランスを戻す。朝比奈の血走る瞳と、男の真剣な瞳が交差した。


 ――そして男はこう言う。


「ったく。俺は星宮の味方だよ。星宮をお前から助けにきたんだよ」



 男――天馬庵は、彼女である星宮を守るために、その身を(てい)して朝比奈の前に立ちはだかった。そうして、朝比奈の怒りに燃えた瞳は庵にも向けられたのだ。

 

 

諸事情により次回第一章完結です。今日中に更新します

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