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宝石級美少女の命を救ったら付き合うことになりました  作者: マムル
After Story・卒業を控えて

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◇After Story第19話◇ 『宝石級美少女と江ノ島旅行【初めての夜】』

※今回はエロい描写があります。R15の範疇で書いたつもりではいますが、割と直接的な描写が多いので、苦手な方は読み飛ばし推奨です。 


 ――結局、何も考えはまとまらなかった。


「......じゃあ、電気消す?」


「寝るんですか?」


「そろそろ寝なきゃ、明日起きれなくなるかなって思って」


 天馬庵はヘタレだ。風呂あがった後、精いっぱい会話を試みたが、特にそういう空気に発展しそうな話題は一つもできなかった。ただただ、いつも通りの会話をして、終わっただけ。

 それじゃ何も変わらないのは分かっているのに、勝手にそういう空気になってくれないかな、なんて身勝手な期待をしていた。


 そしてこれ以上の夜更かしは本気でまずい。明日は朝早く起きて、ホテルの朝ご飯を食べ、チェックアウトをしなくてはならないのだ。

 時間の心配はずっとしていたが、心配してるだけで何も有効活用できずに終わってしまった。庵は今、悔しくて悔しくて仕方がない。


「――」


 ベッドの隣にパジャマ姿で座っている琥珀。きょとんとした表情をしているが、今何の前触れもなく押し倒したら、受け入れてくれるのだろうか。いや、そんなはずがないだろう。そんな空気でもないし、そもそも度胸がないから不可能だ。

 ああああああ、自分が嫌になる。表情は平然を装えても、心の中はもうぐちゃぐちゃだ。

 

「豆電球は付けとくか?」


「......はい」


 庵の問いかけに、琥珀は少し間を開けて答えた。その声はどこか切なさをまとっているように聞こえてしまう。聞こえただけ。


「――」


 そして部屋の電気は豆電球を残して消えた。今は、小さなオレンジ色の淡い光だけが部屋を照らしている。一応、お互いの表情くらいは確認できる明るさだ。


「庵くん、眠れそうですか?」


 琥珀の問いかけ。庵は首を傾げ、悩む素振りを見せる。


「......まあ、今日は疲れてるし、すぐ眠れるんじゃないかな」


 嘘をついた。睡魔なんて、ホテルについたときから一ミリたりとも感じていない。体が極度の緊張と焦りで興奮状態になって、とてもじゃないが眠れる気なんてしなかった。


「そう、ですか」


 またも琥珀が寂しそうに言葉を発する。寂しそうに。そう、聞こえただけ。



***



 今日――いや昨日は人生で一番楽しかった一日だったと、琥珀は力強く断言できる。


 ずっと前から楽しみにしていた江ノ島旅行。それは期待以上のもので、大好きな人と初めて乗った飛行機や海、観光は、一生色褪せることのない思い出になった。きっとこの旅行が終わったら、あの旅行は楽しかったなぁなんて振り返りながら、また受験勉強に励む生活へ戻るのだろう。


「――」


 別に琥珀はこのまま旅行を終えて、元の生活に戻っても構わない。望まなくとも、いつかはきっと元の生活に戻るのだ。

 だけれど、この百点満点の旅にも、琥珀には一つだけ心残りがあった。それは、エッチなことを何もしていないという点だ。

 当然、琥珀が性欲いっぱいで今飢えているというわけではない。むしろ、琥珀はそんな感情とは一番かけ離れた人間と言っても過言ではないだろう。


「――」


 だけれど、さすがに覚悟はしていたのだ。彼氏とお泊りするということは、つまりそういうこと。それが分かっていない程、琥珀の警戒心は低くない。

 押し倒されたら、受け入れる覚悟はあった。言葉で誘われたら、なんて返すかは決めていた。でも、誘われなかった場合は、何も考えていなかった。

 いや、考えていなかったというのは嘘だ。その場合は、琥珀も何もしないって決めていた。だから、本当に庵次第だったのだ。


「――」


 庵は何もしてこなかった。このことについて、別に琥珀は情けないとかダサいとか、マイナス評価を付けたりしない。付けるわけがない。

 琥珀はこういうことに別に焦る必要はないと思ってるし、正直まだ心の準備ができていないからもっと先延ばしにしてほしいと思っている。


 

 でも庵は――。


 ――、


 ――――、


 ――――――違う。


 天馬庵は、星宮琥珀に性的な興味を抱いている。それは琥珀の目から見て確実な話だ。つまり、庵は琥珀とは違い、まだ先延ばしにしたいとは思っていない。だとすると、今の庵は誘いたいけど誘えず、困っているのだろうか。


 琥珀は顔には自信があるが、体についてはまったくと言っていいほどに自信がない。しかし、庵はそんな琥珀の体に魅力を感じてくれている。それは素直に嬉しかった。あまり自信がなかった部分が、ちゃんと女性として見てもらえると分かると、なんだか救われた気がした。


「――」


 でも、だからといって、はいどうぞと簡単に体を晒せるわけでもなく、不安が大きい。水着姿を見せるだけでもとてつもない神経を使ったのに、次は裸なんてレベルが違いすぎる。

 それに、北条に襲われかけたという嫌なトラウマも、まだ残っているのだ。もし庵に乱暴にされてしまったら、またあのトラウマが――、


 庵が、乱暴――?


 そんなこと、庵がするわけがない。ああ、さっきから何を考えているのだろう。庵が誰よりも自分を大切にしてくれているのは、琥珀が一番分かっているじゃないか。

 だから今だって、琥珀に手を出せないまま、庵は黙っているんだ。琥珀を大切に思いすぎるがあまり、傷つけてしまうのを恐れているんだ。


「――」


 星宮琥珀は、とても愛されている。

 そのことを今、再確認できた気がして、胸がぽかぽかと温かくなった。これが恋愛感情というものなのだろう。

 きっと庵なら、琥珀のすべてを認めてくれるし、絶対に優しくしてくれる。そんなことが何故最初から分からなかったのだ。


「――」


 怖い。正直、怖い。

 でも、好きが溢れすぎて、この感情をそのままあなたに受け止めてもらいたい。こんな私で良かったら、もっと愛してほしい。


「――」


 だから――、



「――庵くん」


「え?」


「本当にこのまま寝ていいんですか?」



 ころんと、頭を庵の胸に預ける。どくどくと鳴り響く庵の心臓の音が、琥珀の心臓の音と重なった。


 

***



 琥珀の頭が胸にこつんと当たった瞬間、庵の中で何かが吹っ切れた。


「――」


 まず琥珀の肩を掴んで、そのままゆっくりとベッドに押し倒す。その振動を足に感じながら、数秒ほど琥珀と見つめあった。


「――ん」


 庵が顔を近づけると、何かを察したのか琥珀は目をつむる。そして唇を重ねた。庵はいつもとは違うことをするつもりだったけれど、琥珀には伝わらなくて、舌が琥珀の歯に当たってしまう。でも、それで十分だった。

 それから数秒、そのままの状態でいて、体を寄せ合うようにして抱きしめ合った。


「――」


 一度、琥珀から離れた。暗闇に目が慣れてきたのか、琥珀の表情が鮮明に分かる。その表情にごくりと喉を鳴らして、琥珀の体に手で触れようとしてみた。


「あっ」


 どこから触っていいか分からなくて、普段は触ってはいけないけど、一番挑戦しやすい場所を考えた結果、太ももを触ってみた。

 触るといっても少し撫でただけで、特別変なことはしていない。琥珀は少しくすぐったそうな声を上げていたが。


「――」


 心臓がおかしいくらいバクバクと脈打って、僅かに残った理性が飛んでしまいそうになる。

 次に庵は、琥珀の胸にそっと手を置いた。すると、琥珀は恥ずかしそうに視線を逸らす。何も言われなかった。


「――琥珀、その......いい?」


「――」


 それから少し経って、庵は最後の確認をとった。その返事を聞き、琥珀の着るパジャマに手を伸ばす。しかし、琥珀が仰向けのままじゃ脱がせなかったので、一度起き上がってもらうことにした。


「......」


 時間がかかったけれど、琥珀を上半身が下着姿になるまで脱がせた。


「――」


 当然、琥珀は胸元の下着を身につけている。その光景は、今日海で見た水着姿とそこまで大差ないのに、下着というだけでとてつもない背徳感を覚えてしまう。琥珀はいつも下にこんなのを着ているんだと、場違いで益体もない感想が思い浮かんでしまった。


 上を脱がしきったあと、下は自分で脱ぐというので、庵は、その間に鞄から避妊具を取りに行った。手が震えて、鞄のチャックを開ける手つきがだいぶおぼつかなかったが、なんとか手に取って戻ってくる。そして戻ったあとに見た光景で、庵はぶっ倒れそうになった。


 それからというもの、お互いの体温を感じたり、心音を聞いたりしながら、ゆっくりと手さぐりに愛を確かめ合った。最初はかなり遠慮がちに触れていたけれど、琥珀が抵抗しないと分かると、だんだんと心が落ち着いて、やりたいことが少しずつスムーズにできるようになる。

 けれど、乱暴にしないということは絶対に頭の中から忘れないようにした。


 そして一番大切な避妊具。朝の恭次の言葉のとおり、庵は琥珀に対してまだ責任が取れる年齢ではない。だから、これの装着は紳士として絶対だ。

 恭次からもらった避妊具は約二年前のものなので、まだ使えるかどうか少し不安だったが、そんな心配は杞憂に終わる。これまた時間がかかったが、無事に装着することができた。初めて付けるので、これで大丈夫かと一応しっかりと確認しておく。


 乱暴にしないということは忘れず、できる限り優しくしたつもりだったが、最後は少し琥珀を苦しませてしまった。でも、そんな庵を、琥珀は嫌な顔一つせず終わりまで付き合ってくれて、最後は琥珀の方から抱きしめてくれる。


 本当に、濃密で、ただただ幸せな時間。すべてが終わってから、一つの毛布を二人でかぶり、小さく笑いあった。


「――琥珀」


「なんですか?」


「俺、もっと琥珀に見合うような男になるよ」


 そんな庵の言葉に、琥珀はくすりと笑みを漏らして――、


「ふふっ。庵くんはもう十分、私の王子様ですよ」


 なんて、中身のあるようなないような会話をして、二人の意識はゆっくりと落ちていった。


◇宝石級美少女tips◇


Q、ご飯派? パン派? 

A、ご飯派


 江ノ島編完! 今回のアフターストーリー的なものも書いていたのですが、私の倫理観が「これはどうなん?」と訴えていたので公開はやめました。ご要望があれば活動報告の方で公開します。そこまで長いものではないですけどね。

 

 それはそうと完結まで残り三話です! よろしくお願いします!


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やった!!暁ナイスアシスト!一生幸せにくらしてくれ!
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