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宝石級美少女の命を救ったら付き合うことになりました  作者: マムル
After Story・残りの高校生活

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◇After Story第3話◇ 『前島愛利は弱くない』


 暁と朝比奈。あまり見たことのない組み合わせが一緒に帰る約束を交わすものだから、その一部始終を見届けていた庵と琥珀はまるで夢を見ているのではという気分になる。

 朝比奈が部活のため姿が見えなくなった後、たまらず庵は暁に近寄り肩を揺さぶった。


「――なんで朝比奈なんだよ! どうして! WHY!」


「いやなんでって......庵気づいてなかったのか? 僕、なんとなく察するだろうなと思って今日の昼話したんだけど」


「朝比奈が選択肢に上がるわけないだろ! そんなん察せるか!」


 庵はてっきり、暁は愛利のことが好きになったのだと思っていた。しかし実際は想定の裏側。まさかの朝比奈だったというわけだ。


「黒羽くんは朝比奈さんのことが好きなんですか?」


「まぁ......好きっていうか気になるっていうか。あんまはっきり口にするのは恥ずかしいな」


 琥珀からの質問にしどろもどろに答える暁。その答えがすべてを物語っているので、琥珀は「あぁ」と納得の表情を見せた。こころなしか、ちょっと楽しそうだ。


 さっきからあまり表情には出てないが、お誘いが成功した暁も内心だいぶ嬉しいご様子で、親指を立ててこちらににこりと笑みを見せてきた。


「まぁそういうわけだから、今日朝比奈さんと一緒に帰宅してくるよ。応援よろしく、二人とも」


 そう言われ、庵は未だ理解が追いついていない様子で頷き、琥珀はマリンブルー色の瞳を輝かせながら「はいっ。応援してます」とエールを送る。


「それじゃ、朝比奈さんの部活が終わるまで僕は英単語帳でも見とこうかな」


「......ちょっと待てよ。暁」


 背を向けた暁を、庵は思わず呼び止めてしまった。暁がゆっくりと振り返り、柔らかな表情と共に視線を合わせてくる。それがなんだか、とてもチクリと胸に刺さった。


「どうした? 庵」


「いや......あのさ」


「うん」


 暁が誰を好きになって、誰と幸せになるかなんて、それは暁の自由だ。そこに庵が首を突っ込む余地はないし、否定する権利もない。だから、今から言おうとしていることは正直言って良いことなのか分からなかった。

 でも、”彼女”の想いを庵は知ってるからこそ、我慢ができない。このまま暁が朝比奈との恋愛に向かっていくのをただ何もせず見届けるのは、友達として違うと思った。


「言っちゃだめとは言われてるんだけどさ、暁のことが好きな女子が俺の知り合いに居るんだ。そいつが、その......結構前から暁にアプローチしててさ――」


「――前島さんのこと?」 


「あ、あぁ。そう、愛利」


 名前は最後に出すつもりだったが、眉を寄せて何かに勘づいた暁が先に口にした。やっぱり愛利からのアプローチは気づいていたようだ。


「だからさ、お前が朝比奈のこと好きなのは否定しないけどさ。愛利ともちゃんと向き合ってほしいんだ。愛利は、本当にお前のこと大好きだから......あ、別に朝比奈を諦めろか、そういうことを言いたいんじゃないから。もう朝比奈に気持ちが傾いているお前に、何も知らない愛利がずっとアプローチし続けるのは可哀想って、俺は思って......」


「......」


「ごめん。ちょっと一気にいろいろ言い過ぎた。でも、俺の言ってることは分かってほしい」


 一途で、初めての恋で、健気な前島愛利の恋。彼女の気持ちは紛れもなく本物だったし、庵は陰ながらずっと応援をしていた。報われてほしいなとも、思ってた。でも、このままでは報われそうにない。

 

 庵は考えてみた。もし自分が仮に、一途に琥珀に想いを寄せ続けていたとして、でも琥珀は別の男に想いを寄せていたら自分は何を思うのだろうと。そんなの、想像に容易いことだ。


 だが、だからといって暁に諦めろとは言えないし、言って言いはずがない。暁が誰を好きになろうと、愛利の想いに答えられなかろうと、それは責められることではないのだ。

 これを踏まえて庵が言いたいことはたった一つ。本当に暁が朝比奈を好きというのなら、ちゃんと愛利の気持ちに向き合って、彼女の恋を終わらせてあげてほしい。


「――分かってるよ、庵。前島さんが僕のことを良く思ってくれてるのも知ってる。最後まで、ちゃんと向き合うから」


「......あぁ、ありがとう」


「色々心配かけさせてごめんな。自分勝手だけど、許してほしい」


 暁の力強い頷きに庵は深く安堵する。隣の琥珀も、いつの間にかとても複雑そうな顔をしていた。でも、こうするしかなかったのだ。


 暁も、朝比奈も、愛利も、誰も悪くない。相手の気持ちをコントロールすることなんてできないし、できたらそれはもう恋愛とは言えない別の何か。

 相手の趣味嗜好、行動、出会い、出来事、ありとあらゆる要素が絡み合い、恋の矢印は大きく左右する。そんな運にまみれた世界で、この人と決めた異性と相思相愛になるのはなかなかに難しいことだと、庵はよく理解させられた。


「......今度、愛利とどっか一緒に遊びに行くか」


「......そうですね」


 恋愛の難しさ、そのことを深く思い知った二人はどこかいたたまれない気持ちになる。だから、せめて愛利の頑張りを労ってあげようと、そう思った。



***



 はーいっ。今日も一日、客の来ない田舎のコンビニでずっとバイトしている可哀想な女の子、愛利ちゃんでーす。いっつもは暇すぎて顔死んでるんですけど、今日はいつもの百億倍スマイルなんですよぉ。

 なんでだと思う? 正解はー、暁くんから今日バイト終わりに会えない?って連絡来たからでーす。


「やばいやばい。嬉しすぎるってー!」


 もうさっきからソワソワとドキドキが止まらない!

 いつかアタシからデート誘うつもりだったけど、まさかあっちから来るなんて。これはもしかして、アタシのプリティーさに、暁くんがようやくメロメロになっちゃったのかなー?


「あーっ。まだかな。まだかなーっ」


 早くバイト終わってくれないかなーっ。でも緊張するから心の準備をする時間はたっぷり用意したいなー、なんてね!


「――前島さん。今日はやけににこにこだね。どうしたんだい」


 アタシがやけに機嫌が良いことに気がついた店長が、不思議そうに話しかけてきた。やっぱ分かっちゃうかー。


「いやアタシの好きぴがが今日会えないかってさっき連絡してきたんですよ! だからもう今まじテンション爆上がりっす」


「なるほどねぇ。良かったじゃない。いやぁ、庵くんも星宮さんも、うちでバイトしてる子はみんな青春してるなぁ」


 庵先輩たちと一緒にされるとなんか癪だけど、でも今のアタシの心は常にハッピー、チャッピー! いつもは適当に会話している店長とも、今日は笑みが止まらないですわ!


「てか店長! アタシの好きぴの写真見ます? マジイケてるっすよ」


「見せてくれるのかい?」


「はいっ。というか見てほしーっ」


 なんて、おじいちゃんにアタシの好きぴの魅力を熱弁してたらいつの間にかバイトが終わってた。さてさて、これから楽しみだな。


 あ、でも何するかとか、どこに行くとかは何も聞いてなかったな。暁くんがコンビニまで来てくれるらしいけど、なんかアタシに用でもあるのかな......?

 


***



「――急に僕のために時間作ってもらってごめんね」


「いや全然大丈夫だって。アタシ、暁くんのためならいくらでも予定空けるから!」


 コンビニを出たらすぐ暁くんが私を迎えに来てくれて、そしてアタシをカフェに連れて行ってくれた。なんか庵先輩が教えてくれたカフェらしい。

 めっちゃオシャレで、すごく良い雰囲気。いやぁこれは絶対、庵先輩じゃなくて琥珀ちゃんが見つけたカフェだな。まーでも、ナイス庵先輩。おかげで今アタシたちめっちゃロマンチック。


「いやーでも、ほんとびっくりした。急に暁くんから連絡来るからさ。来たときアタシまじテンパっちゃって」


「うん。ほんと、急だったよね」


「いやそれなーっ。マジビビったんだからー」


 カフェラテを口にしながら、まずは連絡をくれたことについての話を少々。オーバーリアクションを意識しつつ、いつも通り元気に可愛く見せていく!


「――んっ。ここのガトーショコラめっちゃ美味しいっ。やばっ」


「分かる。すごく美味しいよね。俺もたまに一人でここ来るんだ」


「えっ。一人で来てるの!?」


「うん。テスト前とかに行ってる。ここで勉強すると結構捗るんだ」


「へぇーっ! カフェで勉強とかオシャレ!」


「そうかな?」


 なるほどなるほど。暁くんはカフェで勉強する系の人か。アタシ、勉強のことに関してはさっぱりだけど、暁くんと一緒にできるならアタシも勉強頑張ってみようかなぁ。


「――それでさ、今日話したかったことなんだけどさ」


「うんうんっ。なになに〜?」


 

***



 ぶらぶら。ぶらぶら。


 夜風に当たりながら、静かな公園でブランコに揺さぶられている。小学生のときしか使わなかった遊具で、いっつも昼の休憩時間に立ちこぎで遊んでいた。いつの間にか遊ばなくなっていたけれど、公園などで見かけるとたまに遊びたくなってくる。

 今日は、久しぶりにブランコに座って、遊んで、揺られていた。


「――」


 最初は足で地面を蹴って、ぶらぶらとブランコ本来の楽しみ方を楽しんでいたけれど、だんだん遊ぶ気力がなくなってきた。すると、少しずつ一往復するまでの時間が短くなってくる。


「――」


 最終的にはブランコは揺れることをやめ、ただの椅子と化した。足が地につき、地面が削れる音が響く。


「――頑張ったよ。愛利は」


「うん。ありがと、庵先輩」


 傷はすぐ癒えるわけではないけれど、前島愛利は弱い人間ではない。きっとすぐに立ち直り、明日にはケロッとしている。それができる、女なのだ。


 庵は失恋の辛さを知らない。だから気持ちを正確にわかってあげることはできないけれど、それでも一人の友だちとして彼女の頑張りを労うことはできる。


 彼女に幸せな未来がいずれ訪れるよう、静かな夜の夜空に祈りが飛ばされた。


 店長の登場って二章以来ですかね。二章が完結したのが二年以上前なので、かなり久しぶりの登場となりました。いやびっくり。でも、もう登場の機会はないかな......ありがとう店長(尚、店長初出は第7話です。朝比奈や北条の登場より前)


 そして残念なことに実らない恋となってしまった愛利。ですが、きっとすぐ立ち直ります。だって愛利だもん。作者の私が一番分かってます。彼女なら大丈夫。彼女の恋がこれから先描写されることはもうありませんが、きっと人並みの幸せは手に入れるでしょうね。

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作者さんから太鼓判押されてるの安心しますね
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