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宝石級美少女の命を救ったら付き合うことになりました  作者: マムル
最終章・後編

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◆第199話◆ 『そして』


 甘音アヤの死から数日後、今までの北条康弘と星宮琥珀の一連の騒動が世間に明るみなった。ニュースでこの事件については連日報道され『一人の男子高校生が起こした狂気的執念による殺人未遂事件』なんて言われている。勿論、こんな騒ぎでは学校もまたしばらく休校だ。


 庵たちも警察の事情徴収を受けたり病院で怪我の手当てをしたりと、てんてこ舞いの大忙し。庵の父、恭次もこの現場にやってきて、庵に「お前今度は何をしたんだ」と心配よりも先に若干呆れの言葉を口にしていた。親なんだからしっかり心配してほしいところではあるが。


 琥珀は今までで一番の大怪我を負ってしまった。それも当然、甘音にナイフで何か所も刺されておいて無事でいるはずがない。甘音が息を引き取ったあと、琥珀もすぐに意識を失ってしまい、そのまま一緒に救急車に乗せられている。

 そして病院に搬送されてあと、すぐに緊急手術を受けて、止血と切れた血管を縫い合わせてもらった。医師曰く琥珀の怪我は結構な重症だったらしく、あと少し救急車の到着が遅れていたら命を落としかねないほどのものだったらしい。琥珀が最後甘音の元に歩み寄ってきたとき、やっぱりとんでもない無茶をしていたのだ。

 これからはリハビリも含めて入院しないといけないようだが、後遺症もなく治るようで本当に良かったと庵は思う。


 さて、そのほかにも語らなければならない――否、いつかは向き合わなければいけなかった大切な問題が一つ取り残されている。それに向き合うときが、この日、ついに来た。



***



「――あんたがカーテンで屋上から降りてる様子、今Twitterでめっちゃ有名になってるわよ。十万いいねとか付いてるし」


「Xな。――うわほんとだ。誰だよ撮ってたやつ......」


 病院の待合室で、隣に座る朝比奈がスマホの画面を突きつけてきた。そこには某有名SNSで、庵が行った『星宮救出withカーテン大作戦』様子が載せられている。インプレッション数もいいねの数もとんでもなくて、コメントも庵の勇士を称賛するものでいっぱいだ。


 別に悪い気はしないのだが、当たり前に学校名とかが晒されているので、色々と特定されてしまいそうでちょっと怖いという気持ちもある。正直、あまり拡散するのはやめてほしい。


「ほんとあんな危ないことよくやるわよね。見てるこっちはめちゃくちゃヒヤヒヤしたし。あと一回落ちそうになるし」


「あれしか方法が思いつかなかったんだよ。てか、ちゃんと成功させたんだからもっと俺褒めろよ」


「私じゃなくて彼女に褒めてもらいなさいよ」


「朝比奈も褒めろよ」


「......」


 やはり庵に対しては素直ではない朝比奈。過去に色々あった相手ではあるので仕方のないことなのかもしれないが、庵は今回の騒動の一番の功労者なのだ。もう少し労われてもいいのでは? と思ってしまう。


「......まぁ、よかったんじゃない? すごいすごい」


「だいぶ適当だな」


「これ以上は彼女に褒めてもらって」


「はいよ。あとで琥珀にいっぱい褒めてもらうよ」


 一応褒めてもらいはしたが、感情がこもってないのが丸わかりで全然心に響かない。それにこういうのは相手の意思で褒めてもらうから嬉しいのであって、自ら褒めてとねだって褒められてもただ空しいだけだ。


 とはいえ、これくらい中身のない会話の方が朝比奈との距離感としてもあってる気がするし、それどころか少し距離が縮まっているようにも感じられる。庵もちょっとずつ、朝比奈の扱いが分かってきた気がした。


「――んで、何の用だよ。朝比奈」


 軽い会話はここまでとして、庵は朝比奈に本題を始めるように促す。そもそも庵は、朝比奈に待合室にいるから来てと呼ばれてここに居るのだ。

 庵もだいたい呼ばれた理由は分かってる。今から何を話すのか、分かってる。だから少し緊張していた。


「......そうね。ずっと話そうと思ってたことだけど、なかなか言い出せなくて、ずっと謝りたかった話がしたいかも」


「......それで?」


 太ももの上に置いていた朝比奈の手がぎゅっと握りしめられる。藍色のツインテールがふわりと舞って、切れ長な瞳が庵だけを映した。真面目で、本気で、少し怯えていて、そんな初めて見る朝比奈の表情に、庵は少し驚きを感じる。


「ごめんなさい――っ」


「――」


 はっきりうなじが見えるくらい頭を下げられて、謝られた。そのまま数秒頭を下げ続け、再び庵に視線を戻す。


「高一の9月、私と星宮のいざこざで私はあんたを恨むようになった。それでずっと復讐をしたくて、代わりに北条くんにあんたの復讐をするように頼んだの。そしたら......北条くんが、あんたのお母さんを事故に見せかけるように殺してしまった」


 朝比奈の口から聞かされた、青美の死の真相。予想通りの話題だった。


 何を話されるかは大体分かってたし、最近なんとなく察しの付いていた話でもあった。それでも、実際に聞かされた瞬間、庵の心臓は激しく脈打ちだし、青美との記憶がフラッシュバックする。

 感情の制御が効かなくて泣きだしそうになったから、胸辺りをぎゅっと拳で抑えつけ、ざわつく心に平常を促した。それから深呼吸をして、頭をぶんぶんと振ってみる。今だけは泣くわけにはいかないから、強引に涙を引っ込めさせた。


「ご、ごめんっ。急にいろいろ言い過ぎた」


「いや......いいよ。なんとなく察してたことだったし」


 急に庵の様子がおかしくなったのを心配して、朝比奈が慌てて謝ってくる。


 朝比奈も朝比奈で、今とてつもない緊張と恐怖を味わっているはずだ。何せ、ずっと言い出せなかったことについての告白だ。隠し事は時間が経てばたつほど言いにくくなってくるし、罪悪感も膨らんでくる。しかもその内容が殺人ときた。よっぽどの覚悟がなければ、口にすることなんてできない。


「――っしー。俺は、どうしたらいいんだろうな」


 朝比奈が反省してるのは見てて分かる。そして実際に殺したのは北条であって、朝比奈は間接的に関与してしまっただけというのも理解している。

 

 まず、許してもいいんじゃないかと庵は思ってしまった。

 何せ、あれはもう過ぎた話だ。今更朝比奈を恨んだところで青美は帰ってこないし、何の慰めにもならない。庵はもうあの出来事を乗り越えてしまったから、朝比奈に湧いてくる怒りが薄いのだ。


「私は、なんでも受け入れる。警察に通報してもいいし、あんたのお父さんに謝罪しに行ってもいい。土下座でもなんでもするわ」


「父さんには言いたくないな。父さんももう、乗り越えたから。またあの日のことを思い出させたくない」


 一つ絶対なのは、この真相を庵の父である恭次には伝えないということ。これは完全に庵の独断だ。

 伝えて、父と協力して慰謝料を請求なんてこともできるのかもしれないが、それをするにはまた父に苦労をかけることになる。ショックで寝込んでしまってもおかしくない。そんな恭次を見るのは庵はもう嫌だった。

 

 何より、主犯である北条康弘はもうこの世に居ないのだ。それが、一番の理由である。


「――じゃあ私が沢山バイトして、慰謝料分を渡すとか......お金で解決って言うと、ちょっと聞こえ悪いけど」


「それは......まぁ、ありなのかもな」


「――」


 人は罪を犯せば、懲役刑や罰金などの処罰を下される。朝比奈が犯した罪は日本の刑法に則って考えれば罰金刑は少なくとも免れられない。ならば、罰金として慰謝料を払ってもらうのは割と妥当なのだろうか。


 しかし、庵個人の意見として、同級生の女子から金をもらうというのは少し気が引ける。それにバイトで稼いだ金なんて、青美の命に比べたら微々たるものだ。そんなものをわざわざ、慰謝料として貰いたくなんかない。


「あんたは、何を悩んでるの」


「......いや」

 

 庵が目をつむりながら頭を掻いていると、朝比奈が恐る恐るといった様子で問いかけてくる。そんな朝比奈に、庵は深く溜め息をついた。


 今の朝比奈に対して、庵は一ミリたりとも悪印象を抱いていない。むしろ最近の朝比奈は好印象寄りなのだ。そのせいか、先ほども述べたように、朝比奈が青美の死に関与していたことを知っても、怒りが湧いてこない。

 

 庵が本来すべきことは烈火の如く朝比奈に怒り、相応の制裁を喰らわすことなのだろうか。それとも庵の独断で決めるのではなく、大人に任せるのか。はたまた、このまま許してしまうのか。


 すると、朝比奈がいきなり庵の顔を覗き込み、真面目な口調で語りだした。


「......私は北条くんに従うようになってから、ずっと道を踏み外してた。もうこのままずっと道を踏み外して生きていくものだって、思ってた。でも、違ったの」


「――」


「既に手遅れだったけど、私は踏みとどまれたの。もう今更過ぎるのに、まっとうな人間になりたいってそう思った。――そんな私を、星宮だけは許してくれた」


「――」


「だから私は、自分の罪としっかり向き合いたい。許すなんて言わないで。私に、今までしてきたことを償わせて」


 朝比奈の覚悟に、庵の心は震える。同時に、自分の情けなさに気づかされた。


 いくら信用を取り戻したとはいえ、やはり朝比奈には卑怯で陰湿なイメージが未だ定着している部分がある。正直、ここで許してしまえば朝比奈はホッと一安心するんだろうな、なんて勝手な妄想を庵はしていた。しかし実際はどうだ。彼女は自分を許すなと、正しく自分の罪に向き合おうとしている。


 庵もそうだっただろう。琥珀を殴ってしまった日から、ずっと後悔の念に苛まれた。許されたくなかった。なんとしてでも償いたかった。今の朝比奈は、過去の庵と同じだ。何故、それに気づけない。


 ――朝比奈は本気なのだ。


「私は、とんでもないことをしたの。もうあんたのお母さんはあんたの結婚式も見れないし、孫に会うこともできない。それがどれだけ重大なことか、あんたも分かるでしょ」


 朝比奈が涙をこぼしながら、胸に手を当て、訴えかける。言っていることは何一つ間違っていないし、言葉通り本当に重大なことだ。


 朝比奈が本当にただの極悪人だったら、もっと違う選択肢もあったし、きっと庵は朝比奈を許さない。でも庵にとって朝比奈は極悪人でもあり、琥珀を救った救世主でもあった。


 ならば――、


「じゃあ、最低なことをしでかしてくれたお前に相応の罰を与えるよ」


「......うん」


 庵の静かな言葉に、朝比奈も静かに頷いた。少しの間、沈黙ができる。

 その間、庵は琥珀との会話を思い出していて――、

 

「お前が、琥珀の一番の友達になってあげてくれ」


「......え?」


「それが、俺と――いや、俺と琥珀のお前に対する復讐だ」


 ほんと、とっても良い復讐で、朝比奈に一番効きそうだななんて思いながら、庵は琥珀の顔を思い浮かべた。



***



 数日後。


「――よっ、庵。お前で最後だぞ」


「みんな集まるの早いな。何時起きだよ」


「庵がいつも夜更かししてるのが悪いんだろ」


 待ち合わせ場所に時間ギリギリにやってきたら、それを暁が面白そうにからかってくる。実際いつも夜更かししているのは事実なので、反論することはできない。というより健全な高校生は皆夜更かししないものなのかと庵は疑問に感じてしまうが。


「天馬さん、目にくまついてますよ。ちゃんと寝てるんですか?」


「くまはデフォルトだから気にしなくていいよ。俺年中睡眠不足だから」


「あーなるほど。つまり、毎日星宮さんと夜遅くまで連絡取ってるんですね!」


「いや、琥珀はいつも0時過ぎると連絡返ってこなくなるよ」


「じゃあなんで夜遅くまで起きてるんですか」


「......色々あるんだよ。色々」


 庵の睡眠時間に対し、頭にハテナマークを浮かべているのはみのり。早く寝た方が健康的にも良いのはごもっともな話なのだが、夜更かしが常態化した庵にとっては不可能な話だ。

 しかし、そんな純粋な瞳で問いかけられると、少し自分が情けなく思えてしまう。やっぱり早寝早起きをした方が良いのだろうか。


「俺はいいとして、朝比奈は何時まで起きてんの?」


「え。......まぁ、大体1時半くらいまで」


「仲間いたわ」


 今日の集まりのメンバーである朝比奈にも聞いてみたら、庵とほぼ同じ就寝時間だった。おかげで先ほどの迷いは晴れて、これからも思う存分夜更かししようという気持ちが溢れてくる。仲間が居るという安心感はやっぱ偉大だ。赤信号、みんなで渡れば怖くない。

 

「えぇ......夜更かしは乙女の天敵じゃないんですかっ。ほら、肌が荒れるとか太りやすくなるとか言うじゃないですか」


「別に私肌荒れてないし、太ってもないわよ。......てかちょっと待って。私あなたの名前知らないんだけど」


「どえぇぇ!? 小岩井みのりですよ! 前はうちのお姉ちゃんがお世話になりやがりました!」


「あぁ......」


 ここに来て衝撃の事実が発覚する二人。確かに、朝比奈とみのりの接点はこの前の星宮救出作戦のときと、小岩井姉の私物を返したときくらいしかなかったが、まさか名前を知らなかったとは。

 これには暁も庵も苦笑いをするしかない。


「なぁ庵。ここの女子二人って元から知り合いじゃなかったのか」


「いや、別にそんなことないぞ。なんなら仲悪いまであるかも」


「マジかぁ.......猶更とんでもない面子だな、これ」


「まぁなんとかなるだろ」


 庵とみのりに関してはまだ関係は浅いし、庵と朝比奈はまだ少し壁がある。この四人の中で胸を張って友人関係と言える組み合わせは庵と暁くらいだろう。

 『星宮救出withカーテン大作戦』のメンバーはやっぱりおかしな面子だな、なんて庵は改めて感じてしまう。


「それじゃ庵も来たことだし、そろそろ行こうか。星宮さんのお見舞い」


 暁が腰に手を当て、今日集まったメンバーを見渡した。ここに居るのは、先日星宮救出のため命がけの作戦(主に庵)を行った勇敢なる顔ぶれだ。

 今からこのメンバーで向かう場所は琥珀が入院する病院。数日前、みんなで一度お見舞いに行こうという話になったのだ。今回に限っては、朝比奈もすんなりと了承してくれた。


「私、星宮さんが入院した日から会ってないんですけど、元気なんですか? ちょっとどういうテンションで会っていいのか分かんないんです......」


「まぁだいぶ元気になったと思う。リハビリも順調だし、笑顔も自然だしな。琥珀もだいぶメンタル強くなったっていうか、今回のことも琥珀なりにしっかり受け止めれてたし、心配いらないよ」


「そうなんですか......よかったぁ。じゃあ私いつもの倍ハイテンションで星宮さんに話しかけます!」


 庵の言葉を聞いて、拳を握りしめながら嬉しそうに宣言をするみのり。琥珀も今回のことを受け止めているとはいえ、まだ心の傷は癒えきってはいない。だからこそ、みのりのような存在は気が紛れてちょうどいいだろう。


「いやぁ、にしても庵もすっかり彼氏らしくなったよな」


 と、ここで暁がニヤニヤしながら庵に話を振ってきた。


「なんで?」


「だって毎日星宮さんのとこにお見舞いに行ってんだろ? めっちゃ星宮さんのこと大切してるなぁって思うよ」


「あぁ......まぁでも普通だろ。俺は琥珀に会いたくて会いに行ってるからさ。毎日ウキウキしながら病院に向かってるよ」


「はーなるほど。彼氏彼女なら、それくらい別に普通なのか」


 確かに庵は毎日琥珀の病院にお見舞いに行っている。ただ、庵はそんな自分を偉いだとかすごいなどと高く評価していない。して当然のことをしている、ただそれだけの話なのだ。

 庵の言葉を聞くと、暁は顎に手を当てて「なるほど......」と頷きだす。そんな真面目に聞くような話だっただろうか。


「僕もそろそろ彼女欲しいな。庵の惚気話も、いい加減聞き飽きてきたし」


 暁にしては珍しい発言をするので、少し驚きを感じる庵。とはいえ、直ぐにジッととした視線を暁に向ける。


「暁ならいつでもできるだろ。俺より全然モテまくってるくせに」


「分かってないな庵。僕は追われる恋より、追う恋が好きなんだよ」


 肩をすくめながら、贅沢で嫌味なことを言ってくれる暁。庵はモテるという経験をしたことがないので、少し嫉妬してしまいそうになる。

 そして、暁なら追う恋でも余裕で成功する気がするが。


「朝比奈さんは彼氏いるの?」


「え?」


 突然暁から話題の矛先を向けられた朝比奈。まさか自分にパスが来るとは思っていなかったのか、びくりと肩を震わせて驚いていた。

 庵もまさか暁が朝比奈に話しかけるとは思わず、隣で少し混乱してしまう。


「......いたことないわよ」


 少し暗めのトーンで答える朝比奈。色々思い出してしまったのかもしれない。


「そうなんだ。じゃあ今好きな人居たりする?」


「なんでそんなこと私に聞くの。誰も興味ないでしょ」


「いいじゃん。教えてよ」


 庵からしたら暁が朝比奈に話しかけただけでも驚きなのに、そこから更にぐいぐい切り込む暁。朝比奈も少々困っているのか、恥ずかしそうにツインテールの先っぽを指でくるくるといじっている。


「好きな人も居ない。......だから私に恋愛の話したって、つまんないわよ」


「へぇそうなんだ。ありがとう、色々答えてくれて」


 暁と朝比奈というありそうでなかった絡み。会話は一瞬で終わってしまったが、いきなり恋愛話を持ち込んだ暁の神経の図太さに感心してしまう。


「なぁ庵。女心って難しいよなぁ」


「琥珀は割と単純だぞ。他の女子と違って」


「そりゃ庵に対してはそうだろ。僕からしたら星宮さんは、何故か庵と付き合っているミステリアスな女だよ」


 ぎりぎり悪口な発言に、小さく笑ってしまう庵。

 とはいえ、琥珀が単純だと感じるのも付き合ってだいぶ日数が経ってきたからの話だ。今は感覚が掴めてきたけれど、昔は接し方にとても困ったものだ。結局、女心を読み解くには長い付き合いが必要なのだろうか。


「あっ、そういえばずっと聞きたかったんですけど! 天馬さんってどうやって星宮さんと付き合ったんですか!」


「あー、それは――」


「お、庵の惚気話がきた」


「こなくていいわよ」


 つい最近までは考えられなかった組み合わせなのに、集まってみたら意外と話が盛り上がってしまう。それぞれが個性の強いメンバーなので、逆に気が合うのだろうか。最初の暁の心配なんか杞憂で、ずっと前からこのメンバーで過ごしていたかのような、そんな居心地の良さだった。


「――はははっ」


「何笑ってんだよ庵」


 ほんと自分も変わったなぁなんて思いながら、庵は歩幅を合わせて前へ進んでいく。これは、琥珀への土産話がとても面白いものになりそうだ。


次回最終章・後編最終話

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