◆第168話・幕間◆ 『弔い』
これを最終章の一話目にしようと思いましたが、第三章に含みました。というわけでこれが第三章最終話です。ごめん!
北条くんの死について知らされて、私は意外にもそれをすんなり受け入れることができた。
ただ、受け入れられたのは”北条くんの死”という部分だけで、誰かが”北条くんを殺した”という事実は勿論怖くてなかなか信じられなかった。でも、それは私以外の人もそうだったと思う。
『北条の話、さっき俺も聞いた。体調、大丈夫?』
『大丈夫です』
『なら良かったよ。少し話したいから、あとで通話できない?』
『ごめんなさい。今は、あんまり話したくないです』
『分かった。落ち着いたら、また連絡してほしい。いつでも大丈夫』
まず一番に、庵くんから連絡がきた。私のことを心配してくれているからか、いつもよりLINEの既読が早い。私の状態がまた悪くなっていないか不安だったのだと思う。悪くないとは言わないけど、心にそこまで大きなヒビが入った感覚はなかった。
「――はぁ」
北条くんの死は、伝えられて数時間で受け入れた。そして、少なからず安堵している自分がどこかにいた。人が死んでいるというのに不謹慎と思われるかもしれない。けど、もう二度とあの苦しみを味合わないでいいと思うと、そう安堵せざるを得なかった。
「北条くん」
でも、未練は残っている。私は北条くんとの決着がついた日、2人で話をする約束をしていた。別に和解を求めるつもりはなかった。ただ、北条くんの思いを、考えを、苦悩を、理解したかった。そして私もまた、理解されてほしかった。
「......」
でも、それは叶わず終い。もう、北条くんはこの世に居ない。居るのは、北条くんを殺した犯人だけ。
「どれだけ、私を憎んでたんですか。北条くんは」
最後の最後まで私を追い詰めて、苦しめようとしてきた北条くん。そんな彼の結末が、正体不明の人物に誰にも看取られず殺されるなんて、あまりにも不憫。いくらなんでも、流石に同情してしまう。
「......」
しかし、北条くんが道を踏み外さなければ、このような悲惨な結末を迎えることはなかっただろう。そう考えると、北条くんが道を踏み外すきっかけとなった私にも非があるのは間違いない。
だから、私にできることを考えた。
「――北条くんを襲った犯人を探して、罪を償わせましょう」
それが、私にできる精一杯の彼に対する弔い方だと。




