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宝石級美少女の命を救ったら付き合うことになりました  作者: マムル
第三章・後編

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◆第114話◆ 『宝石級美少女のナイトルーティン』


 宝石級美少女――星宮のナイトルーティンを紹介しよう。


「ん......今日は、とても疲れました」


 午後七時。私服姿の星宮は自室でグッと伸びをする。直前まで勉強をしていたので少し疲れてしまった。しかし北条という人間にいろいろと振り回されたことに対するストレス解消には、案外勉強は効果的。嫌なもやもやとした気持ちが若干紛れてくれるのだ。


「......もう七時ですか。ご飯チンしないと」


 勉強が終われば夜ご飯。今日はコンビニで買った弁当とカット野菜を用意している。星宮は料理が苦手なので、基本的にあまり自炊はしない。


(......料理ができない女の子ってダメですよね。いつかしっかり勉強しないと。天馬くん、私が料理できないなんて知ったらドン引きしませんよね)


 なんてことを考えながら、机に夜ご飯を用意する。準備し終えたら静かに「いただきます」と口にした。食への感謝は欠かせない。


(カップルってLINE通話とか日常的にするものなんですかね。こういう一人で寂しいときに好きな人と通話できたら、楽しそうですけど)


 カット野菜にドレッシングをかけているとき、ふと思った。いまいちカップルになったペアがどこまでの事をしていいのかよく分からない。庵とは何度もデートしているので、異性との付き合い方は分かっている気でいたが、まだ分からないことだらけだ。


(通話って何を話せばいいんでしょうか。今食べてる夜ご飯の話とかしても面白くないですよね。......いえ、こういう他愛のない話こそするべきなのでしょうか)


 妄想が膨らんでいき、あらゆる脳内シュミレーションが行われていく。ちなみにだがこれは星宮のルーティンではない。今日に限って何故か本当の彼氏について葛藤を始めてしまった。


(つまらない話で天馬くんに迷惑かけたくないし......いえ、それは少し気にしすぎですか。でも気は遣われたくはないのでどうしましょう)


 どうしても直ぐには結論が出そうにないので、一度頭をブンブンと振って考え事を終わらせる。また寝る前にでも続きをすればいいだろう。


「うぅ......お風呂に入ってスッキリしましょう」



***



 湯を両手ですくってパシャンと湯船に戻す。気持ちよさそうに湯船に浸かる星宮は、雪色の髪を濡らしてくたくたと壁に寄りかかった。ぽかんと、何気なく浴室の天井を見上げてみる。


「――私は何を呑気にしているんですか。早く、何か行動しないと。北条くんと付き合っているのはもううんざりです」


 今、一番目先の問題である北条との交際。学校でもグイグイと接してくる彼は、星宮にとってだいぶストレス的存在だ。しかも北条は庵の母親――青美を殺した犯罪者でもあるため、雑に対処をすることは許されない。かといって、何も対処法が見つからず、日に日に辛くなっているのが今の現状であるが。


「......やっぱり、北条くんのことは天馬くんに伝えないといけないですよね。でももし伝えたことが北条くんにバレたら大変なことになるのは目に見えてますし」


 様々な懸念点はある。でも足踏みしているばかりじゃ前には進めない。この状況を打破するには、リスクを負ってでも何か行動するべきなのだろうか。


「警察に言ったら、どうなるでしょうか......証拠も無いのに、信じてもらえるわけがないですよね」


 警察に事故の真実を暴露するのも手だが、証拠が何もないのだ。防犯カメラがあるところで事故が起きたのなら話は変わるのだが、北条がそんなミスをするとはとても思えない。


「......警察を動かすには、証拠が必要」


 ふと、星宮は考えを思いついた。とてもお手軽で、勝算のある作戦を。


「――証拠を作りますか。北条くんが犯罪者という証拠を」


 やってみる価値はある。北条を警察に突き出すことに成功すれば、完璧な復讐となるだろう。



***



 お風呂から上がれば、あとは寝るまで自由時間。勉強はテスト前などではない限り、帰宅してからの数時間しかしない。量より質が星宮のモットーだ。


 まず髪をドライヤーで乾かしてから、スキンケアやボディーケアをする。自分磨きを毎日欠かさずする星宮。宝石級美少女の女子力は人並み以上だ。


「......」


 やるべきことを終えて、あとは寝るだけになった。時計を見ると午後九時を過ぎている。夜は一人で怖いので、とりあえずテレビの電源を付けておいた。付いたチャンネルでは人気番組の人気シリーズ『仰天チェンジ』が四時間スペシャルで行われている。


 ただ、テレビに特に興味は無いので、ベットに腰掛けながらスマホをいじる。テレビはあくまで寂しさを紛らわすための道具だ。何となくTiktokをボーっと見る。あまり使わないアプリだが、たまに見ると面白い。


「......ふぁ」


 何回か画面をスクロールしていると、睡魔が少しずつ星宮に近づいてくる。瞼が重くなってきたのを感じだした星宮は、スマホの電源を落として充電器に繋いだ。テレビの電気も切り、部屋の電気も薄暗くしておいた。暖房にはタイマーを付けておく。


「......おやすみなさい、お母さん」


 そうして星宮はベッドの中で眠りについた。明日は少し、忙しくなりそうだ。

 


 


 


 

物語の日付的にはそろそろバレンタインなんですよね

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