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宝石級美少女の命を救ったら付き合うことになりました  作者: マムル
第三章・前編

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◆第111話◆ 『あなたが私を地獄に落とすというのなら』


 これまでのすべての不幸を巻き起こした首謀者が判明した。その人物は、思ったよりもかなり身近な存在で、関わりも薄く、意外としか言いようのない人物。成績も優秀で、運動神経も良く、容姿も整っていて、生徒会にも所属する男だ。


 一体、どう道を踏み外せばこのような非行に走ってしまうというのか。二重人格という説を考えるほうがまだ納得がいくのかもしれない。しかし、星宮にのみ強い執着心があることからその説を推すのは少し納得がいかないだろう。


 そしてその男――北条康弘ほうじょうやすひろは今、星宮に向かって本格的に牙を剥き出した。


「星宮、今どんな気分だよ。中学のいじめも、高校でのいじめも、天馬の親の交通事故も、ぜーんぶ俺のせいだ。そして今、そんな事をしでかした張本人に交際を迫られている。いやぁ、人生ハードモードだよなほんと」


 へらへらと自ら自分の行った悪事を並べ、星宮の反応を伺ってくる。ただ今はリアクションを取るよりも、とりあえずこの男から距離を取りたい。


「っ」


 強引に体を捻り、全身全霊の力を込めて拘束から逃げ出した。アスファルトの床に背中から着地する。じーんとした痛みが広がった。でも痛がってる場合ではない。涙目で北条を見上げ、睨みつける。


「......もし本当なら許せないです。あなたが、今まで私を――いえ、天馬くんを傷つけてたなんて」


「は。自分よりも天馬優先かよ。苦しんだ量的には、多分お前の方が散々な目に合ってそうだけどな」


「質問に答えてください。なんで天馬くんのお母さんを......! あなたが!」


「殺したかって? まぁ一つはさっき言った通り、朝比奈さんの復讐を手伝ってやるのが理由だな。もう一つは、天馬が苦しめば、連鎖的に星宮も苦しむと読んだからだ。大切な彼氏が病んだら、お前も気が気じゃなかったよな」


 淡々と理由を述べた北条。今日は何回驚かせられるのだろうか。今までに感じたことのない怒りが腹の奥底でフツフツと煮え立ち、爪が食い込んでしまうくらいに拳を握りしめてしまう。まさか、そんなくだらない理由で彼氏の親が殺されていたとは。


 桜色の唇が小さく動く。涙が頬を伝った。


「......あなたは、本当に人間ですか?」


「まぁこうやってお前と会話を交わせるから人間だろうな。俺がゴリラにでも見えたのか? それなら超ウケる」


「――」


 笑えない。ウケると思って、ゴリラなんて茶化しているのだろうか。星宮は唇を噛んで、再び北条を睨みつけた。すると、生暖かい視線が返ってくる。


「んで、どう? 今の話で俺と付き合う気になったか?」


「は? 誰があなたなんかと......!」


「へぇ、星宮は察しが悪いんだな。お前にはもう交際するしか選択肢が残されていないんだよ。なんでそれに気づけない?」


 察しが悪いと言われ、星宮は頬を硬くする。なんで交際をするしか選択肢が残されていないのだ。星宮が庵を捨てて、北条の彼女に成り下がるとでも思っているのか。


「少し考えてみろよ。なんで俺が今お前に今までのすべてを明かしたと思う?」


「――」


 問われたが、分からなかった。よくよく考えれば、自ら犯罪行為を被害者本人に自白したのは意味不明だ。そして答えを聞いたとしても星宮は理解できないだろう。この狂った男を理解するなど、不可能だ。


「お前が俺との交際関係を断った場合、俺は再び天馬庵を狙おうと考えている。冗談じゃなくて、本気だ。それが嫌ならお前は俺と付き合うしか手段はない。さっきからの話を聞いていれば、この話が嘘か本当か分かるだろ?」


 庵の名前が出され、星宮は背筋を凍らせる。最悪の答えだった。自分のことよりも庵の方が大切な星宮は、庵の身を危うくしてしまうような真似は絶対に取りたくない。そしてここで判断を間違えれば、本当に庵の身が危うくなると星宮の中の何かが訴えていた。


「っ。天馬くんに何するつもりですか!」


「逆に何をすると思う? 天馬もいじめに合わせてみるか? 残った父親もあの世行きにさせるか? 俺はなんでもできるぞ」


「っ、ありえない......ほんとに、悪魔です」


「はは、何とでも言えよ。天馬が苦しむのが嫌なら、俺と付き合うんだな」


 発言内容が普通の人間のものではない。北条からは最早狂気しか感じ取れなかった。


「......なんで」


 悔しくて、顔を俯かせてしまう。この時点で、星宮はどうするのか頭の中で決断していた。せざるを得なかった。北条の言う通り、本当に言葉で折れてしまったのだ。これが夢であるのなら早く覚めてほしい。夢じゃないのなら、ドッキリといってほしい。でもこれが紛れもない事実だということは疑いようがなかった。



「俺の事が嫌いか?」



 ――当たり前。


 嫌い。大嫌い。私の未来を奪って、天馬くんを苦しめて、今もこうして追い詰めて、本当に許せない。許せるはずがない。今までどれだけ苦しんできたか知っているんですか。



「まぁそりゃ、嫌われて当然だよな。俺はお前を苦しませるために人生を懸けてるからな。交際関係になるのもそうだ」



 酷い。あまりいもひどすぎる。なんで大好きな天馬くんと別れて、こんな最悪の男子と付き合わなくちゃいけないんですか。天馬くんと三ヶ月後に会おうって約束してるのに、その約束を果たせないまま私は......



「とことん俺を恨めよ、星宮。それが俺の望みだからな。――俺もお前を恨み続けるよ」


 

 何を分かったように喋っているんですか。あなたのせいで、私のこれからがめちゃくちゃ。それに天馬くんを傷つけたことが何よりも許せない。天馬くんを傷つけた男が、何故今こうして楽しそうに生きているのか。ああ、本当に許せない。


 許せない。絶対にいつか、仕返しをしてやりたい。こんなに怒ったのは初めて。感情を大きく出すのが苦手って昔から自覚があったけど、今はもう振り切れた。


 この男の存在を根本から否定してやる。天馬くんの幸せを奪ったこの男のすべてを否定してやる。絶対に許さない。許されていいはずがない。



 そうだ、絶対に許すな。



 許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。



 ――この怒りを絶対に忘れるな。何度でも、この怒りを呼び覚ませ。







 














 ふらふらとその場に立ち上がった。マリンブルー色の瞳が、不気味に輝いている。生気を失ったかのような顔をして、桜色の唇が僅かに動いた。

 


「――わかりました。あなたと付き合います。その代わり、天馬くんには何も手を出さないでください」


「よし。それでいいんだよ、星宮。ちなみに俺はお前と普通の付き合い方をするつもりはない。地獄みたいな交際生活になると思うけど、覚悟しとけよ?」


「天馬くんが無事なら、私は大丈夫です」


「なら、交際成立だな」



 ――あなたが私を地獄に落とすというのなら、私もあなたを地獄に落としてみせる。


 今まで絶望に落とされ続けた人生。だけど今度はもう諦めたりしない。この怒りの感情を頼りに、絶望と戦ってみせる。例え、この男にすべてを奪われたとしても、庵を好きであり続け、守り抜こう。そして、この男に相応の罰を与えてやる。もう引き返すつもりはない。


 二度目の恋愛感情ゼロの交際生活の幕開け。そして、本当の絶望の幕開けだ。


 


 

 




 

これにて第三章・前編は終了となります。諸悪の根源である北条と、星宮との最悪の交際がスタートしてしまいました。ここから物語全体としても、クライマックスへと向かっていきます。さて、ここから怒涛の展開となりますが、よろしくお願い致しますね。


ちなみにこの作品の章構成は第一章、第二章、第三章、最終章となっています。今年中に完結まで目指したいですね(更新ペース上げていきます)。あと、感想やいいね、評価、ブックマークなどしてもらえると嬉しいです。では、第三章・後編をお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[一言] ダメだ……あのバイオレンス女とかは我慢できたけどこいつは生理的に受け付けねぇ……問題解決しそうなとこまで読むのやめよ…
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