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巨人になった私  作者: EVO
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東京決戦 7

「おいおいおい・・・」


「ウソ・・・」


「勘弁してくれよ・・・」


終わりの見えた討伐作戦の最終段階も最終段階、【穴】から散発的に現れる敵性生物の対処をしながら、いつものように残る第一級敵性生物(カテゴリー1)領域外敵性生物(カテゴリー0)を倒していた私達の前に()()が現れた。


ソレは金属のような光沢感のある鱗に全身を被われていて、口は鰐のようなギザギザの歯、鋭い鉤爪を持ち、悠々と()()()()()()()()


『ヘリは下げます、戦闘機は・・・』


「待て、奴はアタシらに狙いを定めているみたいだ、下手に空に目を向けられては困るよ」


『では周辺空域の封鎖に回します』


「ああ」


『対象を暫定的に()()と呼称、陸海軍には対空砲の用意を、空軍は——————』


リリィの判断は恐らく正しかった。

空を翔ぶアレは明らかに私達に狙いを定めて旋回していた、ここで困るのは戦線を越えて人の居る方へ離脱される事だ。

私達巨人特殊部隊は遠距離攻撃の手段に乏しい、戦闘機が相手をするのが一番だけど、それだと地上のこちらから空へ注意が逸れてしまう。

私達が狙われている内はある意味で都合が良かった。


「Gyyyyyyyyyeeeeee!!!」


甲高い声を挙げて飛龍は降りて来た、見上げている私達の内、狙われたのはライアンだ。


「ライアン!」


「おう!」


ゴウッ!と空気を切り裂く飛行音を置き去りに、恐ろしい速度でライアンと交錯した飛龍は既に手の届かない高度だ。


「ぐおっ」


「速っ」


「速過ぎる!イブ、速度は!?」


空中だと比較対象になる建物や地面が無いので、かなり距離感が掴めない。

点が大きくなったと思った瞬間には目の前、そして通り過ぎている。


『音速は超えています』


「ランディの投球並みか」


本気のランディの速度なら未だ対処は出来る、同じ速度だとキャッチボールくらいなら感覚的に出来てる。


「ライアン怪我は」


「問題ねえ!が・・・」


ライアンは手斧の半面をこちらに向けた、ガッツリ数本、多分鉤爪の跡が刻まれている。

私達の武器は兎に角頑丈だ、どんなに荒く扱っても刃こぼれしないし、これまで折れたり破損したりもしていない、その硬い筈の武器が削られた、つまりまともに受けてはいけない。


「走れ!」


リリィが先に走り出した、私とライアンは追従する。

あの速度を止まって待ち受けるなんて無理だ、降下して襲って来るなら同じ方向に全力で走る事で相対速度はかなり遅くなる。


背後から攻撃を受ける事になるけど、そこは支援システムのドローンの映像と簡易マップがコンタクトHUDに表示をして敵影を常に視界に捉え続けられる。

次に狙われたのはリリィだ、既のところで太刀を振った軌跡と飛龍の軌道が交差して火花を散らす。


ギャリィッ!!!


「リ・・・」


言わんとした私の視界の端から前方へ抜けた飛龍は()()()()()()に低空を維持、その大柄な体格に似合わない急旋回で正面から私に鋭い鉤爪を向けた。


「あ」


「避けろサナ!」


一撃離脱戦法ですぐに高空に逃れるだろうと予想していた私にとって、その機動は完全に不意を突いていた。

走っているので簡単には止まれない、跳ぶ? 駄目だ空中は体勢が変えられない、なら


ザァー!


なんとかスライディングで爪を逃れる、黒光りする爪は研がれた刀の様に鋭く、完全に躱しきれなかったことで容易くガントレットを切り裂いた。


「サナ!」


「大、丈夫」


倒れたままではいい的だ、直ぐに立ち上がるけど右の前腕は燃えるような痛みと共に血が流れていた。

飛龍の爪は何の抵抗も無くガントレットごと私の腕を傷付けた、これまで多くの第一級敵性生物の攻撃を受けても大きく破損する事のなかったガントレットがこれだ。

泥の巨人があの怪力で刀を振るったとしたら恐らくこうなるであろう、そんな信じられない程の切れ味だ。


飛龍は良く見ていた、負傷した私を再び狙い済まして降下して来た。


「Gyaaaaaeeeeeeee!!」


「させっ、かよ!」


ライアンがカバーに、リリィは最初の一撃で体勢を崩して倒れていたのを立て直しフォローに入ろうとしていた。

私は両手で太刀を握り直し構えた、その際前腕からビリリと痛みが広がった、握りも血で滑ってあまり良くない。


兎に角場所が悪い、空爆で更地になっていて遮蔽物がない。

ビル街なら動きにくさも有るけど、襲われる方向がかなり絞られるのに。


急降下して来た飛龍に対して先ずライアンが手斧を投げ付けた、それを容易く回避した飛龍は軌道を少し変えて、でもやはり私を狙った。

それでも軌道を強制的に変えられたせいか、目に見えて減速したのは解った。


私は冷静に真横へ転がり、上段に構えた太刀を飛龍の翼を狙って振り抜いた。


「ッゥ!」


キンッ!


太刀を振った瞬間、痛みと血のせいで右手がすっぽ抜ける。

左手だけでどうにか翼の根元へ当てたものの、中途半端な太刀筋では鱗に被われた体を切断することは敵わない。


「おっしゃあ!!」


が、次の瞬間、動きを読み切っていたリリィが飛龍の背中に飛び付いていた。


「おっ、Good job リリィ!そのまま捕まえてろ・・・」


ライアンの言葉を待たず、私も、ライアンも、そしてリリィも驚きに声を挙げた。


「Gyyyyyyaaaaaaa!!」


飛龍は地に落ちることなく、リリィごと上空へと離脱したのだから。







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