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巨人になった私  作者: EVO
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東京決戦 5

やはり今日も雨は止まない、全身スーツの上に装備を重ねているのでびしょ濡れになるという不快感は殆ど感じていない。

晴れていたら気分も少しは上がるだろうか


「やるかね」


「うん」


「おうよ」


静かに声を掛ける、ゆっくりと呼吸を意識的にコントロール。

悩むのは後でいい、今は目の前の敵を倒すことだけに集中しよう。

私がヘマをしてリリィとライアンが負傷をする事なんてあってはならない、・・・やるしかない。


練馬区討伐任務再開、第二級敵性生物(カテゴリー2)は海空からの支援火力で殆どが殲滅されている。

残りの敵性生物もぐるりと取り囲んだ機甲部隊による砲撃、自走砲等で始末された。


大型敵性生物である第一級敵性生物(カテゴリー1)、変異体の領域外敵性生物(カテゴリー0)は私達が討伐する。

特に注意しなければならないのは()()()()事だ、戦線が厚く小さくなった事で敵性生物と自衛隊、米軍との距離は相対的にかなり近くなっている。


昆虫型、獣型の第一級敵性生物は危険だけど、戦車なら即死することは無い。

戦車が警戒すべきなのは泥の巨人と第二級敵性生物の昆虫型だ、泥の巨人は言うまでもなく、あの怪力は戦車の装甲さえ一撃で叩き潰してしまう。

それと昆虫型は溶解液を吐き出すものが多く要注意だ。


小型の二級は歩兵部隊の火力で十分対処出来るので、機甲部隊と随伴歩兵は必ずセットで配置されている。

そこへ泥の巨人や狼型が行ってしまうと、計り知れない被害を出す事は避けられない。


戦車の砲撃は一級の足止めには十分な威力を有しているけど、機動性の高い敵性生物は簡単に回避してしまう。

そもそもランディの音速越えの鉄球さえ必中とは言えないのだから、当てるなら逃げ場の無い程撃ち込むしかない。

それでやっと足止めなのだから、自衛隊も米軍も陸上戦力は本当に命懸けだ。


ドーン!ドーン!


戦線構築の主力、戦車部隊の砲撃が()()()敵性生物を捉えていた。


今日の討伐任務でも練馬区から多数の敵性生物を釣っては間引きの繰り返し、その中でふと疑問に思った事があったので、帰投後私は記録映像を確認させて貰っていた。


「ねえリリィ、戦車の砲撃ってあんなにポンポン当たるの?」


「いや・・・」


そう、自衛隊の戦車の砲撃の命中率がかなり高い。

砲弾の口径と威力では流石に何発撃ち込んでも一級は倒せない、それでも質量と貫通力を備えた砲弾が当たると一瞬怯むくらいの打撃力はある。


この一瞬というのは、私達にとって生命線にも近い効果があった。

特に練馬区攻略を開始してからは、第一級敵性生物の数もこれまでの比ではなかった。

どんなに手厚い支援火力があっても、それぞれ複数の敵を抱える事が常となっている。


当然立ち回りには細心の注意を払っている、指揮車からオペレーターを通じた支援もある、でもどれだけ慣れても複数に襲われたらやられてしまう。

それが戦車の砲撃で何体も怯んで動きが止まるのだから、これ程助かることはない。


「よく見ると、2発目がほぼ当たってるね」


「確かに・・・」


1発目は回避されるのに、回避した先で砲弾が当たる光景がとても多い。


「Hahaha!俺は知ってるぜ? これこそ、This is 自衛隊(JDF)


「何か知ってるの?」


自衛隊(あいつら)はクレイジーだぜ」


ライアンはとある逸話を話してくれた。

アメリカの演習場で戦車射撃競技会があり、自衛隊も参加した。

自衛隊の90式戦車は全ターゲットの内、ひとつを外した。

因みに、この成績は参加した戦車でダントツの成績で優勝だそうだ。


「表彰式の時、あいつらなんて言ったと思う? 『あと1発、当てられたはずなのに』だぜ?」


「うへ」「いや、逆に気持ち悪いわ」


アメリカ陸軍だと絶対数でのゴリ押しだよ、こんなに狙って当てるなんて絶対に出来ない。

だって動くもん、的を狙うのとは訳が違う。

見た感じ自衛隊の戦車部隊の命中率は50%くらいだ、詳細なデータが無いから何とも言えないけど、絶対これ米軍上層部とか情報管理部、分析官とかドン引きしていると思う。


ミサイルの直撃さえ回避するような敵性生物も居るのに対して、戦車の砲撃を()()()当ててるとしか思えないんだもん。


「命中率たったの52%、もっと正確に当てなければ」


自衛隊戦車部隊が言っていた台詞を後になって小夜さん経由で知り、ドン引きしたのは言うまでもなかった。







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