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巨人になった私  作者: EVO
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静養 3

巨人の身体能力は大したもので、点眼薬を差して1日経つと眼の炎症は綺麗になくなった。

最初は眼の中がゴロゴロして結構な痛みがあったけど、寝て起きたらさっぱり快復していた。


リリィの方も順調に快復しているけど、レントゲンやMRI、エコー等の画像診断が出来ないので、あくまでも血液検査の数値と本人への問診という限られた手段での診察になる。

幸い、心電図の異常は診られないので当初の予定通り数日静養、装備の耐電対策を待っての復帰となっている。


あの時、仮に後詰の第一級敵性生物(カテゴリー1)が居たらリリィの蘇生も覚束なかった。

危機感を覚えた上層部は電気ウナギに関しての対応策として、サーモバリックの積極的な使用を決断。

現在、私達巨人特殊部隊は休養中だけど、自衛隊と米軍による偵察監視任務は強化されて、ウナギを発見し次第サーモバリックで焼き払っているという。


つまり超巨人の時と同様、私達が接近戦を行うには不適当な敵性生物だと判断された程の危険生物だと合同作戦本部は認識していた。


確かにあのウナギは過去会敵した敵性生物の中ではトップクラスに速いから接近戦は避けられない、組み疲れて自爆、これがどれだけ恐ろしいのかなんて言うまでもなかった。

私が反射的に切り殺せたのは本当に偶然で、リリィの前に私が自爆電撃を受けても不思議じゃなかったんだよね。


「サーナー、んーー」


「はいはい、ン」


暇を持て余した私とリリィはホームでベッタリと過ごしていた。

ライアンは適度に湾を泳いだり港湾の積み下ろしを手伝ったりしているみたいだけど、一応重症を負ったリリィを1人にする訳にはいかない。

心停止したので運動禁止も当然、安静を言い渡されているからホームでダラダラしているといった具合だ。


タブレットでラノベを読んでいる私のお腹にリリィは手を回してダル絡み。

そこまで真剣に読んでる訳でも無いし、リリィもそれを分かっている上でのスキンシップだ。

首にちゅーっと吸い付くリリィをやんわり引き剥がしたり、やわやわと胸をまさぐる手をはたき落としたり、構って欲しいとベタベタ抱きつくリリィを無視したり、偶に拗ねた彼女にキスをして途端に嬉しそうに笑う彼女が眩しかったり、とまあ中々自堕落な生活になっている。


「リリィってスキンシップ好きだよね」


「おー、大好きだよサナ」


今もリリィは私の太ももに頭を乗せて上機嫌に髪をいじっている。


「この()も興味あるんだけどねぇ?」


「そ、それは、私も、興味が無いわけじゃないけど、ママとパパに挨拶してからね」


「あいあい、真面目だねサナは」


「真面目、って言うかママ達のママ達を見ているからね・・・」


一応メールでリリィと付き合ったよ、ってママとパパに報告はした。

メール直後電話が掛かって来て「おめでとう、仲良くね」と祝福されたのには心からホッとした。

ママもパパも私が巨人化した時から、いわゆる一般の平凡な人生を送れるとは思っていなかったらしくて、好きな人と幸せに過ごせるなら性別なんて大した問題じゃないから全面的に応援する、と言ってくれた。


「ん? ママ達のママ達? 爺さん婆さん?」


「あれ、言った事無かったっけ?」


「いや、聞いた事ないねぇ」


「あー、あまり面白い話じゃないんだけど

・・・」


「聞くよ」


少し硬い雰囲気を察したのか、リリィは膝枕から起き上がると表情を引き締めて隣に座った。


「そんなに大した話じゃないんだけど、」


至って簡単な話、ママは日本人、パパはアメリカ人の国際結婚でママの両親とパパの両親、そのどちらもが2人の結婚を祝福出来なかったって話だ。


ママの両親は結婚相手が外人だなんて、と言ってパパを嫌っていたし。

パパの両親は日本人なんて、と難色を示していた。

結局、ママとパパは親しい友人と会社の同僚だけを招いた小さな結婚式を挙げて入籍した。


そして私が生まれた後に問題が起こった。

当時は疎遠になったものの絶縁した訳でもなかったので、ママとパパは両家に子供が産まれたと簡単にメールで報せた。

すると、孫の顔を見たいとの話になって、この機会に蟠りも解けるかも知れないと思ったママとパパは私を連れて実家に行ったそうだ。


結果は最悪だった。


ママの実家では、パパそっくりの金髪碧眼の私は受け入れられず、私を見た途端にガイジンの子供!と態度を急変させた両親にママが激怒。


パパの実家では、パパそっくりの金髪碧眼の私にデレデレとなった両親が、ナチュラルにママに対して差別的な事を言ってパパが激怒。


義実家となる両家の態度にママとパパは自分達の事なら兎も角、これでは(サナ)に悪影響を及ぼすのは目に見えているとして離れた。

どちらもそれからは没交渉となって久しい、と言うのを私は高校入学時に2人から聞いている。


「私が目立っているから、パパの両親からは何か来ているかもね」


「そうかい・・・」


ママの実家ではパパと私は悪だからあちらから連絡は取ってこない筈だ、逆にパパの実家では私は可愛がられたらしいので此方は何かあるかも知れない。


と言っても、今の私に連絡を取る方法はママとパパを通すか、軍もしくはホワイトハウスを通すしかない。

ハイスクールの友達の方は偶に別クラス別学年の子に紹介して欲しいって言われて、というのは有るけど、それも節度あるものだ。


だからママ達、軍が私に何も言わないというのはそういう事だ。

私だってママとパパの実家、どちらもママもしくはパパを悪く言うなんて進んで交流したいとも思っていないしね。


「だから、私的にはしっかりママとパパに挨拶してから、って思ってるの」


all right(オーライ)、解ったよ、サナの考えは間違ってない」


ライアンのパターンもあるからね。

ライアン自身は娘の幸せがそれなら受け入れると言っているけど、それでも悩んでいたのを知っている私からすると、思う所が全く無いって訳ではないからね。


TV電話では確かに祝福された、でもやっぱり直接顔を合わせて話すことも大事だと思ったから、これは私なりの納得出来る(スジ)だと考えている。








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