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巨人になった私  作者: EVO
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静養 1

「ということなんだけど」


「オウ」「ハイ」


「どうしようリリィが壊れた」


「オウ」「ハイ」


昨夜は大変だった、それはもうリリィが絡んできて・・・、いやこれはいつもか、怪我の影響かストンと眠りに落ちて、私も疲れていたからそのまま寝たけど。

朝はいつものように先に起きた私がベッドを抜け出して、ライアンとイブを緊急招集した。


「ライアン!娘が女の子のパートナー連れて来たらどう思う!?」


「やめろサナ、それは俺にとても効く、止めてくれ」


ライアンの娘さんは確か同性のパートナーを連れて来ている、聞くならライアンしかいないのに全く参考にならない。


「Fxxk!!ダメじゃん!!」


「サナ落ち着いて」


ママもパパも頭ごなしに否定はしない、筈だ。

いや、そもそもリリィと付き合う(?)事になった流れがイマイチ分からない。


「あ、そうだ!雷に撃たれておかしくなったんなら、もう一回雷に撃たれたら治るんじゃ!?」


「よせ!」「サナ、本当に落ち着いて」





「ぶっちゃけよ、お前ら付き合えよ、つうか事実婚みたいな感じだろ、それを今更」


「え」


「そうですね、私もそう思います」


「え」


「俺も最初は擬似的な母娘か、とも思ってたけどお前らそれより距離近いし」


「そもそも巨人としての境遇を同情なり共有なり、依存なりしていたとして、あんなチュッチュしませんよね、お風呂も一緒だし、サナの両親が死んだ訳でも有りませんし」


「つうか人工呼吸したから責任取る事になったんだろ?」


「えっ、でもあれは必要でしょ!?」


確かに人工呼吸と心臓マッサージの二者択一だと、心肺蘇生法を施すなら心臓マッサージだけやっていた方が良い、とされている。

ドクターがアメリカに残る都合上、現場の私達は当然応急処置や心肺蘇生法の指導は履修している。

1人でやるなら心臓マッサージ、2人なら両方やった方が良いに決まっている。

体力や体格的な問題であの時はライアンが心臓マッサージ、私が人工呼吸と分担したのは正解だ。


心停止後は時間が経てば経つほど救命率は下がっていくし、逆に心停止直後なら救命率はとても高い。

事実、リリィは60秒以内に蘇生したし、統計でも60秒以内の救命率は90%もある。

180秒過ぎると脳の後遺症が、300秒過ぎると救命率が50%を切る。

運も良かったけど、適切な処置を施せたと私もライアンも胸を張れるだろう。


「まあな」


「意外と真面目でしたねリリィも」


「まー、いんじゃね? 付き合ってダメならそれだけさ」


「そうですね、と言っても既に同居期間10ヶ月程なので、もう」


「そういやそうだったな、よし!おめでとう!サナ!」


「え、ありがとう?」


「おめでとう、サナ」


「あ、はい・・・」


待って待って、ええ?

祝福されてしまった、釈然としない感じはあったものの、ライアンもイブも朝早く無理に来て貰った事もあってその場で解散になった。


ホームに戻るとリリィはまだ寝ていた、ゆっくりと寝室のドアを閉める。


「ふあ・・・」


早朝なのでまだまだ眠い、Tシャツホットパンツ姿のまま私はベッドに潜り込んだ。

リリィは眠ったままだけどノソノソと手が伸びて私を抱きしめる。


よくよく考えると他人と同衾するってないよね、最初はベッドが無いからって理由からだったけど、それが解決してからもずっと一緒に寝ていた。

ふと物心つくころには家族であるママとパパとは同じベッドで眠ることは無かったし、これもこれで新しい家族の形なのかなぁ・・・


ウトウトし始めた意識の中で取り止めもなくそんなことを思った私は、リリィの温もりを感じながらまあいいかとテキトーに考えて眠りについた。


「サナ、起きろー、おーい」


「ン、」


次に目が醒めたのは朝食の時間直前だった、リリィが先に起きていていつもとは逆の立場で私を起こしてくれた。


「・・・」


「くく、よく眠っていたね、珍しい」


「んー」


本当は先に起きていたけど、まあいいか。

リリィの顔色は良く、昨日と比べると随分快復しているように見える。


「メシだ、メシー」


「リリィ、身体は?」


「ん? 大分良いね」


「そか」


着替えを済ませた私達はどちらともなく手を繋ぐと朝食を摂りにホームから出た。


***


「うえー、オートミールかよー」


「リリィは喉も火傷負ってるんでしょ、仕方ないじゃん」


朝食はいつものように自衛隊の炊飯部隊お手製だ、メニューは珍しく洋風、オートミールとなっている。

それも昨日のリリィの負傷は消化器にも及んでいるらしく、出来るだけ該当箇所に負担を掛けないメニューとなっている。

当然スパイスが利いた料理が出る訳もない、そもそもオートミールはあまり美味しくないってだけで栄養は満点の料理だ、怪我人や病人には当然定番のメニューと言える、日本で言えばお粥だね。


「あ、美味しい・・・」


「だろ!? オートミール=不味いを払拭する為に出汁まで取って仕上げたんだ!」


ブーたれるリリィを横目にひと口食べると、米軍のオートミールとは一線を画した美味しさが口に広がった。

炊飯部隊の1人が嬉しそうに力説してくれた、どうやらかなりの自信作らしい。

主な味は塩かな、控え目だけどしっかりと旨味があるし、食材は大根や青菜、副菜に佃煮、鮭のほぐし身。


「へえ、こいつぁ」


と、リリィもパクパクと食べ始めた、いや本当に美味しいよコレ。

つまみ食いに来ている米兵もWhat's!? Amazing!!って言っているし。


「リリィあまり食べ過ぎない方が」


「大丈夫大丈夫、こんな美味いオートミールならいくらでも」






「あ゛ーーーー・・・」


「だから言ったのに」


オートミールをおかわりしてまで食べたリリィは食後30分、ダウンしていた。

消化器に負担を掛けない為の食事なのにお腹いっぱい食べたらこうなるよ。

横になるのはあまり良くないからソファーに体を預けてぐったりだ。


仕方なく白湯を準備してリリィに手渡し、以前ネットで見た消化を助ける脚のツボマッサージをしてあげた。


「お、痛気持ちいいね、うっ」


「昨日心臓止まったの分かってる? 大人しくしてよ」


「あいあい、悪かったよ」


ヘラヘラと笑うリリィ、私は仕方ないなぁと膝の上に乗せた彼女の脚のマッサージを続けた。







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